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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 序章 ラベルク村後日談

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嵐の黒剣

突然の魔王の腹心、カルア・ルーシア登場です。

ぶっとんだキャラは書いていて楽しいですね。

「レイカ様! どこですか! どこに消えてしまったのでございますか!!」


 王国騎士団支部からそれぞれの武器を構えて飛び出し、ラベルク村の広場に駆けつける。焔刃の震えは止まらず鳴りっ放しになってしまっていた。

 広場に着いた俺達の目の前に映ったそれは、片翼2メートルほどはあろう猛々しく大きな翼を広げた1匹のトカゲのような竜種に乗り、半狂乱になりうわ言のように呟き続けている長い黒髪の女剣士。鈍く赤光りするブレストプレートに身を包み、背中には怨念が籠るような魔力を放つ黒き大剣を背負っている。


「あれはワイバーンですわ! そして彼女の持つ黒剣の魔力反応が桁違いです。注意が必要ですわね!」


 どこから取り出したのか、長い杖を構え油断なく上空のワイバーンを指差すタリカ。

 ワイバーンか……ドラゴンの亜種ってやつだな。

 ホワイトドラゴンのエーデルヴァイスと比べると魔力量は低く、それほど強くはないのだろう。焔刃の警戒は黒髪の女剣士と背中の黒剣に集中しているのがはっきりと分かる。

 エレノールが次に到着。すぐ後ろからベルガ、ジルベニスタ、フィリナの姿。

 俺達が広場に集結するのをひと睨みすると、ワイバーンに乗った黒い髪の女剣士は、自身の髪を振り乱すようにして弾劾する勢いで言葉を投げ降ろしてくる。


「貴様らね! レイカ様を隠したのは! あの方の高貴なる薫りはまだ残っているのよ。でも気配はこの世界から消えてしまっているの!! どういうことなの。今すぐに説明しなさいよぉぉ!!」


 鬼気迫る勢いで背負った黒い大剣を抜き放つ。

 その眼差しは更に鋭さを増していく。両手で軽々と構えた2メートルはあろうかという黒剣から忍び寄るような寒気のする魔力が周囲に向かって放出される。

 女神よ女神よシャウザ様。いつものようによろしく頼むぜ。


情報処理(スフェア・バイト)


【魔人カルア・ルーシア:魔王レイカの創りし七倣刃(セブン・ミミック)が一人

 レベル55

 彼女の持つ『嵐の黒剣(ストーム・ブリンガー)』は厄介です。周囲の魔力を吸い取り自分の力とすることのできる魔剣。我々が持つ事は叶いません。逆に魂すら喰われてしまいます。


「レベル55だと!! エーデルヴァイスと一緒かよ!!」


 思わず叫んでしまった。しかも、いきなり分からん単語が多すぎる。

 七倣刃とか嵐の黒剣とかさ。

 ダークファンタジーっぽくなってきたのか……?

 そんな、地球でのゲーム感覚が戻ってきたような考えが頭の中を駆け巡っているところを、エレノールから怒鳴り散らされる。


「また余計なこと考えているんでしょ! 異世界の知識も大概にしな! 明らかにホワイトドラゴン並みの魔力を発してるじゃない! でも……素敵じゃないの」


 エレノールの足元から立ち昇る魔力がその場を焦がすように広がっていく。しかしそんな彼女の表情はトロンとして、敵の魔力すらも味わい喰らうような顔をしている。また余計な性癖が出ているな!

 隣でタリカも杖をぐるぐると振り回し、遠心力を利用して踊るかのように詠唱を重ねている。その度にゆさゆさとゆれる豊満なバスト。目のやりどころに困ってしまう。


「ええい! 焔化(フレーメン)


 集中……集中するんだ。

 焔刃から強い焔の力が生まれ、自分の手の中にいつもように焔の剣となって具現化された瞬間。

 上空からの強い風の動きが俺達の頬を叩きつけるかのように吹き付ける!


「ここね! ここにレイカ様を隠したのね!! 分かっているのよおおおおお!!」


 カルアは嵐の黒剣を構えたまま、ワイバーンと共にラベルク村の家屋に突っ込む。

 ガラガラと音を立てて崩れ去る屋根。

 おいおい。いきなり何をしているんだこの人は。

 そんなところに魔王が居る訳がないじゃないか。

 焔刃を構えたまま、俺は状況が全く呑み込めずに立ち尽くす。

 その時、二人の魔導士の魔紋が完成する。


碧風の太刀(シルフィ―・リッパー)

炎神の燃え盛る指(フレア・アロー)


 吸い込まれるような翠の風が空を切り裂き、幾多もの炎の矢がカルアに射掛けられる!

 しかし、それは全てワイバーンとともに再度上空に浮かび上がったカルアの身体には届かなかった。

 嵐の黒剣から這い出るような魔力に、二人の唱えた魔導が無力化されていく。


「卑しき魔導師どもの攻撃など! レイカ様より賜ったこの嵐の黒剣の前にはハエに等しいわ!」


「エレノール! タリカ! 気を付けろ。アイツの持つ魔剣はどうやら魔導を吸い取る類の能力みたいだぞ」


 その言葉に、今初めて俺と言う存在に気付いたと言わんばかりに、黒髪の美女カルアと目が合った。深い悲しみに濡れた瞳の色。魔王への絶対的忠心。

 俺は眼をこすった。カルアの背中に褐色の翼が生えていたような錯覚が……?


「トラジ! ボーっとするな! 敵が目の前にいるんだぞ!」


 ベルガの拳骨が飛んでくる。強かに殴りつけられ、目の奥に火花が散るようだ。

 ようやくベルガ、ジルベニスタ、フィリナがその場に揃った。


「そこの毛玉ァ!! レイカ様をどこに隠したか言いなさい!!」


「け、毛玉だと!?」


 よりにもよって狼獣人のベルガを毛玉呼ばわりしている。ベルガはあまりにも突然の言われように怒るということも忘れて、ただ茫然と聞き返すことしかできない。

 まぁ毛玉と言う表現はけっして間違いじゃないな……

 場違いなことを考えているとフィリナに険しい表情で睨みつけられてしまった。

 慌ててカルアに意識を戻す。

 ぽかんと口を開けて、上空の一点を見つめる彼女。


「……待って、この感覚。まさかエリュハルトの外へ……遊びに行かれたの?」




嵐の黒剣の命名は、かの有名な魔剣から付けさせてもらいました。

割と知られているのか、そうでもないのかはわかりませぬが。


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