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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 序章 ラベルク村後日談

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ジルベニスタとタリカ・リーベルナック

いきなりの新キャラ登場です。

ジルベニスタは1部の最期でちょっとだけ出て来ています。王国騎士団長ですね。

物語内でも話が出ますが、ベルガの義理の息子という設定です。


 ラベルク村の王国騎士団支部にある一室。

 応接室と呼ばれている場所で、自分たちが初めてこの村を訪れた時に通された部屋だ。

 あの時は神の包丁凍凪の暴走した魔力によって、世界が極寒の中に閉ざされて心まで冷え切ってしまうかのようだった。

 だが、今はもう違う。

 締め切った窓は大きく開け放たれ、あたたかな天星(てんせい)ダルバの輝きが応接室の奥まで降りそそぎ、無機質な机や椅子までもが輝いて見えるかのようだ。

 その応接室に俺達四人と一匹、更に二人の客人が招かれていた。

 応接室の奥まった椅子に腰かけ、白い尻尾をイライラと振り回しているのは狼獣人のベルガだ。


「あれ? 天星ダルバって前は違う色じゃなかったけ?」


「トラジ。星流人(せいりゅうびと)の貴方だから分からないのは仕方ないけど……ダルバは七日周期で色を変えながら我々を照らし続けてくれているのよ。経典では7つの顔を持つとされているダルバは十二柱神(じゅうにちゅうしん)の筆頭神なの。分かった!」


 久しぶりにエリュハルト世界辞典様が火を噴いている。

 エレノールのくるくると変わる表情の方が余計そのダルバって神様みたいじゃないか。そんなことを考えていたらフィリナに横から小突かれた。


「まさか本当に存在していたとはな。異世界からの放浪者である星流人という話は本当だったのだな」


 重々し気に口を開いたのは真っ赤な髪の毛をまるで結い上げるように頭の後ろで一つにまとめていて、銀色のチェインメイルを着込んだ俺よりは少し年上に見える男性。

 その隣に座っているのは、紫の魔導ローブに身を包んだ少し背の低い女性。尖った耳がピンと銀色の髪の間から見えるのでエルフなのか。


「ジルベニスタ様!! あたくしタリカ・リーベルナックが思いますに、彼の持つその包丁から流れ出る魔力はまさに規格外ですわ。まさにベルガ三番隊長の仰る通りに神機の顕現! それもファルナート王国に勝利をもたらした神の恵みともいえる逸品。いえいえ、もちろんジルベニスタ様の持つ疾風のレイピアも素晴らしいのですわ! それはこの貴方のタリカが保証いたしますわ!」


「……相変わらずだなタリカ。お前のくるくるとよく回る口を見ているとこちらまで目が回るようだ。少し黙っていてくれないか」


 粉砕の大斧を杖代わりにして、大きくため息を付きながらタリカを見やるベルガ。

 そうか。同じ王国騎士団内だからジルベニスタ団長は当たり前として、タリカもベルガとは顔見知りということか。

 俺はエレノールとその紫ローブの女性を交互に見比べる。

 ……デカい胸だな。

 もちろんエレノールに対してではない。

 いきなりフィリナが頬をつまんできた。なんで考えていることが分かったフィリナ。

 肩の上でニシシと、にやけるような笑いを浮かべるグリューン。

 難しい話になるからってまた寝るんじゃないぞ。失礼だからな。

 エレノールとタリカの目が合い、不遜な眼差しをタリカが向ける。

 あれ? 魔導師同士で仲が悪いか何かか?

 俺の中の寿司職人としての勘が、どこかその場にそぐわない空気を感じ取った。


「父上……いや、ベルガ三番隊長。この度の戦いは見事だった。王より賜りしヒサメ討伐の遂行、更にはラベルク戦線での勝利を改めて祝福させてもらおう」


 ベルガを父上と呼んだジルベニスタ団長。

 すぐに言いなおす辺りがどうにも二人のもどかしさを表しているようだ。

 フィリナが俺の耳元で小さくつぶやく。


(ジルベニスタ様はSランク称号を持つ凄腕の剣士よ。ベルガとは王国と獣人国の間で結ばれている協定による登用制度を使った例なの。元々二つの国の間では領土問題で戦火を交えている過去もあるから……国家間の友好の証ということも含めてね)


(そういうことだったのか。養子というからなにかあるんだとは思っていたんだけど)


 それよりもランクっていう概念がこちらの世界にはあるんだな。

 異世界転生物のアニメの、定番と言えば定番のランク制度だ。

 Sランクということはかなり強いのだろう。確かに物腰や脚運び、気配からはただものではない空気を感じていた。

 ゴホン……とベルガが咳ばらいをしたので慌ててフィリナとの会話を打ち切る。


「で・す・が!!」


 タリカが大ぶりな胸を反らすように震わせ、ぐいっとベルガを指差す。

 エレノールが眉を寄せてイライラを募らせる。カバンの中の使い魔の黒猫ミンミが不快そうな声を上げた。

 指を突きつけられたベルガは全く動じずに次の言葉を待っている。


「ベルガ三番隊隊長の、あまりよろしくないお噂を耳に挟みましたわ。一部の団員からは臆病者と誹られているとかいないとか。そうですわよね、ジルベニスタ様!」


 キンキンと高い声が狭い応接室にやけに響くような気がするのは気のせいか。

 ジルベニスタとベルガは、おそらくこの銀髪のエルフ娘とのやり取りは慣れているのだろう。グリューンの間抜けな欠伸がそれに重なり微妙な空気感を醸し出す。


「ヒサメを捕まえ、魔王さえも退けられたのよ。それを称賛するのであればまだしも、ベルガの負い目に塩を塗りたくる訳ね。あんたらしい言い回しだこと、タリカ」


 吐き捨てるようにとは、このことを言うのだろう。

 エレノールの瞳には侮蔑の色が色濃く映る。

 それを真っ向から受け止めるとタリカは大袈裟に芝居がかった笑みを口の端からこぼした。


「さすがですわね……魔導協会マスターであるリザルト様のお気に入りのアストリア! これは王国騎士団の士気にも関わる問題なのです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉を聞いたエレノールの変貌は迅速かつ苛烈だった。

 一気に彼女の全身から魔力が迸り、瞳の色が一瞬で色濃く緑色に染まりあがる。

 短杖(ワンド)を握りしめ、魔力を込める。

 まさか! ここでぶっ放す気か!!


「いい加減にしろ二人とも。それとも力づくでエルフ二人の見苦しい喧嘩を我が止めねばならないのか」


 強い制止の言葉。ゆるやかに立ち昇る猛々しい魔力。

 静かで美しさすら感じるほどだった。

 それはジルベニスタ団長から発せらえる周囲を凍り付かせるほどの一瞬の怒気をはらんだものだった。



さて、始まりました。いきなりの不穏めいた幕開けですね。

1部での設定を覚えている方は問題ないとは思いますが、エレノールは子供の頃の記憶を喪失しています。その後六陸連合共和国で魔導を学びました。

なぜ記憶を喪失しているのか、それは後々明らかになっていきます。

タリカは……この性格は作者が大好きなキャラです。

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