■第47話 お茶会
「ルーナさま、本当に大丈夫ですの? 少しお顔の色が優れませんわよ」
アリスが心配して声を掛けるが、ルーナはすぐに笑顔を浮かべた。
「え、ええ……大丈夫です、お気づかいなく」
「それでは、お部屋にご案内いたします。他の皆様も休めるお部屋をご用意いたしましたので、そちらでごゆっくりおくつろぎ下さい」
「すみません、いつも私たちまでこのようにおもてなし頂いて」
「いえいえ、お気になさらず」
モニカがそう言って、別のメイドたちにルーナの使用人を案内させる。
そうして私たちはモニカとクロを先頭にアリスの私室へと向かう。
ちなみにクロの事も後で話すつもりらしい。
アリスとしてはびっくりさせてやろう。くらいの気持ちなのだろうが……。
正直、びっくりするどころじゃ済まないと思うんだけど。
しかし、道中もなぜかルーナは時折こちらへ視線を向けていた。
目が合うたびに慌てて逸らされるのだが。
うーん、やっぱり何か変だな。
はっ! まさか私に一目惚れしたとか? いや、さすがにそれはないか。
私がそんなことをブツブツ呟いていたら、部屋に到着した。
中に入るとアリスとルーナが席に着く。
そしてモニカが二人の前にそっとお茶を置いた。
するとルーナはお茶をジッと見つめていた。
「これは、なにかしら?」
ルーナがそう言った。
「ん? いや、お茶だけど?」
いつの間にかアリスは素に戻っていた。
「何を企んでるの?」
「え? 何がだ?」
「あなたが普通にお茶を出すなんて、今までなかったでしょう? 何を企んでるのか正直に言いなさい!」
いったい今まではどんなお茶会だったんだろう?
逆に凄く興味があるんだけど。
「失礼だな。今日はちゃんとしたお茶会だぞ」
「前回もそう言っていたわよね?」
そう言ってルーナは部屋の中を見回す。
「どこかから曲者が現れて、それをあなたが倒すとかかしら? まぁそんなのじゃ私は驚かないわよ」
「いや、今回は別にそんなネタ仕込んでないからな」
今回はって……仕込んだこともあったの?
「そこのメイドさんが実は黒龍です。とでも言われないかぎり驚かないわよ」
いや、すいません。それ正解なんですけど……。
むしろなんで当てたの?
「ぶっ」
アリスが吹き出した。
プルプル肩を震わせながら必死に笑いを堪えている。
アリスは今すぐ言いたくて仕方ないんだろうな。
事実を知った時の聖女さまが心配だ。
「まぁいいわ」
そう言ってルーナはお茶を一口飲む。
「それで、私を呼んだ理由はなにかしら?」
「ああ、それなんだが」
アリスはそう言って、私をチラッと見る。
その視線につられるように、ルーナも私の方を見た。
うわ、なんかめっちゃ緊張してきた。
「まず先に紹介しておきたいんだが、私の護衛……クレアだ」
「それはさっきも聞いたわよ?」
「うーん、それがただの護衛じゃないんだよ。少し長い話になるけどいいか?」
「ええ、聞かせて頂くわ」
アリスの言葉を聞いてルーナは何かを察したように真面目な表情になった。
ルーナはそっとお茶のカップに手を掛ける。
その表情は先程までとは違い、真剣そのものだった。
「そうだな、結論から言うと」
アリスは真っ直ぐルーナを見つめてこう言い放った。
「クレアは異世界人だ」
「……はい?」
ルーナがぽかんとした表情になった。
「ごめんなさい、ちょっと理解できなかったんだけど。異世界人って言ったの?」
「ああ、そうだな」
「えっと……詳しく聞いてもいいかしら?」
そうしてアリスは、私と出会った経緯や封印解除の件について詳しくルーナに説明した。途中何度かルーナの質問を挟んだが、話を聞き終えた頃には。
「……ちょっと情報量が多すぎるわ」
ルーナが頭を抱えていた。
「でも封印ってなに? 私はそんな話知らないんだけど」
え? それは予想外の反応だった。
ルーナは聖女だ。聖公国でも一番偉い人に近い立場のはずだよね?
そんな人がクレア封印のことを知らないの?
「まぁ、私もフィオナから聞くまで知らなかったしな」
アリスもそう言った。
え? 地味にそれも初耳なんですけど?
クレア封印の話ってもしかしてそんなに知ってる人いないの?
「歴代の聖女にまつわる話の中にも、そんなのはなかったと思うけれど――」
そこでルーナは言葉を切り、何かを思い出したような顔をした。
「それか、あれはやっぱりご神託で……いやでも……」
ブツブツとそんなことを言っていた。
「ご神託?」
「あっ、いえ……なんでもないわ」
そう言ってルーナは私の顔をじっと見る。
その瞳は、何かを確かめるようだった。
そしてルーナは小さく頷き、語り始める。
「でも、ようやくわかったわ。夢の中で女神さまがおっしゃっていた願い。あれはクレアさんのことだったのね。私の使命はあなたの願いを叶えることだったんだわ」
なんか突然そんなことを言い出した。
えっ? 私の願い? なんだそれ?
私の願いは可愛い女の子といちゃつくことだよ?
神託が来るようなそんな大層な話じゃないと思うんだけど。
私がそんな事を考えているとルーナが深く息を吐いて話を続ける。
「手紙にも少し書いたと思うんだけど、少し変な夢を見たの。多分そのクレアさんが封印されているところだったわ」
そう言ってルーナが夢の内容を詳しく話してくれた。
「なるほど、神託ってそういうことか」
話を聞いてアリスが納得していた。
「ええ、それが女神さまのご意思なのなら、クレアさん。私はあなたの力になります」
ルーナがまっすぐ私を見つめていた。
「ほらな、ルーナはこういう奴なんだよ」
アリスがそう言って笑っていた。
しかし、ご神託とか、願いとか。
急展開過ぎてちょっと思考が追い付かないんだけど。
そもそも、その願いっていうのも私じゃなくて、本来のクレアの願いだ。
……冷静に考えると、私ってなんなんだ?
女神さまもなんでそんな神託をルーナに?
これじゃまるでルーナが私の味方になるように女神さまが仕向けたようじゃないか。……その理由は何?
女神さま……説明が足らなすぎだよ。




