■第41話 学院視察
翌日。
朝食を済ませた私はアリスの部屋を訪れていた。
そして昨日手に入れた地図を見ながら呟く。
「ふむふむ、ここが帝国でここが聖公国。魔の森の先なんだね」
初めて見る世界の地図ってなんかワクワクする。
「帝国から一番近い国はこの中央平原の先にあるルグレシア王国なのかな?」
「この帝都からですとそうですね」
「ここはどんな国なの?」
「前に話しただろ。竜騎士アルヴェインがいた国だよ」
「ああ、あのクロちゃんにボコボコにされた」
「ぐっ、その話はもうやめろ」
「ああ、そうだった。ごめんね」
アリスはお茶を一口飲み、話を続ける。
「まぁ、飛竜騎士団ってのがいて、飛竜を軍事利用してる国だな。空輸技術なんかも発展してる」
「なるほど、飛竜か。それはたしかにかっこいいな」
アリスが憧れるのもちょっとわかる気がする。
でも私は飛竜より、クロに乗る方がいいかな。
「じゃあ、この東側の海商連合ヴェネトって言うのは?」
「大陸一の商業国家ですね。世界中の様々な商品が集まる場所です。それから各国の新鮮な食材が集まる場所ですので、食べ物がとてもおいしいことで有名です」
「おお、おいしいものが集まる場所! それはぜひ行ってみたいな」
「うむ! それは我も興味があるぞ」
その言葉にクロは目を輝かせていた。
行ったら私、クロの食費で破産しちゃうかもしれないな……。
でも各国の食材が集まるなら、もしかしたらお米とかもあるかもしれないな。
この世界に来てからずっとパンだったから。たまにはおにぎりとかも食べたい。
「海商連合では香辛料を使った料理が人気ですね」
香辛料! もしかしてカレーとかもあるかな?
よし、ここはいずれ必ず行ってみよう。
そして私は再び地図に目を向ける。
「えっと、次に近いのがラフォーレ聖公国か」
「はい、女神教の総本山でございます。巡礼者も多いですね」
「へぇー、やっぱり本格的な宗教国家なんだね」
「以前お話した通り、使徒さまが建国された国です。代々使徒さまの血を引く者の中から聖女が選ばれるそうです」
「ちなみに聖女ってやっぱり偉い人なの?」
「聖公国内では教皇さまと並ぶ存在ですね」
なるほど、今までも聖公国の話は聞いてたけど、やっぱり一番気になるのはこの国なんだよね。なんか色々なことが知れそうな気がする。
そんなことを考えていたら、アリスがポツリと呟いた。
「聖公国か、そういえばルーナは元気かな? 最近手紙も来てないし」
「もしかして、結構仲良かったの? 前もルーナの事詳しそうだったし」
「ん? ああ、仲がいいって程ではないけどな。昔からよく帝国に来てたんだよ」
「ルーナさまは聖女ですし、アリスさまは皇女でしかも勇者候補でしたからね」
「なるほど」
聖女と勇者か。物語なら主人公とヒロインみたいな組み合わせだね。
それはたしかに仲がよさそうだ。
「それではアリスさまからお手紙を書かれてはいかがですか?」
「えっ、私から?」
「はい、最後にお会いしてからかなり経っておりますし。まぁ、今はまだクレアさまの件には触れない方が良いかと思いますが」
「うーん……そうだな」
アリスは少し考え込むが、すぐに顔を上げこう言った。
「まぁ、たまには私から手紙を出してもいいか」
「おっ、書くんだ」
「別に大した内容じゃないぞ。ただ元気にしてるか聞くだけだからな。よしじゃあモニカ。手紙の用意を頼む」
そんなすぐに書くんだ、なかなか行動が早いなぁ。
なんて思っていたのだが。
「あっ、そうでした」
モニカが手を軽く合わせ、何かを思い出したように声を上げた。
「申し訳ありません、書くのは後になります」
「えっ、なんでだ?」
「本日は午後から学院視察のご公務がございますので。まずはそちらの準備が先でございます」
「ああ、そうか今日だったか」
なるほど、今日は皇女さまとしてのお仕事があったのか。
ということは、これはまた私、お留守番なんだろうか?
ってか学院ってなんだろ?
「その学院っていうのは?」
「ん、皇立学院だよ」
「あぁ、そういえば前に言ってたね。弟さんが通ってるんだっけ?」
「そうだな。まぁ今日は生徒の前で挨拶して学院内を軽く見て回るだけだけどな」
「へぇー、そうなんだ」
その時ふと思った、この世界の学校ってどんなのだろ?
剣術とか魔法とか、本当にファンタジーみたいな授業があるのかもしれない。
特に魔法のことなんかをもう少し知りたいと思ってたからこれはいい機会なのかも。前世の学校とはきっと全然違うだろうし。
この世界を知るきっかけになるかもしれないしね。
「ねぇ、それって私も行って大丈夫かな?」
「ん? 学院に行ってみたいのか?」
「うん、アリスの弟さんにもちょっと会ってみたいしね」
「なんだ、クレアはシオンに興味があるのか?」
「え? うんまぁ、そうだね」
私がそう言うとアリスは少し難しい顔をした。
どうしたんだろ? やっぱり私が行くのは難しいのかな? そう思っていたら。
「いや、クレアがシオンの嫁になるのは無理なんじゃないか?」
「そうですね、確かにシオン殿下は美少年ですが、年齢も離れてますし……」
アリスとモニカにとんでもない誤解をされてしまった。
「いや、違うからね? そんなこと全く考えてないから! 私別に婚活とかしてないからね」
こうして、私もアリスと一緒に学院視察に行くことになった。
異世界の学校。
いったいどんな場所なのだろうか。




