■第2話 偽装
「わたし、私、私……うん、大丈夫」
女の子になった事実を何とか受け入れた私は、改めてステータスを確認していた。
「……《鑑定》!」
半透明のウィンドウが表示される。
そして眺めているうちに、あることに気づいた。
――あれ?
属性とか魔法とか……なぜか意味が分かる。
「そういえば女神さま、初期設定がどうとか言ってたな」
誰かに教わったわけでもないのに、知識が自然と頭に浮かんできた。
この世界には魔力がある。
そして、誰でも魔法が使えるわけじゃない。
使えるのは――自分が持つ属性だけ。
「なるほど、属性は生まれ持ってのもので途中で増えることはないのか」
たとえば火属性がレベル5なら、火魔法もレベル5まで習得することができる。
そんなシンプルな仕組みらしい。
「なるほどねぇ、私みたいに複数の属性を持ってる人もいると」
私、属性コンプリートしてるんだけど、これって普通なのかな?
うん、多分違うよね?
何なら全属性カンストしてるし。
さらに初級魔法も上級魔法もカンスト寸前だ。
戦闘スキルなんてのもあるし、おまけに各種耐性まであるんだよね。
「女神さま、盛るとは言ってたけどさ……普通こういうのって、もう少し加減しない?」
どうやら私にレベル上げは必要ないようだ……。
とはいえ、実際に使えるのかちょっと試してみたくなった。
やっぱりまずは魔法だな。
とりあえずここは少し暗いので明るくしたい。
いや、別に明るいとこで自分の胸とかいろんなところを見たいとかじゃないよ? そりゃどんな感じになってるのかは気になるけど……それはまた落ち着いてからにしよう。
「さて、明かりかぁ……光属性の魔法かな」
どうやって使えばいいかはなんとなく分かる。
明るい光の玉のようなものをイメージする。
「それっ――『ライト』!」
手のひらほどの光球がふわりと浮かび、辺りを照らした。
「おぉ……」
凄い、本当に魔法が使えるんだ!
「うわぁ、なんだか他の魔法も試してみたいけど」
屋内では危険かもしれないし、ここを出てからにしよう。
明るくなって少し落ち着いたので、もう一度ステータスをじっくり確認する。剣術とかのスキルもいろいろ持ってるんだなぁ、しかもこれに魔法を組み合わせたりも出来るようだ。私って魔法剣士みたいな感じなのかな?
これは早くいろいろ試してみたいなぁ。
……と思ったがなんだか少し不安になってきた。
あれ? もしかして、これってけっこうヤバいやつなんじゃないの?
全属性レベル10だよ? さらに他のスキルも軒並み高レベルだし……。
しかも特殊スキル……《不老不死》とかあるし……それに《吸血》?
これは吸血鬼の固有スキルみたいで血を吸うと一時的に能力がハネ上がるらしい……いや、血とか吸うのはなんか嫌だな。
この世界の平均がどれくらいなのかは分からないけど、これ、下手したら魔王扱いされない?
「なんだか危険な奴と思われて、討伐隊とか送り込まれる未来しか見えない……」
これは、どうしたもんかな……と頭を抱えていたらスキル欄に《偽装》というスキルを見つけた。
「おっ! ちょうどいいスキルあるじゃないか!」
これを使えば相手に偽装したステータスを見せることが出来るかもしれない。
「よし、とりあえず全属性レベル5くらいにして。魔法のレベルも下げて……スキルなんかも隠した方がいいかな? ……えいっ」
「《偽装》!」
すると数値が思った通りに変化した。
「よし、いけた!」
これなら討伐隊に追われることもないだろう。
ひとまずは問題解決だ、私の偽装スキルはレベル9。
たとえ鑑定されたとしても、レベル10の鑑定スキルを持っていないと本当のステータスは見られない。
「よし後は……」
改めて自分の姿を確認する、どうやら私は黒髪のようだ。
長さはセミロングくらい、触れてみるとサラサラしてる。
おお、なんか女子っぽいな!
次に服装は……褐色のズボンに白い長袖のシャツ、フード付きのマント……うん、旅装束って感じかな?
ちょっと地味だけど、まぁ普通の服っぽいしこれはいいだろう。
むしろ露出の多い服じゃなくて良かった。
問題はこれだな……腰の剣帯に差してるこの剣。柄に何か文様のようなものが刻まれてるし、なんだかいかにも高級そうな剣だな。
「これはなんだろう……《鑑定》」
――【神剣】
それ以外は何も表示されない。
「はっ?」
レベル10の鑑定でも詳細が見えないなんて……これ、もしかして相当ヤバいやつなんじゃないの? ……うん、もし戦闘になっても誰かが見てるとこではできるだけ使わないようにしよう。
ってか初期装備って普通、銅の剣とかこん棒とかなんじゃないの?
なんでいきなり神剣なんだよ。
「はぁー、なんだかいろいろと突っ込みたいけど、とりあえず外に出たいな。よし出口を探してみるか」
辺りを見回すと、奥の方に石でできた扉らしきものがあった。
「おっ、あれ扉だよね? 外に出られるかな?」
私は立ち上がりゆっくりと部屋の奥に向かって歩き、重そうな石の扉の前に立つ。
「えらい頑丈そうな扉だけど、これ開けられるのかな?」
なんて呟きながら扉を手で押してみると、意外なことに扉は簡単に開いた。
「あれ? なんだ簡単に開くんだな……よし、とりあえず進んでみるか」
私は扉をくぐり、部屋の外へと踏み出した。




