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■第1話 女の子になりました

「あれ? ここどこだ?」


 目を開けると、今度はなんだか薄暗い場所にいた。

 足元には冷たい石の感触がある。

 どうやら祭壇のようなものの上に寝かされていたらしい。

 俺が寝かされていた場所には、なにやら魔法陣のようなものが描かれていた。


「なんだろこれ? ……んっ? 奥になにかあるな」


 暗くてはっきりとは見えないが、そこには大きな石像が立っていた。

 石像の顔をよく見ると、さっき会った女神ティリスに少し似ている気がする。


「でもさっきの女神さまはもうちょっと可愛らしい感じだったなぁ」


 そんな失礼な感想を述べながら、周囲を見回す。


「ってかここはどこなんだろう。本当に異世界なのかな?」


 そう考えると、ちょっとワクワクしてきた。

 剣と魔法の世界か。


「あっ、体はどうなってるんだろう?」


 試しにゆっくりと立ち上がる。

 そして軽く跳ね、手足を動かしてみる。


「おおっ、動く!」


 それどころか体が軽い。思わず腕立てや腹筋をしてみたが、全然余裕だった。前世では病気で動けない時間が長かったから、こんな風に自由に動けるのは本当にありがたい。


「ありがとう女神さま!」


 石像に向かって手を合わせる。

 いや、手を合わせるのは違うかもしれない。

 でも正しい祈り方なんて知らないし、まあいいだろう。

 どんな祈り方でも、心がこもっていれば気持ちは伝わるはずだ。


 さて、では感動タイムはここまでにして。

 俺は周囲を見渡す……うん、誰もいない。


 ここは建物の中のようなので、外に出た方がいいかなと思ったのだが。

 異世界転生には、まず確認すべき最重要事項がある!

 ただ、少し恥ずかしい……だから誰も見てないところで行う必要がある。


「よし、やるか」


 再びキョロキョロと周りを見渡す。


 そして、バッと右手をかざす。


「ステータス!」

 しーん。


「……あれ?」


「ステータスオープン!」

 しーん。


「ウィンドウオープン!」

 しーん。


「ええい! プロパティ!」

 しーん。


 ……ダメか。

 まあ、ゲームじゃないしな。

 必死に叫ぶ俺を、女神像だけが静かに見守っていた。


「……恥ずかしさだけが残ったんだけど」


 誰もいなくて本当によかった。

 しかし、この程度で諦めるわけにはいかない。

 俺はラノベ知識をフル回転させて考える。

 何かないか? こういう時に使えるスキルとか。


「あっ、鑑定とかどうだろう」


 異世界作品御用達スキルだ。

 よーし、とりあえず試してみるか。


「……《鑑定》!」


 呟いた瞬間、目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がった。


「おお、出たぁぁぁ!」


 思わずガッツポーズをしてしまう。

 よっしゃ、使えた! 

 異世界転生定番の鑑定スキル!


 女神さまが特別な力をくれると言ってたし、これは期待できそうだ。


「どれどれどんな感じかなぁ?」


======

【基本情報

 名前:クレア

 種族:吸血鬼(真祖)

 性別:女性

 Lv:1000

 加護:女神の加護


【属性】

 火:Lv10/水:Lv10/風:Lv10/土:Lv10/光:Lv10/闇:Lv10


【魔法】

 火:Lv10/水:Lv10/風:Lv10/土:Lv10/光:Lv10/闇:Lv10


【上位魔法】

 火炎 Lv10 暴風 Lv10 雷鳴 Lv10

 流水 Lv10 砂塵 Lv9  神聖 Lv9


【補助魔法】

 治癒 Lv9 解毒 Lv9 解呪 Lv9

 浄化 Lv8 結界 Lv8 身体強化 Lv10


【戦闘スキル】

 剣術 Lv10 剣聖術 Lv9

 格闘術 Lv8 属性剣 Lv9


【固有スキル】

 魔法創作 Lv10 魔法強化 Lv10

 魔法合成 Lv8  超回復 Lv10


【補助スキル】

 気配察知 Lv9 気配遮断 Lv9

 鑑定 Lv10 偽装 Lv9

 暗視 Lv9


【耐性】

 支配無効 Lv10 状態異常無効 Lv10


【種族能力】

 不老不死/吸血/生命吸収/飛翔/影渡り

======


「ほう、名前はクレアか……はぁ?」


 思わず間の抜けた声が出た。

 レベル、1000?


「いや、ちょっと待って。女神さま盛りすぎでは?」


 おまけの域を遥かに超えてない?

 これってゲームならラスボス級なんじゃないのか?


 なんか他のもほとんどのスキルがレベル10だし、種類も多い。

 これって最大値は10なのかな? 

 というか、HPとかMPの表記はないのか?


「属性やらスキルとかも書いてあるけど、多くてよくわからないな……って、んんっ!?」


 とても無視できない文言が見えちゃったんだけど。


【性別:女性】


「え……ちょっと待ってなにこれ?」


 ゴシゴシと目をこすってもう一回見てみる。


【性別:女性】


 大事なことなので二回……いやいや、そうじゃないだろ!

 女神さま、性別間違ってませんか? 

 前世の俺は男だったんですけど? 

 性転換なんてオプション聞いてないんですけど?


 それに種族が吸血鬼ってなに? 

 あっ、人間種じゃないってそういうことか……ってか真祖ってなんだ?


 恐る恐る、自分の体を見下ろす。

 うん……確かに人間の体ではあるが。


 ――胸がある。


「うーん、それ程大きくはない。なんと言うか程良い大きさで……って、いやいやそうじゃない」


 そーっと胸に触れてみる。


「おっ、これは……柔らかい」


 うん、びっくりするぐらい柔らかかった。


「んっ、これ、ちょっと気持ちいいかも……って。いや、違う!」


 こんなことしてる場合じゃない!

 頭をぶんぶん振りながら慌てて手を離し、次に視線をさらに下へ向ける。


「うん、こっちもちゃんと確認しないと」


 覚悟を決めて、ズボンを少し下げると見覚えのない白いパンツが現れた。


「……こんなの履いてたんだ」


 ――どうする?

 ――見る?

 ――見ちゃっていいの?


 でも、ちゃんと確認しとかないとダメだよね?


「まぁ……自分のだし、どうせいずれ見るんだしー……ううぅ」


 うんうん唸りながらも覚悟を決めてゆっくりと手を伸ばし、するりとパンツを下げてみると。


 ――ない。

 長年の付き合いだった相棒が旅立っていた。

 二度と帰らない旅へ。


「あぁ、やっぱり無くなってる……」


 いや感覚でなんとなくわかってはいたけどさ。


「ちょっと女神さまなにしてんのー? 女になるなら先に言ってぇぇぇ!」


 思わず天井へ向かって叫ぶ。


 大切なものを失ってしまったショックで少しの間、床に手をついて落ち込んでいた。だが、いつまでも落ち込んでいても仕方ない。ここは落ち着いて、冷静に考えよう。


 若くて健康な体だ、ステータスもめっちゃ高い。


「いやこれ、案外ありなのでは?」


 もちろん、男とどうこうなるとかは考えたくもない。

 でもよく考えてみると、若い女の子の体になるって悪くはないか。

 いや、むしろいいんじゃないか?

 なってしまったんだからしょうがないんだし。

 もうあの女神さまには会えないし、そもそも元には戻ることはできない。


 周りを見渡したが、鏡なんかはないので今は自分の姿は確認できない。

 けど肌の質感からして恐らくは若いだろう。

 ……美少女だったらいいな。


 ああ、でも男にモテたりするのはなんか嫌だなぁ。

 その代わり――。


「可愛い女の子と仲良くするのはアリだよなぁ」


 美少女の友達とか作って一緒にお茶飲んだり、一緒に遊んだり。


「あっ、一緒にお風呂に入ったり、なんてこともしてみたいしなぁ……えへへ」


 そんなことを考えていたら思わず顔がにやけてしまった。

 うん、そうと決まれば。


「中身が男だってバレないようにしないと」


 言葉遣いとかも気を付けて、自分の事『俺』とか絶対言わないようにしないと。

 この姿で俺じゃさすがに違和感あるし。


「よし。決めた! これからは――私だ!」


 深く息を吸う。


「この世界で――私は、女の子として生きていく!」


 新しい人生、目標はただ一つ。

 可愛い女の子たちと楽しく暮らすこと。

 ……吸血鬼だけど。


 まあ、バレなきゃ大丈夫だろう。

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