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■ プロローグ

 ふと気がつくと、なぜか体の感覚がなかった。

 足元も、風も、重力さえ感じない。

 辺りを見渡すと、真っ白な空間がどこまでも広がっている。


 ――え? ここはどこだ?

 

 状況が分からず呆然としていると、背後から声が聞こえた。


「あっ起きましたかぁ? ちゃんと意識戻ってますよね?」


 振り返ると、白い衣をまとった女性が立っていた。

 金色の長い髪に、薄青の瞳。

 可愛らしく、それでいて神秘的な雰囲気をまとっている。


「……誰?」


「残念ですが、あなたは亡くなってしまいましたぁ」


「……え?」


 言葉の意味がすぐには理解できなかった。だが、病気で入院していたことを思い出し、ゆっくりと納得する。あぁ、あのまま死んじゃったのか、俺。


「それであの、ここはどこなんでしょうか?」


「ここはですねぇ、いわゆる天国的な場所だと思ってください。私は女神ティリスと申します」


 ……女神ティリス?


 これは、もしかしてよくある異世界転生とかさせてもらえるパターン?


「なんと! あなたには、今の記憶と知識を持ったまま異世界に転生していただきまぁす」


 あっ、やっぱり……いや待て。異世界で何したらいいんだ? 

 魔王を倒してこいとか言われたら、ちょっと怖いんだけど……


「あの、異世界って何をすればいいんでしょうか?」


「自由に生きてもらって大丈夫ですよぉ。無理に何かをさせたりはしません!」


「……自由に?」


「ええ、もちろんです。好きなように生きてちゃってくださぁい」


 まぁ好きに生きられるならいいかな。

 でもその前に、どんな世界なのかしっかり聞いておかないと。


「ちなみにどんな世界なんでしょうか? 魔獣とか魔王とかがいる危険な世界だったりします?」


 せっかく転生してもすぐに死んじゃったら意味ないし。


「皆さん憧れの剣と魔法のファンタジーな世界ですよぉ。まぁ魔獣もいますが、ちゃんと気をつけてればたぶん大丈夫です!」


 そう言ってティリスはにっこり笑った。


 ……たぶんってなんだよ。ほんとに大丈夫なのか? 不安しかないんだけど?


「何百年か前に魔神なども現れましたが、勇者に討伐されてますので今は平和ですよぉ」


 勇者とかもいたんだ……ふむ、平和だけど魔獣はいるのか。

 ってことはあれかな? 

 よくあるチートな能力を貰えたりするのかな?


 チラッとティリスの方を見る――ぽわぽわした感じの優しそうな女神さまだし、一応聞いてみるか。


「あの……平和なのは分かりましたが、魔獣とかに襲われたら死んじゃうと思うんですが? 何か特殊な能力とか貰えたりとかするんでしょうか?」


「はぁい、あなたの魂は少し特殊な肉体に宿っていただきます。それに私の加護も与えますので……そうですねぇ。他にもちょっと盛っておくので、そうそう死んだりはしないと思いますよぉ。」


 ティリスは穏やかにほほ笑んだ。


 何かいろいろ気になることはあるが……


「あの、特殊な肉体って……もしかして普通の人間ではないとかですか?」


「人間種ではありませんが見た目は同じですよぉ。あっ! 言葉やあっちの世界の知識なんかの初期設定はこちらで入れておきますので、安心してくださぁい」


 いやっ、初期設定ってなんだよ……全然安心できないよ。

 ってか人間種じゃない? 

 見た目は同じ? 

 ……なんか気になる言い方だな? 


 う~ん、あっ! 異世界で人間以外ならやっぱりエルフとかかな?

 エルフって、美男美女ばかりってイメージだよな。


 ……いや、もしかして俺もイケメンになれたりするのかな?

 なんて、さすがにそれは欲張り過ぎかな。


 まぁ、なんにせよ転生させて貰えるだけでもありがたいことだよね。

 特別な能力とかも貰えるみたいだし。


「わかりました、お願いします!」


「はぁい、それでは送っちゃいますねー。新しい人生を楽しんできてくださぁい」


 白い光に包まれて意識が遠のいていく中でティリスの声がまた聞こえた。


「あっ、あとぉ――」


「もし向こうの世界で困ったことが起きたら……少しだけ手伝ってあげてくださいねぇ」


 うっすらと微笑むティリスの姿が見えた。


 それはなんの伏線ですかぁー!


 そんな心の叫びも虚しく……俺の意識はそこで途絶えた。

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