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■第19話 お風呂ありました

 フィオナの隠された真実を聞いた後、私達はアリスの私室に戻ってきた。


「ふぁー、疲れた」


 そう言いながらアリスがベッドにダイブする。


「はぁ、アリスさま。はしたないですよ」


 モニカがため息をつきながら注意するが、アリスは遠い目をしながら呟く。


「いや、今日はいろいろ情報量が多すぎて疲れたんだよ」


「はは、だよね。私もちょっと疲れたよ」


 私もアリスに同意する。


 フィオナの爆弾発言や剣のことなど、いろいろあり過ぎた。

 まぁ、でも剣の事はとりあえず片付いたので少しホッとしている。

 フィオナに預けていれば大丈夫だろ。


「そうですか。ではこの後はお部屋でゆっくりなさいますか?」


「ああ、そうだな……いや。お風呂に行こう」


 ……え? 今なんと? お風呂? お風呂あるの?


 キタァアアアアアアアアーー!


 ついに、ついにこの時がやってきた。

 念願の美少女との――イチャイチャお風呂タイムだ!

 この瞬間をどれだけ待ちわびただろうか。


「お前何やってんだ?」


 あっ、嬉しさのあまり思わずガッツポーズしてたらアリスに白い目で見られてしまった。


 うん、落ち着け私。今は女の子なんだから自然に一緒に入ればいいんだ。


「あぁ、いや。しばらくお風呂に入ってなかったから、嬉しくてね」


「え? そうなのか?」


 アリスが若干引いていた。いや、だってずっと森の中だったし。


 川とかもあったけど、冷たい水で水浴びとかするのってちょっとハードル高くない? 体拭くタオルとかもないし。だから顔くらいしか洗ってなかったんだけど。

 

 でもそんなに汚くないよ? ……たぶん。


「じゃあモニカ。クレアにも後で案内してやってくれ」


「はい、かしこまりました」


 ん? ……今なんて?


 ……後でって言った? どういう意味?

 そしてその後、三人で浴場に向かったのだが。


 はい。結論から申しますと。一緒には入れませんでした……。

 中に入るのはアリスとモニカだけ。護衛は入り口で待機だそうです。

 私は後で使用人用のお風呂を使わせてもらえるらしいのだが。


 ……その時、私は初めて絶望というものを知りました。


「くそがあああああああぁー!!」 


 思わず叫んでしまった。


「はぁはぁ、いや落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」


 そうだよ当面はずっと一緒にいられるんだ、チャンスはきっとあるはず。

 私はあきらめない。いつか必ず一緒にお風呂に入ってやるんだぁー!


 こうして私は、いつか必ずアリスとのイチャイチャお風呂タイムを実現してみせると心に誓ったのであった。



 —---------------- 浴場



 脱衣場でモニカに服を脱がせてもらい、私は先に浴場に入る。

 暖かい空気とともに、白い湯気が視界を包み込んだ。

 実は私はお風呂が大好きだ。あったかいし、幸せな気分になれる。


「よし、まずはお湯につかろうかな」


 足先からゆっくりと湯船に入る。肩までつかると、じんわりと体が温まり思わず息が漏れる。


「ふぁ~、やっぱりお風呂は最高だなぁ」


 アリスはふと周囲を見渡した。 


 ここは皇族専用の浴場なのでかなり豪華な作りになっている。


 白い大理石の床は湯気で霞み、金細工のような滑り止めがきらりと光る。

 壁際には淡い光を放つ魔導灯が並び、湯気の中でぼんやりと幻想的に揺れていた。

 そして中央には大きな浴槽。

 軽く泳げそうなくらい広いので、1人で入るのは少しもったいない。


「失礼いたします」


 ほどなくしてモニカも静かに浴場に入ってきた。


「アリスさま、それではお体を洗わせていただきますのでこちらへ」


「あぁ、今行く」


 ザバッと音を立てて立ち上がり洗い場の椅子に座る。普通はメイドと一緒に入ったりはしないんだけど、私はモニカにも一緒に入るように命じている。なのでモニカも今は全裸だ。


 だからモニカに体を洗って貰っていると、どうしても気になってしまうことがある。モニカが動くたびに、胸がぷるんと揺れるのだ。……しかしこいつ、ほんとに胸でかいな。なに食ったらこんな風になるんだ?


 チラッと自分の胸を見る。


 私もそれほど小さいわけではないのだが、こんなに揺れたことはない。年も2つしか違わないのにこの差はなんだろ? そんなことを考えていたらモニカが話しかけてきた。


「どうかなさいましたか?」


「いや、モニカ胸でかいなぁーっと思ってな、私はそんなに大きくないから」


 モニカはきょとんとした顔をしながら自分の胸を見る。そして両手で胸を持ち上げるようにして真顔でこちらを見る。


「揉まれますか?」


「いや、揉まねーよ! 何言ってんだお前」


「そうですか、では揉みたくなったらいつでもお申し付けください」


「申し付けねーよ。ってかお前はそれでいいのかよ」


「わたくしはアリスさまのものですから」


「いや、重いわ!」


 たまに思うけど、こいつそっちの気があるんじゃないのか?

 今度からはクレアと入った方がいいかな?

 いや、それだとモニカをのけ者にしてるみたいだしだめか。


「終わりましたよ、アリスさま」


 いろいろと考えていたら髪も体も洗い終わっていた。


「あぁ、ありがと。じゃあ私はお湯に浸かってるから」


「はい、ではわたくしも自分の体を洗いますので」


 その言葉を聞いてふと、ちょっとした悪戯心が芽生えた。

 そうだ、ちょっとからかってやろう。


「なぁ、たまには私が洗ってやろうか?」


 ニヤニヤしながら言ってみる。

 そ、そんな、滅相もございません!

 とかいって慌てるんだろうなぁ、と思っていたら。


 モニカは私の方をじっと見てふたたび自分の胸を持ち上げる。


「やはり揉みたかったのでしょうか?」


「ちがうわぁーーーーー!!!」


 予想の斜め上の返事が返ってきて思わずこっちが慌ててしまった。


「お前ちょっとは恥ずかしいとか思わないのか!?」


「思いません!」


「思えよ!」


 モニカは両手を広げて目をとじる。


「アリスさまでしたら、わたくしはいつでもウェルカムですので」


「ウェルカムってなんだよ、怖いわ!」


 こいつ私をからかって楽しんでるんじゃないのか?


「もういい、私はお湯に浸かってるから。お前は自分で洗え!」


「ふふっ、そうですか」


 あれ? こいつ今笑った?


「……お前、やっぱり私をからかってたな」


「いえいえ、そんなことはありませんよ。さっ、湯冷めしないようにしっかり温まってください」


 まったく、と呟きながら私はもう一度ゆっくりと足先からお湯に入る。


「ふぅ、あったかい。やっぱりお風呂はいいなぁ」


 ふと、白い湯気の向こうに。体を洗ってるモニカの姿が目に入った。

 私は静かに目をとじる。


「……まっ、いいか」

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