■第18話 フィオナとティア
アリスから使徒さまの話を聞いた後、お城の中を少し案内して貰うことになった。目立っちゃダメなんだけど、まったく人前に出ないってのも不自然なので顔見せもかねてということだ。
まずは最初に騎士団のところへ向かう。なぜそうなったかと言うと。森の中で私がアリスと出会った時に、数人の騎士を助けたので騎士団の人がお礼を言いたいらしい。
ちなみに私はその時、アリスに見込まれて護衛になった――という話になっているそうだ。
「さっ、クレアここが騎士団の駐屯地ですわ」
そこには甲冑に身を包んだ騎士たちが大勢いた。魔獣討伐に出かける準備をしてるらしく皆忙しそうに慌ただしく動いている。
「おや?姫さまではありませんか。」
声の方へ眼をやると、そこにいたのは筋肉ムキムキの大男だった。
「こんにちは騎士団長、準備の方はいかがでしょうか?」
おお!この人が騎士団長なんだ。確かに強そうだ!
「はい、万事抜かりなく。ところでそちらの方はもしや?」
「ええ、先ほどお話しした私が護衛として雇った者ですわ。クレア!」
アリスが目で挨拶しろと言ってる気がしたが、どうしよ。私この世界の礼儀作法とか知らないんだけど?
「あっ、クレアと申します」
とりあえず名前を言って頭を下げておいた。
すると騎士団長は意外なことにニコッと笑って挨拶を返してくれた。
「お初にお目にかかる。私は第一騎士団騎士団長のセルジュ!先日は我が国の騎士を救ってくれたこと。心より感謝致しますぞ!」
あれ?こんなに気兼ねなく挨拶してくれるの?奴隷って知ってるはずなのに全く気にする様子がない?もしかしてこの世界の奴隷って私が思ってるより軽い感じなのかな?
「ところでクレア殿、姫さまに見込まれるとは相当お強いのですかな?」
えっ?いやこれどう答えればいいんだろ?
私が困ってるとアリスが代わりに答えてくれた。
「そっ、そうですわね。私よりも少し強いでしょうか?」
「なんと姫さまより!それは凄い。クレア殿、この私と一度お手合わせ頂けないでしょうか?」
「えっ?」
いや、手合わせって。無理でしょ、手加減できる自信がない。
「むっ!なんとも見事な剣をお持ちですなぁ」
セルジュが私が腰に下げてる剣に目を向ける。
さすがに目ざといな。でもこの剣を使うわけにはいかないんだよ。
以前森の中で、でっかい熊みたいな魔獣を相手に試したんだけど。一振りで真っ二つになっちゃったんだよね。こんなの人に向けて絶対振るうわけにはいかない。
「あっ、あの彼女は私の許可なく剣は振れませんので、お手合わせはまた次の機会のいたしませんか?それに今はお忙しいのでは?」
「おっと、そうでしたな。今は魔獣討伐の準備中でした」
「ええ、魔獣討伐よろしくお願いいたしますわ」
「お任せください!では私は準備がありますので、これにて!」
セルジュは私達に一礼して駆け足で去っていった。
「ふぅー、私。礼儀作法とか知らないからあせっちゃったよ」
「あら、そうでしたわね。でも騎士団の方々はそう言う細かいことは気にしませんから」
「なるほど、まぁたしかに豪快な人だったね」
「ええ、それから礼儀もですが。外では周りに誰もいなくても、言葉遣いにも気を付けなければいけませんわよ。誰が聞き耳を立ててるか分かりませんから」
アリスはそう言いながらチラッとモニカの方を見た気がした。
ん?気のせいかな?まぁいいか。
「あっ、そうでした気を付けます。」
「さて、では次はどこを案内しましょうか」
アリスのその言葉を聞いて私は一箇所、行ってみたい場所を思いついた。
「では、ちょっとフィオナさまのとこに行きたいんですが」
「えっ、どうしてでしょうか?」
「ちょっとコレの事を聞いてみたいんで」
私は腰に下げてる剣に目を向ける。
「その剣、たしかに少し気になってはいたのですが。特別なものなのですか?」
「ええ、その。まぁ」
「あっ!」
私の様子を見てアリスは察してくれたらしい。
「わかりました、では行ってみましょう」
アリス達に連れられて歩いていると、見覚えのある少女を見つけた。
あれはたしかフィオナのところにいたメイドさんかな?
「姫さま。こんにちは、お出かけでしょうか?」
メイドさんは私達に挨拶しながらチラッと私の方を見た。
「こんにちは、ティアさん。昨日お会いしたとは思いますが、こちらはクレア。私の護衛ですわ」
「そうなんですね。私はフィオナさま付きのメイドのティアです、よろしくお願いします」
そう言いながらにっこり笑って丁寧に一礼してくれた。
「ちょうど良かったですわ。今からフィオナさまにお会いできますかしら」
「今からですか?たぶんお部屋におられると思います。私も今から行くところですのでご案内しますね」
「ええ、ではお願いいたしますわ」
ティアに案内され城の地下へと降り。フィオナの部屋に着くとティアがノックをして部屋に入る。
「フィオナさま。アリスレートさまがお見えになられてます」
「おお、そうかえ。お入りいただきなさい」
許可が出たので私たちも部屋に入る。
「こんにちはフィオナさま。突然押しかけてしまって申し訳ございません。実はクレアが少し話したい事があるようで」
「おやそうですか、まぁまずはお座りください」
促され私たちは席に着く。ティアはお茶の用意をするため、再び部屋から出て行った。
「それでお話とはなんですかな?」
「あの、実はこの剣なのですが」
私は腰の剣を鞘ごと外してテーブルの上に置く。
「フィオナさまは昔のクレアの仲間だったんですよね?この剣の事、何か知りませんか?」
フィオナはテーブルに置かれた剣に目を向ける。
「うん?これはクレアが使っておった神剣じゃのう。はるか昔に女神さまから賜ったとされる剣じゃよ」
女神さまって、やっぱりそんなヤバいものだったのか。
しかし効果とかはどうなんだろ?
「鑑定しても良くわからないんですが、どういう剣なんでしょうか?」
「魔を切り裂く剣ということ以外はワシも良く知らんのじゃ。クレアがその剣を使ったのは魔神との戦いの時だけじゃったからのぅ。ただ物理攻撃がほとんどきかんはずの魔神の体を切り裂いておったのぅ」
魔神すら切り裂く剣ってすごすぎでしょ、こんなの普通の魔獣に使ったらオーバーキルもいいとこだ。
やっぱりこんなの手元に置いてたら絶対厄介ごとに巻き込まれるよね?
「あの、これ暫く預かってもらえないでしょうか?こんなの持ってたら、また使徒さま扱いになっちゃいそうですし」
「ふむ、その剣をワシに預けると?良いのかえ、この剣は恐らくおぬしのことすら殺せる剣じゃぞ?」
「えっ?」
「外見は人と同じじゃが、吸血鬼もまた魔の者であるからのぅ」
あぁ、そうだったー!
……ん?でもそれってその剣以外じゃ私は殺せないの?そんなわけないよね?
まぁ強力な剣なんだろうけど。
私を殺せる剣なんていくらでもあるんじゃないの?
それに、この剣を預ければフィオナもちゃんと私のこと信用してくれるかも知れないし。
「私のことを信用してもらうためにも、この剣をあなたにお預けします」
フィオナは暫くジッと私の顔を見つめて……そっと目をとじた。
「わかりましたわい、ではこのワシお預かりしましょう」
そう言い、フィオナは剣を持って部屋の奥へ行った。
話が一段落したところで部屋の扉をノックする音が聞こえた。
ティアがお茶を持って戻ってきたのだ。
「フィオナさま、入室してよろしいでしょうか?」
「ティアかい、ちょうど話が終わったところじゃ。入っておいで」
ティアが部屋に入り私たちの前にお茶を置いてくれる。
ただアリスの前にだけはモニカがお茶を置いていた。
モニカはアリスのお世話を誰かに譲るのは嫌なのかな?
「お茶菓子にはクッキーをお持ちしました。」
おお、クッキー!甘いものは久しぶり。というかこの世界にきて初めてだ。
1枚手に取りサクッとかじってみると。
「うーん、甘くておいしい!」
「そうですわね、甘すぎずとても上品な味ですわ」
アリスも上品に絶賛していた。
「ほれ、ティアお前もお食べ」
3人でクッキーを食べていたらフィオナがクッキーのお皿をティアの前に差し出した。
「えっ?でも」
ティアはチラッと私たちの方を見る。
「お気になさらず、どうぞ召し上がってくださいまし。おいしいですわよ」
アリスが笑顔でそういうと、ティアは嬉しそうにクッキーを1枚手に取り口に運んだ。
「んっ、おいしい!」
「ふぉっふぉっふぉ、そうかえ。そうかえ」
フィオナが笑顔でウンウンとうなずいている。
なんかこの2人、おばちゃんと孫みたいだな。そんな風に思ったのでつい気軽に聞いてしまった。
「フィオナさまって、ティアさんとほんとに仲いいんですね。実はお孫さんだったりします?」
私のその言葉を聞いて、フィオナはカッと目を見開く。
「何をゆうておるか!」
「えっ?私、何か気に触る事でも……」
「ワシは生娘じゃ!」
「そんな衝撃のカミングアウトしなくていいですよぉー!!!」
次の更新は木曜か金曜になると思います。




