■第14話 奴隷=友達
「ではクレアを私の護衛にするために連れてきた、奴隷と言うことにするのはどうでしょうか?」
「え?護衛ですか?」
「はい、皇族の護衛であれば絶対に逆らわないようにそのような首輪を付けられていたとしても、それほどおかしくはないと思いますわ……たぶん」
なるほど悪くない提案だ……今、たぶんって言った?
チラッとフィオナの方を見ると
――スッと目をそらされた……ほんとに大丈夫なの?
「まっ、まぁ貴族が奴隷を使用人などにするのはそれほど珍しいことではありませんからのぅ。そのような首輪を嵌められるのは犯罪奴隷くらいじゃが……姫さまがおっしゃったように皇族の奴隷であるならば誤魔化しようはありますなぁ」
なるほど、この世界の奴隷がどう言う立場なのかはよくわからないけど。
アリスの護衛の奴隷になればお城に住めるってことだな。あったかいベットで眠れるだろうし、もうご飯の心配もしなくていい。それになにより、この美少女の傍にずっと居られるってのはかなり魅力的ではないか。
「あの、本当にいいんですか?」
「はい、クレアさえ良ければ是非お願いいたしますわ」
さっきまでは青い顔をしていたが、ようやくいつものアリスに戻ったようだ。
「それではクレアどののことは、姫さまにおまかせ致しますじゃ。ワシは首輪を外す方法をもう少し調べておきますので」
あっ!首輪といえばさっき言ってた人……なんだっけ?ルーナだったかな?
「あの、さっき言ってたルーナさんってどんな人なんでしょうか?」
フィオナが少し難しそうな顔をした。
「聖女ルーナさまですじゃ……しかし……」
おお!聖女さまとかもいるんだ!……あれ?……いやっ、聖女ってことはもしかして……
「あの……その方はどちらに……」
嫌な予感がしたが恐る恐る聞いてみる。
「ラフォーレ聖公国の聖女ルーナ・メーティスさまですわ」
アリスが答えてくれたがやっぱりそこかぁー!
「しかし今あの国にクレアを連れて行くわけにはいきませんので……」
ですよねー、下手したら討伐されちゃいますよねー。
「まっ、まぁ首輪ついてても私生活に支障はないと思うので。しばらくはアリスさまの奴隷でもいいですよ」
うん、美少女の奴隷か……それも悪くないよね!お風呂とかも一緒に入れたりするかもしれないし……えへへ。
「申し訳ないがしばらく待っていて下され」
そう言いながらフィオナが頭を下げる。
「さて、それではこの話はここまでにして。そろそろクレアを私の部屋に案内いたしますわ」
アリスはそう言って立ち上がる。
「ではフィオナさま、クレアの事は私にお任せくださいませ」
「ふむ、まぁそれがいいでしょうな……クレアどの、姫さまをよろしくお願いしますじゃ」
「あっ、はい」
立ち上がりフィオナに軽く会釈していたらモニカが部屋の扉を開けてくれた。
「ではクレア、ご案内しますわ」
…
……
………
そんな感じでフィオナの部屋を後にして、アリスの自室やってきた。
おおっ、これがお姫さまの部屋かぁ……豪華な家具に天蓋付きのベッド。なんかフローラルないい匂いもする。
「あの、クレア……こちらに」
私がキョロキョロと部屋の中を見回していると、アリスが座るように進めてくれる。
今この部屋には私とアリスの二人だけだ、モニカはお茶の用意をしてくると言って部屋についてすぐ退室してしまった。
「あの、もう普通に喋っていいですよ?」
「え?そう……というかあの、ほんとにクレアは使徒さまじゃないの?」
また使徒さまか、なんなのそれ?私はただの転生者ですよ?
「違います、私はただの一般人です……人じゃなくて吸血鬼だけど。なので私は暫くこのままアリスさまの奴隷でいいですよ」
「そっそう?使徒さまに隷従の首輪嵌めちゃったかと思ったんだけど……ほんとに神罰とかない?国滅ぼされりしない?」
「いやいや、神罰なんてないですから!私はこの世界で楽しく暮らしたいだけですので」
「ほんとに?私が無礼な態度とったら、あっ!ムカついたからやっぱこの国滅ぼすわー!とか言わない?」
「言いませんし、滅ぼしませんよ。どんだけ疑り深いんですか!」
いろいろと話しているとどうやら大昔に使徒と呼ばれる人がいたらしく、その人は私と同じように異世界から来たらしい。
たぶんその人も私と同じ転生者、もしくは転移者なんだろう。その使徒さまは数々の偉業をなしてラフォーレ聖公国という国まで作ったらしい。
その後もなんやかんやと話して、とりあえずはアリスに納得してもらうことが出来た。
少し落ち着いたところで、ふと部屋の中を見回すと化粧台があることに気が付いた……そこには鏡もある!
そういえばまだ自分の姿を確認してなかったな。
「あの、アリスさまちょっと鏡見てもいいですか?実は私まだ自分の姿見たことないんで。」
「え?そうなの、別にいいけど……」
アリスの返事を聞いて立ち上がり鏡の前に立ってみる……
――セミロングの黒い髪。真紅の瞳に整った顔立ちの少女が映し出された。
……これが、私?
なんかちょっと日本人っぽい顔だなぁ、でもけっこう可愛いかも?見た目は18歳くらいかな?
「自分の顔も見たことなかったって、今までいったいどんな生活してたんだ?」
鏡の前でいろんな角度から自分を見ていたら、あきれたようにアリスが話しかけてきた。
「ええと、この世界に来てからずっと森の中にいたので……食べる物とかもなくて、木の実とか食べて過ごしてました」
「まじかよ、木の実って……」
「お金なんかも持ってなかったんで、街にも行けなくて。なのでここでアリスさまに雇って貰えるのは本当にありがたいと思ってます」
「アリスでいい。公の場ではダメだけど、今みたいなプライベートな時には“さま”はいらないし、そんな丁寧な言葉もいらない」
「いいんですか?」
「あぁ、いいぞ、ってかモニカにも同じこと言ってるんだけど。あいつは私は従者ですからーとか言って聞かないんだよ」
……そうか、この子は普通にタメ口で話せるような友達が欲しいのか。
考えてみたらアリスは帝国の皇女さまだった、普通に気の置けない友達なんか出来ないんだろう。
しかもアリスは悪意感知という人の悪意を見抜くスキルを持ってる。
皇女であるアリスに悪意を持って近づく者もきっと多いだろうし。
だからまったく悪意のないモニカを自分の専属にして傍においてるんだろうな。
「わかった、これからよろしくね。アリス」
そう言って私は右手を差し出す。
「ん?あぁ、よろしく」
アリスは少し照れながら私の手を握り、私たちはガッチリと握手を交わした。
私の立場は奴隷だけど、友達になれないわけじゃない。この子とならきっと仲良くやっていけると思う。
まだ完全には信用して貰えてないかも知れないけど、それはゆっくり時間をかけて分かって貰えればいいかな。
と、まぁこんな感じで。
『私、異世界でお姫さまの奴隷になりました。』




