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■第115話 遠距離通話

 その後。ようやく興奮状態から復帰したノエルと、魔力制御で疲れ切っていたアリスたちも回復した。


 私は気になっていたことを尋ねる。


「これって、本当にかなり遠く離れていても話せるんでしょうか?」


「ああ。魔力の流れが届く場所なら、距離の制限はないはずだよ」


 なるほど、この世界に魔力はどこにでもある。

 つまりどこにいても通話が出来るってことか。

 めちゃくちゃ便利だな。


「さらに、子機は大気中の魔力を吸い取り半永久的に使える」


「えっ、充電いらないんですか?」


「充電?」


「あっ、いえ。なんでもないです」


 充電とか言っても、こっちの人には通じないよね。


「ただし親機は別だ。定期的にクレア殿の魔力を補充する必要がある」


「なるほど。じゃあ親機は私が持った方がいいですね」


「ああ、その方が助かる」


 ちなみに今のところ子機同士の通話はできないらしい。

 その辺りもノエルは将来的には改良したいと言っていた。


 うん。

 この人、いずれ異世界の通信革命を起こしそうだな。


「それではこの魔道具の名前を決めようか」


「えっ、名前ですか?」


「うん、なにかいい名称はないかな?」


「私が名付けていいんですか?」


「そうだね、君のおかげで完成したようなもんだし。ぜひ君にお願いしたい」


「……わかりました」


 名前か……私ネーミングセンスないんだよね。

 えーと、通信用の魔道具だよね?

 魔力で離れた場所と繋がるようなイメージかな。


「では、『マギフォン』なんてどうでしょうか?」


 まぁ、単純に魔法と、テレフォンを組み合わせただけだけど。


「マギフォン?」


「はい。簡単に言うと魔力で遠くに声を伝えるって意味ですかね」


「なるほど……マギフォンか。いい名前だね」


 名前も決まったところで、実際に遠距離でも通話できるか試してみることになった。


「たしか帝国騎士が帰還の魔石を持ってるんだよね?」


「そうですわね。まずはそれを使って帝国に送って、向こうから通話してもらいましょうか」


 そうして、私たちは騎士に手紙とマギフォンを持たせ、帰還してもらうことになった。騎士が帰還してしばらく待っていると。


 再び、ピピッ、ピピッっと音が鳴った。


「おおー、きたぁ!」


 ちょっとドキドキしながら画面に表示されたボタンを押す。


 ――ピッ。


「えっと、もしもし?」


 いや、この世界じゃもしもしは通じないか?

 そんなことを考えていたら。


『えっと、これで聞こえているのでしょうか?』


 マギフォンから少年の声が聞こえた。


「あっ、もしかしてシオン殿下ですか?」


『その声はクレアさん?』


「はい、クレアです。おお、すごい。ほんとに帝国と繋がってるんだ!」


 私は思わず立ち上がる。

 すると、アリスがマギフォンに話しかけた。


「シオン、なぜあなたが? 陛下や宰相はいないのですか?」


『あっ、姉上ですか? 陛下たちは会議中なので、僕が先に試させてもらいました』


 なるほど。

 完全に新しいおもちゃを見つけた子供である。

 その後、シオンから帝国でも邪教徒の調査を本格的に行っていることを聞いた。


「わかりました、では何かわかればこのマギフォンを使って連絡してください」


『はい、しかしこれは本当にすごい魔道具ですね。また使わせてもらいますね。ではまた』


 ――ピッ。


 通話が終わると、一瞬だけ部屋が静まり返った。

 誰もが今起きたことを理解しようとしているようだった。


「すごいね、まるで目の前にシオン殿下がいるみたいだった」


「そうですわね、早速他の国にも配布しましょう」


「うん、そうだね」


 そして、魔王国から護衛として同行していた騎士たちには、アルテシアへの手紙とマギフォンを持たせて帰還してもらうことになった。


「これで帝国と魔王国は大丈夫ですわね」


「ルグレシアと聖公国には私たちから親書を送りましょう」

 

 帝国騎士にアリスとルーナが書いた親書と共に届けてもらうことになった。

 そして最後に一つはノエルに持っていてもらう。

 各国に届くまで数日はかかるだろう。

 けれど、これでもう離れた国ともすぐに連絡が取れる。


 マギフォンは、きっと世界を変える魔道具になる。

 もっとも、膨大な魔力が必要な以上、当面は各国の要人しか使えないだろう。

 それでも、その価値は計り知れない。


「それで、どうする? 数日ルミナスで待機する?」


 私が問いかけると、アリスは少し考え込んだ。

 今一番優先しなきゃいけないのは玄黄の捜索だろう。

 だが手掛かりはまだない。

 けれど、諸国訪問も予定通り行わなければならない。


「アリスさま」


 モニカが突然口を開いた。


「どうしましたの?」


「はい、予定では明日ルミナスを出発してシルフィードへ向かうことになっております」


「……そうですわよね」


 シルフィード、確かエルフの国だよね?

 正直めっちゃくちゃ行ってみたい。

 私は地図を取り出してテーブルの上に広げた。

 ふむ、ここから少し南に行くとシルフィードなのか。


 ん?

 ふと気になる場所を見つけた。


「ねぇ、ここには行かないの?」


 私は地図を指さす。

 ルミナスから少し北東に進んだところにも一つ国があった。


「今回は獣人国には行きませんわよ」


「えっ、なんで?」


 獣人国。

 つまり――ケモミミパラダイス!

 かなり行ってみたいんだけど。


「そこは交易連合の加盟国ではありませんから」


 詳しく聞いてみると、今回訪問するのは交易連合の加盟国だけで。残念ながらその他の国には行かないそうだ。そもそも加盟国以外の国へ続く街道は整備されておらず、訪問自体が大変らしい。


「なるほど、じゃあ諦めるしかないのか」


 私が肩を落としていると。


「獣人ならこの国にも大勢住んでるよ?」


 ノエルが呟いた。


「えっ? そうなんですか?」


「ああ、街に行けば会えるんじゃないかな」


「街……」


 街に行けば会えるのか……ケモミミに!


「うん、せっかくだしルミナスの街を案内しようか?」


 その言葉を聞いて私はアリスの方を見る。


「ええ、いいですわね。クレアも行きたそうにしていますし。お願いしますわ」


 こうして、その日の午後。

 私たちはルミナスの街へ出かけることになった。

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