灯台もと暮らし②
「えっと、今のままだと自爆するから、式者として式を扱えるようにならないといけないってことですか」
「そゆこと。理解が早くて助かるネ」
ネイルの見せ合いを一通り終え(足の指までやった)、今後の第一目標を説明されたプラネ。
「私が教えてあげる〜ッ!!」
「織雛は教えるの下手でしょ」
「錦に言われたくないわよ。アンタ言ってる意味わかんな過ぎて、『人の言葉を扱える識』とか皆から言われてんの知ってるでしょ」
「それは、皆が教養と遊び心がないからでしょうが。そんなんだから我を張れねぇんだよ」
「ま、どっちでもいいけど。アンタにも無理なんでしょ?誰がプラネちゃんに教えるの?」
「そりゃ、芥でしょうね。問題児教育は」
「チッ、木漏ぇ?アイツのところに、プラネちゃん連れてくのぉ?」
部屋の空気が凍てつくように思えるほどの舌打ちだった。ギャルの外観でやっていいレベルでは無い。
「適任でしょ?」
「えぇ〜、あの女誑しにぃ?」
木漏のことを聞いた瞬間に落胆する織雛。髪のツヤも心做しか落ちている。
「プラネちゃん、気を付けてね!木漏のとこに行くなら!」
「は、はい?」
プラネの両手を掴んで織雛が忠告した。とても心配そうだ。
「たまに様子を見に行くから...いや!できればコッチに来て欲しいけど!」
「織雛ちゃんに逢いたいから、また来るよ!」
「やったぁ!!予約入れちゃった〜!!じゃあ私、今度会った時に行く今時な店、探してくるからッ!あ、御環!今度またやるわよ!」
「えぇ、アレ疲れんるですけど...」
「アンタ!可愛いんだから、そんな辛気臭いイヤな服ばっかり着てないで、可愛い服着ないと!じゃあね!」
そう言って嵐のように走り去っていった。髪の色ツヤは元に戻っている。
「ま、邪魔が入ったけど、寄り道が大事だからね。では、本題に移ろうか。まず何か質問ある?」
「そもそも、式者ってなんですか?」
「イイね。一つずつ質問してくれて助かるよ。式者ってのは、めちゃくちゃ簡単に言えば、"自分の身体の外にまで強く影響を与え、物理法則まで曲げる人間"のことだよ。要は、精神力で質量とか現象を変えられるって訳。ま、この言い方は間違ってるけど」
「ナルホド?」
「どちらかと言うと、質量というより、"質料"と言った方が正しいけどね。式者ってのは、式を使って"形相"を書き換え、"質料"を変化させる能力を持つ"人間"ってことだね。難しく言うとね」
「そうやって哲学用語入れてくるから、皆さんに嫌われるんですよ...」
呆れ顔で、御環が割り込んできた。
「えぇ〜こっちの方が的を射てるのにぃ?」
「影遊戯も、元ネタ知ってる人いませんよ、普通」
「物心ついて2年目のくせによく言うぅ。万物流転ぐらい、一般教養だろぉどうなってんだ世の中はぁ〜」
はぁあ、と深いため息をつき、手を天井に向け、赤い紐であやとりで遊び始める錦。
「あの、早く話進めてください」
「あぁ、まぁ、うん。ま、当面の目標はプラネちゃんの式、脳殺光線を使いこなせるようになる練習だねぇ〜」
「脳殺光線!?」
「なんですか、その名前。てか、式の方の固定からじゃないんですか?」
「プラネちゃんを見習って、質問は一つずつしろよぉ。いいだろ?脳殺光線?なかなか的を射てる。固定の方は根源的過ぎて、教えてどうにかなるもんじゃないよ。式ってのはそういうもんさ、式なら教えられるけどネ。ま、御環は逆だったから仕方ないか」
「その、式と式の違いってなんですか?」
「"式"がその人の人格とか性質とか全部を言ったもので、"式"が一部だよ〜。『サッカーができるのであって、サッカーでは無い』みたいな」
「分かるような、解らないような?」
「ま、やってれば判るさ!ということで!芥のところに行ってらっしゃい!」
あやとりで"ほうき"を作って、部屋の出口を指さす錦。
「...面倒になって説明するの投げましたね」
「クルッポぉ〜」




