↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

燻る火の子⑤

左腕の肘から先を持っていかれた直鉢《ジガバチ》は、右手で赤糸《セキシ》を手繰っていた。



「ッ!?」



その赤糸《セキシ》から、まるで自我を解《ホグ》されるような、ザラっとした感覚を覚えた瞬間、



ブチッ!!



赤糸《セキシ》をちぎった。



「針《シン》さん!?今度は何ですか!?」


「釣りが失敗した...ただ、識《カラクリ》は見えてきたぞ」



直鉢《ジガバチ》はちぎれた赤糸《セキシ》を飛龍《ヒリュウ》に見せる。その赤糸《セキシ》は、失った左腕から伸びていた。



「蠢蕾《アイツ》、識《シキ》を織り込んで境《サカイ》で殻を作って卵?にしてやがるな、多分」


「だ、だから、複数体いるんですか?」


「いや、卵から産まれる方は識紙《シキガミ》だろう。識《ゴースト》じゃなくて、識紙《シキガミ》だアレは。今、冷静になれば解像度が違う」


「識紙《シキガミ》って、識《ゴースト》の使う式紙《シキガミ》ですよね?使う識《ゴースト》は初めて見ました...」


「まぁ、沢山居たら困るからな。切れた左手からの感覚的に、卵は孵化したら周囲の質量や潮力を糧に成長するみたいだ。貪られる感覚がした」


「それじゃあ、肉体に撃たれたら...」


「まぁ、通常の侵食みたいには行かないだろうな。腕を切る判断が早くて助かった」


「自切だったんですか、アレ?」


「あ?本当に持っていかれたと思ってたのか?識《ゴースト》と戦うなら身につけとけ、損切りのタイミングは。まぁ、欲張って釣りをするつもりだったが、あまりに侵食の勢いが激しかったから、それも止めだ」



直鉢《ジガバチ》がため息混じりに深呼吸をする。



「最初に飛龍《ヒリュウ》に突撃したのが、本体の蠢蕾《シュンライ》。即座にコンクリートに潜って姿を隠し、俺たちの前に識紙《シキガミ》を配置。そこに意識を持っていかせる。そして、俺が薄くなったところをコンクリートに隠れていた本体が卵を射出、って感じだな。状況からの推察だが」


「これまで、何度討伐しても現れているのも識紙《シキガミ》だったってことですかね?」


「いや、それはない。ある程度の赤師《セキシ》なら識《ゴースト》か識紙《シキガミ》か判断がつく。起点を崩した時の手応えも違うしな」


「そうなんですか?」


「...あー、お前はいつも様子見とかしないで、雑に吹き飛ばしてるから手応えとか分からないのか」


「え?あぁ、そういうことですか?」



直鉢《ジガバチ》が再びため息をつく。



「蠢蕾《シュンライ》の侵食より飛龍《オマエ》の調子のせいで、式《シキ》がブレそうだよ」


「アハハ、すみません...えっと、まだ仕掛け(タネ)がある、それだけの事ができる識《ゴースト》だから気を抜くなってことですよね?」


「そうだな。先に音をあげるなよ、飛龍《ヒリュウ》?しっかり気張れ。緩めたら、そこから狙われる」


(正直、もう引きたいところだが、簡単に帰してくれそうもないしな。蠢蕾《アイツ》も消耗した分は、喰いたいだろうし)



直鉢《ジガバチ》は、飛龍《ヒリュウ》と会話している最中も暗渠の床に手をつけて音を聞いていた。まだ、本体含め複数は居そうだ。



「飛龍《ヒリュウ》、ここから先は完全にお前頼りになる。登竜門を突破していない俺は、正直これ以上血液を消費するのはマズい。限界は2発、無理して3発撃てば失血だ。片腕で撃てるかは、やったことないから分からんがな?」


「はいッ」



冗談交じりに状況を整理する直鉢《ジガバチ》に、本気で応える飛龍《ヒリュウ》。



「まだ識紙《シキガミ》も複数いるだろう。識紙《シキガミ》の相手は任せた。最後の一撃はどうにか、俺がやる。要は、あとはお前次第で俺の今後が決まるってことだ。頼んだぞ」


「僕はまだ余裕あります。大丈夫です」



飛龍《ヒリュウ》はサムズアップする。



「ハハ。もう、お前一人で全部やって欲しいぐらいだよ」



そのサムズアップと共に再び出力を上げる飛龍《ヒリュウ》を前にして、直鉢《ジガバチ》は冗談4割、本音6割で軽口を叩いた。



(飛龍《コイツ》、自分じゃなくて他人の命ってプレッシャーかかると式《カルマ》が鋭くなるのどうなってんだ。錦に『気色が悪い』と言われるのも無理ないな...)



「さて、コッチにお喋りしてる時間をくれるってことは、そろそろ蠢蕾《ムコウ》さんも準備が整った頃かな?」




***




広いのが狭くなっている間に、

配置は終えた。


逆に狭いのが広く、違う。鋭くなっている。

ただ、根元は柔いまま。


それにしても、乾く。凄く、乾く。

やけに乾く。焼けるように渇く。


乾くカワく渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く、


抗い難いこの識《ショウドウ》ハ、、、



『はラが、へっタ...』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。