燻る火の子⑥
飛龍と直鉢を囲むように配置を済ませた蠢蕾の識は、突撃姿勢に入る。
腕が2本、脚が2本、という飛龍の認識は誤りである。正確には、腕が2本、脚が4本の6肢である。
2本の腕と2本の脚は前面に配置しており、残りの2本の脚は地面に触れている。2本の脚はマントのように張り付いた羽に隠れるよう背面側に仕込まれている。その脚は巨大であり、伸ばせば体高の2倍以上になる。
そのような脚から生み出される脚力は、
グォォンッ!!
「うぉ!」
飛龍をよろめかせ、その後コンクリートを穿つほどである。
グォオンッ!!
グオンッ!
グォォンッ!
「ッ!!」
四方八方どころか、暗渠という地形を使って上方からも突撃してくる。
「飛龍!軽い、まだ識紙だ!耐えろ!一瞬本体が見えたが、ありゃ2メーターはあるぞ!」
(一瞬だが、本体を見て解った...蠢蕾、解像度がおかしい。識紙だけでも並の識近くは有りやがるぞ...)
直鉢は相手を見誤ったことを再確認する。
すると、飛龍が余裕そうに、
「分かりました!軽くジャブぐらいは撃っていいですか!?」
「お前の潮力の渦が薄くならないならな!」
「識紙の数ぐらいは減らしたいですからね...薄くならないようにッ!」
...右ストレートを撃った。放つ方向に潮力が寄って薄まるのであれば、薄まる分出力を上げればいい。という解決法を取ってきた。
バゴォオオーーンッッ!!!
複数の識紙どころか、水路の水まで吹き飛ばし、暗渠が軋む。というより、亀裂が入った。
「...ほんとお前そういうところあるよな。後処理で文句言われるぞ。また」
「アハハ」
「ただ、前方にいた識紙は駆除できたな」
***
道が、穴が、
『アイた...』
亀裂を伝って蠢蕾が浸透する。
目標座標は、狭いのの頭上。
***
飛龍の頭上のコンクリートが砕ける。ちょうど、アスファルトの下から芽が出るように。
「飛龍!上ッ!!」
「はいッ!」
バゴォーーーンッ!!
コンクリートが崩れる。
その巨大な質量を持つ破片がふたりを襲うはずだった。
飛龍は、胸元で自分の両拳をぶつける。"龍"と"飛"の文字が横に並ぶ。
そこから"龍"を上、"飛"を下にするようにしながら拳を上方に突き出す。
ちょうど、
龍
飛
となるように。
そのふたつの文字は、ひとつの文字を織りなす。その読みは、
「Bow!!」
ふたつの拳が離れる瞬間、潮力は臨界に達し破裂した。
その爆発により、飛龍と直鉢を覆っていた暗渠の天井が完全に吹き飛んだ。




