燻る火の子③
飛龍が前衛、直鉢が後衛を務める陣形をとる。
「うわ、キツイですねこの臭い」
「暗渠は都市化と切っても切り離せねぇからな。おい、両手で鼻塞ぐな。せめて片手にしろ。何のためのヘッドライトだ」
「いやぁ〜、これだけ臭いがキツいと、式もブレますよぉ」
「オメェは、式使わねぇだろ」
「いやぁ?使う式もありますよぉ?」
「あのレベルを式者は式って言わねぇよ」
一応、転望が事前に連絡を入れて、暗渠の照明を点けてもらってはいる。ただ、それでも死角が多い。
飛龍はヘッドライトを付けているが、直鉢の方は付けていない。付けていなくとも視えるからだ。
「たく、本当になんでこの程度で式がブレるのにその出力かねぇ」
「針さんは臭くないんですか?」
「んなもん、嗅覚から重心をズラせばいいんだよ。鼻から入る情報を減らせ。情報を選択しろ」
(転望さんから、マスク貰っとくんだったなぁ...口腔から上がってくる臭いもキツい...いや、錦さんや氷内さんみたいにくれないな、転望さんは)
トホホ顔の飛龍であった。
***
捕食は、まだ終わっていない。マンホールの隙間から削ぐように引っ張り出したので、肉はグズグズ。しかし、骨に時間がかかる。骨は時間がかかる。骨、時間、かける。必要。
この臭いは、それなりに濃い。
触角を痙攣させ、舌を出す。
やはり、広いのと、狭いのが居る。今までのようにいくか?
この骨は食べておこう。それなりに消耗しそうだ。
ズズズリ、ズズズリ、ズズズリ、
骨は、中身が美味い。
ナカ、美味い。
全部美味い。
ヒト、ウマイ。
ニク、クウ。
クウ、ウゥ、ゥゥ、、、
乾いた、渇いた、、、
『ハらガ、へっタ...』
***
「血、だな。血の臭いがする」
「ふぇ?」
「だから、両手で鼻を押さえるな。てか、赤師なら血の臭いぐらいには敏感になれ」
直鉢は、しばらく前から耳を澄ませていた。しかし、音が反響してなかなか特定できない状態だった。
そんな状況で血の臭いがした。
「飛龍、お前のその出力抑えきれねぇのか?識がなんも視えんぞ」
「うーん、今が最低出力なので、上げることはできますけどね...」
「はぁ、いつも通りだな...出力上げろ!識より先に音を上げるなよ!」
「了解ッ!」
飛龍は更に出力を上げる。それは直鉢を覆い隠す上昇気流のようにも思える。
(これで、識の出方を視よう)
「あぁ!臭いがマシになりました!」
「チッ、そういう意味じゃねぇよ」
そう軽口を叩いた瞬間、
グォンッ!!
「うわっ!」
穿つような音と共に、飛龍がよろめいた。
「飛龍ッ!」
「だ、大丈夫です!押し相撲で少し動かされたぐらい!」
「まだまだ余裕そうだなッ!」
(とは言ったものの、あの出力の飛龍をよろめかせるってどうなってんだよ。何を飛ばしやがった?)
直鉢がおおよその着弾地点に目をやると、コンクリートが砕かれ穴が空き何も見えない。
「針さん!前方、11時方向ッ!」
飛龍が叫ぶ。
直ぐさま、直鉢が振り向く。
『ハラがへっタ...』
「こりゃまぁ、お行儀のいいことで」




