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OUT of REDs. 〜自我を撫でる現代怪異譚〜  作者: 痣矢
灯台もと暮らし。
20/27

灯台もと暮らし⑪

「え!あの時の識《ゴースト》、倒した訳じゃないんですか!?」


「そうですね。識《クネクネ》の起点は潰せてません」



molが一通り終わったので、識《ゴースト》についての話を御環《ミタマ》は始めていた。


ちなみに、御環《ミタマ》は自分とプラネの手元を見ることで、プラネと目を合わせることを回避していた。



「一口に識《ゴースト》といっても色んなタイプがいますが、識《クネクネ》は境《サカイ》に引きこもるタイプです」


「境《サカイ》に、ですか?」


「そうですね。境《サカイ》は識《ゴースト》にとって、縄張りでもあり、その身体でもあります」



御環《ミタマ》は、蜘蛛の式紙《シキガミ》である八方塞《ハッポウフサギ》に赤糸《セキシ》を使って境《サカイ》を張らせていた。実演してみせるために。

木漏《コモレ》邸はこういう時の為に、庭が広い。



「識《ゴースト》の境《サカイ》は特殊です。境《サカイ》の内側はその主が過ごしやすい環境になるのですが、識《ゴースト》は人間とだいぶ違うので。内部の空間体積や重力の方向すら違いますからね」


「だから、ぐねんってなるんですね!エレベーターに引っ張られるみたいな!あれ面白いですよね!!」


「...面白いですか?アレ?」



こういう目線を送る時は、プラネの目を見れる御環《ミタマ》なのであった。



「いいや。とりあえず、識《ゴースト》にとっては、自分の境《サカイ》は自分を安定させる為にも、狩場にもなる訳です。では、どうやって外の物質や人を取り込むかと言うと、それは"窓"です」


「窓って、覗き窓とかの?」


「そうですね。そのイメージです」


「扉じゃなくて?」


「錦《ニシキ》さんが、『いや、"窓"でしょ』ってことで窓が定着してます」


「なるほど!そっちの方がオバケっぽいですからね!」


「???」



御環《ミタマ》は、それで納得するのか?と思っていた。



「その"窓"の形状が基本的に人を誘き寄せる為に、興味をそそるものになっています。そして、見える人を誘い込む」


「あ!非常ベルのボタン!」


「そうですね。今回の識《クネクネ》は窓の形を非常ベルのボタンにして、誘き寄せていました。あのボタンが見えるということは、識《ゴースト》と近いということなので、取り込みやすいんですよね。なので、そういう人を誘い込めるようになってます」


「んー!悔しいです!」


「まぁ、どうしても気を取られる構造なので」


「私、押さなかったのに!警報が鳴ったら大変だから!ベルをつついただけなんですよ!?」


「それでも、呑み込まれるんですね...」


(そのパターンはじめて聞いたわ)



いちいち指摘するのも疲れてきた。

いくら内心に留めていても。



「僕たちを追いかけてた最後の姿は、その窓を戦闘用に変質させたものです。元の識《ゴースト》の識《シキ》が色濃く反映されているので、"窓《アバター》"と表現されたりしますが」


「あ!じゃあ、あの時倒したのはあくまでも窓ってことですね!」


「そうです。実際、手応えも弱かったです」


「手応えとかもあるんですね!」


「はい。識《ゴースト》の識《シキ》を乱して崩すイメージなので。その時にそれなりの抵抗を受けるんですよ」


「押し相撲みたいですね!」


「そうですかね?」



もう言ってしまった。



「では、境《サカイ》に入ってみてください。少し境《サカイ》酔いを体験してみましょう」


「はーい!」



御環《ミタマ》が八方塞《ハッポウフサギ》を使って張った境《サカイ》に、プラネが踏み込む。


その瞬間、



「ぅお、えぇ...」



御環《ミタマ》がえずいた。



「ば、抜錨《バツビョウ》してないのに...こんなに引っ張られるのか...」


「み、御環《ミタマ》くん大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です。あの、触れたらもっと酷くなるので。一旦、境《サカイ》から出て貰ってもいいですか?」


「あ、ごめんなさい」


「いや、プラネさんは、悪くないので...」



御環《ミタマ》は顔を叩く。



「このように、境《サカイ》に誘い込むのは、リスクもあるんですよ。自分の縄張りに追い込むのと同時に」


「腹の中ってことは、逆に言えば内側に入れたって意味ですからね!」


「そうですね...故に、逆に境を展開せずに閉じる識《ゴースト》も居ます。この手の識《ゴースト》は基本的に硬く、フィジカルが強いパターンが多いですね」


「御環《ミタマ》くんは、それを身をもって表現してくれたんですね!」


「そ、そうですね...」



本心としては、プラネに少し、軽く、境《サカイ》酔いを体験してもらう予定だったのだが。



「そういう識《ゴースト》は基本的に、その身体が境《サカイ》です。さっきも言ったように、境《サカイ》の中に識《ゴースト》の起点があるはずなので、そこを叩けば基本的に討伐できます」


「じゃあ、私たちが出会った識《クネクネ》は、境《サカイ》にまた飛び込まないとってことですね!」


「はい、そのうち、多分錦(ニシキ)さんに『自分のケツは自分で拭け』とか言われて、討伐任務を出されるはずなので。その時はそのように、やります」



と言ったあと、御環《ミタマ》は縁側に崩れた。



「つ、疲れた...」




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