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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第9話 斥候との駆け引き

その頃、同じ湯河原町内では、別の動きがあった。


園山(そのやま) 勇将(ゆうすけ)三等陸佐が率いる別部隊も、周辺の家屋や道路を警戒しながら前進を続けていた。敵の姿は依然として確認できず、隊員たちは建物の窓や路地の奥に注意を払いながら、慎重に移動していた。


そこへ、烏丸(からすま) 豪(ごう)二等陸曹が駆け寄ってきた。


「園山中隊長! 地頭曹長の班で小規模戦闘があった模様!」


「詳細は?」


園山が尋ねると、烏丸は受け取った報告を伝えた。


「敵は3体。うち1体は死亡、残り2体を捕縛したとの事、班に被害なし。」


「そうか…。」


園山は短く答えると、周囲の街並みに目を向けた。これまで敵との接触がなかったからといって、この一帯に敵が存在しないわけではない。実際に地頭曹長の班が攻撃を受けた以上、他の場所にも敵兵が潜んでいる可能性は十分にあった。園山は少し考えた後、隊員たちへ指示を出した。


「ここにも敵兵が潜んでいる可能性が高い。周囲の警戒を一層厳にしろ!」


「了解!」


隊員たちが応じた、そのときだった。


『こちら二瓶。敵3体を確認。座標を送る。そこから、地図上、8時の方向へ向かっている。』


無線で報告してきたのは、第35普通科連隊情報小隊に所属する二瓶(にへい) 清宗(せいしゅう)三等陸曹だった。


二瓶は偵察中に3体の敵兵を発見し、付近にいた園山へ連絡してきたのである。地頭の班が交戦した敵兵とは別の部隊である可能性が高かった。


「了解。こちらも向かうが距離がある。追尾しろ。逃がすな。ドローンで位置を固定しておけ。我々が到着次第、挟撃する。必要なら威嚇射撃をしても構わん。」


『了解』


二瓶の返答を確認すると、園山は直ちに隊員たちへ向き直った。


「第1分隊は私に続け。第2分隊は現位置警戒。指揮は廣嶋が行え。」


「了解。お気をつけて」


指示を受けた廣嶋(ひろしま) 史龍(ふみたつ)一等陸曹が応じ、第2分隊の指揮を引き受けた。


その間にも、二瓶が操縦するドローンは、発見した敵兵を追って移動を続けていた。園山は第1分隊を率い、敵兵のいる方向へ向かって行動を開始した。


     


私の名前は、エルノミア・メッテ。アステリム帝国陸軍に所属する兵士長で、ヒト族とエルフ族の血を引くハーフエルフです。現在は斥候として、2人の部下を連れ、湯河原という街へ潜入しています。


今回の任務は、自衛隊の進軍経路や動向を調べ、本隊が罠を仕掛けている場所へ敵兵を誘導することです。そのため、私たちは敵を発見することを優先し、不必要な戦闘は避けるよう命じられています。


そんな中、部下のフィアン・ヴィシャラ一等兵から、気になる報告がありました。


「連絡が途絶えた?」


「はい、支隊長。先ほどから、ルマパ海軍伍長殿との連絡が途絶えました。アマハマ上等兵、バノアキ一等兵も同様にです。最後に通信が記録された座標へ向かいますか?」


ヴィシャラ一等兵は、私と同じハーフエルフです。彼女は通信記録を確認しながら、私の判断を待っていました。


「戻る必要はないよ。」


私は首を横に振りました。


「斥候が通信途絶になるのは珍しくないから。任務を続行しよう。私達の仕事は戦うことではなく、敵を見つけることだからね。」


ルマパ伍長たちの安否は気になりますが、私たちまで任務を中断して捜索に向かえば、斥候を派遣した意味がなくなってしまいます。


(私達は、作戦の全容を把握しているわけではない。仮に捕縛され、尋問されても重大情報を吐きようがない。ルマパ伍長が捕えられても大きな問題にはならない。)


ルマパ伍長率いる水中偵察支隊は、おそらく敵に討たれたのでしょう。私は任務前のブリーフィング室でルマパ伍長と顔を合わせましたが、彼は随分と自信家で、自分の実力を過信しているようにも見えました。ですから、仮に何か失敗したとしても、あまり驚きはしません。とはいえ、こちらも敵地に潜入している以上、同じような事態に陥らないよう注意する必要があります。


「支隊長」


不意に声をかけてきたのは、レオン・アルフット一等兵でした。彼の耳がぴくりと動き、周囲の音を探るように頭を傾けます。


「……上空で風を切る音がします。」


私は足を止め、彼の様子をうかがいました。


「鳥じゃない。回転翼です」


アルフット一等兵の報告を聞き、私はすぐに2人へ指示を出しました。


「伏せろ。動くな。」


私たちは姿勢を低くし、周囲の建物を利用して身を隠しました。そのまま空を見上げると、小さな黒い影が雲の隙間を横切っていくのが見えました。


「……ドローンだね」


アルフット一等兵は犬型の獣人族で、優れた嗅覚を持っています。私たちが上空から接近してくる何かに気づく前に、彼はその存在を察知していました。


私は空を移動するドローンを目で追いながら、これまでに得た自衛隊の情報を思い返しました。帝国軍ではドローンを利用した攻撃が一般的な戦術となっていますが、自衛隊もここ数年でドローンを用いた攻撃を行うようになりました。性能も以前より向上しており、帝国軍が被害を受けた事例もあります。あのドローンが偵察用であれば、私たちの位置を確認しようとしている可能性があります。すでに発見されているかもしれませんが、こちらから不用意に動くわけにもいきません。


「近くに敵はいる?」


私はアルフット一等兵へ尋ねました。


「今のところ、敵の臭いはしません。」


彼は周囲の気配を探りながら答えました。


「空偵支隊(くうていしたい)に、援軍を頼みますか?」


今度はヴィシャラ一等兵が提案してきました。確かに、空中偵察支隊の協力を得られれば、上空のドローンに対処できるかもしれません。


「そうだね、彼らにドローンを迎撃してもらえば助かる。私が、連絡を――」


私が通信機へ手を伸ばそうとした、その瞬間でした。


「支隊長、後ろ!」


アルフット一等兵の叫び声に、私は反射的に振り向きました。すると、建物の陰から、もう一機のドローンが低空で接近してくるのが見えたのです。先ほどまで上空を飛んでいたものとは違い、こちらは攻撃型でした。


「しまっ――」


言い終えるより早く、乾いた射撃音が街に響きました。直後、アルフット一等兵の身体が弾き飛ばされます。何が起きたのか理解する間もなく、私は残る部下へ叫びました。


「散開!!」


私たちはドローンの射撃を避けようと、それぞれ別の方向へ動きました。しかし、攻撃はそれだけでは終わりませんでした。上空を哨戒していた偵察型ドローンの後方から、さらに攻撃型ドローンが姿を現したのです。その機体は私たちの背後へ回り込み、逃げようとする動きを封じるように接近してきました。前方の攻撃型ドローンに注意を奪われていた私は、背後からの接近に気づくのが遅れてしまいました。


(不覚………)


そう思ったときには、すでに対応が間に合わない状況でした。


     


『こちら二瓶、敵3体負傷確認。位置固定した。』


二瓶からの報告が、園山の無線機に届いた。ドローンによる攻撃で3体の敵兵が負傷し、その位置も把握できている。園山は報告を聞くと、同行している隊員たちへ指示を出した。


「敵は手負いだ。」


園山は無線機を握り直し、続けて命じた。


「全班、交戦許可。近接戦闘用意!」


さらに、敵を逃がさないよう念を押した。


「逃げる前に仕留める!」


「了解!」


隊員たちは園山の命令に応じ、武器を構え直した。その中で、下葛三曹が気合いを入れるように口を開いた。


「地頭班には負けてられないな!」


隊員たちは周囲を警戒しながら、敵兵のいる方向へ向かう準備を整えた。そのうちの1人が、アサルトライフルの安全装置を外した。カチッという小さな音が、静まり返った廃墟の街に響いた。

登場人物紹介

廣嶋(ひろしま) 史龍(ふみたつ)……1990年1月24日生まれ / 東京都 / 一等陸曹 / 35普連2中隊所属

エルノミア・メッテ……帝国陸軍兵士長で、ハーフエルフの女性。斥候として湯河原に潜入していた。

フィアン・ヴィシャラ……帝国陸軍一等兵。ハーフエルフの女性。メッテの部下。

レオン・アルフット……帝国陸軍一等兵。犬型獣人族の男性。メッテの部下で、嗅覚に優れる。


グーリエ星に存在する種族

ヒト族……所謂、グーリエ星内における"普通の人間"で、特徴も地球人と似ている。グーリエ星のヒト族の平均寿命は110歳、健康寿命は88歳で、60~70代でも高い運動能力や集中力を有する。ヒト族の亜種として、天狗族やスノー族という人種が存在する。


エルフ……ファンタジー物でお馴染みの長い耳と長寿が特徴の種族。他種族との親和性も高く、ハーフエルフも多い。上位種に「ハイエルフ」、亜種として「ダークエルフ」が存在する。


ハーフエルフ……他種族と混血のエルフ。ヒト族とのハーフエルフが最も多い。エルフの血が流れていても、外見や特性にエルフの特徴が出ないと、長寿にはならない。


獣人族……哺乳類の特徴が、外見や強みに出ている種族。犬型・猫型・獅子型等、多岐にわたる獣人が存在している。それぞれの動物の特性を兼ね備えている。


※支隊(したい)……アステリム帝国軍における、部隊の1つ。3~6人と小規模で動く部隊のこと。支隊長は、兵士長以上の階級の者が勤める。


※2)水中偵察隊(すいちゅうていさつたい)……水中の中を自在に動ける種族で構成されている斥候部隊に名付けられる。前話・今話では、「支隊」だったが、支隊以上の規模で動くこともある。メッテの部隊は、陸上偵察支隊(りくじょうていさつしたい)と呼ばれる。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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