第85話 闘犬と鷲
「五十鈴…寛治…。」(ルックノワ)
「(あのドーブス大佐殿を半殺しにしたってのはアイツだったのか…。)」(ルックノワ)
「私達、人魚族は丘で戦うのは不利だ。」(ローニア)
「コカロック連隊長! 奴が現れた! 退却の命令を!」(ローニア)
「むう…。奴がいるなら仕方ない…一度下がって態勢を立て直そう。」(ポーラ・コカロック海軍大佐)
「第5艦隊制圧連隊、第6強襲陸上連隊は撤退せよ!」(コカロック)
「海にさえ逃げれば、まだ勝機はある。」(ポッパー)
もう間もなく駿河湾へたどり着けるといった所だった。BJは逃げ遅れた兵士の後頭部を掴んだ。
「おい、どこへ行く?」(BJ)
「ひいっ!」
その兵士は思わず悲鳴をあげた。
「くそ、もう破れかぶれだ!」
「ただじゃ殺られない!」
「敵は、たった1匹だ! やってやる!」
「え? 俺は?」(バス)
BJの近くにいた帝国兵は、自身が生き残れない事を覚悟し、あるいは、BJの実力を疑う者達が、その場に留まり、戦闘を開始する。
「ぎゃあああ」
「は、速い…。」
「ぐはっ…。」
「つ、強すぎる…。」(スキュア・レフスキー海軍兵士長)
レフスキーは、BJの圧倒的な強さと自身の死を悟り、その場で気を失う。BJはそんなレフスキーにも躊躇なくとどめを刺した。
「何をやっている!? 早く海へ飛び込め!」(ローニア)
ローニアの声に我に返った帝国兵達は、次々に海へ飛び込む。しかし、BJの常人離れしたスピードと戦闘能力により、1個中隊分の帝国兵が、壊滅的被害を受けた。
「……」(バス)
「……」(バス)
「………俺、要る?」(バス)
銃を構えながら、バスは独り言ちた。それだけ、BJが驚異的な強さで敵を蹂躙していった。
「……はぁ……せめて、俺が狙撃で5人仕留めたのは覚えておいてくださいね…。」(バス)
――BJが静岡市内で暴れているその頃 箱根にて――
「また敵が追ってきてます。今度は上空に天使族や鳥人族もいますね。規模としては2個小隊ってとこでしょうか。」(パルヴァー)
「う~ん、何か他の所よりも、追手が多いわね~、何か理由があるのかしら?」(フロリアン)
「しかし、上空の敵を狙うのは骨が折れますよ…。」(パルヴァー)
「そうよね~、怪我人を守りながらだと難しいわ~」(フロリアン)
その時、空からかすかな金属音が聞こえた。そして、上空を飛行していた天使族の隊列から、突如、爆発音が響き渡った。
ドォン!
「きゃあああああああ!」
「何事だ! どこからだ!」
上空の敵のうち、先頭を飛んでいた2体の天使族が、炎と黒煙を上げながら山中に墜落していく。
「え? 何が起きたの?」(坂下)
「やっほ~」(ヒーゾ)
無線から聞こえるのは、戦場を駆けまわっているとは思えない脱力感のある声。その声に反応するフロリアン。
「あら~ヒーゾ班長じゃなぁい! 助かったわ~」(フロリアン)
「丁度あいつらを追ってたんだよね~」(ヒーゾ)
「上空の敵は我々、イーグル班に任せるのだ~」 (ヒーゾ)
「OK~。アタシ等は地上の敵に行くわよ!」(フロリアン)
「う~ん、携サムだと火力が弱いな~。スタン、中サムの準備だ。」(ヒーゾ)
「了解! 中サム準備!」(スタン)
トラックの進行方向、遠くの山稜に、3名の隊員が大型の対空兵器を構えているのが見えた。彼らはさらに精密な射撃を加え、上空の敵を次々と仕留めていく。
「ふふ、これで地上の敵だけになったわね。あとはアタシ達の獲物よ。」(フロリアン)
イーグル班の援護射撃により、上空の脅威が排除された。残るは、地上を追走してきた地上の5体だ。
「さあ、お楽しみはこれからよ。パルヴァーちゃん、シャークちゃん、行くわよ!」(フロリアン)
フロリアンは、相変わらず84mm無反動砲を玩具のように軽々持ち上げ、地上部隊の先頭に立っていたハーピー族の兵士に狙いを定める。
ドォン!
「グオオオオ!」
ハーピー族の兵士は、その強靭な羽で砲弾を防ごうと腕をクロスさせた。しかし、フロリアンの放った砲弾は、そのクロスさせた腕のわずかな隙間を縫い、胸部で炸裂した。
「ぐっ…馬鹿な…!」
「アタシの砲弾を素手で止めようなんて、甘いわよ?」(フロリアン)
フロリアンは余裕の表情で、再びウインクをかます。素顔は隠されているが、声のしゃがれ具合から、おっさんなのは確実だ。
残りの地上部隊が驚きで動きを止めた瞬間、シャークが動いた。彼女はトラックの荷台から飛び降りると、地を這うような速度で一気に敵兵の懐に潜り込む。
「――っは、速すぎる!」
彼女が手に持っていたのは、柄の短い特殊なナイフだ。シャークは、一瞬で敵の喉元を掻き切り、そのまま次の獲物へと視線を移す。
「(凄い、凄い、凄い!)」(隼人)
拘束具で身動きが取れない隼人は、ただその光景を圧倒されながら見つめることしかできなかった。
「(これなら、きっと瑛松二曹達も無事だ!)」(隼人)
隼人は瞬きすら忘れていた。この光景から、もう目を離すことができなかった。
登場人物紹介
ヒーゾ…GAST所属で、イーグル班の班長。対空攻撃を担当する。
スタン…GASTの隊員で、イーグル班所属。
ポーラ・コカロック
種族・性別:人魚族の女性
所属・階級:帝国海軍大佐、第6強襲陸上連隊・連隊長
スキュア・レフスキー…帝国海軍兵士長で、スキュラ族の女性。BJに倒される
段場 隼人……本編の主人公。35普連2中隊所属の二等陸士
苫米地 杏南……隼人の同期で恋人。多大な戦果を挙げるが負傷してしまう
木山 拓哉……隼人、杏南の同期。味方を誤射し、急性ストレス障害を発症
山下 裕介……渚の同期
坂下 ジュリア……35普連3中隊の新人
諏訪 明登……謎の力に覚醒した若手
フロリアン……GAST「ピットブル班」の隊員で大柄ながらオネエ口調を話す
シャーク……GAST「ピットブル班」で、フロリアンに「滅茶苦茶」と言われる
パルヴァー……GAST「ピットブル班」で多分、視力が良い
シェルダン・ルックノワ……BJにビビり散らす海軍少尉
シャラ・ポッパー……有望な若手尉官の人魚
ブランチェスカ・ローニア……田原殲滅隊・第5艦隊制圧連隊2大隊大隊長
グーリエ星にいる種族
スキュラ族…上半身が人間、下半身がタコの種族で、人魚族の亜種と言われている。人魚族同様、水中での活動を得意とし、陸上では24時間程しか動けない。人魚族同様、陸上では専用の義足を装着して活動する。




