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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第78話 ヒヨッコ

「くそっ……。だいぶ遠くまで吹っ飛ばされてしまったな…。皆、無事だといいが…。」(諏訪)


俺は諏訪明登(すわ めいと)。自衛官になって2年目のヒヨッコだ。俺が吹き飛ばされたのは、敵兵の砲弾によるものだった。


「しかも、よりによって1人かよ…。」(諏訪)


俺みたいなヒヨッコが1人で過酷な戦場を生き残るのは厳しい。勿論、最後の1人になっても諦めるつもりは毛頭ないが、理想と現実は違う。


英雄になると言っていた同期も、歴戦の勇士だった上官も、同じように地面に倒れていた。


その光景は、俺の脳裏に焼き付いて離れない。だから、学ばねばならない。この過酷な戦場で生き残る術を。幸い、大きな怪我もなく、今、まわりに敵兵はいない。まず、自分がいる場所の把握、装備品の確認、そして、生存者を捜し、戦える体勢を整える。


「(ここは……まだ侵攻されていないはずだ………たぶん。)」(諏訪)


「(ここで時間を稼ぎ、味方を集め、持久戦の土台を築ければ、援軍が来てくれる。)」(諏訪)


諏訪は、特戦群と連携している可能性があるとみていた。無線がジャミングされ、味方との通信網が効かない状況とはいえ、彼等(特戦群)なら、気付いてくれると、そう信じて。


「(信じるとか、感情に頼っちゃいけないが、やれる事をやるのが大事だ。今、俺に出来るのはそれだけだ。)」(諏訪)


「(上空に敵はいない。今のうちに進めるだけ進む。)」(諏訪)


俺は速足で駆けた。立体物が少ない場所だったこともあり、のんびりしていると銃弾の的になってしまうからだ。そして、一刻も早く


「はあはあ、少し休憩するか…。銃弾や砲弾の音が大きくなってきた。ここからは戦闘を回避できない。」(諏訪)


その時だった。


「(左に人の気配!)」(諏訪) 


気配を感じた所へ銃口を向けると…。


「待て、俺だ、俺。」(須田)


一瞬の緊張が解け、諏訪は大きく息を吐いた。


「須田二曹! ご無事で良かった。」(諏訪)


「お互いにな。」(須田)


そこには、須田二曹と、情報小隊の二瓶三曹がいた。上官の無事に安堵する一方、楽観もしていられない。まだ3人だけなのだ。それに、須田二曹は怪我をしている。


「血も止まったし、問題ない。」(須田)


俺は、考えていた作戦を須田二曹に具申した。


「持久戦か。その為には、敵がどこを狙って攻めてくるかを把握しないといけない。敵の目的を、お前は考えたか?」(須田)


「う…。」(諏訪)


考えていなかった。所詮、ヒヨッコの浅知恵だと痛感する。


「石橋の兵站拠点は、制圧されたと考えるべきだ。」(須田)


須田二曹は、地図を広げ、指でルートをなぞっていく。


「敵の目的が、静岡や山梨への侵攻なら、御殿場は絶対に死守したい。俺がグーリエ星人の立場なら、司令官が待機している月白展望台を狙う。そこを拠点に、我々を殲滅しようとするだろう。」


「三島や伊豆方面も狙われるのでは?」(諏訪)


「伊豆は海自が控えているから、そこは任せていい。そうなると、一番抑えたい場所は箱根だ。」(須田)


「箱根に陣地を作って、持久戦を行う。」(須田)


「しかし、司令官に具申したくても、通信が阻害されているのがネックですね。」(二瓶)


今のままでは机上の空論でしかない。勝手に動くと作戦に混乱が生じてしまう。もっとも、今は作戦が破綻しているのだが…。


「地下通路があるかもしれない。」(須田)


「地下通路ですか?」(諏訪)


「ああ。連中の奇襲を思い出せ。奴ら、用意周到に準備していた。その為に地下通路を作った可能性がある。」(須田)


「なるほど。奴らが奇襲した場所と、種族を思い出せば、場所を特定できるかも。」(二瓶)


「モグラ、蜥蜴、ゴブリン…。思い出せるのはこれくらいですね。」(諏訪)


「蜥蜴みたいな奴は、水中でも自在に動ける。海辺も可能性の一つだな。」(須田)


「ここから近くにも、海岸があります。行ってみますか?」(諏訪)


俺達は、海岸沿いを歩き、敵兵が掘った地下通路を探した。



「あった…。」(諏訪)


「こんなに早く見つかるとは。しかし、これはグーリエ星人が作った物だ。安全な場所ではない。」(須田)


「ん、待て、中から声が聞こえる。」(須田)


「敵兵でしょうか?」(諏訪)


「いや、日本語だ。ていうか、この声の主は…。」(須田)


天津種中隊長だった。亜久二曹や中西三曹と口論をしている。何をやっているんだか…。


「亜久二曹! ご無事でしたか!」(諏訪)


「!?」(亜久) 


「須田! 二瓶!諏訪! お前達も無事だったようだな!」(亜久)


「無事で良かった…。」(中西)


「ところで、何をやっているんですか?」(諏訪)


「ああ、私の判断を理解できない、無能な二曹たちを教育していたのよ。本当に使えない部下たちだわ。」(天津種)


「はあ、そうですか…。」(須田)


話を要約すると、

・負傷した新山三曹は使い物にならないから捨て置けと言ったら、亜久二曹と中西三曹が激怒した。

・この洞窟を新しい兵站拠点にするから協力しろ。

というものだった。


「瑛松達もここに来たらしい。あいつらは、箱根へ向かうと言っていたそうだ。」(亜久) 


「箱根へ?」(須田)


「月白に戻って援軍の要請をすると。」(亜久)


「まったく、上官の命令を聞かず、勝手に動いて…。」(天津種)


このポンコツ中隊長は放っておくとして、俺たちは箱根で持久戦をする作戦を具申したい旨の話をした。その中で、敵が掘ったであろう地下道を捜しているとも。


「ここは、敵が掘った地下道の可能性があります。」(須田)


「…危険だが、試してみる価値はある。もはや作戦は破綻している。攻める作戦から、守る作戦に切り替えないと、敵の占領地が増えてしまう。瑛松達と合流出来ればいけるかもしれん。」(亜久)


亜久の言葉を聞いていた天津種は、不満げに口を開いた。


「いい加減にしなさい! 勝手に動くのは軍法会議ものよ! この中隊の指揮権は、二佐である私にあるの! あなたたちの義務は、私の命令に絶対服従することだけよ!」(天津種)


「中隊長、すみません。我々は無能な部下なので、上官の命令は聞けません。」(亜久)


亜久は、冷たい目で天津種を見据え、言い放った。


「…!」(天津種)


「岳さん、体調はどう?」(中西)


「血も止まったし、だいぶ休めた。問題ない。」(新山) 


「よし、じゃあ行きましょうか。」(須田)


こうして8人になった俺たちは、地下道の奥へ進み始めた。天井には木材の補強。床は踏み固められている。即席の穴ではない。


順調に進んでいたが、ここは敵が掘った通路だ。当然、敵兵にも出くわした。


「敵!」

「読み通りだ! 殺せ!」


地下道は遮蔽物がない。敵の姿が見えると、俺達は素早く発砲し、先手を打つ。しかし、それが必ずしも成功するわけではなく、敵の銃撃で二瓶三曹が利き腕を怪我してしまう。


「うぐ…。」(二瓶)


タタタタン!


亜久二曹の銃撃で難を逃れた。


「今の内に手当をする。宮野、周囲の警戒を頼む。」(亜久)


「了解。」(宮野)


二瓶三曹の手当をして、俺達はまた先へ進む。途中、地上に繋がる穴があったが、幸い、敵兵の行き来は少なかったので、難なく倒すことが出来た。道中、味方の断末魔が聞こえ、胸が痛かったが、それでも奥へ進むことを優先した。


「敵も箱根へ向かっているかもな…。」(亜久)


「急ぎましょう。」(中西)


地下道の中は、敵兵との遭遇だけではなかった。


カチッ


新山三曹が何かを踏んでしまった。カチッという音ともに煙幕のような物が流れ込む。煙幕と同時に敵兵が出現した。


「ガスマスクをつけろ!」(亜久)


亜久二曹の号令でガスマスクを着用する。愛元は、奇襲時に紛失したようだった。愛元は息を止め、素早く敵兵からガスマスクを奪おうとした。揉み合いの中、愛元は敵に囲まれて軍刀で刺される。


「がはっ」(愛元)


愛元は、刺された際に呼吸をしてしまい、毒が身体に回り、死亡する。


パァン!


敵の銃弾を受け、二瓶三曹のガスマスクにヒビが入る。亜久二曹と中西三曹の連携で、敵からガスマスクを鹵獲し、マスクを二瓶三曹に渡した。


二瓶三曹はマスクを装着し、息を吸った。その瞬間。マスクの内側で、何かが弾けた。


「二瓶!」(須田)


二瓶は、ガスマスクを取り変えた後、呼吸をした瞬間に身体に毒が回った。敵が着けていたガスマスクは、持ち主しか着けられないよう、プログラミングされていた。他者が着けると、マスクの中に毒が回る仕組みだ。これも、帝国兵の罠の1つであった。


タタタタン!


「がっ」(宮野)


二瓶は毒により死亡。宮野も敵銃弾に取れた。しかし、それでも彼らは進むしかなかった。




「ここが終点のようだな。」(亜久)


「ちょうど、箱根の山塊地帯です。」(中西)


ここまで繋げたという事は、やはり箱根にも敵兵がいるのだろう。当然、油断は出来ない。


「銃声が聞こえます。仲間が戦っているな。」(新山)


「近いな。敵に悟られないよう、慎重に進むぞ。」(亜久)


「了解。」(一同)


銃声の下へ着くと、そこでは、仲間たちが必死に抗戦していた。敵は2個中隊だろうか?


亜久二曹が叫ぶ。


「瑛松――!」


「亜久二曹?」(諏訪)


「うち等も続くよ!」(中西」


5人は一斉に撃った。


登場人物紹介

諏訪すわ 明登めいと……彼は、英雄になりたい同期や、歴戦の猛者だった上官の戦死を経験し、過酷な戦場を生き延びる為に「学ぶ」姿勢を持ち続けています。謙虚な姿勢を見せる一方、英雄志向や、感情で動こうとする後輩への苛立ちを隠せない一面を持ちます。敵討ちに執着している隼人を良く思っておらず、むしろ、臆病な態度を隠さない木山の方を評価しています。


亜久あく 弘夏こうか……理央と同期の二等陸曹

須田すだ 寿一じゅいち……35普連2中隊の二等陸曹

新山しんやま がく……35普連2中隊の三等陸曹

中西なかにし ほたる……35普連2中隊の三等陸曹

愛元あいもと 省向しょうむ……35普連2中隊の新人、地下道の中で戦死。享年19歳

二瓶にへい 清宗せいしゅう……35普連の情報小隊。地下道の中で戦死。享年24歳

宮野みやの なり……34普連情報小隊。地下道の中で戦死。享年21歳

天津種あまつたね うらら……35普連2中隊の中隊長。兵站拠点に拘り過ぎている

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