表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/130

第76話 絶望の伏兵

――2020年10月1日 4:00――


「おい、段場、起きろ。交代だ。」(手塚)


「あ、はい…。」(隼人)


僕らは交代で夜間哨戒任務を行った。この辺りは静かになってきたが、遠くからはまだ銃声は砲弾の音が聞こえる。ここが安全というわけではないが、休憩をするには比較的マシな場所だと思う。僕は、夜間哨戒任務を瑛松二曹とすることになった。あの件以降、気まずくて瑛松二曹の顔を見ることが出来ない。


 …。


 …。


 …。


気まずい…。


別に何か話さないとかはないけど、あれからずっと意識していて、気まずくて、やりにくい。ふと、瑛松二曹と目が合った。僕は、思わず目を逸らしてしまう。瑛松二曹は、そんな僕を見て傍に寄り、耳元で呟いた。


「切り替えなさい。」(理央)


暗闇ではっきりとは分からなかったが、瑛松二曹、少し恥ずかしそうだった。益子一士が、あれだけ大声で喋っていたんだ。そりゃ、瑛松二曹も気付くよな…。


「あ、あの…。」(隼人)


「……しないわよ?」(理央)


いや、そういう事じゃないです…。僕には杏南がいますし、じゃなくて、ええと、その…。いえ、何でもありません。



隼人がしどろもどろになっていた、その頃。


「うわあああああああああああああああああ」(木山)


木山は、悪夢にうなされていた。夢の中で、彼は再び引き金を引く。すると、目の前で仲間が血を流して倒れていく。


「おい木山、落ち着け!」(山下)


山下の声で目が覚める。涙を流しながら、「ごめんなさい、ごめんなさい…。」と繰り返した。仲間を誤射して以降、時折パニックを起こすようになった。仲間に誤射したことは、瑛松二曹と久里浜中隊長には伝えている。


「敵に気付かれたかも。」(瑛松)


「もう出発した方が良さそうだな。」(久里浜)


皆が慌ただしく準備し、4:20に出発した。



グーリエ星人の気配は感じないが、巧妙に隠れている可能性が高いと思っている。皆も同じように感じているだろう。警戒を解かずに進む。


木山は戦闘が難しいと判断し、紅林陸士長のケアをしている。苦悶の表情を浮かべる紅林陸士長の様子を見て、木山は冷静さを取りもどしたようだ。


「(俺がしっかりしないと、紅林陸士長も危険に晒される。しっかりしろ、俺…。)」(木山)


「…。」(浅井)



俺は、浅井社あさい やしろ、35普連1中隊に所属する。階級は一等陸曹だ。俺は今、箱根から月白展望台へ向かっている。


グーリエ星人の奇襲と電波妨害により、仲間たちと分断され、本部への通信も出来ないので、俺達で展望台へ向かい、援軍の要請をするとの事だ。


俺は、吉良三尉や奥戸らと共に行動していたが、ただ敵の銃弾を避けながら動いていたら、たまたま瑛松達と合流した。展望台へ行くのは、瑛松の案である。まあ、それはいいとして、どうしても納得できないことがある。俺達を指揮しているのが、後輩の瑛松だからだ。


別に瑛松の能力を疑ってはいない。だが、階級で言えば指揮権は久里浜良仁中隊長だろう。中隊長が指揮権を瑛松に譲ったわけだが、それなら次は吉良三尉ではないのか? 俺は、それが納得できない。昨夜、それを吉良三尉に愚痴ったら怒られてしまった。


「そんなものに拘って、任務の本質を見失うな!」(吉良)


いや、そもそもが、今、月白展望台へ戻るのは作戦に組み込まれていないから、任務の本質と言われてもなぁ…。それに、グーリエ星人がこのまま静岡や山梨に侵攻すれば、たちまち占領されるだろう。むしろ、石橋に戻って敵の侵攻を食い止めた方がいいのでは? そう思ってしまう。しかし、久里浜中隊長曰く、瑛松に合流するまで俺たちは無策だったからと、奴を信頼している。


ここで、変に立ち回ったらチームワークが崩れる。今、ここでバラバラになるわけには行かないから、渋々従っているのだが…。


「(2時の方向に敵兵…。2体。)」(杏南)


「(9時の方向に1体…。木の上。)」(理央)


敵の気配を察した2人は、ほぼ同時に発砲した。


パァン!


「く…外した…。」(理央)


理央の撃った銃弾は、木の幹に突き刺さる。


「1体仕留め損ねた…。」(杏南)


苫米地の撃った弾丸は、敵の装甲に弾かれ、火花を散らす。瑛松が仕留め損ねたグーリエ星人は、木の上からこちらへ向かって飛び降りてきた。


パァン!


しかし、それをこの俺、浅井社が正確に狙い撃ち、地面に叩きつけられた所を、手塚がとどめを刺した。苫米地が仕留め損ねたグーリエ星人は、山下の銃弾を弾いた時に出来た隙に、段場が頭を打ち抜き、仕留めることが出来た。見事な連携だ。


「(やった…。)」(隼人)


隼人は思わず、心の中で叫んだ。


「(弘法も筆の誤り…。)」(坂下)


坂下は、杏南が仕留め損ねたのが意外だったようで、心の中でそう呟いた。一方、浅井は、自分より先に敵兵に気付いた理央を見て、その実力を改めて実感した。


「(仕方ねぇ、先輩としてフォローしてやるか、チクショウ。)」(浅井)


浅井は、納得しているわけではないものの、自身の振舞いでチームワークは乱すまいと心に誓う。


「敵の持っている通信機器を壊せ。通信を傍受されると、俺たちの位置だけでなく、人数や装備も筒抜けになる。」(久里浜)


「了解。」(隼人)


しかし、グーリエ星人の技術の高さには驚かされるばかりだ。通信機器らしきものが見当たらない。どれが通信機器なのか、見た目だけでは判断出来ない。最終的に持ち物を全て壊し、遺体を埋めた。グーリエ星人の通信技術は、地球のそれをはるかに上回っていると痛感する。


「また敵が!」(糸原)


「戦闘用意!」(理央)


「敵は1個小隊。数では不利…。」(芦屋)


芦屋の言葉通り、彼らの前方に展開したのは、先ほど仕留めた数体とは比較にならない、20体以上の帝国兵の群れだった。前方にリザードマン族や鬼人族といった強靭な種族を配し、後方には有翼種の影も見える。理央は冷静に状況を分析した。


「久里浜中隊長、このままでは包囲されます。戦術的撤退をしましょう!」(理央)


「…。」(久里浜)


「いや」(久里浜)


「絶好の機会だ、瑛松。」(久里浜)


久里浜は笑みを浮かべた。


「敵は我々が1個分隊だと侮っている。戦力を集中させ、一気に仕留める!」(久里浜)


久里浜は、直ちに部隊に指示を出した。


「浅井、奥戸、芦屋、段場は左翼の尾根へ展開! 斜面を登ってくる敵を迎え撃て!」(久里浜)


「手塚、渚、山下は右翼の岩場! 対戦車火器を準備!」(久里浜)


部隊は一瞬にして分散し、指示された通りに地形の優位性を最大限に活用できる位置へ移動した。


「吉良、一橋、久木田は中央の窪地へ伏せ、火力支援!」(久里浜)


敵の帝国兵小隊は、自衛隊員がバラバラに逃げ出したと誤認し、獰猛な咆哮を上げながら斜面を駆け上がってきた。


「射程に入った、手塚!」(理央)


ドォン!


理央の指示に合わせ、右翼の岩場から、手塚が敵の群れの先頭にいる装甲の厚いリザードマンを狙い、84mm無反動砲の弾を撃ち込んだ。凄まじい爆炎と衝撃波が敵の先頭部隊を襲い、一発で数体を吹き飛ばした。


「対戦車兵器! 伏せろ!」


帝国兵は混乱し、斜面を駆け上がっていた勢いが止まる。その隙を逃さず、左翼の尾根に布陣していた浅井達からの正確な集中射撃が始まった。


「奥戸、奴らの右側面だ! 芦屋、左側面!」(浅井)


「(やっぱ、久里浜中隊長はすげぇ!)」(浅井)


彼らの連携は完璧だった。敵は遮蔽物のない斜面で銃弾を浴び、次々と崩れ落ちていく。僕は、上官達が冷静に引き金を絞り続ける姿に圧倒されていた。緊張と己の凡庸さから、狙いも定まらない。最早、狙いをつける余裕もなく、半ばがむしゃらに眼下の敵に向けて小銃を連射した。


タタタタン! タタタタン!


そのうちの一発が、たまたまゴブリン族の首筋の装甲の継ぎ目を貫通し、悲鳴を上げて倒れた。


「あ、当たった……?」(隼人)


隼人は、自分の指が震えていることに気付いた。自分の射撃の正確さではなく、成功したことの偶然性に驚愕し、自分の平凡さや動揺がまだ消えていないことを自覚した。


「(上官達のように、冷静に狙って仕留められたわけじゃない。ただ、運が良かっただけだ。僕はまだ、未熟なままだ…。)」(隼人)


「吉良! 上!」(久里浜)


鳥人族の部隊が、上空から火力支援を行おうと、姿を現し始めた。


「一橋、久木田! 対空射撃! 逃げるな!」(吉良)


吉良の指示の下、一橋と久木田は、体幹を固定し、上空にいる鳥人族に対して軽MATを放った。上空の鳥人族へ向かったミサイルは、彼らの羽貫き、彼らは甲高い悲鳴を上げながら地上に墜落した。敵の1個小隊は、対戦車火器による初撃と完璧な射撃連携、そして有翼種の排除により、敵の隊列が崩れた。何体かが後退し、残りも斜面を転がるように逃げ出す。


「(久里浜中隊長…流石だわ。私は撤退しか浮かばなかった…。)」(理央)


「(私もまだまだね。)」(理央)


理央は久里浜の機転にただ感嘆する。



「進みましょう。」(理央)


敵の銃声が止み、山の中に静寂が戻る。その時、理央は背後の森に「誰かの視線」を感じた。


パァン!


「がはっ…。」(北嶺)


突如、草陰から放たれた銃弾が、北嶺の腹部を貫通する。


「北嶺!」(久里浜)


久里浜の叫び声が響く。


「1体仕留め損ねた!?」(理央)


そこに追い打ちをかけるように、新たな敵影が現れる。


「敵、伏兵だ!今度は中隊規模!」(奥戸)


「……包囲されてる。」(杏南)


「次から次へと…。」(一橋)


僕らは、逃げ場を失った。


登場人人物紹介

段場だんば 隼人はやと……本編の主人公。35普連2中隊所属の二等陸士

苫米地とまべち 杏南あんな……隼人の同期で恋人

木山きやま 拓哉たくや……隼人、杏南の同期。味方を誤射し、急性ストレス障害を発症

瑛松えいまつ 理央りお……35普連2中隊の二等陸曹。

なぎさ 恭平きょうへい……脱サラして自衛官になった

山下やました 裕介ゆうすけ……渚の同期

一橋ひとつばし ごう……35普連1中隊の一等陸士

久木田くきた れい……35普連1中隊の新人

東雲しののめ 舞夢まいむ……34普連衛生小隊

糸原 ツヅラ(いとはら)……第4施設群所属の三等陸曹

紅林くればやし たま……眼窩底骨折の疑いあり

北嶺きたみね 百合果ゆりか……生き残りの敵兵に撃たれ重傷

坂下さかした ジュリア……35普連3中隊の新人

久里浜くりはま 良仁よしと……35普連3中隊の中隊長

吉良きら 幹丈かんじ……35普連1中隊の三等陸尉

浅井あさい やしろ……理央がリードする事に納得していない

奥戸おくと 健太けんた……35普連3中隊の三等陸曹

手塚てづか 泰二郎たいじろう……35普連2中隊所属の三等陸曹

芦屋あしや じん……10通2中隊の三等陸曹

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ