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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第74話 血筋

――2020年9月30日 7:30 成田空港――


「何やら兵が騒がしいな…。」(タイタス・アイホロジェ陸軍准将)


身支度を整え、指令室となっている管制塔へ進んだのは、タイタス・アイホロジェ陸軍准将。この千葉県方面軍(成田防衛隊)の司令官を務める。


アステリム帝国、帝国4大貴族の一つ、「アイホロジェ家」の血を引くこの貴族は、空港内から聞こえる轟音に嫌な予感がしていた。



――成田空港 管制塔――


「何事だ?」(アイホロジェ)


「准将殿!」(ラーミー・スハイル陸軍中尉)


「こちらへ向かう装甲列車の中にネズミが混じっていました。現在、近衛中隊が戦闘中です。」(モモ・イザトック空軍准尉)


「戦ってどれくらい経つ?」(アイホロジェ)


「30分程かと…。」(イザトック)


「むう…、呑気に寝ている場合ではなかったか…。」(アイホロジェ)


敵の侵入に気付かず、眠っていた事を恥じながら、アイホロジェは部下に戦況の確認を行った。


「ラーミー、状況を整理しろ。何が起きた? 近衛中隊が手間取っているってことは、ただのゲリラではないだろう。」(アイホロジェ)


スハイルは、緊張した面持ちで報告した。


「申し上げます。列車内のネズミは、第一空挺団と呼ばれる部隊です。」(スハイル)


アイホロジェ准将の瞳の色が一瞬にして変わった。


「馬鹿な。利根川水郷地帯は、対空砲と伏兵部隊で、制空権を確保していたはずだ。なぜ、この空港中枢に迫れる?」(アイホロジェ)


「詳細は不明ですが、奴らは我々の装甲車両を鹵獲した模様。更に……水郷地帯に展開していた我々の哨戒部隊は、壊滅しました。」(スハイル)


「壊滅だと?」(アイホロジェ)


アイホロジェは、自らの失態を糊塗するかのように、声を荒げた。


「あそこには、ゼファーとゲンナーの小隊を配備し、入念に準備した地帯だ。それが、たかが下等生物の降下部隊ごときに……。アストロはどうした!?」(アイホロジェ)


「アストロ中佐殿は、用事があると早朝から出払っております…。」(スハイル)


「ならば、貴様が全権を取り、迎撃部隊を編成しろ!」(アイホロジェ)


「しかし、今残っているのは予備隊だけです。呼ぶにしても早くても40分程かかります。」(スハイル)


「いいからさっさと呼べ!」(アイホロジェ)


「りょ……了解しました。」(スハイル)


アイホロジェが焦っているのには理由があった。それは勿論、指揮官としての失態を挽回するためだけでなく……。


「近衛中隊の戦闘状況は!? 誰が指揮している!」(アイホロジェ)


「ニーファ・マカベリー陸軍中尉です。そして……」(スハイル)


スハイルは言い淀み、額の汗を拭いた。その名を告げた瞬間、司令官の理性が崩れると分かっていたからだ。


「そして何だ、言え!」(アイホロジェ)


「中隊には、アレン・アイホロジェ陸軍少尉が、実習という形で合流し、ネズミの排除に参加中です。」(スハイル)


その瞬間、アイホロジェの顔色が、血の気を失って蒼白になった。



アイホロジェ家の人間は、軍での功績を通じて家門の地位を維持することが義務付けられている。タイタス自身は、本家筋の三男だったので、家督を継ぐことは叶わなかったが、そのまま軍人の道を歩んだ。そして甥であるアレンは、現当主でタイタスの兄・ザクソン・アイホロジェの息子であり、家督相続の優先順位が極めて高い、本家の嫡流だった。


「馬鹿な!この遠征は、アレンの戦功を積むための場だと兄上から聞いている!それを前線にだと!? ニーファは何をしている! 即座にアレンを後方へ下げさせろ! 彼は戦うべきではない!」(タイタス・アイホロジェ)


子宝に恵まれなかったタイタスにとって、アレンは可愛い甥であり、自分の子のように感じている存在だった。また、軍で出世した自分よりもはるかに地位の高い、次期当主となるべき存在だ。その命が危険に晒されることは、家門の存続に関わる最大の危機だった。


「しかし、マカベリー中尉は今、敵の抵抗を鎮圧すべく、先頭で指揮を執っております。通信は混乱しており、准将殿の命令は届きません!」(スハイル)


タイタスの家門への責任と地位を守るための焦燥が、彼を極度のパニックへと追い込んだ。


「通信を確保しろ! 何としてもアレンを戦場から離脱させろ! 近衛中隊を消耗させるな! アレンを失えば、アイホロジェの血が……帝国の至宝が失われるぞ!」(タイタス・アイホロジェ)


それは迎撃作戦ではなかった。ただ一人の血族を守るための命令だった。スハイルは、司令官の常軌を逸した焦燥に、不安を覚えた。


「イザトック!」(スハイル)


スハイルは、オペレーター席で冷静に情報を処理しているモモ・イザトックへ鋭く呼びかけた。


「空港内の戦闘状況を、視覚情報で即座に切り替えろ!アレン少尉の所在を確認する!」(スハイル)


「ラジャー。」(イザトック)


管制塔のメインモニターは、空港内部を映し出す、近衛兵のヘルメットカメラの映像へと切り替わった。通路は煙と血で汚れ、天使族の女性中尉、ニーファ・マカベリーが、部下へ鋭く指示を飛ばしている姿が確認できる。


彼女のすぐ後ろで、青ざめた表情で銃を構えるヒト族の青年、アレン少尉の姿があった。彼は近衛中隊の隊員たちとは異なり、まだ戦場慣れしていない様子がありありと見て取れる。


映像が激しく揺れた。敵の攻撃がマカベリーとアレンに直撃したのだ。


「中尉! 側面を破られました! 敵が流れてきます!」


攻撃を受け、意識が朦朧とする中、マカベリーは気丈に指示を飛ばす。


「冷静になれ! アレン少尉、あなたは直ちに後方へ――」(マカベリー)


彼女の命令が最後まで発せられることはなかった。破られた側面から、火炎と破片が吹き出し、映像は砂嵐へと変わった。


「アレン! アレン!」(アイホロジェ)


タイタスの悲鳴が管制塔に響き渡った。


「通信途絶! 空港内部、状況不明です!」(イザトック)


「くそっ……。貴様ら、一体何をしている! ゴミ共め……許さんぞ!」(タイタス・アイホロジェ)


彼は、水郷地帯でゼファー・チョウジュンとゲンナー・ムンチの小隊が壊滅したことも、甥の危機も、全てが“日本軍空挺団“の所為だと、激しい憎悪を瞳に宿した。


「ラーミー! 迎撃部隊を編成したらすぐに、水郷地帯の壊滅原因を徹底的に調べろ。そして、あの下等生物に我々の戦力の全てを見せつけてやれ!」(タイタス・アイホロジェ)



一方その頃、成田空港地下の下水管では、とある部隊が作戦実行のために動いていた。


「目的地到着。」

「予定通りだ。」

「これより、作戦を開始する。」

登場人物紹介

タイタス・アイホロジェ

種族・性別:ヒト族の男性

所属・階級:陸軍准将、成田防衛隊最高司令官

備考:帝国4大貴族の本家筋三男。兄のザクソン・アイホロジェが家督を継ぎ、自身は軍人として出世する。


モモ・イザトック

種族・性別:モモンガ型獣人族の女性

所属・階級:帝国空軍准尉、管制塔でオペレーターを務める


ラーミー・スハイル

種族・性別:天使族の男性

所属・階級:陸軍中尉、テリムトの作戦参謀部

備考:アストロの命令を受け、成田空港に馳せ参じた。


ゼファー・チョウジュン

種族・性別:フロッグ族の男性

所属・階級:帝国海軍少尉、成田防衛隊・第5河川制圧連隊

備考:小隊を率いて柴崎町付近に潜伏していたが、空挺団との戦闘で戦死。小隊も全滅した。


ゲンナー・ムンチ

種族・性別:フロッグ族の男性

所属・階級:帝国海軍少尉、成田防衛隊・第5河川制圧連隊

備考:小隊を率いて柴崎町付近に潜伏していたが、空挺団との戦闘で戦死。小隊も全滅した。


ニーファ・マカベリー

種族・性別:天使族の女性

所属・階級:陸軍中尉、成田防衛隊・近衛中隊中隊長


アレン・アイホロジェ

種族・性別:ヒト族の男性

所属・階級:帝国陸軍少尉、近衛中隊

備考:アイホロジェ家当主のザクソン・アイホロジェの息子で、次期当主候補の1人。地球への遠征は、帝国内より戦果を挙げ易いとザクソンが判断し、参謀本部に推薦したから。


※近衛隊……司令官及び指揮官が貴族だった場合に、護衛として配属される部隊。司令部の管轄。男爵→1個支隊、子爵→1個分隊、伯爵→1個小隊、公爵→1個中隊、王族→1個大隊が与えられる。


※2)帝国4大貴族……アステリム帝国は、国を5分割しており、中央を王族が、東部をアルアパ家、西部をアポロ家、南方をアイホロジェ家、北方をアリステロム家が統治しています。4大貴族の爵位は公爵です。


※3)アステリム帝国は、アステリム大陸という1つの大陸が国でしたが、過去に「帝国憎し」の風潮から、独立戦争を行い、南部の複数地域が独立して国となりました。年月の経過とともに、各国、「帝国憎し」の風潮は消えましたが、帝国南部の国境線にある「バウト王国」はまだ「帝国憎し」の状態であり、国境を挟んで緊張状態が続いています。


その為、南部を統治するアイホロジェ家は、他の4大貴族と違い、戦争を身近に感じています。アイホロジェ家は、有事に備えて戦えるように、一族に兵役を課しています。

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