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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第68話 波濤の奇襲

――2020年9月30日 7:00 湯河原町兵站拠点(的山公園)


俺の名は運天要(うんてん かなめ)。俺は今、兵站拠点の一つ、的山公園の哨戒任務を行っている。


オペレーション・ギデオン(第7次首都圏奪還作戦)に出動して10日程が経つが、俺はこれまで戦闘を経験していない。したことと言えば、街に残っている住民の避難誘導と、遺体回収の手伝いくらいだ。俺が所属する隊はまだ戦闘を経験していない。


戦闘にびびっている連中がいる一方で、俺が前線に立てないのは、やはり納得がいかない。俺だって国の役に立てる。英雄になれるはずだ。このまま後方で終わるのは絶対に嫌だ。この10日間、ずっと気分が晴れないまま過ごしている。


6時過ぎに、小田原へ向かっている部隊が奇襲を受けたと報告があった。それに呼応するように、千葉から横須賀へ向かっている部隊にも、新たに動きがあったようだ。無線から聞こえる内容は、戦況は劣勢で、死傷者も多いということだ。こんな状況なのに、俺たちはここに残っていいのだろうか?


片桐連隊長へ援軍に向かうべきと具申するも、拠点の防衛を命じられた。


「くそー! グーリエ星人め、来るなら来やがれ!」(要)


思わず叫んでしまった。


一瞬の静寂後、警報が鳴った。俺の叫びが、フラグとなったかのように、直後、グーリエ星人がこちらへ向かっているとの連絡が入る。海から、そして空から…。


「海自はどうしたんだ? 全滅したのか?」(要)


直後、無線がジャミングされ、情報が届かなくなった。俺たちは、「グーリエ星人を湯河原で迎え撃つことになる」と、片桐連隊長の命令のもと、戦闘装備の命令が下る。


「10高は拠点の防衛、35普連は市街戦を行う。」(片桐)


「(よし、ついに俺も戦うときが来た! 国のため、日本国民のため、グーリエ星人を皆殺しにしてやる!)」(要)




一方その少し前、海上では…。


――相模湾 帝国”鹵獲艦隊旗艦”「アーチー」


「奇襲は成功したようだな。敵はまだ何も分かっていない。」(ロテウス・プー)


「はい、敵の通信隊とレーダーサイトを真っ先に叩きました。陸地の敵は我々の動きを掴めていないでしょう。」(タニア・ワイルダック海軍少佐)


「そのようだな。では次の獲物だ。砲撃開始、狙うは伊豆半島沖! 敵空母と護衛艦計4隻!潜水艦2隻! 撃てぇ!」(ロテウス・プー)



――伊豆諸島沖――


護衛艦「海王」の戦闘指揮所(CIC)は、悲鳴に近い報告で溢れていた。


「敵弾道、計算不能! 軌道が……空中で変化しています!」(恒村)


「そんな馬鹿な! 127mm速射砲の弾丸だぞ!?」(力安)


帝国側は鹵獲した海自の火器に、独自の誘導技術を付加していた。かつて熟知していたはずの「自国の武器」が、今は化け物となって牙を剥く。


白鷺(しらさぎ)、ESSM連射! 防空圏を維持しろ!」(力安)


「白鷺」から放たれたミサイルが空を埋めるが、敵の砲弾は網の目を潜り抜けるように「海王」の右舷へと着弾した。


「右舷被弾! 浸水、防火扉閉鎖!」(恒村)


CICの空気が凍りついた。


「水中からも来ます! アクティブ・ソナーに感あり。……速い! 魚雷じゃありません、水中ドローンです!」(沼田)




海中では、海自の潜水艦「渦潮(うずしお)」が孤軍奮闘していた。


「海眼ロスト! 敵の攻撃型ドローンに食われました!」


「クソッ、水燕(すいえん)発射! (かすか)を囮にしろ、本艦は深度を下げろ!」(則)


しかし、放たれた「水燕」は敵艦に命中する直前、見えない壁に弾かれたように爆発した。


「命中……いや、無効化されました! 敵艦、電磁防壁あるいは水流操作を展開中。こちらの電光、速度で追いつけません!」


海自の最新鋭ドローン兵器は、すでに帝国によって「解析済み」だった。彼らは海自の周波数をジャミングし、ドローンの制御を次々と奪っていく。


「各艦、データリンク強制遮断! 敵にシステムを侵食されています! 艦の制御が……勝手に書き換えられている!?」(布置)


「何だと……!? 全員、マニュアルへ切り替えろ! 物理照準で撃て!」(力安)


力安の叫びも虚しく、護衛艦「迅風(じんぷう)」のVLS(垂直発射装置)が誤作動を起こし、空に向けられたミサイルが自艦の甲板で爆発した。


「迅風、大破! 誘爆止まりません!」


曉波(あかつきなみ)、ESSMで迎撃せよ!」(力安)


「艦長!曉波は船体が…。」(城島)


「曉波」もまた、船体中央に直撃を受け、2つに折れようとしていた。艦長・新伍晃(しんご あきら)は血まみれになりながらも、歪んだ艦橋でマイクを握る。


「……総員、離艦せよ。……繰り返す、総員離艦。」(新伍)


「……この国を、頼むぞ……」(新伍)


その直後、巨大な爆鳴と共に「曉波」は海中へと姿を消した。


海中深くでは、潜水艦「渦潮」が敵の水中ドローンの猛攻に晒されていた。


「幽が2機、右舷推進器に直撃! 則艦長、もう持ちません!」


「……せめて一矢報いるぞ。 "電光"、全門解放! 目標、敵旗艦! 撃てぇ!」(則)


最期の叫びと共に放たれた電撃的な魚雷。しかし、敵旗艦の周囲で待機していた帝国軍の水中兵たちが、盾のような物で魚雷の信管を叩き割り、あるいは強引に軌道を逸らしていく。


「馬鹿な……人間が、海中で魚雷を……!?」(則)


それが、則が見た最期の光景だった。敵ドローンが「渦潮」のハッチをこじ開け、船内へと流れ込む。


「潜水艦・渦潮、通信途絶……沈みました!」(沼田)


報告が届くたびに、「海王」のCIC(戦闘指揮所)は絶望に染まっていく。防空の要であった「白鷺」も、降り注ぐ誘導弾の嵐に耐えきれず、艦橋を吹き飛ばされて炎上している。


「敵旗艦より発光信号! ―― "降伏せよ、そして沈め" だと!?」(布置)


「……生かす気などないくせに…ふざけるな。まだ航空隊が残っている!」(力安)


力安は血の混じった唾を吐き捨て、甲板に繋がるマイクを握った。


「全機発艦! 残存する全弾薬を叩き込め! "海王" の誇りを見せてやれ!」(力安)


「海王」の甲板から、残存機が次々と飛び立つ。しかし、帝国鹵獲艦隊からは、見たこともない形状のドローンが群れをなして飛来した。


「空中ドローン群、来ます! 速い……F-35でも振り切れません!」(空自パイロット)


空中戦が始まると同時に、海面が大きく盛り上がった。帝国側の砲撃が、ついに「海王」を捉えたのだ。


「直撃! 左舷後部、飛行甲板損壊!」(恒村)


「着艦不能です! 航空隊、戻る場所がありません!」(沼田)


さらに追い打ちをかけるように、海中から複数の水中ドローン「剣魚(つるぎう)」が「海王」の船腹を突き刺した。内部で連鎖爆発が起き、巨大な空母が大きく右に傾ぎ始める。


「剣魚です。鹵獲されたようです!」(城島)


「……ここまでか。……もういい、脱出しろ。」(力安)


「艦長! まだ戦えます!」(恒村)


「いや、俺たちの負けだ。敵は……俺たちが思っている以上に、この国の戦力を知り尽くしている。」(力安)


「(あの時、敵は我々のデータを取っていたのだな……。それを、短期間でやり遂げるとは……)」(力安)


「第6艦隊制圧中隊、戦艦から脱出した敵兵を仕留めなさい。」(ブランチェスカ・ローニア海軍中佐)


「よっしゃ、お前ら行くよ! 奴らは泳ぎもままならない。一網打尽にしてやれ!」(フォエニカ・ジゴン海軍中尉)


「どっちが多く殺れるか、勝負ですよ!中尉殿!」(シェリア・シェン海軍曹長)


「負けた奴が、お酒奢るのはどうですか?」(ディッパ・セギンス海軍軍曹)


「ははは、小隊規模で勝負すっか?」(ジゴン)


「その話乗った!」(シャラ・ポッパー海軍少尉、シェルダン・ルックノワ海軍少尉)


彼女達は、獲物を狩るかのように楽しげに話し、水中へと消えていった。


各戦艦の乗組員が救命ボートへ移り、撤退を図ったところに、帝国軍伏兵が奇襲を仕掛ける。


力安は沈みゆく艦橋から、燃える相模湾を見つめた。 空では航空隊が敵機やドローンに囲まれて次々と火だるまになり、海では救命ボートへ逃れた生存者たちが、水中から現れた帝国兵によって無慈悲に「掃除」されている。


「総員……離艦……。すまない……。」(力安)


2020年9月30日 7:36。 海上自衛隊が誇る最新鋭空母「海王」は、轟音と共に艦首を上げ、相模湾の深淵へと没していった。相模湾を覆っていた海上自衛隊の防衛線は、完全に消滅した。


それを、陸にいる誰もまだ知らない。

登場人物紹介

タニア・ワイルダック

種族・性別:ワニ族の女性

所属・階級:帝国海軍少佐、小田原殲滅隊・第5艦隊制圧連隊副連隊長


ブランチェスカ・ローニア

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍中佐、小田原殲滅隊・第5艦隊制圧連隊2大隊大隊長


フォエニカ・ジゴン

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍中尉、小田原殲滅隊・第5艦隊制圧連隊2大隊6中隊中隊長

備考:姉御肌


シェリア・シェン

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍曹長、第6艦隊制圧中隊

備考:好戦的な性格


ディッパ・セギンス

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍軍曹、第6艦隊制圧中隊

備考:酒好き


シャラ・ポッパー

種族・性別:人魚族の男性

所属・階級:海軍少尉、第6艦隊制圧中隊

備考:有望な若手尉官


シェルダン・ルックノワ

種族・性別:人魚族の男性

所属・階級:海軍少尉、第6艦隊制圧中隊


運天うんてん かなめ……隼人、杏南の同期。英雄になりたいと思っているが、自身の実力を把握できていない。

片桐かたぎり はじめ……35普連の連隊長

力安りきやす 悟郎ごろう……艦隊旗艦「海王」の艦長。享年51歳

恒村つねむら 大央だおう……海王の副艦長。享年44歳

沼田ぬまた 大典だいすけ……海王の通信士。享年27歳

布置ふち 元気げんき……海王の通信士。享年27歳

城島じょうじま せん……海王の乗組員。享年33歳

新伍しんご あきら……護衛艦「曉波」艦長。享年45歳

のり 哲鷹てつたか……潜水艦「渦潮」の艦長。享年49歳

ププップ・ロテウス・プー……帝国軍鹵獲艦隊艦長


本作に登場する架空の装備品

艦隊旗艦:海王かいおう

護衛艦:迅風じんぷう曉波あかつきなみ白鷺しらさぎ

潜水艦:渦潮うずしお黒鮫くろさめ


魚雷:90式長魚雷改壱

水中ドローン用魚雷:電光でんこう→小型ながら素早く、電撃的な攻撃を可能とする

小型無人潜水艦用魚雷:水燕すいえん→水中を燕のように自在に動き回る


偵察・探査型水中ドローン

海眼かいがん→広範囲を監督する

深影しんえい→深海に潜み、敵に気付かれることなく情報収集する


攻撃・妨害型ドローン

剣魚つるぎうお→先端が鋭く剣状のため、先端で攻撃も可能


作戦遂行型小型無人潜水艦

叢雲むらくも

かすか→極めて低い被探査性がある。


鹵獲艦隊「アーチー」……帝国海軍が鹵獲した海保の船を改造した戦艦。「アーチー」は歴代皇帝の名前からきている。

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