第62話 死と対峙する者
「段場、木山、怪我はないか?」(地頭)
地頭曹長の声に、僕は木山と目を合わせる。
「問題ありません。」(隼人)
「はぁはぁ……大丈夫です。」(木山)
木山は、大きな怪我こそないが、心が疲弊しているようだ。だが、援軍のおかげで少し落ち着いたように思える。
タタタタン! タタタタン!
地頭曹長と花井中隊長が連携し、敵兵を討ち取った。
「敵陣形に綻びが出来た。一気に抜けるぞ!」(花井)
タタン!
「ぐっ…」(花井)
「うっ…」(地頭)
花井中隊長の号令で、敵陣形の隙間を一気に駆け抜けようとするが、花井中隊長と地頭曹長は、地面に倒れ込んだ。2人は、足に銃弾を受けてしまったのだ。
「待ってて下さい! すぐに助けます!」(山田)
「俺に構うな!」(花井)
「安心しろ、すぐに向かう。」(地頭)
「うおおおおおお!」(山田)
タタタタン! タタタタン!
山田三曹が叫びながら応戦し、2人の救出を試みるが、頭部に銃弾を受け、血飛沫を上げて倒れてしまう。
「山田! くそ…。」(花井)
「段場! 木山を連れてここから離れろ!」(地頭)
「でも…。」(隼人)
「いいから逃げろ! お前らがここにいても無駄死にするだけだ!」(地頭)
僕は、地頭曹長の命令を無視し、敵兵を討ち続けた。仲間がこれ以上死ぬのは見たくない。何発かは当たったが、仕留めるまでにはいかず。
「馬鹿野郎が…。」(地頭)
僕が敵兵に向かって撃ち続けている間に、花井中隊長の体が大きく揺れた。次の瞬間、その体が力なく崩れ落ちる。心臓を撃ち抜かれていた。
地頭曹長は、血を流しながら手榴弾を投げて応戦していたが、その手が力なく落ち、手榴弾が暴発した。さっきまで敵に向かっていたその手は、もう動かなかった。
地頭曹長は、自身の手榴弾の暴発で亡くなった。僕が初めて会った時の、厳しくも温かさのある、あの気高さは感じない、ただの肉塊となってしまった。
「あ、あ、あああ…。」(木山)
地頭曹長の死を目の当たりにし、木山は再び虚ろな目で震え始めた。再び敵に囲まれた。まずい、このままでは……
登場人物紹介
段場 隼人……本編の主人公。敵に囲まれて絶対絶命
木山 拓哉……隼人の同期。またパニックになる。
花井 賢人……34普連3中隊の中隊長。心臓を貫かれ死亡。享年39歳。
地頭 孝之……35普連2中隊の頼れるベテラン。手榴弾の暴発のより死亡。享年39歳。
山田 士之介……34普連3中隊の三等陸曹。敵の銃弾を頭部に受け死亡。享年26歳。




