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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第61話 奇襲

「ヒャッハー、奇襲成功! 全員皆殺しだ!」(オグマ・シグニュス陸軍軍曹)


けたたましい叫び声と共に、僕の目の前の地面が盛り上がり、土煙を噴き出しながらモグラのようなグーリエ星人が現れた。両腕にはドリルのような装備が装着されている。これで穴を掘って地中に潜んでいたのか。


このモグラは何かを叫んだ後、間髪入れず魚見陸士長へ襲いかかった。


「(伸びた…!?)」(まひる)


魚見陸士長の目が、ほんの一瞬だけ大きく見開かれた。次の瞬間だった。ドリルが腹を貫いた。


やがて、肉を切り裂く鈍い音と共に、内臓が飛び散った。魚見陸士長が倒れた傍では、仲間が次々と敵銃弾に倒れていた。魚見士長を殺したモグラに杏南が銃剣で切りかかる。その表情は、これまで見たことのない怒りに満ちていた。


「ひゅ~(口笛)、こいつ結構やるな~」(シグニュス)


「あいた!」(シグニュス)


すると、モグラの耳元に銃弾が当たる。瑛松二曹だった。


「ひゅ~(口笛)、良い女じゃねぇか。生け捕りにして俺のコレクションにしてやるぜ!」(シグニュス)


モグラの下衆な発言に怒りが込み上げ、モグラへ向かって発砲していた。モグラは敢えて日本語で喋っていた。挑発のつもりだろう。モグラは杏南の銃剣による攻撃を受け流し、瑛松二曹や僕の銃撃もかわす。恐ろしい動体視力だった。


それに、こちらの神経を逆なでにする術もある…。仲間の遺体を掴み上げ、そのまま盾にした。弾丸が、肉に突き刺さる鈍い音を立てた。


「ほら、撃ってみろよ。お前らの仲間だぞ?」


仲間の顔が見えた。今朝、健闘を誓い合った隊員だった。


「このやろおおおおおおおお」(隼人)


遺体を弄ぶ行為に怒りが頂点に達した。


「感情的にならない!」(瑛松)


瑛松二曹に一喝される。


「2人とも、戦場では冷静になりなさい!」(瑛松)


瑛松二曹に喝を入れられ、杏南の動きが良くなったように思えた。モグラの表情に余裕がなくなり、押され出した。


「馬鹿野郎!油断するな!」(ガイネル・ノザクサ陸軍軍曹)


モグラの援護に来たリザードマンの銃撃で、杏南の体勢が崩れた。その隙にモグラのドリルが杏南の顔に向かう。が、杏南は冷静だった。ドリルの攻撃をかわした後、拳銃を取り出し、モグラの左肘を撃ち抜く。


パァン!


「なっ?」(シグニュス)


パァン!


間髪入れず、反対の肘も撃ち抜き、耐性を立て直した後にモグラをこかす。倒したモグラに拳銃を突きつけたその時…。


「海上より、敵襲来! 大隊規模!」

「後方より奇襲!」

「敵前方より敵兵!」

「砲弾が来ます! 伏せろー!」


ドォン!!


「ほ、砲兵部隊は全滅…。拠点も奇襲を…。賀井連隊長ほか、拠点に残っていた部隊は…全滅…。がは!」(栄摩)


無線から栄摩三尉が消え入るような声で報告してきた。兵站拠点の一つが潰された。この間にも、仲間の断末魔の悲鳴が聞こえる。


四方から敵兵の奇襲を受け、前方から戦車の砲撃が来る。爆風に巻き込まれた杏南や瑛松二曹が吹き飛ばされる。爆風で杏南と瑛松二曹とはぐれてしまった。


「うわあああああああああ、来るな、来るなあああああああああああああ」(木山)


タタタタン! タタタタン! タタタタン! タタタタン!


僕の近くで木山が銃を乱射していた。混乱しているようだ。敵と味方の区別がつかない、ただの恐怖に駆られた叫びだった。


「止めろ、木山! 闇雲に撃つな! 味方に当たるぞ!」(隼人)


僕の声は悲鳴に掻き消された。


「ぐあ!」(中嶋)

「がはっ」(瀧嶋)


僕の声は届かなかった。木山の撃った銃弾は、瀧嶋二曹、中嶋一士に当たり、そして2人は亡くなった。


「木山、今撃ったのは味方だ! 」(隼人)


何とか木山に近づき、冷静になれるよう声をかけたが…。


「はっ、俺は、俺は何てことを…。」(木山)


「あああああああああああああああああああああああああ」(木山)


「木山、落ち込むのは後だ。体勢を立て直して反撃するぞ!」(隼人)


「俺は、俺は…。うわあああああああ」(木山)


木山は銃を放り出し、ただひたすらに自分の頭を抱えて叫び続けている。僕はどうすることもできず、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。いつの間にか敵に囲まれていた。


「くそ、ここまでなのか?」(隼人)


新人2人が戦場で敵に囲まれる。うち1人は錯乱している。ああ、これはもう死ぬな。僕の脳裏には、静流や杏南、両親の顔が浮かんできた。小学2年の頃、静流を泣かせた当時のクラスメイトと喧嘩したこと、家族で熱海に旅行へ行ったこと、杏南との出会い、尊敬できる先輩方との出会い…。走馬灯が頭を駆け巡る。


ああ、まずい。最期の言葉を静流にどう伝えようかと考えている時点で、もうだめだ。これ、本当に死ぬわ。その時だった。


「まだ立てるか?」(地頭)


地頭曹長と、そして、34普連3中隊の花井中隊長と山田三曹により、僕は助けられた。


「ああ、地頭曹長…。」(隼人)


地獄で仏とはこのことだろうか。状況が劇的に好転したわけではない。しかし、絶望的な中、頼りになる上官が助けてくれたことで、僕にまた、「生き残る」という強い気持ちが芽生えた。

登場人物紹介

オグマ・シグニュス

種族・性別:モグラ型獣人族の男性

所属・階級:陸軍軍曹、小田原殲滅隊「第3奇襲連隊」

備考:石橋付近に穴を掘り、地中からの奇襲を行う。女癖が悪い。「皆殺し」と言うなら、「全員」は必要ないのだが…。彼のおつむを物語っている。


ガイネル・ノザクサ

種族・性別:リザードマンの男性

所属・階級:陸軍軍曹、シグニュスと同じ部隊に所属

備考:シグニュスとは違い硬派


段場だんば 隼人はやと……本編の主人公、敵に囲まれて死を覚悟した

苫米地とまべち 杏南あんな……隼人の同期で恋人

魚見うおみ まひる……シグニュスの攻撃によって死亡。享年21歳

瑛松えいまつ 理央りお……35普連2中隊所属。敵の奇襲にも冷静に対応。

木山きやま 拓哉たくや……隼人や杏南と同期。敵の奇襲にパニックとなり、味方を誤射してしまう。

栄摩 来仁……第10施設大隊所属で、石橋の拠点に待機していたところ、奇襲に遭って死去。享年28歳

賀井がい 双一郎そういちろう……34普連の連隊長。真鶴の兵站拠点で襲撃され死亡。享年51歳。

中嶋なかじま あさひ……ゆずり葉学園で遺骨や遺品を月白展望台に届けた隊員。木山の誤射により死亡。

瀧嶋たきしま 達世たつよし……ゆずり葉学園で先陣を切った隊員。木山の誤射により死亡。享年32歳。

花井はない 賢人けんと……34普連3中隊の中隊長

地頭じとう 孝之たかゆき……35普連2中隊の頼れるベテラン

山田やまだ 士之介しのすけ……34普連3中隊所属。


※モグラ型の獣人族は、穴を掘る技術に長けています。小さい穴なら素手で掘れますが、大規模な穴は重機や装備品を使わないと掘るのに時間がかかります。大規模な穴掘りは、両腕にドリル型の装備品を着けて穴を掘ります。このドリル型の装備は、近接戦闘で武器にもなります。また、モグラ型獣人は、薄暗い場所を好みますが、陽の光を浴びても問題ありません。

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