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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第60話 奈落の伏兵

「さて、連中は何を仕掛けていたのか。」(和戸)


和戸一尉は、通信機を手に取り、即座に第10特殊武器防護隊の派遣を要請する。毒や細菌兵器を仕掛けている可能性を示唆してのことだ。


天津種中隊長は、まるで魂が抜けたかのように、すっかり憔悴していた。先ほどまでの威圧的な態度は消え失せ、和戸一尉の指示をただ黙って聞いている。彼女のプライドは、この戦場で完全に打ち砕かれたようだった。


負傷した鈴木一士を拠点に送る班と周囲の哨戒任務を行う班に分かれて任務を続ける。僕は哨戒任務を行う。僕らは、周囲を警戒し、特殊武器防護隊の到着を待つ。


その間、天津種中隊長は黙り込み、指揮を取ろうとしない。



数分後、特殊武器防護隊が到着し、グーリエ星人が仕掛けた装置の調査を開始した。


「毒物の反応はなし。放射線や生物兵器の痕跡もなし。」


応援に駆け付けた特防の隊員は、特殊な探知機を使いながら淡々と報告する。


「外部に不自然なアンテナが取り付けられているし、内部の構造も見る限り、これは通信機器のようだ。おそらく、敵の野外通信用かと。」


「敵の通信機器なら、取り除いて正解だな。」(江鹿)


和戸一尉は特防隊員に、「ご協力感謝する」と礼を述べた。


「これは、回収して電子戦隊に解析を頼もう。鈴木の怪我のこともある。これ以上深追いしても得策ではない。一旦、戻ろう。」(和戸)


「了解!」(一同)


僕らは、回収した通信機器を厳重に梱包する。周囲の警戒を怠らず、迅速にその場を離れる準備を始めた。兵站拠点はまだ完成してはいないが、仮設テントは設置済みで、搬送された怪我人の治療を行っていた。鈴木一士も応急措置を終えると、病院へ搬送された。


「正直、戦場を離れるのはラッキーだよ…。」(鈴木)


そう呟いたのが聞こえた。その呟きは、恐怖から解放された安堵と、戦友を残していく申し訳なさの、両方が入り混じった複雑なものに聞こえた。この戦場で、誰もが内心で抱えている感情を、彼は素直に口にしたのかもしれない。



――2020年9月29日 18:00――


斥候より、ここから3km先にある道の駅に戦車が止まっていたと報告があり、作戦会議が行われた。


「3kmは近いな。」(有朋)


「止まっているだけで、動きはありませんでした。」(郷)


「3km先にある戦車は、鹵獲された16式だそうだ。連中のことだから改良しているだろう。性能が上がっている想定しろ。迫撃砲でこいつを叩く。迫撃砲の設置個所は、このエリアにする。敵本隊は巧妙に隠れており、まだ尻尾が掴めない。敵戦車を叩いた後は、一気に進軍せよ。」(賀井)


賀井連隊長の言葉に、部屋中の空気が張り詰める。


「それと、相模湾に再び、グーリエ星人の艦隊が姿を現した。サボテンパークに34普連の重迫撃砲中隊を控えさせる。陸・海で迎撃せよ。」(賀井)


「了解!」


僕は、賀井連隊長が指差した地図上の地点を凝視した。


「明日、6:00に進軍を開始する。」(賀井)


「了解!」(一同)


砲兵部隊は、迫撃砲の設置のため、すぐに発った。塹壕を掘ってそこで一晩過ごすそうだ。



――2020年9月29日 23:30――


兵站拠点近くの野営地。小さな焚き火の周り、僕は木山、小城、愛元と身を寄せ合って座っていた。他の隊員もいるが、皆、明日の戦闘を前に、眠れずにいる。空には星が異様に明るく、虫の声すら聞こえず、山は死んだように静まり返っていた。遠くで時折、砲兵部隊の作業音が聞こえるだけだ。


「さっきの鈴木の呟き、頭から離れねえな。」(木山)


木山が焚き火に木の枝をくべながら、ぼそりと言った。


「戦場を離れられてラッキー、か。本音だろうな。あと、"鈴木さん"な。先輩だぞ。」(小城)


小城は静かに、自分の銃の手入れを続けている。銃床に触れる音が、やけに大きく聞こえた。


「僕も、正直、怖いよ。」(隼人)


僕は膝を抱え込み、正直に打ち明けた。普段の強がりは、この夜の静けさの前では意味をなさない。


「そりゃそうだろ、人間だもん。俺だってそうだ。でも、今更逃げらんねえ。俺たちが行かなきゃ、後ろの街の奴らがやられる。」(愛元)


「そういえば、さっき、益子一士が、藪の中にいたな。またヤッってるんだろうな…。こんな時に何やってるんだか。」(小城)


「マジか、相手誰だ!?」(木山)


「相手までは見えなかったから知らん。」(小城)


実は、益子一士が藪の中に入るところを見ていた。相手は瑛松二曹だった。下種な笑顔を浮かべながら、馴れ馴れしく肩を組んでいた。あれ以来、瑛松二曹の顔を見ることが出来ないが、それでも意識してしまう。この感情は何だろう? 好きなアイドルに熱愛報道が出た時の気持ちには似ているが…。相手を知っていたが、僕は知らないふりをした。明日はこちらから攻撃を仕掛けるのだ。下世話は話で花を咲かせる気持ちのゆとりはない。


ただ、この話になると、木山が心なしか元気になったように見える。あいつは、戦闘の恐怖に吞まれそうになっていた。これで気が紛れればいいが…。ただ、話がヒートアップしてしまい、WACにまで聞こえていたようで、中西三曹が白い目をしていたと翌朝に聞いた。


「俺は、結婚するまでは絶対に死なないって決めてるからな。明日も、明後日も、生きて、美味いビール飲むぞ。愛元、小城お前等もだ。」(木山)


木山が力強く話した。どうやら、吹っ切れたようだ。


「…まあ、お前らに背中を預けるしかないからな。俺は生きる。」(小城)


4人は、短い言葉を交わすことで、それぞれの恐怖を静かに押し殺した。明日への恐怖は消えないが、隣にいる仲間たちの存在が、わずかながら心の支えになるのを感じていた。



――2020年9月30日 4:40――


あまり眠れなかった。が、それもお構いなしに時間は進む。慌ただしく朝食を摂り、準備を始める。緊張感がこれまでの比じゃない。準備を整え、高機動車に乗り込む時には息が上がっていた。


拠点を下り、国道135号線へ合流する手前、海上にグーリエ星人の部隊が姿を現した。


「数は中隊規模! こちらへ向かっています!」(江鹿)


「84構え! 敵が上陸したら撃て!」(和戸)


僕ら、35普連2中隊は、84を構え、いつ上陸してもいいように待機していた。


「くそ…来るなら来い、返り討ちにしてやる…。」(木山)


「震えてたら撃ち漏らすぞ…。」(小城)


「大丈夫、大丈夫だ。」(隼人)


「グーリエ星人、間もなく陸地へ着きます。」(智川)


「かかれー!」(和戸)


ズドオオォン!!


和戸一尉の号令が出たその時だった。轟音と共に地面が爆発し、土煙が舞い上がる。


「な、何だ!?」(隼人)


土煙が収まったあと、僕は驚愕する。


「な…!?」(隼人)


僕が絶句した次の瞬間、眼前に広がる光景に僕は息をのんだ。さっきまで何もなかったはずの地面から、無数のグーリエ星人が這い上がってきている。その数は、僕らが予想していた中隊規模を、明らかに超えていた。


「…信じられない。」(隼人)


この光景は、僕らがこれまで戦ってきた敵とは全く違う。彼らは、僕らの常識を超えた存在だ。この事実は、僕の心に深い絶望を植え付けた。

登場人物紹介

段場だんば 隼人はやと……本編の主人公。35普連の2中隊所属。

苫米地とまべち 杏南あんな……隼人の同期で恋人

和戸わこ 一暁かずあき……35普連2中隊の頼れるベテラン

ごう 昴流すばる……35普連の情報小隊長

江鹿えじか あきら……35普連2中隊の頼れるベテラン

中西なかにし ほたる……35普連2中隊の若き三等陸曹

智川ともかわ 義郎よしろう……35普連の情報小隊

鈴木すずき 太陽たいよう……35普連2中隊所属。怪我で離脱する。

愛元あいもと 省向しょうむ……35普連2中隊の新人

木山きやま 拓哉たくや……隼人や杏南の同期

小城こじょう 聖太せいた……35普連2中隊の新人

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