表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/138

第49話 海辺の残照

ー 2020年9月23日 12:15 国道135号線 ー


僕らが国道135号線へ着くと、海では海自がグーリエ星人の艦隊と、空では空自がグーリエ星人の戦闘機部隊と闘っていた。耳をつんざくような砲撃音とともに、波が激しく水しぶきを上げる。僕らは流れ弾を避けるように物陰に身を潜め、グーリエ星人の上陸を待った。


「これ、84届くかな?」(隼人)


思わず呟くと、諏訪一士が遠い目をしていた。相変わらず、僕への当たりがきつい。


「この距離だと無理だ。もちろん上空にも届かん。余計なことは考えず、俺達は俺達の任務を全うするだけだ。」(江鹿)


「りょ…了解。」(隼人)


グーリエ星人は上陸してこない。海上では、水しぶきの上がる頻度が増える。


「新兵器が効いてる?」(中西)


「どうだろうな。敵の旗艦は被弾していないし、ここからだと何とも…。」(須田)


「ていうか、旗艦に当たる前にミサイルが爆発していないか?」(新山)


「ああ!」(小城)


小城の声に釣られ空を見上げると、味方F-35bが1機落とされていた。


「ああ…。」(木山)


「おい、木山、小城、段場! 目の前の任務に集中しろ! 敵が来ないからと緩むな!」(和戸)


和戸一尉に叱責され、僕らは再び海沿いを警戒する。


「仲間を失うのは、誰しもが辛い。だが、今は任務遂行に集中しなければ犠牲はまだ増えてしまう。」(和戸)




― 駿河湾沖 15海里 旗艦「海王」艦橋 ―


「103番機、墜落! パイロットの脱出を確認できません!」(布置)


「くそ…海中には水棲種がいる…救助へは無理か……。」


空自装備隊の二等陸尉が忌々しく呟く。墜落時に生きていても水棲種の攻撃によって命を落としてしまう。このパイロットの遺体は回収することが出来ない。


「クソッ、あのシールドはどうなっている。ミサイルが直撃する寸前、見えない壁に叩きつけられたように爆発しているぞ。」(力安)


通信士の怒号が響く中、力安は双眼鏡を握りしめた。敵の巨大な「重力シールド」は、現代兵器の飽和攻撃すら嘲笑うかのように、海水を不自然に押し広げている。


「艦長、敵主力艦のシールド出力に偏りがあります! 大型艦を保護するために、周囲の小型潜水艇まではカバーしきれていないようです!」(沼田)


沼田の報告に、力安の目が鋭く光った。


「潜水艦・黒鮫へ。剣魚(つるぎうお)、および水燕(すいえん)を敵小型艇群へ集中させろ。外堀から埋めるぞ!」(力安)



海中では、海自の最新鋭ドローンがその牙を剥いた。 複雑な軌道を描いて敵の迎撃を回避した水燕(すいえん)が、ついに帝国軍の二人乗り小型潜水艇の側面に直撃する。重力シールドを持たない小型艇は、海自の爆薬の威力に耐えきれず、激しい気泡を上げてのたうち回った。



― 帝国海軍 鹵獲戦艦 艦橋 ―


「……小型艇3番、4番が被弾。沿岸部へ離脱していきます」


オペレーターの淡々とした報告を聞きながら、艦隊を指揮するププップ・ロテウス・プー提督は、手元のモニターに映し出される膨大な数値を見つめていた。彼の瞳には、戦友を失った悲しみも、戦況への焦りもない。


「提督! 今度は7番機が被弾しました!」



― 帝国小型潜水艦8番機 ―


僕の名前は、エルーガ・イアテ上等兵。半漁族です。アステリム帝国海軍に所属しています。僕は子どもの頃、TVで帝国海軍の特集をされていた時、この小型潜水艦がカッコ良く、操縦士になりたく帝国海軍に入隊しました。操縦士になるべく、必死になって訓練に勉学に励み、地球遠征が決まる8年前についに操縦士として認定されました。今は、この潜水艦の操縦士として、誇りをもって仕事をしています。


しかし、僕は今、絶体絶命の窮地に立たされています。地球人が開発した魚雷による攻撃に晒されているのです。単発であれば、重力シールドで防ぐことが出来ますが、この小型潜水艦は手動でシールドを発動させるので、連発されると被弾してしまいます。僕らは、海中から敵戦艦へ奇襲する任務でしたが、敵の魚雷から逃げるので精いっぱいになってしまいました。


「イアテ、4時の方角から魚雷を確認!」(リシ・ウールア兵士長)


ウールア兵士長は、僕にとって上官ですが、僕の方が操縦技術が上だからと、メイン操縦士として僕を推薦してくれた方です。僕が、良い精神状態で操縦できるよう、細かい気配りをしてくださいます。ウールア兵長とのコンビで、テリムト内でも、上位にいる操縦技術を持っていると自負しています。


僕は機体を旋回させ、魚雷をかわすと、正面に見えた敵の潜水艦を仕留めます。――あれは無人機のようですね。


「イアテ、お見事!」(ウールア)


「ウールア兵士長のサポートのおかげです!」(イアテ)


しかし、また敵の攻撃が僕らを襲います。今度は、先端が尖っているドローンも一緒に僕らに牙を向きました。


「これは防ぎきれん! 重力シールドを展開!」(ウールア)


ドォン! ドドドン ドォン!


敵攻撃を重力シールドが防ぎ、凄まじい爆音が響きます。何とか耐えていますが、攻撃が終わりません。


「シールドがまもなく消える。このままでは被弾する!」(ウールア)


重力シールドが切れ、「バッテリ充電中」と表記されます。こうなると、30秒間、シールドを展開することは出来ません。その間、8号機は敵の攻撃を受け続けます。


「これ以上は無理だ…。」(イアテ)


僕は思わず、「緊急脱出ボタン」を押し、脱出を図ります。操縦室の一部が潜水艦から離れ、海上へ弾き出されます。しかし、僕らは窮地を脱出できませんでした。陸上から自衛隊が、僕らのように海上へ顔を出した者、上陸を試みた者達を立て続けに狙撃していきます。



「来たぞ! 敵の小型潜水艇だ! 被弾してる……砂浜に乗り上げるぞ!」(和戸)


和戸一尉の叫びとともに、僕(隼人)ら35普連の緊張は頂点に達した。 ガガガッ! と嫌な音を立てて、帝国の潜水艇が砂浜に乗り上げる。ハッチが開き、中からグーリエ星人が、独特な形状の銃を手に這い出してきた。


「今だ…今やらなきゃ…」(隼人)


砂浜に出てきた敵兵と、目が合った気がした。僕は、震える手で新型の84mm無反動砲を構えた。重い84がいつも以上に重たく感じる。


「隼人、後ろクリア! ぶちかませ!」(まひる)


魚見陸士長の声が僕の背中を押す。


「……撃つっ!!」(隼人)


ドンッ! という鋭い、それでいて旧型よりも洗練された衝撃が肩に伝わる。 放たれた弾頭は、空気を切り裂く高音を残し、一瞬で敵の潜水艇に吸い込まれた。直後、凄まじい爆炎が砂浜を包む。


「やったか……?」(隼人)


炎が収まると、そこには跡形もなくなった潜水艇の残骸はあるが、敵兵には当たっていないようだ。


「は、外した…。」(隼人)


「ぼさっとするな!」(新山)


僕が外した敵兵に新山三曹が、間髪入れず小銃を撃ち込んだ。


タタタタタン!


新山三曹が放った銃弾は、敵を見事に捉える。


「ウールア兵士長!」(イアテ)


イアテの目の前でウールア兵士長が倒れると、続いて僕も被弾し、その場に崩れ落ちます。周りをよく見ると、少なくない仲間の遺体が散見されます。


「(ああ、何て用意周到な…。)」(イアテ)



― 帝国軍鹵獲艦隊 護衛艦「ヒューマ」(元民間のフェリー)―


警告音(アラート)を消せ! ダメージなど計算(サンプリング)済みだ!」(ダイモ・シクスタンス中佐)


シクスタンスが怒号を飛ばす。海自のミサイルが装甲を食い破り、艦内には火災と悲鳴が渦巻いていた。並の火力なら耐えられるよう改造していた「ヒューマ」だったが、想定以上の火力が襲った。


「船体の構造維持限界を突破しています!」


「構わん。予備の重力コアを直列(インライン)に繋げ。外装が剥がれようが、砲座が生きていれば戦列は維持できる」(シクスタンス)


帝国軍は非常である。彼らは艦を「家」ではなく「消耗品の砲台」としか見ていない。火災警報を無視し、自動修復ボットが損傷箇所に液体金属を流し込み、無理やり穴を塞いでいく。


ギチギチと、鋼鉄が悲鳴を上げる。しかし、地球人の常識では「轟沈」と判定される状態から、鹵獲艦は再びその主砲を海自の艦隊へと向け直した。


「撃て!」(シクスタンス)



― 艦隊旗艦 海王 ―


「艦長、敵護衛艦から砲撃あり!」(沼田)


「むう、船体が燃えてなおも攻撃を止めぬとは…。」(力安)


「迎撃せよ!」(力安)


「了解。ESSM迎撃開始!」(大宮司(だいぐうじ)皓辰(こうたつ)迅風(じんぷう)艦長)


迅風(じんぷう)の甲板に並んだ垂直発射装置(VLS)から、複数のESSMミサイルが白煙を上げて飛び出した。


「全弾命中!」


「また砲撃がきます!」(沼田)


「次は、曉波(あかつきなみ)で迎撃せよ!」(力安)


「撃て!」(新伍晃(しんご あきら)曉波(あかつきなみ)艦長)



― 帝国鹵獲艦隊 艦隊旗艦 ―


護衛艦の炎上にも動じず、ロテウス・プーは、何かを待っているようだった。


「ロテウス・プー大佐殿、シェメトーリです。地球人の水中誘導兵器の旋回半径、および爆圧のサンプリングが完了しました。」(シェメトーリ)


ロテウス・プーは、「待ってました」と言わんばかりに笑みを浮かべる。


「ふむ、ならば潮時だ。……各艦、反転。潮が満ちてきた。館山へ戻る。」(ロテウス・プー)


「各艦、潮が満ちてきた。ただちに館山へ戻り、次のフェーズへ移行する。」(ロテウス・プー)


ロテウス・プーからの連絡を受け、沈没しかけていた「ヒューマ」の艦長、シクスタンス他、乗組員からは安堵の声が聞こえる。


「総員、撤退!」(シクスタンス)


「ヒューマ」の乗組員は、いっせいに海へ飛び込み、館山へ帰還する。数名は、水燕(すいえん)電光(でんこう)の犠牲になったが、主要幹部は軒並み帰還した。



― 艦隊旗艦 「海王」 ―


「艦長! 敵艦隊、反転! 退却しているようです。」(布置)


「何!? 一体どういうつもりだ!?」(力安)


「追いますか?」(恒村大央(つねむら だおう)海王副艦長)


「追いたいところだが、敵の領海にうかつには入れない。それに、我々も補給が必要だ。一度、舞鶴基地へ戻る。」(力安)



― 国道135号線 ―


海風に乗って、焦げた鉄と潮の匂いが混ざり合って漂ってくる。 砂浜には、グーリエ星人の亡骸や乗っていた潜水艇の残骸が黒い煙を上げて転がっていた。


「……はあ、はあ……」(隼人)


僕は、まだ熱を持った84mm無反動砲・(じん)を抱えたまま、砂浜に膝をついた。 自分の放った弾が逸れた砂の窪みと、その直後に正確に敵を射抜いた新山三曹の銃撃。その差が、今の自分の実力そのものだと突きつけられた気がした。


「おい、段場! ぼさっとするな、残敵警戒だ!」(和戸)


和戸一尉の厳しい声が飛ぶ。しかし、僕の視線は、息絶えたグーリエ星人の兵士から離れなかった。


「(……外した。あんなに近くにいたのに……。)」(隼人)


僕は、自分の実力不足を痛感している。あの至近距離で84を外すなんて。それに、それを引きずってしまっていた。


「敵艦隊が退却しています!」(杏南)


「勝ったのか?」(木山)


「知らん。」(諏訪)


「だが、残敵警戒だけは怠るな!」(和戸)


時間は夕方、18:00になっていた。僕らは引き続き、海沿いで哨戒任務を続ける。


「街中は大丈夫だったのかな?」(隼人)


「……俺達が戦っていた頃、兵站拠点が襲撃されたらしい。」(和戸)


!?


僕は、言葉を失った。海は静かだった。さっきまでの戦いが嘘のように。


目の前の海を追い返したはずの僕たちの背後で、戦火の牙は音もなくその「命綱」へと伸びていた。勝利の余韻など欠片もない真鶴の浜辺に、ただ不気味な潮騒だけが満ちていく。

登場人物紹介

大宮司だいぐうじ 皓辰こうたつ

生年月日:1976年9月23日 / 福岡県出身

階級:二等海佐 / 所属:護衛艦「迅風」の艦長

備考:父は元統合幕僚長


新伍しんご あきら

生年月日:1975年7月22日 / 出身:京都府

階級:二等海佐 / 所属:護衛艦「曉波」の艦長


恒村つねむら 大央だおう

生年月日:1976年4月14日

階級:二等海佐 / 所属:海王の副艦長


ププップ・ロテウス・プー

種族・性別:ワニ族の男性

所属・階級:帝国海軍大佐、艦隊旗艦の艦長

備考:幼いころに両親を亡くし、身寄りがいなくなった際に、ロテウス家の養子となった。もとの名前は「ププップ・プー」

※アステリム帝国では、結婚や養子縁組の際に、相手の苗字と旧姓を合わせて戸籍に乗せることが出来る。ロテウス・プーの例では、ププップ・ロテウスかププップ・ロテウス・プーのどちらかを選択できたので、後者を選んだ。


エルーガ・イアテ

種族・性別:半漁族の男性

所属・階級:帝国海軍上等兵、帝国産小型潜水艦の操縦士

備考:子どもの頃に小型潜水艦の操縦士に憧れて海軍を目指した。


リシ・ウールア

種族・性別:河童族の男性

所属・階級:帝国海軍兵士長、帝国小型潜水艦の操縦士

備考:イアテの操縦士の腕を認め、自身が副操縦士となることを選んだ。大抵は格下が副操縦士になる。


ダイモ・シクスタンス

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:帝国海軍中佐、鹵獲艦隊・護衛艦「ヒューマ」の艦長


段場だんば 隼人はやと……本編の主人公。35普連2中隊所属の二等陸士。

苫米地とまべち 杏南あんな……隼人と同期で恋人

木山きやま 拓哉たくや……隼人、杏南と同期

魚見うおみまひる……35普連2中隊のムードメーカー

諏訪すわ 明登めいと……35普連2中隊所属。隼人への当たりがきつい。

江鹿えじか あきら……35普連2中隊所属のベテラン隊員

中西なかにし ほたる……35普連2中隊所属。令和2年度から三曹になった。

須田すだ 寿一じゅいち……35普連2中隊所属の二等陸曹

新山しんやま がく……35普連2中隊所属の三等陸曹

小城こじょう 聖太せいた……35普連2中隊所属の新人

和戸わこ 一暁かずあき……35普連2中隊の中隊長代理

力安りきやす 悟郎ごろう……艦隊旗艦「海王」の艦長

布置ふち 元気げんき……「海王」の通信士

沼田ぬまた 大典だいすけ……「海王」の通信士

シェイダー・シェメトーリ……テリムト情報参謀・海軍情報収集担当


当物語に出てくる架空の装備品等

84mm無反動砲・じん……旧式よりも装填速度、標準速度、弾速が向上している

艦隊旗艦・海王かいおう……海自の空母

護衛艦:曉波あかつきなみ迅風じんぷう

潜水艦:渦潮うずしお黒鮫くろさめ

攻撃・妨害型水中ドローン・剣魚つるぎうお……先端が鋭く、剣状のため、先端で攻撃も出来る。

作戦遂行型小型無人潜水艦・叢雲むらくも……空母から操縦している無人潜水艦

かすか……極めて低い被探知性がある。

電光でんこう……水中ドローン用の魚雷。小型ながらも素早く、電撃的な攻撃をする。

水燕すいえん……小型無人潜水艦用の魚雷。水中を燕のように自在に動き回る。

帝国産小型潜水艦……2人乗りの小型潜水艦。コンパクトで小回りが利く。銃弾は水力エネルギーで造られる。

鹵獲艦隊・護衛艦「ヒューマ」……民間のフェリーを鹵獲し、改造した帝国軍の護衛艦。


※2)帝国軍の艦船には、人魚族や半漁族のためにプールが備わっています。

※3)「ヒューマ」の乗組員は、皆が水棲種か、水中でも自在に動ける種族なので、救援ボートいらずでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ