第49話 ダークエルフの歴史
私の名前は、ピッピディー・プレヤディッチ。女性として初めて帝国軍で将校となった。
私はダークエルフだ。帝国では今でこそ珍しい存在ではないが、その血の始まりは決して誇れるものではない。
はるか昔、エルフの女性たちはゴブリンやオークに攫われ、子を宿した。その子らは黒い肌を持って生まれた。誰も理由など分からなかった。
当時のエルフには「肌の黒いエルフ」という概念そのものが存在しなかったからだ。
だから彼らは「ダークエルフ」と名付けられた。
祝福ではない。呪いの名として…エルフ社会は排他的だった。
特に長命で誇り高いハイエルフほど、自らを高位種と考え、異質な存在を受け入れようとはしなかった。ダークエルフは同じエルフでありながら、同じ一族として扱われなかった。
「穢れた血」
「呪われた種族」
そう呼ばれ続けた。さらに皮肉なことに、ダークエルフは他種族と家庭を築いても、生まれてくる子は必ずダークエルフだった。それは祝福ではなく、偏見を強める材料として利用された。
「呪いは子へ受け継がれる」
そう言われ続けたのである。私の曾祖母も、その血を引く1人だった。
だから当時を知る者や、古い価値観を捨てきれない者たちは、私のようなダークエルフを見るたびに血筋を持ち出す。
奴等にとって私や同胞たちは、一人の個人ではなく、呪われた血統なのだ。
だが、私は奴等を哀れだと思う。奴等が憎んでいるのは私ではない。
1000年以上も前の出来事に、いまだ囚われ続けている。
帝国は他国に先駆けて、ダークエルフだけでなく、知性あるゴブリンやオークにも市民として生きる道を与えた。能力を認められた彼らは職を得て、家族を持ち、帝国を支える存在となった。その積み重ねが、古い偏見を少しずつ薄れさせていった。
血は選べない。だが、生き方は選べる。だから私は軍人になった。ダークエルフでも帝国を率いることができる。能力だけで人は評価される。それを証明することが、私が制服を着る理由なのだから。
登場人物紹介
ピッピディー・プレヤディッチ
種族・性別:ダークエルフの女性
所属・階級:陸軍中将で、テリムトの総督府
備考:帝国初の女性将校としてカリスマ的人気を誇る一方で、敵も多い。




