第40話 令和の撃墜王
「敵補給線、制圧完了した。」(ジュース)
「隊長、特戦群より報告です。補給線を取り戻したと!」
「そうか、そうか! よし、各班、急ぎ陣地を作れ! 補給班は物資の調達を急ぐんだ!」(羽山哲太一等陸佐)
「武石一佐、聞こえるか? 12施設隊の羽山だ。味方が補給線を取り戻してくれたぞ! 我々は陣地構築と兵站の運搬を取り急ぎ行っている。それまで耐えてくれ!」(羽山)
その無線は、まさに絶望の淵にいた麻生たちの部隊にも届いていた。
「…補給線…取り戻した…。」(麻生)
乾いた唇でそう呟くと、麻生の目から一筋の涙がこぼれた。多くの仲間が倒れ、弾薬も尽きかけていた。もう終わりだと誰もが思っていた。そこに届いた、一筋の光。
「諦めるにはまだ早いってことだ…!」(上条)
「よし! この絶望を、希望に変えてやろうぜ!」(原崎)
麻生たちは、再び銃を構え、迫りくる敵へと立ち向かう。
「補給線を取り戻した!?」(武石)
「連隊長、補給路へ向かいましょう。ここにいては危険です。」(古伝間)
「いや、引き続き前線で戦うよ。少ない兵力で戦うのに変わりはないからな。」(武石)
「しかし…。」(古伝間)
「全体の指揮は、多田一佐や羽山一佐も出来る。俺に出来ることは、前線で部下たちを鼓舞することだ。古伝間一尉は戻って構わん。」(武石)
「連隊長、見くびらないで下さい。上官が危険なことをしているのに、部下が後方で寛ぐわけにはいきませんよ。」(古伝間)
「頼もしい部下だ。」(武石)
2人は笑い、共に行動することを決意する。
地球の皆さん、ごきげんよう。私の名はレイ・カラウスキ。天使だ。地球の皆からすれば、私は堕天使といったところかな? 皆さんに私の生い立ちから今日に至るまでの輝かしい経歴をお伝えしたいところだが、今は戦争の真っただ中だ。残念ながら、今回も自己紹介は出来ない。
今回、私は上空哨戒部隊として、上空からの斥候及び奇襲を担当している。奇襲は成功したのだが、せっかく奪った補給路を取り返されてしまった。なんてことだ。しかし、嘆いているだけでは意味がない。ここは、私達上空哨戒部隊が一肌脱ごうではないか。
「アイトンダ大佐殿! 我らが敵補給路を断ってみせます! 命令を!」(カラウスキ)
「うむ! やってみせよ!」(アイトンダ)
「総員、敵補給路を断つ! 座標は35.594476、138.897299だ。」(カラウスキ)
「奴ら、そこに陣地を築いている。陣地ごと吹き飛ばす!」(カラウスキ)
「了解!」
「間もなく着くぞ!」(エーティー・トラッペ曹長)
「総員、構え!」(カラウスキ)
今回、奇襲用に我々は「帝国産・軽量型ロケットランチャー」を支給された。こいつは、火力そのままで小銃並みに軽量化されたロケットランチャーだ。コンパクト化はしているものの、連射は効かないのがネックであるが、従来のロケットランチャーやマシンガンと併せれば強力な攻撃が出来る。
カラウスキの号令とともに、天使族部隊は軽量型ロケットランチャーを構え、地上へ向けて一斉に火を噴いた。ロケット弾は、まるで雨のように地上へと降り注ぎ、陣地を構築しようとしていた施設隊の足元を次々と爆破していく。土煙と爆音、そして兵士たちの悲鳴が木霊する。
「隊長、敵襲です!」
「近SAM撃て!」(多田)
多田一佐の叫びが響き渡る。空に白煙が立ち上り、複数のミサイルが天使族部隊へと向かっていく。
「何!」(カラウスキ)
「うわあ!」(ベイル)
「きゃああ!」(デム)
「デム! ベイル!」(カラウスキ)
なんという事だ、敵の砲撃を受け、デムとベイルを失ってしまった。
「曹長、どうします?」(パチェコ)
「あれは厄介だが、数はない。移動スピードを上げて撃ち続けろ! まずは奴らを混乱させるぞ!」(カラウスキ)
「了解!」(一同)
「(くそっ、まさか、こんな山奥にまで地対空ミサイルを配備しているとは…。エーティーの分隊も、これで相当消耗したはず。 だが、ここで引くわけにはいかん!)」(カラウスキ)
我々は、デムとベイルを失ったが、その俊敏な動きでミサイルをかわし続け、地上への攻撃を再開しようとしていた。その時、凄まじい轟音とともに、二条の白い閃光が空を切り裂いた。
「な、何だ!?」(カラウスキ)
轟音が山々に反響した。2機の戦闘機が、流線型の美しい機体を光らせて飛んでいた。それは、奴らが誇る最新鋭の戦闘機、F-2戦闘機だった。
「こちら虎徹隊。敵有翼種11体、ただちに撃墜す。」(岡田英一等空尉)
「ロックオン」(妙台愛羽三等空尉)
無線から聞こえる、冷静で自信に満ちた声。それは、浜松基地から駆けつけた、航空自衛隊の精鋭だった。
「空自が援軍を出してくれたようです!」
「ああ、しかも駆けつけてくれたのは、エースの岡田一尉だ。」(多田)
「被害を確認後、怪我人の救護を。動ける者は、岡田一尉の援護だ。共に上空の敵を仕留めるぞ!」(多田)
「了解!」
空自のエースパイロットの出撃に、俄然、勢いを取り戻した第12高射特科隊であった。
「(空の覇権は、俺たちが絶対に譲らない。)」(岡田)
虎徹隊だと? 虎徹隊と言えば、自衛隊のエースパイロットが率いる精鋭部隊ではないか。そういえば、ここは浜松に近い。あそこには、空軍基地があったな…。だが…。
「敵はたったの2機! まずはこいつ等を撃墜する。我々の恐ろしさを見せてやれ!」(カラウスキ)
「エーティー!私の分隊は、戦闘機を墜とす。君達は、地上の敵を頼む!」(カラウスキ)
「分かった、任せろ!」(トラッペ)
「お互い、生きて帰るぞ!」(トラッペ)
敵のエースパイロットを討てば、奴らは戦力を落とし、我々の士気が上がる。リスクは高いが、その分、リターンも大きい。幸い、この帝国産・軽量型ロケットランチャーは、地球上に存在する戦闘機にも多大なダメージを与えることが出来る。
「(速い…。生身でこれほど動けるとは!)」(妙台)
我ら天使族のスピードを駆使して、対空射撃をかく乱する。弾切れ、燃料切れを起こせば我々の勝ちだ。我々はスタミナを消耗するが、帝国軍の鍛え方はヤワじゃない。それに、小回りなら我々に分がある。
カラウスキは、妙台が乗るF-2背後を取った。
「もらった!」(カラウスキ)
しかし、その時…。
BOOM!
「!?」(カラウスキ)
カラウスキは何者かに撃たれ、地面に落とされていく。
「(…何故? 部下たちはどうした?)」(カラウスキ)
カラウスキの予測を超えた遥か遠方から、熱を感知させない高精度な短距離空対空ミサイル(AAM-5)が、凄まじい速度で接近していた。岡田の乗る戦闘機へ向かっていた部下達は、既に撃墜された後だった。
「(強すぎる…。)」(カラウスキ)
薄れゆく意識の中で、カラウスキが見たものは、エースパイロット・岡田が操縦するF-2が、既に旋回を終え、次のミサイルを構えている姿だった。カラウスキは、岡田が最初に囮として妙台の機体を前に出し、自身は遥か後方から戦闘機の性能を最大限に活かした「初撃必殺」のポジションを取っていたことに、ようやく気付いた。カラウスキは、血を吐き出しながら、地面に落とされていく。
「分隊長!」(パチェコ)
カラウスキを失った天使族部隊は、空からは岡田、妙台が、地上からは近SAMの砲撃を受けるようになり、たちまち全滅することとなった。
「天使族は倒した。残りのヒヨコ共(鳥人族)も片付ける!」(岡田)
近SAMとの戦闘で既に大きく消耗していたエーティー・トラッペ率いる鳥人族の部隊も、空陸からの連携攻撃によって、その場で完全に壊滅した。
登場人物紹介
羽山 哲太
生年月日:1972年6月4日 / 出身:新潟県
階級:一等陸佐 / 役職:第12施設隊隊長
岡田 英
生年月日:1985年11月27日 / 出身:神奈川県
階級:一等空尉 / 所属:第1航空団
備考:帝国軍戦闘機や有翼種を撃墜した数は100体を越える空自のエースパイロット。「令和の撃墜王」と呼ばれる。率いる部隊の「虎徹隊」は、精鋭揃い。「虎徹隊」の名前は岩本徹三氏をあやかってのもの。
妙台 愛羽
生年月日:1987年8月28日 / 出身:神奈川県
階級:三等空尉 / 所属:第1航空団、「虎徹隊」に所属。
エーティー・トラッペ
種族・性別:鷹型鳥人族の男性
所属・階級:陸軍曹長、上空哨戒部隊分隊長の1人
ジュース……特戦群3中隊の隊員。亡き隊長に変わり、3中隊を統率する。
武石 哲也……13普連の連隊長
古伝間 拓人……13普連本部管理中隊所属
麻生 教之……13普連1中隊所属の精鋭
上条 直武……13普連の悩める中堅
原崎 魁……13普連1中隊所属の精鋭
多田 恵晤郎……12高特の隊長
レイ・カラウスキ……ちょっぴりナルシストな天使族
ペーリ・アイトンダ……大月攻略隊の野戦指揮官
マドリーヌ・デム……カラウスキの部下
ジャッパー・ベイル……カラウスキの部下
ブランチェスカ・パチェコ……カラウスキの部下
※上空哨戒部隊は、2個分隊で、カラウスキとトラッペがそれぞれ分隊長を勤めていました。




