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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第41話 令和の撃墜王

『敵補給線、制圧完了した。』


ジュースからの短い報告が無線に流れる。


「隊長、特戦群からです! 補給路を奪還したとのこと!」


報告を聞いた第12施設隊長、羽山(はやま) 哲太(てった)一等陸佐は、握っていた双眼鏡を下ろした。


「よし!」


張り詰めていた表情がわずかに緩む。


「各班、直ちに陣地構築を開始しろ。補給班は物資搬入を急げ。敵が立て直す前に防御線を完成させる。」


「了解!」


怒号のような復唱とともに、施設科隊員たちは一斉に動き始める。ブルドーザーが唸りを上げ、土嚢が積み上げられ、仮設陣地がみるみる形を成していく。


羽山は武石一佐へ繋いだ。


「武石一佐、聞こえるか。こちら羽山だ。補給路は確保した。こちらは陣地構築を開始する。」


『……本当か。』


「間違いない。兵站もまもなく回復する。」


『助かった。』


短い返答だった。


しかし、その一言だけで前線の苦境が伝わってくる。


その通信は、弾薬不足に苦しむ麻生隊にも届いていた。


麻生は無線機を握ったまま立ち尽くす。


「……補給路が……。」


その言葉が喉から漏れた瞬間、張り詰めていたものが切れた。目尻から一筋の涙が流れる。弾は残りわずか。仲間は次々と倒れた。もう終わりだと、誰もが覚悟していた。だが、終わってはいなかった。


「まだ戦える。」


上条が弾倉を装填する。


「ここからだ。」


原崎も小銃を握り直した。麻生は涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。


「……よし。」


その声に迷いはなかった。


「補給が来るまで持ちこたえるぞ。」




「敵襲! 有翼種です!」


警戒員の叫びとほぼ同時に、上空から白煙を引いたロケット弾が降り注いだ。


爆発が連続し、陣地を構築していた施設科隊員たちは土砂と爆風に巻き込まれる。積み上げられかけた土嚢は吹き飛び、ブルドーザーの装甲には破片が激しく叩きつけられた。


「近SAM、発射!」


多田(ただ) 恵晤郎(けいごろう)一等陸佐の号令が飛ぶ。


待機していた隊員が照準装置を操作すると、地対空誘導弾が白煙を噴き上げ、一斉に空へ飛び出した。


「散開!」


カラウスキは即座に叫んだ。


天使族たちは左右へ散り、急降下と急上昇を繰り返しながらミサイルを回避する。しかし、一本のミサイルが旋回しながらデムを捉え、その背中で炸裂した。


「うあああっ!」


炎をまとった身体が木々の間へ落ちていく。


続いてベイルにも爆風が襲いかかり、翼を失った彼は悲鳴を残して地面へ吸い込まれた。


「くそっ……!」


歯を食いしばるカラウスキだったが、部隊は止まらない。


「誘導弾の数は限られている! 速度を維持しろ! 地上へ攻撃を続ける!」


生身で飛翔する有翼種は、航空機ほど速くはない。しかし、小回りでは圧倒的に優れている。その利点を活かし、彼らは再び隊形を整えて降下を開始した。


その瞬間だった。遠くの空から、低く腹に響くような轟音が迫る。2本の白い飛行機雲が山間を切り裂き、濃紺の機影が稜線を越えた。


「あれは……。」


カラウスキの顔から笑みが消える。


陽光を受けて鋭く輝く2機のF-2戦闘機。その機体は、有翼種とは比較にならない速度で戦場へ飛び込んできた。無線に落ち着いた声が流れる。


『こちら虎徹隊。敵有翼種を捕捉した。これより迎撃を開始する。』


操縦桿を握る岡田(おかだ) (はなぶさ)一等空尉は、HUDに映る敵機動を冷静に見つめていた。


「妙台、予定通りだ。前へ出ろ。」


『了解。』


妙台(みょうだい) 愛羽(あいは)三等空尉のF-2が高度を下げ、有翼種の正面へ姿を現す。


「敵は2機だけだ!」


カラウスキは部下へ叫ぶ。


「一機を集中して落とせ! 残りは私が引き受ける!」


十数名の天使族が一斉に妙台機へ向きを変えた。


彼らの狙いは間違っていない。敵の数が少ない以上、1機でも撃墜できれば戦況は大きく変わる。だが、その判断こそが岡田の狙いだった。


「食いついたな。」


岡田は静かに呟く。妙台機へ意識が集中したことで、有翼種たちは自分たちよりさらに高高度を飛ぶもう一機を完全に見失っていた。


「Fox Two。」


岡田が発射ボタンを押す。AAM-5短距離空対空ミサイルが翼下から飛び出し、猛烈な加速度で目標へ向かった。


警報が鳴る間もない。最初の一発が1名を貫き、爆炎が広がる。2発目、3発目と、立て続けに放たれたミサイルは、旋回する有翼種を正確に捉え、空中で爆散させた。


「何だと……!」


ようやくカラウスキは異変に気付く。狙われていたのは妙台ではなかった。本命は、遥か後方の死角から接近していた岡田だったのである。


「全員散開!」


叫びは遅かった。


「ロックオン。」


妙台の落ち着いた声が無線に響く。逃れようと急旋回した天使族へ、今度は妙台のミサイルが突き刺さる。空が、一瞬で支配された。


「速い……!」


カラウスキは必死に回避機動を続ける。相手は航空機だ。直線速度では敵わない。ならば旋回戦に持ち込むしかない。彼は一気に高度を落とし、樹木すれすれを飛び抜けながら妙台の背後を取る。


「捕えた!」


軽量型ロケットランチャーを構えた、その瞬間だった。耳障りな警報音が鳴る。


「まさか……!」


反応する暇もない。死角から飛来したAAM-5が背後で炸裂し、爆風がカラウスキの身体を吹き飛ばした。翼が裂ける。ロケットランチャーが宙を舞う。地面へ叩きつけられながら、彼は霞む視界で空を見上げた。そこには、旋回を終えて次の目標を探す岡田のF-2があった。


(囮……。)


ようやく理解する。妙台を前へ出した時点で、自分たちは誘導されていたのだ。敵エースは最初から、自分たち全員を射程へ収める位置にいた。


「強い……。」


その言葉を最後に、カラウスキの意識は闇へ沈んだ。指揮官を失った天使族部隊は統制を失い、空自のミサイルと地上から放たれる近SAMの挟撃を受けて次々と撃墜されていく。


一方、地上攻撃を続けていたエーティー・トラッペ率いる鳥人族部隊も、上空からの航空支援と高射特科隊の対空火器による十字砲火から逃れることはできなかった。


「こちら虎徹隊。敵有翼種、掃討完了。」


岡田の冷静な報告が無線へ流れる。その声に、多田は小さく息を吐いた。


「……さすがだな。」


空では2機のF-2が悠然と旋回し、確保された補給路の上空を静かに哨戒していた。その姿は、誰よりも頼もしい味方として、地上で戦う隊員たちの目に焼き付いていた。

登場人物紹介

岡田おかだ はなぶさ

生年月日:1985年11月27日 / 出身:神奈川県

階級:一等空尉 / 所属:第1航空団

備考:帝国軍戦闘機や有翼種を撃墜した数は100体を越える空自のエースパイロット。「令和の撃墜王」と呼ばれる。率いる部隊の「虎徹隊」は、精鋭揃い。「虎徹隊」の名前は岩本徹三氏をあやかってのもの。


妙台みょうだい 愛羽あいは

生年月日:1987年8月28日 / 出身:神奈川県

階級:三等空尉 / 所属:第1航空団、「虎徹隊」に所属


羽山はやま 哲太てった……第12施設隊長

多田ただ 恵晤郎けいごろう……第12高射特科隊長

武石たけいし 哲也てつや……第13普通科連隊長

レイ・カラウスキ……大月攻略隊第2歩兵大隊・上空哨戒部隊第1分隊長

エーティー・トラッペ……大月攻略隊第2歩兵大隊・上空哨戒部隊第2分隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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