表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/261

第36話 補給路を取り戻せ!

シュグルポッターの撤退から、まだ十分も経っていなかった。


森には火薬の臭いが残り、あちこちで負傷者のうめき声が聞こえる。第31普通科連隊と第12偵察隊の隊員たちは、警戒を続けながら応急処置と弾薬の回収に追われていた。


「痛っ!」


竹内が顔をしかめる。東財 晴美三等陸佐は、傷口へ止血帯を締め直しながら静かに言った。


「少し我慢しなさい。血が止まれば動ける。」


「……はい。」


竹内は歯を食いしばって頷いた。周囲では敵兵の遺体から弾倉や手榴弾を回収する隊員の姿もある。補給は途絶えている。残された弾薬は、一発たりとも無駄にはできなかった。


青島ホベルト三等陸曹が回収した弾倉を見つめながら呟く。


「敵の補給路を叩ければいいんだが……。」


大松崎も苦い表情で続けた。


「それか、自分たちの補給路を取り戻さない限り、このままじゃ弾切れになります。」


「飛鳥が補給路を断つと言っていたが、続報が来ないな。」


村西の言葉に、その場の誰も答えられなかった。誰もが同じ不安を抱えていた。本当に補給路は奪い返せるのか。


その時だった。


別当が無線機を耳から離した。


「……了解した。」


静かに周囲を見回す。


「全員、聞け。」


自然と全員の視線が集まった。


「先ほど、特戦群隊長のイガから連絡が入った。」


一瞬、空気が止まる。


「敵砲兵部隊は制圧したそうだ。」


「本当ですか!?」


西が思わず声を上げた。


緑川も目を見開く。


「特戦群が……。」


室は腕を組んだまま呟く。


「噂じゃなかったんだな。」


桐谷も苦笑した。


「俺も存在は知っていたが、実際に連携する日が来るとは思わなかった。」


別当は続ける。


「敵砲兵は壊滅。現在、特戦群は敵特殊部隊と補給路の奪還へ向かう。」


誰も口を挟まない。


「我々の任務は変わらない。」


別当は地図を広げた。


「敵歩兵部隊をここで拘束する。敵を前へ出させるな。」


桐谷も頷く。


「特戦群が動いている以上、俺たちが敵を引き付け続けることが重要になる。」


別当は周囲を見渡した。疲労の色は隠せない。だが、その目から闘志は消えていなかった。


「交代で休息を取れ。食えるうちに食っておけ。」


「次が本番だ。」


「了解!」


隊員たちはようやく携行食へ手を伸ばした。乾パンを口へ放り込みながらも、誰一人として小銃を手放す者はいない。戦闘は、まだ終わっていなかった。




― 特戦群 第1班 ―


別当との通信を終えたイガは、無線機を静かに腰へ戻した。


「砲兵は沈黙した。」


その一言で、周囲の隊員たちは次の命令を待つ。イガは地図を広げ、現在地と敵情を書き込んだ。


「ここから先が本命だ。」


鉛筆の先が一本の線をなぞる。


「敵は我々の補給路を断った。前線は弾薬不足に陥っている。このままでは、砲兵を潰した意味も薄れる。」


誰も口を挟まない。


「奪われた補給路を取り戻す。」


イガは短く言った。


「第1班は帝国特殊部隊を追う。奴らが補給路を押さえているなら、必ずどこかで姿を現す。フウマ、先行して敵の所在を探れ。」


「了解。」


フウマは身を低くすると、木々の間へ音もなく消えた。


「ハンゾウ、敵が潜伏しそうな地点を洗え。」


「承知。」


「残りは俺と行動する。」


第1班は散開し、それぞれの役割へ移った。




― 特戦群 第2班 ―


「ゴエ。」


コウガが振り返る。


ゴエは敵兵の遺体の傍らにしゃがみ込み、弾倉や手榴弾を次々と回収していた。


「まだ使える物が多いですね。」


「補給不足だからか。」


「ええ。前線じゃ、一発でも欲しいでしょう。」


回収した弾薬をポーチへ押し込み、ゴエは立ち上がる。


「終わりました。」


「なら行くぞ。」


コウガは通信機を開く。


「こちら第2班。」


『どうぞ。』


「任務を開始する。目標は帝国軍第2補給拠点。敵補給能力を完全に喪失させる。」


『了解。』


通信が終わる。


ゴエが前方を指差した。


「先導します。」


「頼む。」


2人は木々の間へ姿を消した。その歩みに迷いはなかった。




― 特戦群 第3班 ―


ダンゾウは地図を畳み、2人を見た。


「タキ、ハチヤ。」


「はい。」


「逃走した敵兵が戻る可能性がある。ここは誰かが監視しなければならん。」


ハチヤは頷く。


「俺たちが残ります。」


「隊長命令だ。」


ダンゾウは二人の肩を軽く叩いた。


「前線の部隊と遭遇したら、自分たちが残っていることも伝えておけ。」


「了解。」


「キド、ハットリ。」


「はい。」


「行くぞ。」


三人は森へ踏み込む。


歩幅は一定。


呼吸も乱れない。


まるで演習場を歩いているかのようだった。




その頃――。


小高い尾根の上から、一組の影が森を見下ろしていた。猫耳を揺らした獣人族の女が、双眼鏡を静かに下ろす。


「見つけたにゃ。」


ズバンニャ・ゴック曹長。


第3砲兵大隊偵察小隊第5分隊長だった。彼女の隣には、唯一生き残った部下、カレン・アルカル伍長が身を伏せている。


「分隊長、本当に2人でやるんですか……。」


「弱気は禁物にゃ。」


ゴックは小さく笑う。


「帝国兵は数で戦う兵士じゃにゃい。」


再び双眼鏡を覗く。


「敵は3匹。」


木々の間を進むダンゾウ班を捉え、猫の瞳が細くなった。


「狩りの時間にゃ。」


2人は地を蹴る。


音もなく森へ溶け込み、獲物との距離を詰めていった。


登場人物紹介

登場人物紹介

特戦群

イガ

ハンゾウ

フウマ

コウガ

ゴエ

ダンゾウ

キド

ハットリ

ハチヤ

タキ


アステリム帝国兵

ズバンニャ・ゴック……猫型獣人族の女性。テリムト第3砲兵大隊偵察小隊第5分隊長

カレン・アルカル……同じく猫型獣人族の女性で、ゴックの部下

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ