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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第345話 兵站への鉄槌

ビービは周囲に集まった隊員たちを見渡し、今後の作戦について説明を始めた。


帝国軍の地上部隊を退け、生野大隊の救援にも成功したものの、これで戦闘が終わったわけではない。帝国軍の兵站に打撃を与えるという目的は変わっておらず、そのためには敵の補給活動を把握し、攻撃できる場所へ迅速に移動する必要があった。


そこで活用するのが、中部方面隊から投入されたドローンだった。


偵察用ドローンによって敵の位置情報を把握し、その情報を基に各部隊が移動する。従来のように敵の補給拠点を探して駆け回るよりも、効率よく行動できるはずだった。


「成程、それでドローンか」


浪城は納得したように答えた。


「ええ、兵站拠点が想定してた以上に多くてね。どんだけ速足で駆けても追いつけないのよ」


ビービの言葉には、これまでの戦闘で味わった苦労が滲んでいた。


帝国軍の補給活動を妨害するために各地を移動してきたが、敵の兵站拠点は想定していた以上に多かった。一つの拠点を攻撃しても、その間に別の場所では物資の受け渡しが行われている。いくらGASTの隊員達が優秀でも、自分達の足だけで広範囲を移動し、全ての補給活動に対処することはできなかった。まして、ここまで戦い続けてきた隊員達の疲労は相当なものだった。


「ドローンを使うのは分かったが、情報が来るまでの間はどうするんだ?」


今度は生野が問い掛けた。


偵察用ドローンによって敵の位置を把握するという方針は理解できる。しかし、肝心の情報が届くまで、ただ待機しているわけにもいかない。生野が知りたかったのは、その間に部隊をどう動かすのかということだった。


ビービはすぐには答えず、周囲の隊員達へ目を向けた。


第7普通科連隊や第36普通科連隊の隊員達は、誰もが疲れ切った表情をしていた。戦闘を終えたばかりの者もいれば、負傷した仲間を助けながら移動してきた者もいる。言葉にこそ出さないものの、できることなら少しでも休みたいという気持ちが、その顔にはっきりと表れていた。


無理もない。彼らは帝国軍との戦闘を繰り返し、心身ともに消耗していた。わずかな時間でも休息を取らせれば、疲労をいくらか和らげられるかもしれない。


しかし、敵の補給活動は今も続いている。ここで自分達が足を止めれば、その間にも帝国軍へ物資が届けられてしまう。ビービは隊員たちの疲労を理解しながらも、作戦を進める必要があると判断した。


「筑紫野へ向かう」


その言葉を聞いた一同は、思わず目を見開いた。筑紫野方面といえば、帝国軍の本拠地が存在する方向である。兵站への攻撃を目的として行動してきたはずなのに、ここで敵の本拠地へ向かうとなれば、作戦そのものが変わってしまう。しかも、これだけ疲弊した部隊で敵の本拠地に接近するなど、無茶にもほどがある。


隊員達の間に戸惑いが広がる中、生野が口を開いた。


「敵の本拠地に向かうのか?」


「いいえ。あくまでも兵站を潰すのが目的よ。ドローンの情報次第では進路を変更するけどね」


ビービは生野の疑問を否定した。


その時、ビービの無線機から呼び出しが入った。


『こちら、15即機-本、伊古田(いこた) 圭介(けいすけ)二尉。久留米市某所で兵站の受け渡しを行っている。座標を送る。』


久留米市内で帝国軍が物資の受け渡しを行っているという情報は、まさにビービ達が必要としていたものだった。


『了解。情報感謝する』


ビービは伊古田へ礼を伝えると、送られてきた情報を確認し、周囲の隊員達へ目を向けた。


先程まで筑紫野方面への移動を考えていたが、久留米で補給活動が行われているのであれば、まずはそちらを攻撃するべきだろう。


浪城も通信の内容を聞いていたらしく、ビービへ問い掛けた。


「久留米か?」


「ええ、行きましょう」


ビービの返答を受け、隊員達は手分けして車両へ向かった。


高機動車をはじめとする車両は、これまでの戦闘で損傷を受けていた。数台は故障しており、使用できる車両だけでは全員を余裕を持って乗せられる状況ではなかったが、隊員達は互いに場所を譲り合い、何とか乗り込んでいった。


それでも、無理に詰めれば生存者全員が乗れるという事実は、彼らにとって喜べるものではなかった。戦闘が始まる前には、もっと多くの隊員がいた。今、車両に空きが生じているのは、それだけの仲間が戦死したということだった。隊員達は乗車の準備を進めながら、戦場に残された仲間達へ視線を向けた。


本来であれば、戦死者も一緒に連れて帰りたかった。しかし、今は敵の兵站を攻撃するために移動しなければならず、故障した車両もある。遺体を収容して運ぶ余裕はなかった。戦死者の認識票を回収し、その場に遺体を残していくしかなかった。


もし、補給部隊が到着したタイミングであれば、仲間達を連れて帰れたかもしれない。だが、現実にはそう都合よく物事は進まず、今の自分達には任務を優先する以外の選択肢がなかった。


認識票を手にした隊員の中には、悔しさを押し殺すように歯を食いしばる者もいた。戦場に仲間を残していくことへの抵抗は、誰もが感じていた。それでも、立ち止まっている時間はない。隊員達は重い気持ちを抱えたまま車両へ乗り込み、ビービたちは井古田から送られてきた座標を目指して移動を開始した。


     *


第56補給大隊に所属するカプラ・ナン上等兵は、弾薬の詰まったコンテナを輸送機へ積み込む作業に追われていた。


機体の周囲では、ほかの帝国兵たちも物資の積み込みを進めている。輸送機の内部にはすでに弾薬が運び込まれており、ナンも作業の進み具合を確かめながら、次のコンテナを積み込むために動いていた。


「ふうっ…」


ひとまず作業の手を止めたナンは、息を吐きながら空を見上げた。


その時、上空に小さな飛行物体があることに気付いた。


「ドローンか」


帝国軍でもドローンを運用しているため、空を飛んでいるというだけで敵のものと決めつけることはできない。しかし、ナンのいる場所からでは機体の細部まで見えず、帝国の旗を示す模様が付いているのかどうかも判別できなかった。


もともとナンは、あまり視力が良くない。目を細めてみたところで、遠くを飛ぶドローンの所属までは分からなかった。


(眼鏡を新調すべきだな)


ナンはそう考えながら、近くにいた上官へ声を掛けた。


「オシェイ少尉殿……」


声を掛けられたオース・オシェイ少尉は、隣で煙草を吸っていた。


ナンが上空を見上げていることに気付くと、オシェイもそちらへ視線を向けた。


「ん? ああ、ドローンだな…」


オシェイもまた、視力には自信がなかった。しかも、先程コンタクトレンズを紛失したばかりである。積み込み作業が終わってから新しいものを装着するつもりだったため、今は遠くの物体をはっきりと見ることができなかった。そのため、ナンと同様に、上空を飛んでいるドローンが帝国軍のものなのか、それとも敵のものなのか判断できずにいた。とはいえ、所属の分からないドローンが輸送機の近くを飛んでいる以上、放置するわけにもいかなかった。


「ちょっと見てくる」


オシェイは吸っていた煙草を手放すと、背中の翼を広げた。


天使族である彼にとって、空中へ飛び上がることは難しいことではない。翼を羽ばたかせて地面から離れると、そのまま上空のドローンへ向かっていった。


ナンは地上からその姿を見送りながら、オシェイが何を確認するのか気に掛けていた。


上空では、オシェイがドローンとの距離を少しずつ縮めていた。


「ん? あれは…」


近づくにつれて機体の形状がはっきりと見えるようになり、やがてオシェイは、それが帝国軍のものではないことに気付いた。オシェイはドローンを警戒しながら、その種類を見極めようとした。


(これは、自爆型か? 偵察型か?)


もし自爆型や攻撃型のドローンであれば、自分の身も危ない。オシェイは急いで武器を構えようとしたが、そこで重大な失敗を思い出した。よりによって、98式大口径実体弾小銃を置いてきてしまったのである。


(なんというミスだ)


ドローンの正体が分からないまま近づいたことも軽率だったが、武器を携行していなかったことは、それ以上に痛恨の失敗だった。


オシェイは慌てて懐へ手を伸ばした。小銃は手元にないものの、拳銃なら携行している。まずはそれを取り出し、相手が攻撃してくるようであれば応戦するしかない。だが、彼が拳銃を抜こうとした、まさにその時だった。ドローンの機体から銃口が突き出された。オシェイがそれを認識した直後、銃口が火を噴いた。


ドローンから突き出された銃口が火を噴き、オシェイに向かって銃弾が浴びせられた。咄嗟に翼を動かして回避しようとしたものの、拳銃を抜こうとしていたオシェイの反応はわずかに遅れた。飛来した銃弾は彼の胸部を貫き、心臓を撃ち抜いた。


「が…」


オシェイの口から苦悶の声が漏れた。懐へ伸ばしていた手から力が抜け、翼の動きも止まる。空中で姿勢を保つことができなくなったオシェイは、身体を傾けながら落下し、そのまま地面へ叩きつけられた。


「オシェイ少尉殿!」


地上で様子を見守っていたナンは、上官が撃たれたことに気付くと、思わず声を張り上げた。


先程まで自分と話していたオシェイが、敵のドローンに撃たれて落下したのである。ナンはその光景に動揺しながらも、すぐにリストコミュニケーターへ手を伸ばした。無線機能を起動し、周囲の帝国兵たちへ敵襲を知らせなければならない。しかし、ナンが通信を始めようとした時、背後から複数の飛行音が聞こえてきた。何事かと思って振り返ったナンは、そこに広がる光景を見て目を見開いた。


「な!?」


無数の小型ドローンが、輸送機へ向かって飛来していた。


先程オシェイを撃ったドローンとは異なり、こちらは機体そのものを目標へ突入させる自爆型だった。


ナンは慌てて警告しようとしたが、ドローンの接近は予想以上に速かった。機体の周囲にいた帝国兵達も異変に気付き、上空を見上げたり、物資の積み込みを中断したりしていたが、すでにドローンは輸送機のすぐ近くまで迫っていた。


輸送機は弾薬コンテナを積み込んでいる最中であり、機体の貨物扉は開いたままだった。自爆型ドローンは、その開口部へ向かって次々と飛び込んでいった。


「何だ、これは!?」


機内にいたパイロットは、突然侵入してきた小型ドローンを目にして驚愕した。


本来ならば、輸送機の内部にそのようなものが入り込んでくるはずがない。しかも、目の前のドローンは貨物室へ侵入すると、積み込まれた弾薬の近くまで飛んできた。


パイロットが危険を察して身を動かした直後、機内で爆発が起きた。


凄まじい爆発音とともに火炎が広がり、貨物室に積み込まれていた弾薬コンテナの周囲が炎に包まれた。爆風は機内を駆け抜け、積み込み作業を行っていた帝国兵達を吹き飛ばす。


パイロットの悲鳴が響いたが、爆発はそれだけでは終わらなかった。燃え広がった炎が積載弾薬に及び、やがて機内で新たな爆発が発生した。


最初の爆発とは比較にならないほどの衝撃が輸送機を襲い、機体の外板が内側から押し広げられる。続いて別の弾薬も誘爆し、貨物室から噴き出した火炎が開いた貨物扉を越えて周囲へ広がった。


機体の近くにいた帝国兵達は、突然の爆発に身を伏せたり、炎から逃れようと走り出したりした。しかし、誘爆によって飛び散った破片が周囲へ降り注ぎ、輸送機の近くにいた者たちにも被害が及んでいた。


ナンは爆発の衝撃に身をすくませながら、炎上する輸送機を見つめていた。


機内には、つい先程まで物資の積み込みを行っていた仲間がいる。爆発が続いている以上、近づけば自分も巻き込まれるかもしれないが、悲鳴を聞いてしまったナンには、その場で見捨てることなどできなかった。


ナンはリストコミュニケーターから手を離すと、輸送機へ向かって駆け出した。だが、その行動を妨げるものがあった。上空に残っていた攻撃型ドローンである。


オシェイを撃ち落としたドローンは、輸送機の周囲にいる帝国兵たちへ攻撃を続けていた。突然の爆発に混乱する帝国兵たちは、上空から銃撃を加えてくる小型の目標に十分な対応ができず、次々と銃弾を浴びていた。


ナンもまた、その射線に捉えられた。


輸送機へ向かって走っていたナンの身体を銃弾が貫き、勢いを失った彼は前方へ倒れ込んだ。倒れたナンの視界には、炎を噴き上げる輸送機の姿が映っていた。仲間を助けようとしていた彼の手は、もはや機体へ届くことはなかった。その間にも、輸送機の内部では誘爆が続いていた。


積み込まれていた弾薬が次々と爆発し、機体は大きく損壊していく。貨物室から広がった炎は機体の各部へ及び、周囲には黒煙が立ち上っていた。


輸送機は、もはや飛行できる状態ではなかった。


攻撃型ドローンは周囲の帝国兵への攻撃を終えると、炎上する輸送機から離れていった。


     *


第47普通科連隊第1中隊の琴子濵(ことこはま) 大成(たいせい)一等陸尉は、ドローンから送られてくる映像を確認していた。


輸送機は激しく炎上しており、機体の周囲には爆発による破片が散乱していた。弾薬の誘爆によって大きく損壊した機体を見れば、少なくともこの輸送機が再び物資を運ぶことはないだろう。


敵の兵站拠点に対する攻撃は成功した。


もっとも、帝国軍の補給活動は1ヶ所だけで行われているわけではない。ほかにも物資を集積し、輸送する拠点が存在している以上、一つの拠点を無力化しただけで作戦を終えることはできなかった。琴子濵は確認できた戦果を報告するため、ビービとの通信をつないだ。


『こちら47普1中、琴子濵。ビービ、兵站拠点の1つを無力化に成功。次の拠点を探し次第、撃破する』


『了解、よろしく』


ビービは簡潔に返答した。


第47普通科連隊のドローン部隊が兵站拠点の一つを無力化したことは、帝国軍の補給活動を妨害するうえで大きな成果だった。


しかし、ビービたちも別の補給拠点へ向かっている最中である。伊古田から送られてきた座標を基に移動を続けていた車両は、まもなく目標のある場所へ到達しようとしていた。


     *


久留米市内を進んでいたビービ達の前方に、帝国軍の車両が見え始めた。


座標が示していた場所に、輸送に使用されているとみられるトラックが存在していたのである。


浪城は前方の状況を確認すると、車両に乗っている隊員たちへ指示を出した。


「ハチヨン用意!」


命令を受けた浪城大隊の隊員数名が、高機動車から降りた。


隊員たちは84mm無反(ハチヨン)動砲を構え、前方に見える帝国軍のトラックへ照準を合わせる。


ここまで移動してきた隊員達の疲労は決して小さくなかったが、敵の輸送車両を目の前にしている以上、気を緩めるわけにはいかなかった。


浪城は隊員達が射撃の準備を整えたことを確認し、号令を下した。


「撃て!」


発射音が響き、84mm無反(ハチヨン)動砲から放たれた砲弾がトラックへ向かって飛翔した。次の瞬間、砲弾が帝国軍のトラックを捉え、車体から爆炎が噴き上がった。

登場人物紹介

ビービ……GASTアマゾネス班の班長

浪城(なみしろ) 激(げき)……第1空挺団第2普通科大隊長

伊古田(いこた) 圭介(けいすけ)……第15即応機動連隊 本部管理中隊所属の二等陸尉

琴小濱(ことこはま) 大成(たいせい)……第47普連1中隊の中隊長代理

カプラ・ナン……第56補給大隊所属の上等兵で、ダチョウ型鳥人族の男性

オース・オシェイ……第56補給大隊所属の少尉で、天使族の男性。小隊長の1人


98式大口径実体弾小銃……アステリム帝国軍が使用する一般的な小銃

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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