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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第343話 反撃の砲声

前方から響く砲声に、浪城は顔をしかめた。


敵戦車は依然として健在であり、歩兵の前進を支援するように砲撃を繰り返していた。自衛隊側も応戦していたが、度重なる戦闘によって隊員達の疲労は限界に達しており、敵の攻撃を食い止めるだけでも精一杯だった。


「くそっ、まだ動けるのか……」


浪城は双眼鏡を覗き、敵戦車の動きを追った。


敵の砲撃によって巻き上げられた土砂が視界を遮り、その向こうからは歩兵による銃撃が絶え間なく続いていた。戦車は遮蔽物を利用しながら位置を変え、自衛隊側が反撃しようとすると、砲撃によってその動きを封じてくる。浪城には、敵がこちらの苦しい状況を見透かしているようにさえ思えた。


前田率いる対戦車小隊も撃破の機会を窺っていたが、敵歩兵の射撃が激しく、思うように攻撃できない状況が続いていた。


「あの戦車乗り、かなりのやり手だ。こちらの的を絞らせない。」


前田は敵戦車の動きを睨みながら、苛立ちを募らせていた。


敵の戦車は残り1両となっていたが、これがまた厄介なことに、中距離多目的(ちゅうた)導弾で攻撃しようにも、遮蔽物に隠れて捕捉できない位置へ移動してしまう。そのくせ、こちらに放ってくる砲撃で何人の仲間がやられたことか。


対戦車小隊の隊員達も攻撃の機会を探っていたものの、敵歩兵による銃撃が激しく、戦車の位置を確認するだけでも危険が伴っていた。前田は何度も攻撃の可能性を探ったが、敵戦車はそのたびに射撃の機会を与えず、再び自衛隊側へ砲弾を浴びせてくる。


前田は苦虫を噛み潰した。


     *


GASTスネーク班は、120mm迫撃砲を運搬するため、車両2台で移動していた。徒歩で進む他の班とは異なり、車両を使用できるスネーク班は先行して援軍へ向かうことができた。


前方警戒を行っていたロスタは、遠くから断続的に聞こえてくる砲声に耳を澄ませながら、浪城大隊が交戦していると思われる方向を探っていた。


(11時の方向…)


砲声は山間に反響しており、音だけで正確な位置を判断するのは難しかった。しかし、ロスタには以前に確認した地形と、浪城大隊が敵兵站拠点への砲撃を開始した場所についての記憶があった。


幸い、予測した位置は、敵兵站拠点へ砲撃を開始した場所から変わっていない。ならば、最短で援軍に行けると、ロスタは踏んでいた。


『班長、浪城大隊は敵兵站拠点へ砲撃をしたあの位置で戦っていると思われます。』


ロスタからの報告を受けたシャウブは、前方の地形を確認した。砲声は確かにロスタが示した方向から響いており、その間隔も短くなっているように感じられる。


『そうか、ならばここで展開する。ロンは浪城二佐へ連絡。まずは、浪城大隊を援護する!』


「了解!」


シャウブの指示を受け、スネーク班は車両を停車させた。


後続の重迫けん引車から迫撃砲を切り離すと、隊員たちは周囲の状況を確認しながら射撃準備に取り掛かった。砲身や砲架を扱う隊員たちの動きに無駄はなく、それぞれが自分の役割を果たしていく。遠方からは絶え間なく銃声と爆発音が聞こえており、友軍が今も激しい攻撃に晒されていることが分かった。


ロンは無線を手に取り、浪城への連絡を試みた。


『こちらGASTスネーク02。浪城二佐、応答願います』


数秒後、無線から浪城の声が返ってきた。


『こちら浪城。遅い! が、作戦は成功したのか?』


浪城の声には、激しい戦闘の最中にいることを窺わせる険しさがあった。ロンはその問いに対し、現在の状況だけを簡潔に伝えた。


『いえ、作戦は変更。詳しくは後で説明します。現在、貴官の部隊から離れた位置で迫撃砲を展開しています。火力支援が可能です』


『おい、変更ってどういう事だ? 失敗したのか?』


『後で説明します。それまで生き残ってて下さい。とにかく、我々が支援します』


ロンが説明を後回しにしたことで、浪城は釈然としない様子だった。しかし、無線の向こうでは再び砲声が響き、詳しい事情を問いただしている余裕がないことも明らかだった。


『分かった! 敵歩兵の攻撃が激しい上に、戦車が1両残っている。あいつの砲撃で被害が増えているんだ』


ロンは浪城から敵の状況を聞き取り、シャウブへ伝えた。


「班長、敵歩兵に加えて戦車が1両残存。浪城大隊は、その戦車に苦戦しています」


「戦車か……。通常の榴弾では確実に仕留められないが、周囲の歩兵を抑えることはできる。まずは友軍の負担を減らそう」


シャウブは浪城側との連絡を維持させながら、砲撃の準備状況を確認した。


敵戦車を直接撃破することは難しくとも、その周囲に展開する歩兵を抑えれば、浪城大隊が反撃する機会を作れる。もっとも、戦闘地域には友軍も展開しているため、敵のいる方向へ闇雲に砲弾を撃ち込むわけにはいかなかった。


ロンを通じて友軍の位置と敵の状況を確認し、射撃可能な範囲を絞り込んでいく間にも、遠方からは砲声が聞こえ続けていた。


やがて、友軍の位置と支援可能な範囲が確認され、砲班から準備完了の報告が届いた。


「よし、射撃開始!」


シャウブの号令を受け、120mm迫撃砲が重々しい発射音を響かせた。


     *


浪城が無線を下ろした直後、前方で大きな爆発が起きた。


敵戦車から少し離れた場所で土砂が噴き上がり、その周囲にいた帝国軍歩兵が慌てて身を伏せた。続いて別の場所でも砲弾が炸裂すると、先程まで前進を続けていた敵部隊の動きが鈍り、遮蔽物へ逃げ込む者が相次いだ。


「何だ、今のは!?」


竹下が驚いて前方を見つめた。


「GASTスネーク班だ。今頃戻って来やがった」


浪城はそう答えながら双眼鏡を構え直した。


敵歩兵は砲撃を避けようと遮蔽物の陰へ退避しており、自衛隊側へ向けられていた銃撃も一時的に弱まっていた。しかし、敵戦車はなおも健在であり、砲塔を旋回させながら反撃の機会を窺っている。


その直後、戦車の近くで再び砲弾が炸裂した。


爆風とともに大量の土砂が舞い上がり、車体の一部が煙に包まれた。戦車はそのまま動き続けようとしたものの、先ほどまでのような滑らかな動きではなくなっていた。


「……ん?」


浪城は双眼鏡を覗いたまま目を細めた。


敵戦車の動きが明らかに鈍っている。それまで自衛隊側の攻撃を避けるように位置を変えていた車体が、不自然な動きを見せたかと思うと、ほとんど同じ場所に留まり始めたのである。


車体のどこが損傷したのかまでは分からなかったが、少なくとも、それまでのように位置を変えながら砲撃を続けることは難しくなっているようだった。


浪城はすぐに無線を手に取った。


『前田、聞こえるか!』


『こちら前田!』


『GASTの迫撃砲が敵戦車の周囲を砲撃している。戦車の動きが鈍ったようだ。そちらから確認できるか?』


前田は遮蔽物の陰から敵戦車を確認した。


確かに、先程まで射線を避けるように移動していた戦車が、ほとんど位置を変えなくなっている。砲塔は動いていたものの、車体の周囲には土煙が立ち込め、何らかの損傷を受けた可能性があった。


敵歩兵の銃撃も、迫撃砲による攻撃が始まってから明らかに弱まっている。前田は戦車の位置を確認しながら、これまで何度も逃してきた攻撃の機会がようやく訪れたことを悟った。


『確認しました! 先程までとは動きが違います!』


『好機だ。対戦車小(お前等)隊で撃破してくれ!』


『はい!』


前田は通信を終えると、周囲の隊員達へ目を向けた。


長時間の戦闘によって疲れ切っていた彼らも、敵戦車の動きに異変が生じたことには気付いていた。先先程まで激しく飛び交っていた敵歩兵の銃弾が減り、戦車も容易には移動できなくなっている。


「あいつを仕留めるぞ! 今度こそ逃がすな!」


隊員達は前田の指示を受け、中距離多目的(中多)誘導弾による攻撃の準備を整えた。


     *


「何だ、この砲撃は!?」


戦車に搭乗していたオーサム・イッピアン少尉は、突然始まった砲撃に驚いていた。


先程まで、敵の反撃は明らかに弱まっていた。歩兵たちも前進を続けており、このまま攻撃を継続すれば敵の陣地を崩せると考えていた矢先の出来事だった。


ところが、どこからともなく迫撃砲弾が降り注ぎ、随伴する歩兵たちの動きが止まってしまった。爆発によって土砂が舞い上がるたびに、前進していた帝国兵達は遮蔽物へ逃げ込み、戦車との連携も崩れ始めていた。


「敵に増援が来たのか!?」


「どこから?」


乗員の問いに答えられる者はいなかった。


イッピアンは周囲の状況を確認しようとしたが、爆発によって舞い上がった土砂が視界を遮っていた。先程まで敵の動きを封じていたはずの砲撃も、随伴歩兵が散り散りになったことで十分な効果を上げられなくなっている。


その時、車体の近くで激しい爆発が起きた。


戦車が大きく揺れ、イッピアンは思わず身体を支えた。爆発の衝撃が車内に伝わり、乗員たちの間にも緊張が走る。


「ぐっ! 何だ!?」


乗員の1人が車体の異常を報告した。


戦車は完全に停止したわけではなかったものの、思うように動かなくなっていた。イッピアンは移動を試みたが、車体の反応は鈍く、先程までのように敵の射線を避けることができない。


「くそっ、こんなところで!」


イッピアンは歯噛みした。


残された戦車は、もはやこの1両しかない。ここで失えば、自分たちの部隊は装甲戦力を失うことになる。


イッピアンは何とか態勢を立て直そうとしたが、周囲では依然として迫撃砲弾が炸裂しており、随伴歩兵からの援護も期待できなかった。車体を動かそうとしても思うように反応せず、その間にも敵がこちらを捕捉する危険は増していた。


何とか態勢を立て直そうとした、その時だった。


「敵の攻撃です!」


乗員の叫び声が車内に響いた。


イッピアンが状況を確認するよりも早く、中距離多目的(中多)誘導弾が戦車へ命中した。


凄まじい衝撃が車内を襲い、イッピアンの身体が激しく揺さぶられた。爆発の衝撃によって車内の機器が損傷し、警報が鳴り響く中、彼は何が起きたのか理解しようとしたものの、次の瞬間には意識が途絶えていた。


     *


『敵戦車への命中を確認!』


前田の声が無線に響いた。


浪城は双眼鏡を覗き、敵戦車の状態を確かめた。


先程まで自衛隊側へ砲撃を繰り返していた車体からは黒煙が上がり、砲塔も動いていなかった。周囲にいた帝国軍歩兵達は爆発に巻き込まれることを恐れたのか、戦車から距離を取るように散開しており、その一部は遮蔽物の陰へ逃げ込んでいた。


浪城はしばらく様子を窺ったが、敵戦車が再び動き出す気配はなかった。


『敵戦車、撃破を確認しました!』


「よしっ!」


浪城は思わず拳を握り締めた。


あれほど苦しめていた敵戦車が、ついに沈黙したのである。前田の対戦車小隊も幾度となく撃破を試みていたが、そのたびに敵歩兵の射撃と戦車の巧みな機動に阻まれていた。それだけに、スネーク班の支援によってようやく訪れた好機を逃さず、撃破に成功したことは大きかった。


「やりましたね、二佐!」


竹下も安堵したように声を上げたが、浪城は双眼鏡を下ろすと、すぐに前方の戦況を確認した。


「ああ。だが、まだ終わっていない」


戦車を失った帝国軍歩兵は動揺しているようだったが、依然として自衛隊側へ銃撃を続けていた。中には戦車の残骸を避けながら前進しようとする者もおり、装甲戦力を失っただけで攻撃を諦めるつもりはないらしい。


スネーク班の砲撃によって敵の勢いは弱まったものの、長時間の戦闘で疲弊した浪城大隊にとって、残存する敵歩兵の攻撃も十分な脅威だった。


浪城は無線を手に取った。


『スネーク班、こちら浪城。敵戦車の撃破に成功した。援護に感謝する!』


『こちらスネーク01。了解しました。引き続き火力支援を行います』


『頼む! 敵歩兵はまだ残っている!』


浪城は通信を終えると、周囲の隊員達へ指示を出した。


戦車を撃破したことで、敵の攻撃に対抗する余地が生まれた。だが、敵歩兵は遮蔽物を利用して射撃を続けており、疲労の蓄積した隊員たちだけで一気に押し返すことは難しい。浪城は敵の動きを警戒しながら、反撃できる隊員に射撃を継続させた。


その時、別の無線が入った。


『こちらアマゾネス01! 浪城二佐、聞こえる?』


『ん?』


『こちら浪城。ビービか?』


『そうよ。今、そちらの近くまで来ているわ。加勢する!』


『助かる! 敵歩兵がまだ残っているんだ!』


『了解! 任せて!』


通信を終えたビービは、前方に広がる戦場へ目を向けた。


遮蔽物の向こうでは敵歩兵が射撃を続けており、銃弾が着弾するたびに浪城大隊の隊員達が身を伏せていた。敵戦車から上がる黒煙が風に流され、その周囲では砲撃によって舞い上がった土砂がまだ完全には収まっていない。


ビービ達も徒歩での移動によって疲労していたが、友軍が敵の攻撃を受け続けている以上、足を止めている余裕はなかった。


「みんな、行くわよ! 浪城大隊を援護する!」


ビービの声に応じ、GASTの隊員達は周囲の状況を確認しながら、それぞれの持ち場へ向かった。


先に射撃を始めたのは、フォックス班とセイレーン班だった。


敵歩兵の1人が遮蔽物から身を乗り出し、自衛隊側へ銃を向けた瞬間、乾いた銃声が響いた。銃弾を受けた帝国兵は発砲する間もなく崩れ落ち、隣にいた別の帝国兵が驚いて振り返ったが、その者も直後に放たれた銃弾を受け、地面へ倒れ込んだ。


「何だ!? どこから撃っている!」


帝国兵たちは慌てて周囲を見渡したものの、狙撃手の姿を捉えることができなかった。敵の位置を探ろうとして遮蔽物から顔を出せば銃撃を受けるため、次第に身動きが取れなくなっていく。


コルガンは照準器越しに敵歩兵の動きを追いながら、次の目標を探していた。敵は遮蔽物を利用していたが、射撃を続けるためには銃口を向けなければならず、その際に姿を晒す者もいた。コルガンはそうした敵の動きを見逃さず、狙いを定めて引き金を絞った。


近くではグイダとジミーも射撃を続けていた。グイダは敵歩兵が身を乗り出すたびに照準を合わせ、ジミーは周囲の動きを監視しながら、反撃を試みる敵を淡々と撃ち倒していく。


一方、別の位置に展開したセイレーン班も、帝国軍歩兵への狙撃を開始していた。


ローレライ達は敵の動きを監視し、自衛隊側へ銃を向けた者を次々と撃ち倒していった。異なる方向から狙撃を受けることになった帝国軍は、どこに敵が潜んでいるのか判断できず、前進するどころか射撃を続けることさえ難しくなっていた。


その隙を突き、アマゾネス班とアルバトロス班が戦闘に加わった。


「撃て!」


ビービの号令とともに銃声が重なり、遮蔽物の陰から前進しようとしていた敵歩兵が次々と倒れた。


突然現れた新たな敵に対し、帝国軍もすぐさま応射してきた。銃弾が周囲の地面を叩き、ビービたちの近くで土砂が跳ね上がったものの、狙撃手たちが敵の射撃を妨害しているうえ、スネーク班の迫撃砲弾が後方の敵歩兵を脅かしていたため、十分な反撃には至らなかった。


「くそっ! 敵が増えているぞ!」


「戦車はどうした!? 援護はまだか!」


帝国兵の1人が叫んだものの、返事はなかった。


彼らを支援していた戦車は黒煙を上げたまま動かず、砲塔も沈黙している。先程まで敵の反撃を封じていた戦車が撃破されたことに、帝国兵たちはようやく気付き始めていた。


「救助しろ!」


叫び声を上げた帝国兵は、仲間とともに戦車へ駆け寄った。


周囲では銃撃が続いていたが、戦車の乗員が生存している可能性を捨てきれず、帝国兵は車体の陰に身を寄せながらハッチを開けた。


内部には爆発の影響が色濃く残っており、呼び掛けても応答はなかった。帝国兵が身を乗り入れて確認したところ、イッピアンをはじめとする乗員達は、すでに息絶えていた。


救助に向かった帝国兵は一瞬言葉を失ったが、近くで銃弾が着弾したことで我に返った。戦車の周囲に留まれば、自分たちまで撃たれかねない。


帝国兵達は仲間の遺体を運び出すこともできず、ハッチから離れて遮蔽物の陰へ退避した。


その時、アルバトロス班のいる方向から銃声が響き、帝国軍の兵士が1人倒れた。


ブエンテロは敵の位置を確認すると、ゴルムたちへ声を掛けた。


「敵はまだ残っている! 油断するな!」


「りょ!」


ゴルムはそう答えながら小銃を構え、遮蔽物から顔を出した帝国兵へ射撃を加えた。


相手は慌てて身を引っ込めたものの、すぐ隣から飛び出した別の帝国兵が銃を向けてきた。ゴルムはその動きに反応して応射し、銃弾を受けた敵が数歩よろめいた末に倒れ込むのを確認すると、再び周囲へ視線を走らせた。


ソブラウやマメッドも敵の反撃を警戒しながら射撃を続けており、帝国軍歩兵は容易に前進できなくなっていた。


激しい銃撃が続く中、浪城大隊の隊員達も反撃を強めていた。


「GASTが来たぞ!」


「敵が下がってる! 今なら押し返せる!」


それまで敵の射撃を避けるために身を伏せていた隊員達が、銃撃の弱まった機会を逃さず応戦を始めた。


長時間の戦闘によって疲労は蓄積しており、負傷した仲間を気遣いながら戦っている隊員も少なくなかった。それでも、敵の攻撃を一方的に受け続けていた時とは異なり、GASTの援護によって反撃する余裕が生まれていた。


帝国軍歩兵が遮蔽物から身を乗り出せば、自衛隊側から銃撃が返される。敵がそれを避けて別の場所へ移動しようとしても、GASTの狙撃手たちが動きを監視しているため、思うように態勢を立て直せなかった。


浪城は双眼鏡を覗き、前方の様子を確認した。


先程まで自衛隊側へ向けて激しい銃撃を浴びせていた帝国軍歩兵が、次第に後退し始めている。中には仲間を援護しながら下がる者もいたが、隊列は乱れており、まとまった攻撃を仕掛ける様子は見られなかった。


「……押し返している」


竹下も前方を見つめた。


「ええ。敵の勢いが落ちています」


しかし、帝国軍も簡単には退かなかった。


後退しようとしていた帝国兵の一部が足を止め、遮蔽物の陰から再び射撃を始めた。銃弾が自衛隊側の陣地付近に着弾し、反撃しようとしていた隊員達が慌てて身を伏せる。


敵は後退する仲間を援護するつもりなのか、先程よりも激しく銃弾を撃ち込んできた。


「まだ撃ってくるのか!」


浪城が顔をしかめた直後、敵のいる方向で爆発が起きた。


スネーク班の迫撃砲弾だった。


砲弾が炸裂した場所から土砂と煙が舞い上がり、射撃を続けていた敵歩兵が爆風を避けようと身を伏せた。さらに別の場所でも爆発が起き、後退する仲間を援護していた帝国兵達の射撃が途切れる。


その直後、再び狙撃銃の発砲音が響き、遮蔽物から離れて退避しようとした敵兵が地面へ倒れた。


ビービは敵の動きを確認しながら、仲間達へ声を掛けた。


「逃げ始めたわ! でも、深追いはしないで!」


アマゾネス班とアルバトロス班の隊員達は射撃を続けながらも、敵の後を無理に追おうとはしなかった。後退しているとはいえ、帝国軍にはまだ武装した者が残っており、遮蔽物の向こうに別の敵が潜んでいる可能性も否定できない。敵の反撃が弱まったからといって、不用意に前進すれば、それまでの戦闘で得た優位を失いかねなかった。


フォックス班とセイレーン班も敵の動きを監視し続けていたが、帝国軍歩兵は次第に距離を取り始め、射撃を加えようとしても姿を捉えられない場面が増えていった。


やがて帝国軍歩兵は、倒れた仲間を残したまま後方へ退き始めた。


それでも銃声が完全に途絶えたわけではなく、散発的な射撃が続くたびに、自衛隊とGASTの隊員たちは警戒を強めた。しかし、先程まで絶え間なく響いていた銃撃と砲撃は明らかに減っており、帝国軍が攻撃を継続する余力を失いつつあることが窺えた。


浪城は双眼鏡を下ろし、深く息を吐いた。


塗をはじめ、多くの仲間を失った。戦闘が終わったわけでもなく、隊員達の疲労が消えたわけでもない。それでも、敵の攻撃を食い止めるだけだった戦況に、ようやく変化が生じていた。


戦車を撃破したことで敵の火力は弱まり、GASTの各班が加勢したことで、帝国軍歩兵も後退を余儀なくされている。だが、浪城はこの機会に敵を追撃しようとは考えなかった。


隊員達の疲労は限界に近く、負傷者も少なくない。敵が後退したからといって、これ以上の戦闘に耐えられる保証はなかった。


「各隊に伝えろ。無理な追撃はするな。敵の動きを警戒しながら、陣地を維持するんだ」


「了解!」


竹下が連絡を始めると、浪城は再び前方へ視線を向けた。


後退する帝国軍歩兵の姿を見届けながら、浪城は小さく息を吐いた。


ようやく、僅かながら休息を取れるかもしれない。だが、そのためにはまず、目の前の敵を確実に退けなければならなかった。

登場人物紹介

アマゾネス班:ビービ(班長)、スライス(副班長)、ピケット、イリー

アルバトロス班:ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド

セイレーン班:ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、ファス、ビュー、ラスタ、ベルチャー、シリング

フォックス班:コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、シールズ、ラーキン、ワード、ミルトン

スネーク班:シャウブ(班長)、ロン(副班長)、カカレコ、ハン、ロスタ、ビアボーム


浪城(なみしろ) 激(げき)……第1空挺団第2普通科大隊長

竹下(たけした) 泰端(たいたん)……第1空挺団第2普通科大隊所属の一等陸尉

前田(まえだ) 繋義(つなぎ)……二等陸尉で、第1空挺団第2普通科大隊対戦車小隊長

オーサム・イッピアン……陸軍少尉でヒト族の男性。第4歩兵科連隊・偵察中隊・戦闘車両小隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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