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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第338話 砲声の途絶

ビービとキーラは、帝国軍の砲撃を避けながら移動を続けていた。遠方から飛来した砲弾が道路やその周辺に着弾するたび、激しい爆発音とともに土砂が巻き上がっていた。破片が飛散する音に紛れて、砕けた舗装の一部が地面を転がり、立ち込める土煙が周囲の視界を悪化させている。


敵の重迫撃砲がどこに展開しているのか分からない以上、銃を手にしていても反撃することはできない。ビービは着弾地点から距離を取りながら、次の砲弾が飛来する可能性を警戒していた。


「まったく…しつこいわね。こっちはもうトラックを降りてるっていうのに…」


ビービは銃を握り直しながら、苛立たしげに呟いた。


「完全に私達を狙っていたかのような砲撃ですね。」


キーラも周囲を警戒しながら応じると、ビービは顔をしかめた。


「迫撃砲で狙う必要はないでしょ!」


「近くに敵がいないのは、不幸中の幸いですね」


「そりゃ、巻き込まれたくないからよ」


ビービがそう返す間にも、2人は周囲の警戒を怠らなかった。近くに帝国兵の姿が見えないことは確かだったが、それが安全を意味するわけではない。敵が離れた場所から砲撃を続けている以上、どこに移動しても次の着弾に巻き込まれる危険があった。


キーラは破壊された道路の先へ視線を向けた後、ビービに問いかけた。


「班長、このまま逃げ続けるんですか?」


「そうしたいところだけど、向こうが諦めてくれるとは限らないわね」


ビービは一度足を止め、周囲の状況を確かめた。


砲撃によって路面の一部が陥没し、周辺には土砂や舗装の破片が散乱している。身を隠せそうな場所はいくつか見つかったものの、迫撃砲の攻撃に対して十分な遮蔽物となるかどうかは分からなかった。敵がこちらの移動を把握している可能性を考えれば、同じ場所にとどまることも避けたかった。


しかし、闇雲に移動を続けたところで、砲撃を行っている敵を排除できるわけではない。


「仕方ないわね。専門家に頼りましょうか」


ビービは通信端末を取り出すと、スネーク班への連絡を試みた。


『こちらアマゾネス01、スネーク班、応答して』


     *


その頃、GASTのスネーク班は、帝国軍の輸送車両に対する砲撃を続けていた。


120mm重迫撃砲による攻撃は、遠方を移動する敵輸送部隊に損害を与えるためのものだった。班長のシャウブは射撃状況を確認しながら、副班長のロン陸曹長をはじめとした5人の部下達が作業を見守っていた。


隊員たちは砲撃任務を継続していたが、そこへアマゾネス班からの通信が入った。


『こちらスネーク01、シャウブ』


シャウブが応答すると、通信の向こうからビービの声が聞こえてきた。


『敵の砲撃を受けてるのよ。トラックは壊されたし、こっちからは敵の姿が見えないの』


『砲撃か。現在位置は分かりますか?』


(というか、高機動車からトラックに変わっているんだが…)


シャウブは胸中で疑問を抱いたものの、今は車両が変わった経緯を尋ねている場合ではなかった。ビービたちが砲撃を受けているというなら、まず確認すべきは現在位置と周囲の状況だった。


『ええ、送るわ』


ほどなくしてビービから位置情報が届き、シャウブは地図上で該当する地点を確認した。道路の位置や周辺の地形を調べることはできたが、敵がどこから砲弾を撃ち込んでいるのかまでは分からない。


シャウブは通信端末から目を離すと、近くにいたロンへ状況を説明した。


「ロン、アマゾネス班が砲撃を受けている。敵の位置は不明だ」


「こちらから反撃できますか?」


「まだ無理だ。味方の位置が分かっただけでは、敵の発射地点までは分からない」


ロンは地図へ目を向けたが、シャウブの言うとおり、ビービたちの現在位置だけを手掛かりに敵陣地を特定することはできなかった。迫撃砲は離れた場所から曲射によって目標を攻撃できるため、着弾地点の近くに敵がいるとは限らない。


シャウブは地図を見つめながら、今後の対応を考えた。


スネーク班には帝国軍の輸送車両を攻撃するという任務があり、その攻撃を中断すれば、敵の輸送活動に与えられる損害も減少する。しかし、ビービ達が砲撃にさらされていることを知りながら、何の対応も取らずに任務を続けるわけにもいかなかった。


仮に敵陣地を特定できたとしても、反撃の準備には時間が必要となる。その間、ビービとキーラが同じ場所にとどまっていれば、再び砲撃を受ける危険がある。


「輸送車両への射撃を一時中断する。まずはアマゾネス班を危険な場所から離す」


「了解」


ロンはシャウブの指示を受け、4人の部下へ射撃中断を伝えた。隊員達はそれぞれ作業を停止し、スネーク班の重迫撃砲は一時的に沈黙した。


シャウブは改めて通信端末を手に取り、ビービへ呼びかけた。


『ビービ班長、こちらで位置を確認。敵の発射地点はまだ分からないので、すぐには撃ち返せません』


『そう。じゃあ、どうすればいい?』


『まずは砲撃を避けながら移動して下さい。敵を探そうとして無理に立ち止まる必要はない』


ビービは通信を聞きながら、キーラへ視線を向けた。


『分かったわ。キーラ、移動するわよ』


『はい!』


2人は再び移動を始めた。すでに放棄した輸送トラックは遠ざかりつつあったが、敵が最後に確認した位置を中心に砲撃を続ける可能性は残っている。


ビービは周囲の状況を確かめながら進み、キーラもその後に続いた。砲撃が止まったわけではなく、遠方から響く爆発音に注意を払いながら、少しでも危険の少ない場所へ離れようとしていた。


     *


一方、帝国軍第31歩兵科大隊火力支援中隊長のゴリンボ・ディアカテ中尉は、重迫撃砲エレオンによる攻撃が思うような成果を上げていないことに苛立っていた。


鹵獲された輸送トラックはすでに走行不能となっているものの、乗っていた地球人2匹は生存しており、車両を捨てて移動を続けている。最初のように車両の進行方向を予測して砲撃することは難しく、着弾地点を調整しても、敵を仕留めたという報告は入ってこなかった。


「まだ倒せないのか?」


ディアカテが部下へ問いかけると、報告を担当していた帝国兵は申し訳なさそうに答えた。


「敵が移動しているため、正確な位置を把握できていません」


「たった2匹だぞ。いつまで手間取っている!」


ディアカテは不満を露わにしたが、部下の説明が間違っているわけではなかった。目標となるトラックが停止していた間は、その周辺を攻撃することができたものの、車両から離れた敵兵の現在位置までは正確に把握できていない。重迫撃砲の威力がいかに大きくても、目標の位置が分からなければ、その火力を十分に生かすことはできなかった。


ディアカテが次の対応を考えていると、輸送大隊から新たな報告が入った。


『ディアカテ中尉殿、輸送車両が敵の砲撃を受けています。攻撃が止まりません。被害が拡大しているとのことです』


「敵にも迫撃砲があるということか」


ディアカテは報告された状況を確認し、輸送部隊が攻撃を受けている地域へ意識を向けた。地球人2匹を仕留めることも重要だったが、輸送車両への砲撃を放置すれば、より多くの損害が生じる可能性がある。輸送部隊が攻撃を受け続ければ、前線へ向かう人員や物資の移動にも支障が出かねない。


ディアカテは部下に周辺の情報を集めるよう命じると、報告されている被害の状況を改めて確認し始めた。


敵の砲撃がどこから行われているのか分からないという点では、ディアカテもまた、ビービたちを救援しようとしているスネーク班と同じ問題に直面していた。


     *


シャウブは受信した位置情報と地図を照らし合わせ、敵の砲撃が行われている地域を調べていた。


ビービ達の現在位置は把握できている。しかし、そこに砲弾が落ちているという事実だけでは、敵の発射地点を特定することはできなかった。地形から砲撃可能な地域を推測することはできても、実際に敵が展開している場所を裏付ける情報がなければ、重迫撃砲による反撃は難しい。


ロンもシャウブの隣で地図を確認していたが、手掛かりとなる情報は見つかっていなかった。


「班長、このままでは敵を狙えません」


「分かっている。だからこそ、確かな情報が必要なんだ」


シャウブはロンの指摘に頷き、再び通信端末へ目を向けた。


敵の位置が不明なまま砲撃を行えば、貴重な砲弾を消費するだけでなく、ビービ達を危険にさらす可能性もある。味方が敵の砲撃を受けているからといって、確認の取れていない場所へ無闇に撃ち込むわけにはいかなかった。


そのとき、ビービから再び通信が入った。


『シャウブ、また撃ってきたわ!』


通信の向こうでは、ビービの声に重なるように爆発音が響いていた。シャウブは地図から目を離し、すぐに応答した。


『現在位置は?』


『さっき送った場所から少し移動したところよ。位置情報を更新するわ』


シャウブは新たに送られてきた座標を確認し、先ほどの位置と照らし合わせた。ビービたちは移動を続けていたが、敵の砲撃から完全に逃れられたわけではないらしい。


「ロン、アマゾネス班の位置が変わった。着弾した場所も確認する」


「了解」


シャウブはビービから砲撃の状況を聞き取り、報告された着弾地点を地図上で確認していった。砲撃が行われている範囲は徐々に明らかになってきたものの、それはあくまで敵が攻撃している地域を示す情報でしかない。砲弾がどこから発射されたのかを判断するには、依然として決定的な手掛かりが不足していた。

     

     *


ビービはキーラと共に砲撃を避けながら移動していたが、敵が攻撃を諦める様子はなかった。先程までいた場所から離れたにもかかわらず、再び周辺に砲弾が落ち始めたことで、ビービは敵がこちらの動きを把握しようとしている可能性を考えた。ただし、敵の姿は見えない。銃声も聞こえず、周囲を見渡しても、砲撃を指揮している帝国兵や重迫撃砲の姿を確認することはできなかった。


このまま移動を続けても、敵が攻撃を繰り返す限り、いつか砲弾に巻き込まれるかもしれない。


ビービはその危険を理解したうえで、あることを試そうとしていた。


彼女には、通常の人間とは異なる感覚があった。意識を集中させると、周囲の音が普段とは違った形で感じられることがある。これまでは意識しなければ捉えられなかった微かな響きも、感覚が研ぎ澄まされるにつれて、他の音から切り離されていく。


ビービは移動しながら、その感覚を頼りに遠方へ意識を向けた。砲弾の着弾による爆音が周囲を震わせ、舞い上がった土砂が地面へ降り注いでいる。しかし、彼女が捉えようとしているのは、目の前で起きている爆発だけではなかった。遠くから聞こえてくる音の中に、何か手掛かりがあるかもしれない。そう考えたビービは、神経を研ぎ澄ませていった。


『班長、何をやって…』


突然、動きが鈍くなったビービを見て、キーラが不安げに声を掛けた。


『黙ってて!』


ビービの鋭い声に、キーラは思わず口を閉じた。


敵の砲撃が続いている状況で足を止めるなど、危険極まりない行為だった。いつ次の砲弾が飛来するか分からない以上、少しでも早く移動を続けるべきだとキーラは考えていた。


しかし、ビービは周囲の危険を忘れていたわけではない。彼女は意識を集中させながら、聞こえてくる音を一つずつ捉えようとしていた。近くで起きる爆発はあまりにも大きく、遠方から伝わる微かな音を覆い隠してしまう。それでも、感覚を研ぎ澄ませるにつれて、普段なら聞き分けられない音の違いが次第にはっきりしてきた。


キーラは落ち着かない様子で周囲を警戒し、ビービと砲弾が着弾した方向を交互に見つめていた。ビービが何をしているのかは分からなかったが、先ほどの反応から、今は声を掛けるべきではないと判断したのだろう。


その間にもビービは、遠方から伝わってくる音に意識を向け続けた。やがて、彼女の中で一つの方向が浮かび上がった。


敵の重迫撃砲があるとすれば、あの辺りではないか。ビービはその感覚を確かめるように、しばらく耳を澄ませた。


「……ここか」


そう呟いたビービは、ようやくその場から動き出した。キーラもすぐに後を追ったが、ビービは移動しながら通信端末を取り出し、先ほど把握した方向と位置をもとに、敵の砲撃陣地と思われる座標をシャウブへ送信した。それが正確な位置を示しているという保証はなかった。しかし、これまで手掛かりすら得られなかったスネーク班にとって、敵の所在を絞り込むための重要な情報になるはずだった。

     

     *


「これは…?」


シャウブは通信端末に表示された新たな座標を見て、思わず声を漏らした。送信元はビービだったが、先程まで受け取っていた現在位置の情報とは異なっている。示されていたのは、ビービたちが移動している場所ではなく、そこから離れた別の地点だった。


シャウブは地図上でその位置を確認し、ロンにも画面を見せた。


「敵の重迫撃砲陣地ですか?」


「可能性は高い。ただし、まだ確実とは言えない」


シャウブは慎重に答えた。ビービがどのような方法で敵の位置を割り出したのかは分からない。しかし、これまで敵陣地を示す情報がなかったことを考えれば、今回の報告は状況を変えるものだった。


シャウブは送られてきた座標を確認し、射撃目標として扱えるかどうかを検討した。敵の位置が確実に判明したわけではない以上、判断には慎重さが求められる。一方で、ビービたちへの砲撃は続いており、これ以上時間を掛ければ、救援そのものが間に合わなくなる可能性もあった。シャウブはしばらく考えた末、反撃を決断した。


「準備を進める。まずは確認できた位置を目標とする」


「了解」


ロンは指示を受けると、部下達へ射撃準備を伝えた。


4人は、改めて重迫撃砲の周囲で作業を始めた。目標となる座標が変わった以上、先程までと同じ条件で射撃するわけにはいかない。


シャウブは送られてきた位置情報と射撃準備の状況を確認しながら、部下達の作業が完了するのを待った。準備が整ったところで、ロンから報告が入った。


「班長、射撃準備完了です」


シャウブは最後に目標位置を確認した。この一撃で敵の砲撃を止められるかどうかは分からない。しかし、少なくとも何もできずに味方が攻撃され続ける状況からは抜け出せる。


「撃て!」


シャウブの号令を受け、120mm重迫撃砲が発射された。


発射音とともに砲口から煙が広がり、砲弾は高く弧を描く軌道で、敵陣地が存在すると考えられる地域へ向かった。隊員達は次の射撃に備えながら、シャウブの指示を待った。


     *


ディアカテは、輸送部隊を攻撃している敵の位置を探るため、部下から届いた報告を確認していた。


輸送車両が砲撃を受けていることは分かっていたが、敵の火力支援部隊がどこに展開しているのかは不明だった。被害を抑えるためには敵の攻撃を止める必要があるものの、発射地点が分からなければ、こちらから反撃することも難しい。


ディアカテが次の指示を考えていたとき、突然、近くで激しい爆発が起きた。


「何だ!?」


予期しない衝撃にディアカテが振り向くと、土砂が勢いよく舞い上がり、周囲にいた帝国兵達が慌てて地面へ身を伏せていた。爆発によって巻き上げられた土砂が降り注ぎ、近くでは負傷した帝国兵の呻き声が聞こえてくる。


「敵の砲撃です!」


部下の叫び声を聞いたディアカテは、表情を険しくした。


「こちらの位置が知られたのか?」


輸送部隊が敵の砲撃を受けていることは把握していたが、その攻撃が自分達の陣地へ向けられるとは考えていなかった。しかし、状況を確認する時間は与えられなかった。続けて飛来した砲弾がエレオンの周辺に着弾し、爆風が重迫撃砲陣地を襲った。衝撃を受けた帝国兵達は身を伏せ、負傷した仲間を助けようとしていた兵士も、次の爆発を警戒して動きを止めざるを得なかった。


重迫撃砲を移動させようにも、すぐに陣地から離脱できる状態ではない。砲撃が続く中で装備を動かそうとすれば、その作業に当たる兵士たちまで危険にさらすことになる。


ディアカテは周囲の状況を確認すると、部下達に命令を下した。


「砲撃を中止しろ! 負傷者を下げろ!」


命令を受けた帝国兵達は、負傷者を安全な場所へ運ぼうと動き始めた。しかし、敵の砲撃は収まらなかった。新たな砲弾が近くに着弾すると、激しい爆発とともに土砂が飛び散り、ディアカテの身体にも強い衝撃が加わった。


「ぐっ……」


ディアカテは地面へ倒れ込み、しばらく身動きが取れなかった。耳の奥では爆発音の余韻が鳴り続け、周囲の声も遠くから聞こえてくるようだった。何とか上体を起こそうとしたものの、身体に思うように力が入らない。


視界の先では、部下達が負傷者を運び出そうとしていた。互いに声を掛けながら移動している様子は分かったが、土煙によって周囲の見通しは悪く、陣地全体がどのような状況に陥っているのかまでは確認できなかった。


そのとき、再び砲弾が着弾した。爆発によって土煙が広がり、先ほどまで見えていた部下達の姿が覆い隠された。


ディアカテは歯を食いしばり、腕を動かそうとした。部下達へ指示を出さなければならない。少なくとも、現在の状況を伝え、残っている兵士達に退避を命じる必要があった。


ディアカテはリストコミュニケーターへ手を伸ばそうとしたが、身体は思うように動かなかった。指先が端末に届くまで、あとわずかというところで力が抜けてしまう。それでも諦めずに腕を伸ばそうとした瞬間、至近距離で新たな爆発が起きた。


激しい衝撃がディアカテの身体を襲い、周囲の光景が一瞬にして土煙に呑み込まれた。それが、ディアカテの最期となった。


     *


スネーク班では、シャウブが砲撃後の状況を確認していた。敵の重迫撃砲陣地と思われる地点への攻撃は実施できたものの、どの程度の損害を与えたのかまでは把握できていなかった。砲撃が目標付近に着弾していたとしても、それだけで敵の重迫撃砲を破壊したと断定することはできない。


シャウブは追加の情報を待ちながら、ビービとの通信をつないだ。


『ビービ班長、スネーク01。敵の砲撃は?』


『今のところ止まってるわ。さっきまであんなに撃ってきたのに、急に静かになったわね』


ビービの声には、先程までの切迫した様子が薄れていた。


シャウブは敵陣地への攻撃が一定の効果を上げた可能性を考えたが、まだ安心するわけにはいかなかった。


『了解。こちらから敵の砲撃陣地と思われる場所を攻撃しました。ただし、完全に沈黙させたかどうかは分かりません』


『そうなの? でも、助かったわ。ありがとう』


『再び砲撃される可能性もあるから、警戒は続けてください』


『分かったわ』


通信を終えたシャウブは、ロンへ顔を向けた。


「敵の砲撃は止まったらしい」


「では、救援は成功ですね」


「少なくとも、今のところはな」


シャウブはそう答えると、再び地図へ視線を戻した。敵の砲撃が止まったことは確認できたものの、火力支援部隊にどれほどの損害を与えたのかは分かっていない。重迫撃砲を破壊できたのか、それとも敵が一時的に射撃を中断しただけなのか、現時点で判断できる材料は限られていた。


それでも、ビービとキーラが砲撃から逃れるための時間を確保できたことは確かだった。


シャウブは周囲の警戒を続けるよう指示すると、部下達とともに輸送車両への攻撃任務を再開する準備に取り掛かった。


一方、ビービとキーラは敵の砲撃が再開されないか警戒しながら、破壊されたトラックからさらに離れていた。2人はまだ、遠方で何が起きたのかを知らない。スネーク班の砲撃によってディアカテが戦死し、彼の指揮下にあった重迫撃砲陣地が攻撃を受けたことも、知る由はなかった。ただ、先程まで絶え間なく周囲を脅かしていた砲声は、すでに聞こえなくなっていた。

登場人物紹介

GASTスネーク班

シャウブ(班長)、ロン(副班長)、カカレコ、ロスタ、ビアボーム


ビービ……GASTアマゾネス班の班長

キーラ……GASTアマゾネス班所属

ゴリンボ・ディアカテ……陸軍中尉でゴリラ型獣人族の男性。第31歩兵科大隊・火力支援中隊長


当作品に出てくる架空の装備

エレオン……帝国軍の重迫撃砲の名称

リストコミュニケーター……これまでは、「ウォッチ」や「腕時計型端末」と言っていましたが、今話から「リストコミュニケーター」という名称を用います。帝国兵はリスコンと略します。


リスコンは、腕時計型端末に通話(無線)、カメラ、メール、マイク、ファイルの保存といった機能が入っている装備品です。ほか機能として、


‣画面を直接覗き込むだけでなく、手首から青白いホログラム映像が15cmほど空間に立体投影され、作戦地図や敵の顔写真、現場の映像(TV通話)を複数人で覗き込める。

‣タッチパネルで操作

‣夜間や潜伏中、画面の光で敵に居場所がバレないよう「網膜投影」や「微光ステルス表示」に切り替わる設定。

‣会話はピンマイクとイヤホンが接続されていて、そこで行う


といった機能があります。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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