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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第335話 崩れゆく指揮系統

アルベルト・ヨッシー大尉は、第295小隊との合流を果たすと、周囲を見渡した。兵たちはそれぞれ配置に就いているが、小隊長のユージン・クレシ中尉が見当たらない。


「おい、クレシはどうした?」


近くにいた副小隊長の准尉は、返答をためらった。


「ええと…少し外すと言って、どこかへ行きました。」


「またサボりか…戦場でサボるとは、どういう神経をしているのか」


(バレてるんだ…)


准尉は内心で呟いた。クレシは行き先も戻る時間も告げずに持ち場を離れており、その間は副小隊長が部下たちを指揮していた。


(准尉が若いから舐めているのだろう。叩き上げで准尉まで上り詰めた彼は有望なのだが…。クレシあいつにとっては、横着するのにちょうどいいのだろう。困ったものだ)


ヨッシーは准尉の働きぶりを評価していたが、小隊長が部下に職務を任せきりにしてよいわけではない。まして戦闘中である。


「では、295小隊は私が指揮を執る。サボっている奴を待つ余裕などない。」


「はっ!」


准尉が応じた直後、背後から声が響いた。


「遅れて申し訳ありません!」


戻ってきたクレシを見て、ヨッシーは呆れたものの、事情を問いただすことはしなかった。


「お前の行動は、小隊の士気にも関わる。くれぐれも軽はずみな行動は取るな」


「りょ…了解しました…」


ヨッシーは前方へ視線を戻した。


第116歩兵科中隊は一定の損害を受けているが、まだ攻撃を続けられるだけの兵力がある。敵は少数ながら練度が高く、こちらの前進に合わせて射撃位置を変えながら抵抗していた。兵力の優位を生かすには、正面から敵を牽制し、その間に別の兵を左右へ展開させる必要があった。


     *


ヨッシー達の前方では、GASTアルバトロス班のブエンテロとゴルムが、接近する帝国兵を監視していた。


「班長、また動き始めた。どうやら、まだ諦める気はないらしい」


「向こうには、まだ十分な兵力が残っている。簡単には退かないだろうな」


「こっちは2人だぞ。随分と景気のいい話だですわ」


「だからといって、好きに通してやるわけにもいかんだろう」


敵は正面から射撃を加えながら左右へ展開しており、2人が一方向へ注意を向ければ、別の兵が距離を詰めてくる。


やがて銃声が響き、遮蔽物の表面が削られた。


「来やがった!」


ゴルムが反撃を始めると、ブエンテロも右側から接近する帝国兵へ発砲した。敵は互いに援護しながら移動しており、1人を倒しても後続の兵が前進を引き継いでいた。


ブエンテロは右側の敵を牽制した直後、正面からの銃撃を受けて身を引いた。2人は射撃位置を維持していたが、敵の数が多いため、反撃だけで前進を完全に止めることは難しかった。


     *


ヨッシーは第295小隊へ攻撃の継続を指示した。


帝国兵は正面から銃撃を加え、その援護を受けた別の兵が左右の遮蔽物へ移動する。ブエンテロとゴルムも敵の動きを捉えて応射していたが、次第に対応する方向が増えていった。


     *


「班長、こいつら、随分としつこいぞ」


ゴルムは前進してきた帝国兵へ発砲し、反撃を避けて身を引いた。


「まだ戦力に余裕があるんだろう。こっちが2人しかいないと分かれば、猶更だ」


「だったら、少しは手加減してもらいたいもんですよ」


軽口を叩くゴルムの近くに銃弾が着弾した。ブエンテロは右側から接近する敵兵を確認し、注意を促した。


「右からも来ている。正面は任せるぞ」


「りょ。そっちは頼んだ!」


ゴルムは正面の帝国兵を撃ち倒し、後続の反撃を避けて遮蔽物へ身を引いた。銃声が弱まったところで再び身体を出そうとした、その瞬間、別方向からの一発が遮蔽物の縁を砕いた。


「くそっ、今のは何だ!?」


ブエンテロも銃声の方向から、正面の敵とは別の射手がいることに気付いた。


「狙撃手だ。ゴルム、無理に顔を出すな!」


「りょ! だが、このままじゃ前の連中に詰められるぞ!」


「今なら行けるぞ!」


帝国兵の叫び声とともに正面からの銃撃が強まり、2人は遮蔽物の陰へ押し込まれた。狙撃を警戒すれば前進を許し、反撃のために身体を出せば狙われる。ブエンテロは別の射撃位置への移動を考えたが、敵の狙撃位置が分からないままでは危険が大きかった。


     *


第116歩兵科中隊の狙撃班員は、離れた位置からブエンテロとゴルムを監視していた。


先程の射撃は命中しなかったが、敵が身を隠したことで味方の前進を助けている。狙撃班員は再び姿を現した敵へ発砲したものの、弾丸は遮蔽物を削るに留まった。


「ちっ、また外したか」


「お前の腕が悪いんだよ」


隣のスポッターが悪態をついた。


「うるせぇ、今度は外さねぇよ」


狙撃班員は照準器を覗き直し、次の機会を待った。


     *


アルセフィーナ・メロッティ少尉は、陣地内で外の銃声を聞いていた。


負傷した両腕には治療が施されていたが、満足に銃を扱える状態ではない。しかも、出入口の外には敵狙撃手が潜んでおり、陣地から離れることもできなかった。


その狙撃手、GASTフォックス班のジミーは、別の射撃位置から陣地を監視していた。メロッティ達が姿を現さない以上、発砲する必要はない。彼は周辺の戦闘に気を取られることなく、監視を続けた。


     *


「班長、あの狙撃手をどうにかしないと厳しいぞ!」


ゴルムは正面の敵へ応射しながら叫んだ。


「分かっている。だが、こっちから探す余裕がない」


ブエンテロは接近してきた帝国兵を撃ち倒したが、直後に別方向から狙撃を受け、身を引いた。その間にも敵兵たちは少しずつ距離を詰めている。そこへ、これまでとは異なる方向から銃声が響いた。


ブエンテロは反射的に身を伏せたが、弾丸は2人の近くには着弾しなかった。


     *


グイダは、ブエンテロとゴルムを援護するため、交戦地点へ移動してきていた。


2人は正面の帝国兵に加え、別の場所に潜む狙撃手からも攻撃を受けている。グイダは銃声から敵の位置をある程度絞り込み、遮蔽物の陰に身を収めた。


(おいおい、もしかして状況はヤバい?)


グイダは照準器越しに敵の潜伏地点を監視した。正面の銃撃戦に加わるより、まず2人の動きを制限している狙撃手を排除する方が効果的だった。やがて遮蔽物の陰から銃口が現れ、続いて射手が上半身を覗かせた。


「見つけたぞ……」


グイダは照準を合わせ、敵が引き金を絞る直前に発砲した。


銃弾は狙撃班員に命中し、相手は銃を取り落として崩れ落ちた。隣のスポッターが慌てて身を伏せる。グイダは命中を確認すると、周囲を警戒しながら通信端末を操作した。


     *


「班長。狙撃が来なくなったぞ」


ゴルムが異変を伝えた直後、通信端末からグイダの声が響いた。


『フォックス05、グイダだ。狙撃手は仕留めた』


「恩に着る」


ブエンテロは短く応じ、正面へ視線を戻した。


「よし、せっかくの機会だ、少しは押し返してやろうぜ」


「ゴルム、正面を頼む。俺は右側を抑える」


「りょ!」


2人は同時に反撃を強めた。ゴルムの射撃で正面の帝国兵が倒れ、ブエンテロも右側から接近する兵を撃ち倒した。


狙撃支援を失った帝国兵は、それまでのように前進できなくなり、遮蔽物へ身を隠して応射するようになった。


     *


ヨッシーは前方の反撃が強まったことに気付き、狙撃班員が撃たれた可能性を知らされた。こちらにはまだ兵力がある。しかし、狙撃による援護を失ったことで、第295小隊の前進は鈍っていた。その時、小隊のいる方向からクレシの怒鳴り声が響いた。


「何をしている! 敵はたった2匹だぞ!」


クレシは部下達へ前進を促し、自ら遮蔽物から大きく身を乗り出して発砲した。

 

    *


「また1人、調子に乗って出てきやがった」


ゴルムは正面で射撃を続ける帝国兵へ銃口を向けた。


「無理に追うな。向こうにはまだ兵が残っている」


「りょ」


ゴルムは相手が身体を晒していることを確認し、引き金を絞った。


「がっ……!」


銃弾を受けたクレシが崩れ落ち、近くの帝国兵が叫んだ。


「小隊長!」


しかし、ゴルムの射撃が続いているため、誰も容易には駆け寄れなかった。


     *


ヨッシーはクレシが撃たれたとの報告を受け、第295小隊の方へ視線を向けた。小隊長を失った兵は動揺し、遮蔽物の陰で足を止めている。そのとき、若い准尉が周囲へ声を張り上げた。


「まだだ! 総員散開! 固まるな! ツーマンセルで動け!」


准尉の指示を受けた兵たちが散開し、互いの位置を確認し始めた。


(やはり優秀だ)


ヨッシーは副小隊長の働きぶりに感心したものの、狙撃支援を失ったうえに小隊長まで倒されたことで、攻撃の勢いは明らかに衰えていた彼は状況を立て直すため、自ら前方へ移動した。


     *


「まだ来る気かよ。いい加減、諦めてくれりゃいいのにな」


ゴルムは帝国兵の動きを警戒しながら呟いた。


「向こうにも引けない事情があるんだろう。だが、こちらも退くわけにはいかん」


ブエンテロは後方から現れた帝国兵に目を向けた。その中の1人が周囲へ指示を出しており、兵達もそれに従って動いている。


「ゴルム、あそこを見ろ」


「ん? ……ああ、何か指示してる奴がいるな」


「指揮官かもしれん。周囲の動きに注意しろ」


「だったら、あいつを止めりゃ少しは静かになるか?」


「そう簡単にはいかんだろうが、放っておく理由もない」


ブエンテロは周囲の敵を警戒しながら、指揮官らしき人物の動きを追った。


     *


ヨッシーは前方の状況を確認しながら、部下へ指示を出していた。そのとき、正面からの銃撃で近くの兵が倒れた。ヨッシーは身を低くして敵の方向へ銃口を向けたが、発砲するより早く、別方向から放たれた弾丸が身体を貫いた。


「ぐっ……!」


「中隊長!」


ヨッシーは遮蔽物へ手を伸ばしたものの、身体を支えられず、その場に倒れた。近くの兵が救助に向かおうとしたが、敵の銃撃が続いているため近付けない。ヨッシーは地面に倒れたまま、前方へ視線を向けた。まだ兵力は残っている。敵はわずか2匹だというのに、狙撃支援を失い、小隊長も倒された。自ら立て直しに向かった結果が、これだった。何かを告げようとしても声にならず、やがてアルベルト・ヨッシー大尉は動かなくなった。


     *


「当たったぞ」


ゴルムは指揮官らしき帝国兵が倒れたことを確認した。


「確認した。だが、まだ終わっていない」


ブエンテロは周囲の警戒を続けた。敵の動きは一時的に鈍ったものの、別の兵が指示を出し始め、反撃は続いている。


「敵が退くまでは気を抜くな。ここで無理をする必要はない」


「分かってる。せっかくここまで押し返したんだ。最後にやられちゃ笑えねえからな」


     *


第116歩兵科中隊では、中隊長と第295小隊長を相次いで失い、攻撃が停滞していた。


若い准尉は周囲の兵たちをまとめながら、前方の敵を確認した。兵力はまだ残っているが、狙撃支援を失った状態で攻撃を続ければ、さらに損害が増える恐れがある。彼は倒れたヨッシーの方へ一度だけ視線を向け、決断した。


「これ以上の前進は中止する! 負傷者を収容しながら後退しろ! 互いに援護を忘れるな!」


帝国兵は、互いに援護しながら負傷者を収容し、順番に後退を始めた。准尉も周囲を警戒しながら、取り残される兵が出ないよう指示を続けた。


     *


「……退いていくな」


ブエンテロは、帝国兵たちが距離を取り始めたことを確認した。


「やっと諦めたか。随分と粘りやがったな」


「まだ分からん。だが、排除できるだけ排除しとくか」


「相変わらず班長は大胆だ」


2人は後退する帝国兵のうち、姿を現した者へ反撃を加えながら、敵の動きを監視した。


帝国兵たちは互いに援護し、負傷者を連れて戦場から離れていく。ブエンテロも無理に追撃することはせず、敵が十分に距離を取ったところで射撃を控えた。


こうして第116歩兵科中隊は、戦闘可能な兵力を残しながらも、中隊長と第295小隊長を失い、攻撃を断念した。


ブエンテロとゴルムは最後まで警戒を続け、敵の姿が見えなくなるまで前方を監視していた。

登場人物紹介

ブエンテロ……GASTアルバトロス班の班長

ゴルム……GASTアルバトロス班所属

グイダ……GASTフォックス班所属

アルベルト・ヨッシー……陸軍大尉でリザードマンの男性。第116歩兵科中隊所属

ユージン・クレシ……陸軍中尉でヒト族の男性。第295歩兵科小隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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