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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第334話 視野狭窄

エンリケ・アルサーフィン大尉は、前方から断続的に響く銃声を聞きながら、第115歩兵科中隊の損害状況を確認していた。


交戦開始から現在まで、敵の抵抗によって部隊の前進は阻まれ続けている。確認されている敵はわずか数匹だったが、こちらが攻撃を仕掛けるたびに的確な反撃を受け、既に多数の兵が死傷していた。その間にも、前線から負傷兵が運ばれてくる。腕から血を流した兵が仲間に肩を貸され、自力で歩けない兵は2人がかりで後方へ引きずられていた。


「敵は何匹いる?」


アルサーフィンが近くの部下に尋ねると、兵士は前方を警戒したまま答えた。


「確認できているのは3匹です。ただ、ほかにも潜んでいる可能性があります」


敵が少数であることは、もはや何の慰めにもならなかった。中隊は既に甚大な損害を受けており、これ以上兵力を失えば、組織的な戦闘を続けることさえ難しくなる。


アルサーフィンは遮蔽物の陰で射撃を続ける部下を見つめ、攻撃を継続すべきか考えた。


     *


第115歩兵科中隊の前進を食い止めていたのは、GASTアルバトロス班のクラウスレイ、ソブラウ、マメッドだった。


3人は敵車両をある程度無力化した後、遮蔽物を利用して帝国兵との交戦を続けていた。敵の数は当初より減っているものの、残存兵たちは互いに援護しながら接近しており、容易には退いてくれない。


「思ったより少ないな」


クラウスレイが前方を確認すると、ソブラウが応じた。


「とはいえ、練度そのものは低くありません。結構、骨が折れますよ」


「そうだな」


ソブラウは遮蔽物から身を乗り出し、前進してきた帝国兵へ発砲した。銃弾を受けた兵が倒れたものの、後方にいた別の兵が即座に応射し、ソブラウは追撃する間もなく身を引いた。弾丸が遮蔽物の縁を削り、砕けた破片が肩口へ降りかかる。


「無理に撃ち続けるな。位置を知られたら集中して狙われるぞ」


「りょ」


ソブラウは短く返事をし、敵の射撃が弱まるのを待った。先程倒した兵の後方では、別の帝国兵が遮蔽物を伝いながら接近している。


「向こうも、こっちが3人しかいないと分かってるんじゃないか?」


「そうかもしれません。舐められないよう、気を引き締めないといけませんね」


そのとき、右手から銃声が響いた。


マメッドの近くに弾丸が着弾し、遮蔽物の表面が弾け飛んだ。マメッドは身を伏せて応射したものの、別方向からも銃撃を受け、頭を上げられなくなった。


「副班長、右からも来ています!」


「ソブラウ、正面を頼む。マメッド、右側は俺とお前で抑えるぞ」


「了解しました!」


クラウスレイは右側から接近する帝国兵へ射撃を加え、マメッドがその動きを牽制した。正面ではソブラウが敵の前進を阻止していたが、帝国兵達は一方が射撃している間に別の兵が移動し、少しずつ距離を詰めてくる。3人がそれぞれの方向を抑えている限り、敵は容易に突破できない。しかし、右側へ火力を集中させれば正面が手薄になり、ソブラウを援護しようとすれば今度は右側から前進される。


クラウスレイは敵の配置を確認し、これ以上の接近を許さないよう射撃を続けた。


     *


アルサーフィンのもとには、敵が依然として少数のまま抵抗を続けているとの報告が届いていた。


残存兵力を考えれば、これ以上の損害は避けたい。しかし、ここで攻撃を中断すれば、僅かな敵を排除できないまま後退することになる。


「前方の敵を排除しろ。ただし、無理に突出するな」


「了解」


命令を受けた帝国兵達は正面からの射撃を強め、その援護を受けた別の兵が右側から前進を始めた。


     *


クラウスレイは銃声が増したことに気付き、右手へ視線を向けた。


複数の帝国兵が互いに援護しながら接近しており、正面でも敵の動きが活発になっている。


「また来るぞ。今度はさっきより多い」


ソブラウは正面から接近する帝国兵を撃ち倒したが、直後に反撃を受け、遮蔽物の陰へ身を引いた。右側ではマメッドが敵兵を一人倒したものの、別の兵から銃撃を受け、クラウスレイの援護がなければ射撃位置を維持できない状況になっていた。


「くそっ、しつこい!」


ソブラウが悪態をつく間にも、帝国兵達は射撃を途切れさせず、少しずつ距離を詰めていた。


クラウスレイは右側の敵を牽制しながら正面を確認した。3人の射撃で前進を鈍らせることはできても、敵の接近を完全には止められない。これ以上同じ場所に留まれば、退路を断たれる恐れがあった。


「一度下がるぞ。このままだと囲まれる」


「はい!」


クラウスレイは正面へ牽制射撃を加え、ソブラウを先に後退させた。ソブラウが後方の遮蔽物へ移り、援護できる位置を確保すると、続いてマメッドが移動を開始する。


帝国兵達は後退に気付いて銃撃を強めたが、クラウスレイが右側の敵を牽制し、マメッドも無事に新たな位置へ移った。


最後にクラウスレイ自身が射撃位置を離れ、3人は互いを援護しながら後方へ下がった。


帝国兵の前進を完全に止めることはできなかったものの、3人は敵に損害を与えながら包囲を避けることに成功した。


     *


アルサーフィンは、前方の敵が後退したとの報告を受けても、すぐには追撃を命じなかった。


敵を退かせることには成功したが、戦闘能力を奪ったわけではない。現に負傷兵の収容も終わっておらず、ここで深追いすれば再び待ち伏せを受ける恐れがあった。


「追撃は控えろ。負傷者を確認し、部隊を立て直す」


命令を受けた帝国兵は攻撃を中断し、周囲を警戒しながら負傷者の収容を始めた。アルサーフィンは残存兵力を確認し、これ以上の攻撃を続けるべきか検討していた。


     *


その頃、第115歩兵科中隊の狙撃班長エンリケ・トーテ少尉は、別の場所でセイレーン班との交戦を続けていた。


トーテは照準器越しに輸送車両の周囲を確認し、苛立ちを募らせていた。


輸送兵は物資を運び出そうとするたびに狙撃され、車両の陰へ押し戻されている。倒れた仲間を収容することも難しく、輸送作業はほとんど進んでいなかった。


「トーテだ。敵の射撃位置は分かったか?」


『まだです。ただ、複数の方向から撃たれています』


「分かっている。引き続き警戒しろ」


トーテは通信を終え、再び照準器を覗いた。


敵の中でも、特に警戒している女狙撃手が1匹いる。これまでの交戦で、その射撃技術がほかの敵より優れていることは認めざるを得なかった。


(あの女さえ仕留めれば……)


しかし、敵は彼女だけではない。輸送車両の周囲では別方向からも銃声が響き、そのたびに帝国兵が倒されていた。それでもトーテの意識は、ローレライが潜んでいると思われる方向へ戻っていた。


     *


セイレーン班では、輸送部隊への攻撃を継続するため、射撃位置を分散させることにした。


「今回はツーマンセルで動くわ。私とベルチャー、シリングとビュー、ボナーとラスタ。ファスは1人でお願い」


ローレライが組み合わせを告げると、シリングは残念そうに顔を上げた。


「私…班長を組みたかった。」


「あら、私と組みたかったの?」


「班長の狙撃、もっと近くで見たい…」


隣にいたビューが苦笑した。


「私じゃ不満?」


「そ、そういうわけでは…」


「だったら、よろしくね」


「はい」


一方、ラスタはしばらくローレライを見つめていたが、ボナーに声を掛けられて我に返った。


「ラスタ、聞いているか?」


「えっ? あ、はい。聞いてます」


「ならいい。俺たちは向こうだ」


「了解です」


ラスタはもう一度だけローレライを振り返った後、ボナーに続いた。


単独行動を命じられたファスは、特に不満を見せなかった。


「俺は1人でいいんですね?」


「ええ。その方が動きやすいでしょう?」


「助かります」


全員の返答を確認したローレライは、任務を改めて説明した。


「今回の目的は輸送兵を狙撃して、敵の物資輸送を妨害することよ。射線を増やせば、向こうも一方向だけを警戒していればいいわけじゃなくなる。ただし、敵にも狙撃手がいるから、無理に撃ち続けないこと。いい?」


「了解!」


隊員たちはそれぞれの組み合わせで移動を開始した。


     *


ローレライとベルチャーは、輸送車両を見通せる位置から敵の動きを監視していた。


「また動き始めたね」


「車両の陰から物資を運び出しています。2体確認できます」


「了解」


ローレライは照準器越しに輸送兵を捉え、先頭の1人が車両の陰から離れるのを待った。


「狙撃手だ、伏せろ!」


帝国兵の警告とほぼ同時に銃声が響き、物資を運んでいた1人が倒れた。もう1人は荷物を放り出し、慌てて車両の陰へ逃げ込んだ。


「命中です」


「移動するよ。向こうも黙って撃たれているわけじゃないでしょうし」


「はい」


2人が射撃位置を離れようとした直後、近くの遮蔽物に弾丸が着弾した。破片が飛び散り、ベルチャーは反射的に身を伏せた。


「班長!」


「大丈夫。位置を変える」


ローレライは落ち着いて応じ、ベルチャーとともに別の遮蔽物へ移った。


     *


トーテは敵の移動を確認し、部下へ連絡した。


「こちらトーテ。敵は移動した。引き続き警戒しろ」


『了解。しかし、他の方向からも狙撃されています』


「そちらは任せる。俺はあの女を追う」


トーテはローレライが移動したと思われる方向へ照準を向けた。


あの女の技量は脅威だ。先に仕留めなければ、こちらの狙撃兵が次々と倒されるかもしれない。


(名も知らぬ女狙撃手よ、貴様の腕は見事だが、今日、俺に殺される)


その間にも別方向から銃声が響き、輸送車両の周囲で帝国兵の悲鳴が上がった。


     *


「ビューさん、右側の車両から2人出てきました」


シリングは照準器越しに輸送兵を捉えた。


「見えてる。片方は物資を持ってるね」


「私が撃ちます」


「お願い」


シリングの射撃で物資を抱えた帝国兵が倒れ、同行していた兵が車両の陰へ逃げ込んだ。


「クソ、狙撃手は何匹いるんだ!?」


怒鳴り声が響く中、シリングは命中を確認した。


「1体命中」


「確認したよ。次が出てくるまで待とう」


ビューは双眼鏡で周囲を確認していたが、ふと別の位置へ視線を向けた。


「シリング、あそこ」


「……あの狙撃手ですか?」


「うん。さっきから班長の方を警戒してるみたい」


シリングも敵狙撃手の様子を確認した。彼はローレライがいた方向を重点的に監視しており、こちらの射撃にはほとんど反応していない。


「……私達、あまり警戒されてないんですかね?」


「そうみたいだね」


「…何か腹立つ」


「気持ちは分かるけど、今は輸送兵を止めるのが先だよ」


「はい」


シリングは敵狙撃手の位置を頭に入れ、再び輸送車両へ照準を戻した。


     *


「こちらトーテ。あの女の位置は分かったか?」


『まだ確認できません。それより、こちらの輸送兵がまた撃たれています!』


「そちらの敵を探せ。俺は引き続きあの女を警戒する」


『了解!』


トーテはローレライが潜んでいると思われる方向から目を離さなかった。別の方向から輸送兵が狙撃されていることは承知している。しかし、彼にとって最も危険なのは、あの女だった。その時、部下の1人が敵らしき姿を発見して発砲した。


『こちら狙撃班。敵らしき姿を確認したため、発砲しました!』


「命中したのか?」


『不明です。相手はすぐに姿を消しました』


「無駄撃ちするな。敵に位置を知らせることになるぞ」


『申し訳ありません!』


トーテは舌打ちし、再びローレライの行方を探った。


     *


「ビューさん、あの狙撃手、また班長の方を見ています」


「そうだね。こっちのことは、ほとんど気にしてないみたい」


「……だったら、隙があるかもです」


シリングは照準器越しにトーテの動きを追った。相手は遮蔽物に身を隠しており、現状では狙える部分が少ない。


「シリング、焦らないで」


「はい」


ビューは輸送車両へ視線を戻した。


「右の車両、また動きがあるよ」


「確認しました」


シリングは一度敵狙撃手から照準を外し、物資を運び始めた帝国兵を撃ち倒した。


「命中」


「うん。……あの狙撃手、動いたよ」


シリングが再び照準を向けると、トーテはローレライの方向を警戒しながら、わずかに姿勢を変えていた。


「……見えた」


「撃てそう?」


「はい。でも、もう少し待ちます」


シリングは照準器から目を離さず、相手が次に動くのを待った。


     *


(あの女……どこへ行った?)


トーテはローレライが潜んでいると思われる場所を監視していた。


輸送車両の周囲では依然として狙撃が続き、部下達も敵の射撃位置を特定できずにいる。それでもトーテは、ローレライを先に仕留めれば状況を変えられると考えていた。彼は別の遮蔽物を確認しようと、わずかに姿勢を変えた。


「……今」


シリングが引き金を絞った。


銃弾はトーテに命中し、彼の身体が大きく揺れた。


「ぐっ……!」


トーテは撃たれたことを理解したものの、どこから狙われたのか分からなかった。


(馬鹿な……あの女じゃ……ない……?)


彼は崩れるように倒れ、そのまま動かなくなった。


「班長が撃たれた! 誰か、応答してくれ!」


近くにいた帝国兵が呼び掛けたが、トーテから返事はなかった。仲間を助けようにも周囲からの狙撃が続いており、容易に遮蔽物から出ることはできなかった。


     *


「命中したね」


「……はい」


ビューの言葉に、シリングは照準器を覗いたまま答えた。


倒れた敵狙撃手の近くで別の帝国兵が動いたが、銃声を聞いてすぐに身を隠した。


「シリング、移動するよ」


「了解」


シリングは射撃を中断し、ビューの後に続いた。


敵がローレライばかりを警戒していたことで生まれた機会だった。しかし、実際に照準を合わせて撃ち倒したのはシリング自身である。


     *


ローレライも敵狙撃手が倒れたことを確認していた。


「……やったね」


ベルチャーが双眼鏡を覗きながら言った。


「シリング達の方向から撃たれたようです」


「ええ。あの子も、ちゃんと機会を見逃さなかったみたいね」


ローレライは通信端末を操作した。


『セイレーン01。敵狙撃手の1体が倒れた。各員、引き続き輸送兵を警戒して』


各組はそれぞれの位置で輸送部隊への監視を続けた。狙撃班長を失った帝国兵たちは、どこから撃たれるか分からない状況の中で、物資を運び出すことも難しくなっていた。


     *


アルサーフィンのもとへ、トーテが撃たれたとの報告が届いた。


「……トーテが?」


「はい。敵の狙撃によって倒れました。現在、周囲の兵が状況を確認していますが……」


部下の言葉が途切れたことで、アルサーフィンはトーテの状態が芳しくないことを察した。


前方の敵を後退させることには成功したものの、第115歩兵科中隊は既に多数の兵を失っている。そこへ狙撃班長の損失まで加わり、これ以上の攻撃を継続する余力は乏しかった。


「これ以上の戦闘は継続しない。残存兵力をまとめ、後退する」


「大尉殿、敵はまだ前方にいると思われますが……」


「分かっている。だが、このまま攻撃を続ければ、中隊そのものが消滅しかねん」


アルサーフィンは負傷者の収容を指示し、残存兵力をまとめて後退を開始した。


     *


「……退いていくな」


クラウスレイは、敵兵が負傷者を連れて後退する様子を確認した。


「追いますか?」


「いや、無理に追う必要はない。こっちも3人しかいないんだ。だが、何体かは仕留めておこう」


クラウスレイは退却する敵兵のうち、こちらへ銃口を向けていた1人を撃ち倒した。近くの兵が応射してきたため、すぐに遮蔽物へ身を引く。


「マメッド、周囲の警戒を頼む。敵が本当に後退しているか確認してくれ」


「了解!」


マメッドは敵兵の動きを監視し、ソブラウも銃を構えたまま前方を警戒した。やがて敵が距離を取り始めると、ソブラウは銃口を下げた。


「結局、逃がしましたね」


「全滅させることだけが目的じゃない。これ以上、向こうに前進させなければ十分だ」


クラウスレイは敵の追撃を控え、3人で周囲の警戒を続けた。


第115歩兵科中隊は残存兵力をまとめ、戦場から後退していった。


     *


セイレーン班も輸送部隊の後退を確認し、各射撃位置で警戒を続けていた。


シリングは照準器越しに敵兵の動きを追いながら、先程倒した敵狙撃手のことを思い返した。あの狙撃手は最後までローレライの方向を警戒し、他の場所から撃たれていることを知りながら、自分達への注意を疎かにしていた。


(班長ばっかり見てるから……)


シリングは小さく息を吐き、再び輸送車両へ照準を向けた。

登場人物紹介

クラウスレイ……GASTアルバトロス班の副班長

ソブラウ……GASTアルバトロス班所属

マメッド……GASTアルバトロス班所属


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ビュー、ラスタ、ベルチャー、ファス


エンリケ・アルサーフィン……陸軍大尉で猿型獣人族の男性。第115歩兵科中隊長

エンリケ・トーテ……陸軍少尉でエルフの男性。第115歩兵科中隊・狙撃班長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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