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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第316話 籠城戦

「馬鹿な……砲兵隊の1匹に全滅させられた……だと?」


報告を受けたルクサンドルは、信じられないという表情を浮かべた。敵が手練れなのは分かっている。それでも、砲兵科の兵士1匹を相手に、歩兵科の部隊が壊滅的な被害を受けたという話は、容易には受け入れられなかった。


「あの狙撃線を突破したのは、1個分隊ほどはいたぞ……」


目の前で報告している兵士も、その狙撃線を突破した1人だった。他の兵士より遅れて突破したため、シャウブ1人によって仲間が倒されていく様子を目の当たりにしている。それは本人にとっても信じ難い光景だった。


「それで、お前は戦わずに逃げてきたのか?」


第302小隊長が問いただした。その口調には、最後まで戦うべきだったという思いが滲んでいる。しかし、彼まで戦っていれば、ここで何が起きたのかを伝える者はいなくなる。ルクサンドルは小隊長を宥めようとしたものの、相手はなお納得していない様子だった。


(困ったな……)


ルクサンドルは苦笑した。


この小隊長は自身の後輩にあたるが、階級は同じ少尉である。現在は中隊を指揮する立場になったとはいえ、あまり権威を振りかざせば、かえって関係を悪くする可能性があった。そこへ、デラミーから助け舟が出た。


「こいつ(戻ってきた兵士)の判断は正しい。今は体勢を立て直し、反撃に向かうべきだ。分かったな?」


「了解」


ルクサンドルは内心で安堵した。


とはいえ、施設への砲撃は依然として続いている。頑丈な素材が使われているため、まだ炎上こそしていないものの、外壁には数か所に焦げた跡が生じていた。このまま砲撃を受け続ければ、破損するのも時間の問題だった。


『デラミー大隊長』


そこへ通信が入った。


声の主は、第12補給大隊の本部管理中隊長、ア・ディーバ大尉だった。デラミー宛ての通信だったが、その場にいる兵士たちにも聞こえている。ルクサンドルは、自分たちにも関係する内容なのだと察した。


『こちらの物資は、別の場所へ移し終えています。敵を侵入させても問題ありません』


デラミーは一考した。まだ切り札があることは分かっている。しかし、ここで簡単に撤退すれば、敵に何かを察知される可能性がある。


「もう少し我々で戦ってみる。それでも劣勢になったら手筈通りに」


『分かりました。それで行きましょう』


ア・ディーバからの通信が途切れた。


ルクサンドルは、しばらく黙ったままデラミーを見ていた。


「……物資は、もう移したということですか?」


「そういうことだ」


デラミーは施設の奥へ視線を向けた。


砲撃はまだ続いている。外壁へ着弾するたびに建物が揺れ、内部にも低い衝撃音が伝わってくる。それでも、施設そのものが崩れる気配はなかった。


「なら、ここを守る必要はないのでは?」


ルクサンドルが尋ねる。


「守る必要がなくなったからといって、すぐに退けばいいわけではない」


デラミーは落ち着いた口調で答えた。


「敵がどこまでこちらへ入り込めるのか、まだ分からない。ここで少しでも時間を稼ぐ」


ルクサンドルは黙って頷いた。




外では、帝国兵が再び射撃を始めていた。


GASTの隊員たちは遮蔽物を利用しながら前進を続けている。帝国軍の防御線は徐々に後退していたが、完全に崩れているわけではなかった。


ビービは前方の動きを確認しながら、隊員たちへ指示を出した。


「急がなくていい。敵の位置を確認しながら進むよ」


スライスが周囲を確認する。


「右側、まだ敵がいます」


「アルバトロスに押さえてもらって」


「了解」


右側から射撃が始まり、帝国兵の動きが鈍った。その隙を利用して、アマゾネス班が前へ出る。


帝国兵も射撃を続けていたが、先ほどまでのように前方で防御線を維持することはできなくなっていた。それでも後退しながら射撃を続けることで、GASTの前進を少しずつ遅らせている。


デラミーはその様子を見ていた。


敵は確実に近づいている。だが、まだ時間はある。


「もう少しだ」


デラミーが呟く。


GASTの前進によって、帝国軍の防御線は少しずつ施設へ近づいていた。


帝国兵は射撃を続けながら別の遮蔽物へ移り、後退していく。それでも、デラミーはまだ施設内へ下がる命令を出さなかった。


「まだだ。ここで止めろ」


帝国兵が応射する。GASTの隊員たちは遮蔽物を利用しながら前進し、帝国軍をさらに後退させていく。やがて最前線が施設の入口からそれほど離れていない場所まで下がったところで、デラミーはようやく判断を下した。


「ここまでだ。施設内へ下がれ」


命令を受けた帝国兵たちは、まとまって後退を始めた。最後尾の兵士がGASTへ向けて射撃を続ける間に、前方の兵士が施設内へ入っていく。最後の兵士が入口をくぐるまで、射撃は止まらなかった。


最後の帝国兵が施設内へ姿を消すと、入口周辺から銃声が途絶えた。


ビービはすぐには追わなかった。隊員たちを止め、施設の入口と周囲を確認する。先ほどまで帝国兵が射撃していた場所には、いくつもの弾痕が残っているが、外へ出てくる気配はない。


「敵が中へ入ったね」


ビービが言うと、スライスが施設を見上げた。


「かなり下がりました。ここまで追い込めたのは大きいと思います」


「そうだね。ただ、簡単すぎるのが気になる」


ビービは入口の奥を見た。


施設内部は暗く、外からでは奥の様子を確認できない。敵がどこまで下がったのか、それとも入口のすぐ内側で待ち構えているのかも分からなかった。


「ピケット、見える?」


「入口の先までは確認できません。建物の構造が邪魔になっています」


「分かった。無理に入らないで、周囲を確認して」


「了解」


隊員たちは入口周辺へ散らばり、建物の外側を警戒した。しばらく待っても、帝国兵は姿を見せなかった。


ビービは施設の奥を見ながら考える。


敵はあれだけ抵抗していたにもかかわらず、最後はまとまって施設へ下がった。完全に追い詰められて逃げたというより、何か別の意図があるようにも感じられる。しかし、ここで立ち止まり続けるわけにもいかなかった。


「行こう。入口を確保して、少しずつ進む。フォックス班とセイレーン班は外の敵を排除して。スネーク班は砲撃を止めて」


コルガンが頷く。


『了解』


無線からシャウブの返事が返ってきた。




施設内部へ入ったGASTは、入口付近で一度停止した。


外から見えていたよりも内部は広く、いくつもの通路が奥へ伸びている。天井には照明が並んでいるものの、ところどころ消えており、遠くまで見通すことはできない。


ビービは壁際に身を寄せ、正面の通路を確認した。


「ピケット、正面に敵は?」


「今のところ見えません」


「右は?」


「こちらも確認できません。ただ、奥から物音があります」


ビービは少し考えてから、スライスへ視線を向けた。


「アルバトロスは右を。私たちは正面から進む」


「了解」


アマゾネス班とアルバトロス班が分かれた。


数十メートルほど進んだところで、正面の通路から銃声が響いた。隊員たちの前方にある壁へ弾丸が当たり、破片が飛び散る。


「撃ってきた!」


サリカムが叫ぶ。


「撃ち返して!」


ビービの指示に合わせ、隊員たちが応射する。


帝国兵の姿は見えない。通路の角を利用して撃っているらしく、射撃だけが断続的に続いていた。


ビービは無理に前へ出なかった。


「キーラ、左の壁際から少しだけ見て」


「了解」


キーラが慎重に位置を変える。その瞬間、通路の奥から再び銃弾が飛んできた。キーラが身を引く。


「いました。角の向こうです」


「距離は?」


「近いです。十数メートルくらい」


ビービは通路の角を見た。


ここで無理に前へ出れば、待ち構えている帝国兵の射撃を正面から受けることになる。


「サリカム、反対側から回れる?」


「確認します」


サリカムが横の通路へ移動する。少しして、無線が入った。


『班長、こちらサリカム。横から回れそうです。ただ、向こうにも敵がいます』


「何人?」


『見える範囲で3人。まだ増えるかもしれません』


「分かった。無理しないで」


ビービは正面を見た。


「私たちが正面を押さえる。サリカムは敵が動いたら知らせて」


「了解」


再び射撃が始まった。


アマゾネス班が正面から撃ち返している間に、サリカムが別の通路から位置を変える。帝国兵はそれに気づいたらしく、正面からの射撃が一時的に弱まった。


ビービはその変化を見逃さなかった。


「今!」


隊員たちが一気に前へ出る。


通路の角から帝国兵が姿を見せた。隊員たちの射撃を受け、帝国兵の1人がその場に倒れる。残った兵士たちは奥へ下がりながら応射したが、アマゾネス班は距離を詰めていった。


「下がった!」


ピケットが報告する。


「追うよ。ただし、角を曲がる前に確認して」


「了解」




同じ頃、右側へ進んでいたアルバトロス班も帝国兵と接触していた。


ブエンテロが通路の角から前方を確認する。


「いるな」


クラウスレイが答えた。


「5、6人ほどです」


「ソブラウ、左を頼む。ゴルムは正面を見てくれ」


「了解」


アルバトロス班が射撃を開始する。


帝国兵も応戦するが、通路が狭いため、まとまって前へ出ることができない。前にいる兵士が撃っている間、後ろの兵士は身を隠して待つしかなかった。


ブエンテロはその状況を利用した。


「1人ずつ削るぞ。焦るな」


ゴルムが射撃を続ける。


帝国兵の1人が身を出したところで撃たれ、その場に倒れた。残った兵士たちが後ろへ下がる。しかし、その先にも帝国兵がいた。


「後ろにもいます!」


マメッドが叫ぶ。


ブエンテロはすぐに判断した。


「挟まれる前に前へ出る!」


アルバトロス班が一気に距離を詰めた。帝国兵はそれを見て後退する。


施設内部では、帝国軍の抵抗がいくつもの場所で発生していた。GASTはそのたびに敵を押し込みながら、少しずつ施設の奥へ進んでいく。だが、敵は全員が一斉に後退しているわけではなかった。


通路の角や部屋の入口に残った兵士が、GASTが近づくと射撃してくる。そして反撃を受けると、奥へ逃げていく。


ビービはその動きを見ながら、次第に違和感を覚えていた。


(やっぱり、おかしい)


敵は戦っている。それなのに、どうしても本気でここを守っているようには見えなかった。施設内へ入ってから、帝国兵は一度も大きく前へ出てこない。


こちらが進むたびに抵抗し、圧力をかければ下がる。その動きは、まるでこちらの進む場所を決めているようにも見えた。


そのとき、正面の奥から激しい銃撃が始まった。これまでとは明らかに違う。


「伏せて!」


ビービの声とほぼ同時に、隊員たちが身を伏せた。通路の奥から大量の銃弾が飛び、壁や床に次々と弾痕が刻まれていく。


「敵が増えた!」


イリ―が叫ぶ。


ビービは壁際に身を寄せながら、正面を確認した。奥には複数の帝国兵が集まっている。今まで後退していた兵士たちが、ここで初めてまとまって防御していた。


「スライス、右から回れる?」


「確認します!」


スライスが周囲を確認する。


「右に別の通路があります。ただ、先にも敵がいるようです」


「アルバトロスに連絡して。反対側から押してもらう」


無線を入れる。


『こちらアマゾネス01。アルバトロス、正面の敵が増えた。右側から圧力をかけられる?』


『こちらアルバトロス01。了解した』


ブエンテロの返答が返ってくる。


アルバトロス班が別の通路から回り込み、帝国兵の側面へ射撃を始めた。正面から撃っていた帝国兵が動揺する。


その隙を逃さず、アマゾネス班が前へ出た。帝国兵の防御が崩れ、何人かが奥へ走り始める。


「逃げる!」


「追え!」


隊員たちが前進する。しかし、ビービはすぐに声を上げた。


「追いすぎないで!」


隊員たちが止まる。


ビービは奥を見つめた。帝国兵はまだ施設の奥へ下がっている。


そして、その先には何があるのか分からない。ここまで来ても、敵は完全には崩れていなかった。むしろ、GASTを施設の奥へ進ませるように戦っている。


ビービは銃を構え直した。


「もう少し慎重に進むよ」


隊員たちが再び前方へ銃口を向ける。その先で、帝国軍はさらなる防御態勢を整えつつあった。


     


その頃、施設のさらに奥では、後退してきた帝国兵がデラミーの前へ集まっていた。


「敵は?」


「施設内へ入ってきました。こちらを追っています」


報告を聞いたデラミーは、落ち着いた様子で頷いた。


「予定通りだ」


ルクサンドルがデラミーを見る。


「本当に、ここまで入らせるつもりだったんですね」


「そうだ」


デラミーは答えた。


「外で戦い続けても、いずれ押し切られる。ならば、こちらが使える場所で戦った方がいい」


ルクサンドルは施設の奥へ目を向けた。


すでに重要な物資は運び出されている。ここを失っても、それ自体は問題ではない。大事なのは、敵をどこまでここで足止めできるかだった。


やがて、遠くから銃声が聞こえてきた。GASTが近づいている。


『敵、そちらへ向かっている』


エイゴートから無線が入った。


デラミーはその通信を聞きながら、施設のさらに奥へ視線を向けた。そこには、巨大な機体が立っていた。


鈍い金属の装甲に覆われた人型の機体で、通常の帝国兵よりもはるかに大きい。右腕には大型の熱線砲が備えられ、左腕には鋸状の武器が取り付けられている。


対人戦闘用重装甲兵――アイゼン。


デラミーは、その機体を見上げた。


「もうすぐ来る」


その言葉から間もなく、施設の奥で銃声が響いた。GASTが、さらに近づいていた。

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTスネーク班(火力支援部隊)

シャウブ(班長)、ロン(副班長)、ハン、ロスタ、ビアボーム、カカレコ


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン


ア・ディーバ……ゴリラ型獣人族の女性で、陸軍大尉。第12補給連隊・本部管理中隊長

ビーウェル・デラミー……エルフの男性で、陸軍少佐。第32歩兵科大隊長

タタイ―・エイゴ―ト……ドワーフの男性で、第117歩兵科中隊長

ミック・ルクサンドル……犬型獣人族の男性で、第118歩兵科中隊の副隊長


対人戦闘用重装甲兵「アイゼン」……所謂戦闘型ロボット。まだ量産体制に入っていないので、補給拠点や整備工場等、限られた場所でしか稼働しない。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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