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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第314話 狙撃線を越えて

「スネーク、こちらアマゾネス01……」


ビービが無線を開いたところで、正面にいた帝国兵が一斉に動いた。数は1個分隊程度だった。119中隊のように広く展開しているわけではないが、建物の間に身を置き、GASTの進路を塞ぐように配置されている。


ビービは前方を確認した。


(ここも守るつもりね)


「どうする? 班長……」


スライスが尋ねる。ビービはすぐには答えず、正面の敵を観察した。119中隊が後退したにもかかわらず、この部隊は退く気配を見せていない。GASTがここを突破しようとすることを見越し、あらかじめ防御態勢を整えていたようだった。


「アルバトロス、右側を確認して」


ビービが無線を開く。


『こちらアルバトロス。右側に敵は見えない。ただ、奥にも何かいる』


「分かった。無理に回り込まなくていい。正面の様子を見る」


『了解』


ビービは無線を切り、改めて正面の敵に目を向けた。




その頃、帝国兵の中から1人の男が前へ出ていた。第32歩兵科大隊長、ビーウェル・デラミー陸軍少佐である。


サンスーファからの報告を受け、デラミーはGASTが単なる小規模な侵入部隊ではないことを理解していた。それでも、ここを明け渡すわけにはいかない。後方には、第12補給連隊が管轄する施設がある。敵をそこまで進ませれば、さらなる損害を招くことになる。


「ここから先へは通すな」


デラミーの声が響いた。


「119中隊が下がったとしても、ここで止める。施設には1匹たりとも近づけるな」


帝国兵たちは命令に応じ、それぞれの位置についた。


その直後、遠方から複数の足音が近づいてきた。デラミーが振り返ると、建物の陰から別の帝国部隊が姿を現した。第117歩兵科中隊と第118歩兵科中隊だった。


117中隊を率いるタタイー・エイゴートは周囲の状況を確認しながら、デラミーのもとへ進んだ。その後ろには118中隊の隊員たちも続いている。同中隊では中隊長がすでに戦死しており、現在は副中隊長のミック・ルクサンドルが指揮を執っていた。


「状況は?」


エイゴートが尋ねる。


「119中隊が後退した。下等生物どもは、そのままこちらへ向かっている」


デラミーが答えた。


「この先には補給施設がある。ここを突破されたら、さらに奥まで入り込まれる」

エイゴートは前方に目を向けた。建物の向こう側には、GASTの姿が見えている。


「分かった。117中隊も防御に入る」


「118も同じです」


ルクサンドルも応じた。デラミーは2人を見て頷いた。


「ならば、ここで止める」


大隊長のもとに117中隊と118中隊が合流したことで、防御側の戦力は増強された。デラミーは両中隊と連携し、GASTを施設の手前で食い止める構えを取った。


ビービも、敵の配置が変化したことに気づいていた。


「増えたね」


スライスが前方を見ながら言った。


「うん。ここは本気で守ってる」


ビービは隊員たちに視線を向けた。


「正面から無理に入らない。まず敵の動きを見よう」


GASTは遮蔽物を利用しながら、敵の配置を探った。帝国兵たちも不用意には動かず、防御線を維持している。先ほどまでの戦闘とは異なり、敵はGASTを押し返すことよりも、ここから先へ進ませないことを優先しているようだった。




その一方で、帝国側では別の動きが始まっていた。


ルクサンドルが周囲を見回し、デラミーに尋ねた。


「敵火力部隊は、まだ砲撃を続けているのですか?」


「そうらしい」


デラミーが答える。


「ならば、あれを先に止めるべきです」


ルクサンドルは前方を見据えた。


「302小隊を向かわせます」


デラミーは少し考えた後、頷いた。


「任せる」


「302、行け」


「了解」


ルクサンドルの指示を受け、302小隊の隊員たちが応じた。彼らは防御線から離れ、スネーク班のいる方向へ移動を始めた。


その動きを、遠方のセイレーン班が捉えた。


『セイレーン01よりアマゾネス01。敵の一部が移動しています』


無線を聞いたビービが顔を上げる。


『こちらアマゾネス01。どこへ?』


『こちらからは進行方向まで確認できません。ただ、正面の部隊とは別方向へ向かっています』


「スネークを狙ってるのかも」


スライスが言った。


ビービは移動する帝国兵の姿を思い浮かべ、短く考えた。


「可能性はあるね」


ビービは無線を開いた。


『セイレーン01、移動している部隊を止められる?』


『可能な限りやってみます』


セイレーン班は、移動中の302小隊へ照準を合わせた。最初の一発で、先頭付近にいた帝国兵が倒れた。続く射撃でも別の兵が撃たれ、隊列の中央付近にいた兵たちが足を止める。先頭を進んでいた兵が倒れたことで後続の動きが乱れ、302小隊は一時的に進路を塞がれた。


狙撃は確実に効果を上げていた。隊員たちは周囲を警戒しながら進まざるを得なくなり、まとまった速度で移動することが難しくなっている。しかし、302小隊はそこで足を止めるつもりはなかった。


「進め!」


隊列の中から声が飛ぶ。その声に応じるように、1人の兵士が前へ出た。ケンタウロス族のトゥーレル・ウルシュマ兵士長である。


ウルシュマは4本の脚で地面を蹴り、他の帝国兵が進めずにいた場所を一気に駆け抜けた。遮蔽物の陰にとどまれば狙撃を避けられるが、それではスネーク班への接近が遅れる。彼は速度を利用して狙撃手に照準を合わせる時間を与えず、射撃を受ける危険を承知で前進を続けた。


『先頭、速い! ケンタウロスです!』


セイレーン班のボナーから報告が入る。


狙撃手はウルシュマに照準を合わせ直した。だが、ウルシュマは遮蔽物の間を走り抜け、狙撃手が射撃できる時間を短くしていく。放たれた一発は地面を捉え、ウルシュマの速度を鈍らせることはできなかった。


『止まりません!』


ボナーが報告する。


狙撃班がウルシュマを止めようと照準を追い続ける中、別の方向から影が動いた。建物の陰から飛び上がった有翼種の帝国兵が、低い高度を保ったまま前方へ向かっていた。


『上空にも敵!』


シリングが反応する。しかし、狙撃班の照準は地上を走るウルシュマに向けられていた。急いで上空へ切り替えようにも、地上の敵を追っていた狙撃手が照準を移すには時間がかかる。その間にもウルシュマは前進し、狙撃班の注意を引きつけていた。


有翼種は、その状況を利用した。


ウルシュマが建物の角を抜けた直後、その上空を有翼種が横切る。ウルシュマが建物の陰へ入ったことで狙撃班から地上の姿が一時的に見えなくなると、有翼種は高度を下げ、建物の間を抜けて前進した。


『ケンタウロス、建物の陰に入りました!』


シリングから報告が入る。


狙撃手が再びウルシュマを捉えようとした時には、有翼種はすでに射線の外側へ回り込んでいた。地上のウルシュマを追っていたために上空への対応が遅れ、さらに建物によって射線も遮られている。狙撃班はすぐに射撃位置を変えようとしたが、有翼種を捉えるには間に合わなかった。


『有翼種が抜けます!』


ファスが射撃を試みる。しかし、建物とウルシュマの位置関係によって射線が遮られ、狙いを定めることができなかった。


『一体、突破されました!』


ボナーから報告が入る。


狙撃によって302小隊の進行は遅れ、隊列にも乱れが生じていた。それでも、ウルシュマが速度を生かして狙撃手の注意を引きつけたことで、有翼種がその隙を突くことに成功したのだった。狙撃班は敵を止めるために射撃を続けたが、すべての兵を足止めすることはできなかった。


ビービは無線を聞き取ると、すぐに指示を出した。


「スネークに伝えて」


「了解」


その頃、別の場所ではスネーク班が砲撃を続けていた。シャウブは着弾地点を確認しながら、次の射撃を指示していた。


「そのまま続けろ。次も同じ区域を叩く」


「了解」


ロンが応じる。


砲撃が再び始まったが、遠方から近づいてくる敵の姿をカカレコが最初に確認した。


「班長、来ます」


シャウブが振り向くと、建物の間から帝国兵が近づいてくるのが見えた。先頭には、狙撃を突破したケンタウロス族と有翼種の姿もある。狙撃班が足止めを試みていた部隊の一部が、こちらへ向かっているのは明らかだった。


シャウブは砲撃を続けている部下たちに目を向けてから、迫ってくる帝国兵へ視線を戻した。


「ロン」


「はい」


「砲撃を止めるな。俺が前を押さえる」


ロンがシャウブを見る。


「1人でですか?」


「全員で出れば、火力支援が止まる」


シャウブはそう言って武器を手に取った。


「お前たちは撃ち続けろ。ここを使えなくするのが仕事だ」


ロンは短く頷いた。


「了解しました」


シャウブは射撃位置を離れ、敵が接近してくる方向へ向かった。後方では、ロンたちが砲撃を続けている。その音を背に受けながら、シャウブは前方を見据えた。狙撃を突破してきた帝国兵が、建物の陰から姿を現す。


シャウブは足を止め、迫ってくる敵兵に武器を構えた。


「ここから先へは行かせない」


スネーク班の火力支援を止めないため、シャウブは自ら敵を迎え撃とうとしていた。背後ではロンたちが砲撃を続けており、敵が接近しても、その任務を中断するつもりはなかった。

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTスネーク班(火力支援部隊)

シャウブ(班長)、ロン(副班長)、ハン、ロスタ、ビアボーム、カカレコ


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン


ビーウェル・デラミー……エルフの男性で、陸軍少佐。第32歩兵科大隊長

トゥーレル・ウルシュマ……ケンタウロスの男性で、陸軍兵士長。第302歩兵科小隊所属

※)302歩兵科小隊は、第118歩兵科中隊の隷下部隊です。

タタイ―・エイゴ―ト……ドワーフの男性で、第117歩兵科中隊長

ミック・ルクサンドル……犬型獣人族の男性で、第118歩兵科中隊の副隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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