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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第313話 死守

GASTは、先ほどの戦闘で帝国軍が後退した方向には追わず、予定していた進路をそのまま進んでいた。周囲には戦闘の痕跡が残っている。建物の壁には銃撃の跡が増え、道路上には帝国兵が残していった装備の一部も見られた。それでも、ビービたちは足を止めなかった。


前方を警戒しながら進んでいたピケットが、不意に立ち止まった。


「また何かいます」


ビービがすぐに視線を向ける。


「どこ?」


「正面です。さっきより近い。今度は、こっちを見ていると思います」


ビービは身を低くしながら前方を確認した。


建物の間から、帝国兵の姿が見える。今度の部隊は、先ほどまでの敵とは様子が違った。隊列を崩さず、こちらの進路を塞ぐように展開している。こちらの存在に気付いているだけではない。GASTがどちらへ動くのかを見極めながら、正面を固めているようだった。


「アルバトロス、確認できる?」


ビービが無線を開く。


『こちらアルバトロス。確認。正面に敵部隊。数は多い』


「右側は?」


『今のところ、別の部隊は見えない。ただ、正面の敵は動く気配がない』


ビービは前方を見た。


敵は退かない。これまでの戦闘なら、こちらが側面へ回れば帝国兵は後退していた。しかし、今回は違う。


「今度は正面から迎え撃つつもりかしら?」


ビービが呟いた。


スライスが隣で敵を観察する。


「ここを通したくないみたいですね」


「そうだね」


ビービはしばらく敵の配置を確認してから、アマゾネス班へ指示を出した。


「正面を叩く。アルバトロスは右から圧力をかけて」


『了解』


ブエンテロの返答を聞いたビービは、前方へ視線を戻した。


「行くよ」


アマゾネス班が前進を始める。


その動きを確認した帝国兵たちも、武器を構え直した。


第119歩兵科中隊長のアッサム・サンスーファ中尉は、前方を見据えていた。


敵はすでに近い。これまでの報告から考えても、目の前にいる部隊が、下等生物部隊ではないことは分かっている。それでも、ここを退くわけにはいかなかった。後方には、第12補給連隊が管轄する施設がある。そこへ敵を通せば、さらに物資を潰される。


「ここから先へは絶対に通すな」


サンスーファが部下へ命じる。


「何としてでも止めろ」


帝国兵たちは配置についた。


アマゾネス班が射撃を開始すると、119中隊も応射した。銃撃が建物の間を飛び交い、隊員たちは遮蔽物を利用しながら前へ進む。しかし、帝国兵は簡単には崩れなかった。正面から圧力を受けても位置を変え、空いた場所には別の帝国兵が入る。数人が撃たれて倒れても、その後ろにいた帝国兵が射撃を続けた。


ビービはその様子を見ながら、眉を寄せる。


(今までと違う)


敵は明らかに損害を受けている。それでも退かない。


「スライス、右側を見て」


「はい」


スライスが周囲を確認する。


「アルバトロスが動いてます」


無線からブエンテロの声が入った。


『こちらアルバトロス。右側へ回る』


ビービは敵の反応を見ながら待った。


アルバトロス班が右側へ回れば、敵はそちらへ対応するはずだった。ところが、119中隊は動かなかった。正面の部隊は射撃を続けたまま、右側から回り込もうとするアルバトロス班にも対応しようとする。


「向こうも気付いてる」


スライスが言った。


「そうみたいね」


ビービは一度身を引き、周囲を確認した。


敵の防御は思った以上に固い。このまま正面から押し続ければ、こちらにも損害が出る。


ビービは無線を開いた。


『セイレーン、フォックス、こちらアマゾネス01。前方の敵、抵抗が強い。支援を頼める?』


しばらくして、ローレライ、コルガンそれぞれから返答が入った。


『セイレーン01。了解』


『フォックス01、了解した』


2つの返答を聞いたビービは、前方の敵を見た。


「まずは狙撃で崩してもらおう。アルバトロスはそのまま右側を押さえて」


『了解』


ブエンテロの返答を聞いた直後、ビービはアマゾネス班の隊員たちに合図を送った。


隊員たちは無理に前へ出ず、遮蔽物の陰で敵の動きを見極める。


119中隊は依然として前進してこない。こちらを押し返すのではなく、GASTをここから先へ進ませないことを優先しているようだった。


サンスーファも、敵の動きを見ながら指示を出していた。


「前へ出る必要はない。ここを維持しろ」


部下の1人が振り返る。


「しかし、このままでは――」


「分かっている」


サンスーファは短く答えた。


「だからこそ、ここで止める」


その直後、119中隊の後方にいた帝国兵が1人倒れた。少し遅れて銃声が届く。


「何だ?」


別の帝国兵が身を低くする。続いて、別の場所でも帝国兵が倒れた。今度は前方で射撃していた帝国兵だった。


「狙撃だ!」


帝国兵の間に動揺が走った。だが、サンスーファは声を荒らげることなく叫んだ。


「姿を探すな! 持ち場を維持しろ!」


その指示に従い、帝国兵たちは遮蔽物へ身を隠しながら射撃を続けた。


セイレーン班とフォックス班は、それぞれ別の射撃位置から敵の配置を観察していた。


最初の射撃では、露出した帝国兵を狙っている。


1人が倒れれば、その周囲の帝国兵が身を隠す。そのため、正面から見える敵の数は減っていったが、防御線そのものはまだ崩れていなかった。それでも、狙撃によって生じた変化をビービは見逃さなかった。敵の射撃が、わずかに弱まっている。


「スライス、もう一度右を見て」


「はい」


スライスが視線を向ける。


「アルバトロス、まだ動いてます」


『こちらアルバトロス。右側から押している。敵はまだ下がらない』


「分かった」


ビービは前方を見た。


狙撃は続いている。


2つの班は同じ場所を撃ち続けるのではなく、敵の動きを見ながら射撃位置を変えていた。帝国兵が遮蔽物へ隠れれば、その隣で動いた兵が狙われる。負傷者を運ぼうとすれば、その動きも制限される。


119中隊は、まだ防御線を維持していた。しかし、兵士たちは次第に自由に動けなくなっていた。


「今なら行ける」


ビービが言った。スライスが頷く。


「はい」


「正面を押すよ」


アマゾネス班が前進を始めた。


それに合わせてアルバトロス班も右側から距離を詰める。


119中隊は再び射撃を強めた。狙撃を受けながらも、帝国兵たちは防御線を維持しようとしている。1人が倒れれば別の兵がその位置を埋め、空いた場所には後方から新たな兵が入る。


その様子を見て、ビービは敵の執念を感じ取った。


(そこまでしてここを守るってことは、この先に大事な何かがあるのかも)


理由は分からないが、目の前の帝国兵達は、この場所を絶対に明け渡すつもりはないようだ。それだけは伝わった。


『こちらセイレーン01。正面右側、敵の指揮系統と思われる位置を確認』


ローレライから無線が入る。


『フォックス01。こちらも確認した。射撃可能』


ビービは即座に答えた。


「お願い」


2つの狙撃班が、それぞれの射撃位置から狙いを定めた。


先に1発が響いた。119中隊の後方にいた帝国兵が倒れる。続いて、別の場所から銃声が響き、前方で指示を出していた帝国兵が崩れた。


「ああ、ジーニ小隊長!」


「305小隊、ミック・メレオズ少尉、戦死!」


帝国兵の間に、明らかな動揺が広がった。指揮を取っていた者が倒れたことで、一部の兵が誰の指示に従うべきか迷い始める。その隙に、アマゾネス班が距離を詰めた。


「今!」


ビービの声とともに隊員たちが前へ出る。


右側ではアルバトロス班が敵の側面を押し込み、正面ではアマゾネス班が防御線へ食い込んでいく。


119中隊の兵士たちは、ようやく後退を始めた。しかし、それは潰走ではなかった。後方へ下がりながらも射撃を続け、次の防御位置へ移ろうとしている。


サンスーファは無線で伝えた。


『慌てるな! 指揮系統を中隊で一括する。304と305小隊は俺の指示で動け!』


残った帝国兵たちは命令に従い、後退しながら新たな位置へ移っていく。ビービはそれを見て、敵がまだ戦うつもりであることを理解した。


「追いすぎないで。こっちも態勢を整える」


スライスが周囲を確認する。


「まだ先にも敵がいるみたいです」


「分かってる」


ビービは前方を見た。


119中隊が退いた先には、建物群が続いている。そして、そのさらに奥には大きな施設が見えていた。ここまで敵が必死に守ろうとしていた理由が、そこにあるのかもしれない。


『こちらセイレーン01。敵が後退している』


『フォックス01からも同じ。こちらから追撃は可能』


ビービは少し考えてから答えた。


「追撃はしなくていい。次の敵に備えて」


『了解』


『了解』


無線が途切れる。ビービは前方へ視線を戻した。


「行きましょう」


GASTは崩れた119中隊の防御線を越え、さらに奥へと進んでいった。


「ここから先は通さん」


そこには、1個分隊規模の帝国兵が待ち構えていた。


ビービは無線端末を手に取った。


「スネーク、こちらアマゾネス01……」

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTスネーク班(火力支援部隊)

シャウブ(班長)、ロン(副班長)、ハン、ロスタ、ビアボーム、カカレコ


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン


アッサム・サンスーファ……陸軍中尉で犬型獣人族の男性。第32歩兵科大隊隷下第119歩兵科中隊長


ジーニ小隊長……第304歩兵科小隊長のアブクバル・ジーニ

ミック・メレオズ少尉……第305歩兵科長隊長

※)304と305の歩兵科小隊は、第119歩兵科中隊の隷下部隊

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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