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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第310話 懸賞首

2022年8月某日。


日本の技術者を乗せたバスが、今はテリムトの首都となっている東京へ向けて移動を始めた。日本とテリムトが国交を樹立して初めての研修会である。


停戦協定が結ばれ、関東方面には仮初の平和が訪れていた。これに伴い、日本はテリムトから技術を得ようと躍起になっている。九州では、まだ戦争が続いているというのに……。


また、テリムト内にいる反プレヤディッチ派にとって、地球人を冷遇しない彼女のやり方は快いものではなかった。地球人は下等生物――そう見下して侵略を開始したのである。今更、地球人を同志として迎えることに抵抗を感じる者は少なくなかった。


「アケーナル第5宰相殿、このままでよろしいのですか?」


反プレヤディッチ派の先鋒、コーディー・ヴァランクエ空軍准将は、アステリム帝国第5宰相に直談判を行う。しかし、返事は彼の望んだものとは違った。


「帝国内ならどうにかなったがね。地球の占領地では、総督府の方針を尊重するよう取り決めがあった。第1宰相の意見だ。私にはどうする事も出来んね。」


「そんな……」


ヴァランクエは歯噛みした。第5宰相を味方につければ、プレヤディッチ派の連中など一掃できると踏んでいたのだが、その当ては外れてしまった。


「私にできる事は、本国にこの事を伝えることのみだ。もっとも、プレヤディッチのやり方を快く思わない総督府は多い。第1宰相殿がそれを見過ごすとも思えん。」


「そうだといいのですが」


ヴァランクエはそれしか言えなかった。ひとまず今は、プレヤディッチに従うふりをする。命令された軍組織の編制に取り組むことにした。




――九州。


BJ、アイブル、オデーの3人は地下道を進んでいた。


目的は、帝国軍が使用している地下施設の内部を確認することだった。地上では帝国軍との戦闘が続いているが、地下に入ってからは銃声もほとんど聞こえない。精巧に作られた地下道を見て、3人はこの先に何かがあると考え、警戒しながら進んでいた。


「思っていたより広いな」


先頭を進んでいたBJが足を止め、前方を見た。


地下道は、単純な避難通路や物資の搬送路とは思えないほどの幅を持っていた。壁面には複数の分岐があり、奥へ進むにつれて通路そのものが増えている。


アイブルが周囲を見回した。


「こんなものが地上の施設の下にあるとは聞いていませんでした」


「俺たちが知らなかっただけかもしれません」


オデーが答える。


BJは分岐した通路の先へ視線を向けた。1つの通路だけではない。いくつもの道が地下の奥へ伸びている。


「単なる地下道じゃないな」


「敵の各指揮所に繋がっている可能性もありますか?」


アイブルが尋ねると、BJはすぐには答えなかった。


もし、この地下道が帝国軍の各拠点を結んでいるのなら、ここから先には敵の重要施設が存在している可能性がある。そこで司令官級の帝国兵と遭遇すれば、3人だけで対処するのは難しい。


「一度戻る」


BJが言った。


「ここから先は、俺たちだけで入る場所じゃない」


アイブルとオデーも異論を挟まなかった。


3人が来た道を戻り始めた、そのときだった。


1発の銃声が響いた。BJの前方を歩いていたアイブルが血を吐きながら倒れた。2人が振り向くと、そこには複数の敵兵が立っていた。その中心にいる男が口を開く。


「休憩をしていただけなんだが、思わぬ大物に出くわしたみたいだ」


その男は、ライオンのような鬣が特徴の男。「獅子型獣人というやつか。」BJは思った。ライオンを百獣の王とはよく言ったもので、目の前の男が放つオーラはまさにそれだった。


「ここで出会えて光栄だ。貴様には懸賞金がかけてあるのでな。仕留めたら、当分遊んで暮らせる。もっとも、地球にいる以上、遊ぶ暇などないがな」


「確かにそうですな!」


男は笑い出した。それに釣られて周りの兵士も笑い出す。


「おい、ふざけてるなら、俺達は帰るぞ?」


BJは獅子型獣人に話しかけた。戦わずに引き返すのは無理だと判断したためだ。無闇に飛び込まず、隙を探す。だが、この男に隙はなかった。


獅子型獣人はBJの言葉を聞くと、口元をわずかに吊り上げた。


「帰る? せっかく会えたというのに、そう簡単に帰すと思うか?」


「そっちが道を空けてくれれば、俺たちは何もしない」


BJは相手から視線を逸らさなかった。


背後にはアイブルが倒れている。敵は複数で、しかも目の前の獅子型獣人は、只者ではない。ここで正面から戦えば危険だ。しかし、相手もそれを理解しているのだろう。


「そうはいかんな」


獅子型獣人は一歩前へ出た。


「せっかくの大物だ。逃がす理由がない」


「だろうと思った」


BJは銃を構えた。


その瞬間、獅子型獣人が床を蹴った。


BJは反射的に身体を横へ投げ出した。直後、先ほどまで立っていた場所を男の銃剣が通り過ぎる。


(速い!)


BJは転がりながら銃口を向けた。しかし、獅子型獣人はすでに射線から外れていた。


銃声が地下道に響く。弾丸は壁に当たり、火花を散らした。


「オデー、援護!」


BJが叫ぶ。


「了解!」


オデーが応射する。


その間にBJは距離を取り、敵兵の動きを確認した。数では不利だが、地下道が狭いため、帝国兵が一斉に押し寄せることはできない。そこを利用すれば、突破できる可能性はある。


BJは獅子型獣人から離れ、壁際にいた帝国兵へ射撃した。1体が倒れる。続けて別の帝国兵へ銃口を向けたところで、獅子型獣人が横から迫ってきた。


BJは咄嗟に身を屈めた。銃剣が頭上を通り過ぎる。そのまま懐へ入り込み、BJは男の身体へ銃を押しつけようとした。


だが、獅子型獣人はBJの腕を掴んだ。強い力で引き寄せられる。BJは腕を振りほどこうとしたが、相手の力は簡単には崩れなかった。


「下等生物にしては、なかなかやるな」


「黙れ、害虫が」


BJは身体を捻り、ようやく腕を抜いた。


2人が離れる。その間にオデーが別の帝国兵を撃ち倒した。


「BJ班長、こっちは任せてください!」


「任せる!」


BJは再び獅子型獣人へ向き直った。その男は笑っていた。戦闘を楽しんでいるようにも見える。


「いいぞ。そうでなくては面白くない」


「害虫と遊んでいるほど暇じゃない」


BJが踏み込んだ。


銃撃と格闘を組み合わせながら攻撃を続ける。獅子型獣人はそれをかわし、ときには受け止めながら反撃してきた。一撃ごとの威力が大きい。BJは攻撃を受けるたびに身体を持っていかれそうになるが、足を止めなかった。


一方、オデーも帝国兵との戦闘を続けていた。しかし、帝国兵の1体が死角へ回り込む。


「オデー!」


BJが気づいたときには、帝国兵が銃を向けていた。


オデーが振り返る。


銃声が地下道に響いた。オデーの身体が揺れ、そのまま壁にもたれかかるように崩れ落ちた。


「ちっ」


BJは思わずそちらへ視線を向けた。その隙を獅子型獣人は見逃さなかった。


強烈な一撃がBJの身体を捉える。BJは吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられた。


「……!」


肺から空気が抜ける。身体を起こそうとしたBJへ、獅子型獣人が迫った。BJは銃を向ける。だが、男は銃口を払い、そのままBJの腕を掴んだ。


「終わりだ」


「黙れ!」


BJは空いた手で抜刀し、獅子型獣人を斬りつけた。


獅子型獣人の動きが止まる。その隙にBJは距離を取り、倒れているオデーのそばを通り過ぎて帝国兵へ向けて射撃した。


1体が倒れる。さらにもう1体が銃を向ける前に、BJが撃ち抜いた。残った帝国兵が後退する。BJは追いながら射撃を続けた。


狭い通路では、帝国兵同士が射線を遮ることになる。そのため、数の多さを十分に生かせない。


やがて最後の1体が倒れた。地下道に残った帝国兵は、獅子型獣人だけになった。


BJは荒い息を整えながら、銃を構えた。


「……これで、お前だけだ」


獅子型獣人は倒れた部下を見回した。


「まさか、ここまでやられるとはな」


男はそう言いながらも、表情を変えなかった。


BJは一歩踏み込む。獅子型獣人も構えた。


再び2人がぶつかった。今度は互いに一歩も引かない。


BJは相手の銃剣をかわし、懐へ入り込んだ。獅子型獣人の攻撃を受けながらも、その身体へ斬撃を叩き込む。


男がよろめいた。BJはさらに追撃する。だが、獅子型獣人は倒れなかった。反撃の一撃がBJの肩を捉える。


BJが後退する。獅子型獣人も負傷していた。口元から血を流しながら、BJを睨みつけている。


「貴様……」


「まだやるか?」


BJは構えを崩さなかった。


獅子型獣人は周囲を見た。部下は全滅している。自分も無傷ではない。それでも、BJを仕留めるだけの余力は残っているように見えた。だが、男はそれ以上踏み込まなかった。


「今日はやめておこう」


「逃げるのか?」


「そう言うな。俺の名は、アイキキ・ダストクラウド。貴様とは、また会うことになる」


獅子型獣人はそう言うと、地下道の奥へ向かって走り出した。


「待て!」


BJが追おうとする。しかし、足が止まった。背後にはアイブルとオデーが倒れている。2人を残して追うことはできない。


BJは獅子型獣人が消えていった方向を睨みつけた。やがて、その姿が完全に見えなくなる。


BJは振り返り、倒れている2人へ歩み寄った。


「アイブル……」


返事はない。オデーにも声をかける。しかし、こちらからも反応はなかった。


敵の部下は全滅させた。それでも、仲間を2人失い、獅子型獣人を仕留めることもできなかった。地下道の奥には、まだ帝国軍の施設が続いている。


BJはしばらくその暗闇を見つめていたが、死んだ2人の認識票を外し、その場を後にした。

登場人物紹介

BJ……GASTピットブル班の班長

コーディー・ヴァランクエ……ハイエルフの男性で、空軍准将。テリムト人事参謀長

ヨ・アケ—ナル……ハイエルフの男性で、アステリム帝国 第5宰相

アイキキ・ダストクラウド……獅子型獣人の男性で、陸軍上級大将。北部方面軍の第3次席官で、現北部方面軍副軍長


殉職したGAST隊員

アイブル……本名:蓮河(れんが) 陸斗(りくと)

生年月日:1990年8月19日 / 出身:埼玉県

階級:一等陸曹 / 所属:GASTリッチ班

享年:32歳


オデー……本名:住吉(すみよし) 住大(すみひろ)

1988年9月18日 / 出身:兵庫県

階級:一等陸曹 / 所属:GASTアイアン班

享年:34歳


GASTリッチ班……斥候をはじめとした隠密行動に長けた部隊

GASTアイアン班……GASTの施設科部隊

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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