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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第308話 共存の街

――テリムト、旧東京都庁。


旧東京都庁の前に、一台の車両が停車した。


車から降りた小高は、かつて自分が知っていた東京の姿と、目の前に広がる光景を見比べるように周囲を見渡した。東京都心であることに変わりはない。しかし、街の様子は大きく変わっている。


道路や建物にはアステリム帝国の技術が取り入れられ、従来の都市機能を残しながらも、さまざまな設備が以前とは異なる形で整備されていた。行き交う人々の中にはグーリエ星人だけでなく、日本人の姿もある。


小高がしばらく街を眺めていると、案内役を務めるエスリー・エスタビンが声をかけた。


「こちらへどうぞ」


小高はエスタビンに続いて歩き始めた。


2人の周囲には、グーリエ軍と思われる者たちが配置されていた。銃を手にしているわけではない。それでも、彼らが放つ威圧感は隠しようがなく、小高は自然と身構えていた。小高もSPを連れている。しかし、周囲を固める帝国軍人たちと比べれば、もし何かが起きた場合に太刀打ちできるとは思えなかった。


最初に案内されたのは、医療施設だった。


内部では日本人の患者がグーリエ星人の医師や医療従事者から診察を受けており、その中には日本人の研修医もいた。設備にも、これまで日本で使用されていたものとは明らかに異なるものが並んでいる。


小高は説明を受けながら、医療機器をじっと見つめた。


「これほどの設備が、テリムトでは一般的に使われているのですか?」


小高が尋ねると、エスタビンが答えた。


「アステリム帝国の技術を基礎にしています。もちろん、すべての施設が同じ規模というわけではありませんが、医療については帝国から多くの技術が導入されています」


小高は返事をせず、もう一度設備へ目を向けた。


医療施設を出ると、次に教育施設へ案内された。


そこでは日本人の子供たちがグーリエ星人の教師から授業を受けていた。教育制度そのものにも帝国の仕組みや技術が取り入れられているという。


小高は教室の様子をしばらく見ていたが、やがてエスタビンに促され、施設を後にした。


さらに都市の外へ出ると、車窓から見える風景が変わっていった。


かつて侵略によって荒廃していた土地は農地として整備され、作物が育てられている。広がる果樹園では果実が実り、畜産施設では家畜が飼育されていた。


小高は車窓の外へ目を向けたまま、黙ってそれらを眺めていた。


テリムトは、単にグーリエ星人が日本の都市を占領しているだけの場所ではなかった。


アステリム帝国の技術は都市機能だけにとどまらず、医療、教育、農業、畜産にまで取り入れられている。そして、その社会の中には日本人も組み込まれていた。


もちろん、これを見ただけで帝国による日本領土の占領を正当化できるわけではない。日本の領土が占領されているという事実そのものは変わらなかった。


それでも、小高の中には一つの考えが浮かんでいた。


(もし、この技術を日本が利用できるのなら……)


医療だけではない。農業や畜産の生産性を高め、教育制度を改善し、都市機能を向上させることもできるかもしれない。帝国と国交を結ぶことで、日本が得られるものは決して小さくない。


やがて視察を終えた小高は、指定された宿泊施設へ移動した。


一都三県を一日で回るという行程だったが、それを可能にしているテリムトの交通インフラにも、小高は驚かされていた。


視察を終えたその日の夜、小高は宿泊施設で資料に目を通しながら、今日見た光景を思い返していた。


そして翌日、小高は再び旧東京都庁へ向かった。


会談に使用される一室では、プレヤディッチを中心としたテリムトの代表が待っていた。


小高が席に着くと、プレヤディッチが口を開いた。


「まず、今回の申し入れに応じていただいたことに感謝します」


小高も応じた。


「こちらこそ、会談の機会を設けていただいたことに感謝します」


互いに言葉を交わしたあと、室内に静かな緊張が戻った。


小高は、前日に見たテリムトの街を思い返していた。


「私は昨日、テリムトの街を見せていただきました」


「どうでしたか?」


プレヤディッチが尋ねた。


「率直に言えば、驚きました」


小高は言葉を選びながら続けた。


「帝国の技術が、都市だけではなく、医療や教育、農業、畜産にまで使われている。しかも、日本人もその中で生活している。実際に見なければ分からないことも多かった」


プレヤディッチは黙って小高の話を聞いていた。


「日本政府としても、テリムトとの関係を今後どうするべきか、慎重に考える必要があります。しかし、国交を結ぶことで日本が得られるものについても、考える必要があるでしょう」


その言葉を聞いたプレヤディッチの表情が、わずかに緩んだ。


「つまり、国交を結ぶことを考えていただけるということですか?」


「はい」


小高は明確に答えた。


「日本政府は、テリムトとの国交樹立に同意します」


室内に静寂が広がった。


しかし、小高はすぐに次の話へ移った。


「そのうえで、停戦についても協議したいと思っています」


プレヤディッチは頷いた。


「こちらも、同じ考えです」


それから両者の間で、テリムトと日本の停戦について具体的な協議が進められていった。国交を開くこと。そして、テリムトとの間で停戦協定を結ぶこと。長く続いてきた戦争の中で、日本政府と帝国側が正式に関係を築くための大きな一歩だった。


やがて、双方の確認が終わった。


小高はその決定に同意したが、会談を終える前に、一つの問題を取り上げた。


「九州については、どうなりますか?」


プレヤディッチの表情が変わった。


「九州……マコンベリムトですか?」


「そうです。テリムトで停戦が成立するのであれば、九州でも同じように戦闘を止めることはできないのでしょうか」


しばらく間を置いてから、プレヤディッチが答えた。


「難しいでしょう」


「なぜです?」


「マコンベリムトは、私たちとは別です。我々は同じ帝国民ですが、総督府同士では干渉しないとの制約があります」


プレヤディッチは淡々と説明した。


「テリムトが停戦したからといって、マコンベリムトが同じ方針を取るとは限りません。私たちから、あちらの軍事行動に干渉することはできません。」


小高は黙り込んだ。


テリムトとの間では、外交関係を築くことができる。停戦にも合意できる。帝国の技術を日本に取り入れられる可能性もある。しかし、それによって九州の戦争が終わるわけではなかった。


(やはり、そう簡単にはいかないか)


小高はそう考えながら、窓の外へ視線を向けた。


一都三県では、日本人とグーリエ星人が同じ街で暮らしている。その一方で、九州では今も戦闘が続いている。


同じ帝国の支配地域でありながら、その状況は大きく異なっていた。テリムトとの国交樹立と停戦は、日本にとって新たな可能性を開くことになる。だが、それは九州の戦場を消してはくれなかった。

登場人物紹介

小高(こだか) 味一(みいち)……現内閣総理大臣

ピッピディー・プレヤディッチ……ダークエルフの女性で、テリムトの総督府

エスリー・エスタビン……テリムトの外務局長を務めるエルフの男性

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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