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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第306話 交渉の扉

――名古屋市、仮の首相官邸。


小高は、会議室に集まった閣僚たちを見渡した。先ほど秘書官から伝えられた内容は、すでに出席者へ共有されている。


テリムトから、日本政府との接触を求める申し入れがあった。ただし、具体的な条件は提示されていない。


小高の正面には、官房長官の御茶ノ水(おちゃのみず) 成弘(しげひろ)、外務大臣の大門(だいもん) 勢士(せし)、防衛大臣の矢段(やだん) 泰則(やすのり)が座っていた。


「もう一度、確認しておきたい」


小高が口を開く。


「テリムト側から来たのは、日本政府と話をしたいという申し入れだけなんだな」


「はい」


大門が答えた。


「現時点では、それ以上の内容はありません。何について話したいのか、こちらに何を求めているのかも明らかにされていません」


「向こうから接触してきた理由についても?」


「明確な説明はありません。ただ、日本政府と話す意思があることを伝えてきた。それが現在確認できている全てです」


小高は資料へ視線を落とした。


現在、テリムトではグーリエ星人と日本人との間で大規模な戦闘が起きていない。その一方で、九州では現在も戦闘が続いている。同じグーリエ軍の占領地域でありながら、置かれている状況は大きく異なっていた。


矢段が口を開く。


「総理、私は慎重に扱うべきだと考えます」


「理由を聞こう」


「グーリエ星人は現在も日本の領土を占領しています。九州では、こちらの隊員が戦っています。その状況でテリムトから接触があったからといって、グーリエ星人の意図を善意に解釈するのは危険です」


「テリムトが何かを仕掛けてくる可能性を考えているのか?」


「可能性を排除できない、という意味です」


矢段はそこで一度言葉を切った。


「ただし、現段階で罠だと断定する材料もありません。だからこそ、まず相手の目的を確認する必要があります」


小高は黙って矢段を見た。


反対意見ではあるが、外交そのものを拒否しようとしているわけではない。そのことは伝わっていた。


御茶ノ水が資料を閉じる。


「私も、最初から拒絶する必要はないと思います」


「御茶ノ水官房長官、君はどう見る?」


「テリムト側が何を考えているのかは分かりません。しかし、向こうから話をしたいと言ってきた以上、こちらとしても確認する価値はあります」


「具体的には?」


「まず、正式な交渉に入る前に、何を話したいのかを確認する。その程度であれば、こちらが何かを約束することにはなりません」


大門も頷いた。


「私も同意します。こちらから具体的な要求を提示する必要はないでしょう。先方が何を求めているのかを確認し、その上で日本側の立場を整理するべきです」


小高は椅子の背に身体を預けた。


「つまり、話をすること自体を拒む理由はない。ただし、話をすることと、相手の要求を受け入れることは別だということだな」


「その通りです」


大門が答えた。


「現時点では、そこを混同しないことが重要です」


矢段も続ける。


「それと、九州で戦っている自衛隊員への説明も必要になります」


その言葉に、小高の表情が僅かに変わった。


「……そうだな」


九州では、今この瞬間にも戦闘が続いている。そこにいる隊員たちにとって、グーリエ星人は交渉相手である以前に、銃を向け合っている敵だった。


「政府がテリムトと接触することで、九州の戦闘方針まで変わるのではないか。そう受け取られる可能性があります」


矢段の指摘に、小高はしばらく答えなかった。


自分自身も、それを考えていた。


テリムトと話をする。それだけなら難しくはない。しかし、その先に何があるのかは誰にも分からない。


九州の奪還を目指す政府方針と、テリムトからの接触をどう両立させるのか。そこを曖昧にしたまま動けば、国内にも戦場にも混乱を生む。


「私は、九州での方針を変えるつもりはない」


小高が静かに言った。


「少なくとも、今の段階ではな」


御茶ノ水が小高を見る。


「テリムトとの接触は、別の問題として扱うということでしょうか?」


「そうだ。日本の領土を取り戻すという方針と、相手と話をすることは両立できる」


小高は資料へ目を落とした。


「そもそも、まだ何も始まっていない。向こうが何を求めているのかすら分からないんだ」


大門が口を開く。


「では、こちらから返答する際には、まず話し合いの意思を示すだけにしますか?」


小高は少し考えた。


「いや、話をする意思は示す。ただし、こちらが何かを受け入れるつもりだと誤解されるような表現は避けてくれ」


「承知しました」


「それから、先方との接触を進める前に、確認しておきたいことを整理してほしい」


「何を確認しますか?」


小高は大門に視線を向けた。


「なぜ今なのか。なぜ日本政府なのか。そして、何を話したいのか」


大門は頷いた。


「分かりました」


「矢段は、防衛面から必要な警戒事項をまとめてくれ。接触したからといって、グーリエ軍への警戒を緩めることはない」


「承知しました」


小高は最後に御茶ノ水を見る。


「国内への説明も頼む」


「はい」


会議室に沈黙が落ちた。


誰も、テリムトからの申し入れが何を意味するのか分かってはいない。ただ、これまでとは異なる動きが始まったことだけは確かだった。


小高は資料を閉じた。


「まずは、話をするための準備をしよう」


それ以上のことを決めるには、まだ情報が足りなかった。

登場人物紹介

小高(こだか) 味一(みいち)……現内閣総理大臣

御茶(おちゃの)ノ水(みず) 成弘(しげひろ)……現内閣官房長官

大門(だいもん) 勢士(せし)……現外務大臣

矢段(やだん) 泰則(やすのり)……現防衛大臣

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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