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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第305話 次なる段階

――旧東京都庁


総督府の会議室には、数枚の資料が机の上に並べられていた。


プレヤディッチはその1枚に目を通してから、向かいに座るエスリー・エスタビンへ視線を向けた。


「準備は?」


エスタビンは手元の資料を確認した。


「ほぼ整っています。先方への連絡手段についても、問題ありません」


「アイソレイテは?」


「軍側の調整も済んでいます」


エスタビンが答えると、隣に座っていたアイソレイテが口を開いた。


「必要な準備は終えています。あとは、いつ動かすかだけです」


プレヤディッチは小さく頷いた。


「なら、始めよう」


エスタビンは資料を一枚めくった。


「日本政府との接触ですね」


「ああ」


プレヤディッチの返答に、アイソレイテは表情を変えなかった。


「相手が応じる保証はありません」


「それはそうだろう」


「それでも、実行するのですか?」


「そのために準備してきたのだ」


アイソレイテは黙った。


エスタビンが資料を机の中央へ置く。


「最初の連絡では、具体的な条件を提示しない方がよいと思います」


「何故だ?」


「日本側が何を求めているのか、まだ確定していないからです。こちらから条件を並べれば、最初から交渉の形になってしまいます」


プレヤディッチは資料へ目を落とした。


「まずは話をするための扉を開くと?」


「はい。こちらから接触する意思があることだけを伝えます」


「それで良い」


エスタビンは頷いた。


「それから先は、日本側の反応を見て判断します」


「当然だな」


プレヤディッチは椅子から立ち上がった。


「テリムトを取り巻く状況は変わった。なら、こちらも次へ進むべきでだ」


アイソレイテがプレヤディッチを見る。


「この接触によって、戦闘そのものが止まるわけではありません」


「そうだな。まだ何も決まっていない」


プレヤディッチは窓の外へ目を向けた。


「ただ、話をすることはできる」


エスタビンが立ち上がる。


「では、日本政府への連絡を開始します」


「うむ、お願いする」


エスタビンが退室すると、会議室にはプレヤディッチとアイソレイテだけが残った。


アイソレイテはしばらく沈黙したあと、静かに尋ねた。


「本当に、ここから先へ進めると思いますか?」


プレヤディッチは窓の外を見たまま答えた。


「さあ。そこから先は、日本次第だ」




――名古屋市、仮の首相官邸


小高(こだか) 味一(みいち)は、執務室の机に置かれた資料へ目を落としていた。そこには、九州で続く戦闘の状況がまとめられている。前線から届く報告を読むたびに、奪還作戦が容易ではないことを思い知らされる。


それでも、止めるわけにはいかなかった。日本の領土がグーリエ星人に占領されている以上、政府として奪還を目指すことは避けられない。小高自身も、かつては帝国との対話によって事態を解決できると考えていた。しかし、現実はそうならなかった。


九州奪還作戦の継続を明言して以降、連立を組んでいた社会一新党(しゃかいいっしんとう)からも批判が相次いでいる。


西日本でも武装解除をすると思っていた社会一新党の党員たちは、「騙された」と、メディアや自身のSNSを通して小高を批判していた。小高は党首の市ヶ崎(いちがさき)へ、連立を解消しても構わない旨を伝えたが、市ヶ崎にそのつもりはないらしい。


(彼らは、与党にいたいだけなのだろう)


小高はそう考えながら、別の資料を手に取った。そこには、グーリエ星人の占領下にある首都圏についてまとめられている。


首都圏では大規模な戦闘が起きていない。日本人を虐殺することなく、グーリエ星人と共存していることも分かった。共生未来党(きょうせいみらいとう)としては、それを無視することはできなかった。


「……テリムトか」


小高が呟く。


そこにある生活を、すべて偽物だと切り捨てることもできない。一方で、九州では戦闘が続いている。同じグーリエ星人の占領地域でありながら、状況があまりにも違っていた。その違いをどう考えるべきなのか、小高にはまだ答えが出ていなかった。


執務室の電話が鳴った。


「総理、少しよろしいでしょうか?」


秘書官の声だった。


「何だ?」


「確認をお願いしたい連絡が入っています」


小高は資料から顔を上げた。


「どこからだ?」


秘書官は一瞬、言葉を選んだ。


「テリムトです」


小高の手が止まった。


「……テリムトから?」


「はい」


「内容は?」


「日本政府と接触したい、という申し入れです」


小高はすぐには答えなかった。


先ほどまで見ていた資料に、もう一度目を向ける。


テリムトで続いている生活。九州で続く戦闘。そして、そこを統治する帝国軍から届いた接触の申し入れ。偶然とは考えにくい。


「どの程度、具体的な話が来ている?」


「現時点では、話し合う意思があるという内容だけです。具体的な条件は提示されていません」


小高は椅子に深く腰を下ろした。


「そうか……」


それだけを口にして、再び黙り込む。もし本当に話し合う意思があるのなら、日本政府として無視する理由はない。しかし、彼らは日本の領土を占領している。その相手からの申し入れを、ただ平和への一歩として受け取っていいのか。


小高は額に手を当てた。九州で戦っている自衛隊員たちのことを考えれば、簡単に答えを出せる問題ではなかった。


「官房長官と外務大臣を呼んでくれ。それから、関係する閣僚にも連絡を」


「承知しました」


秘書官が退出する。


小高は1人になると、机の上に置かれたテリムトの資料を見つめた。これまで日本政府が求めてきたのは、グーリエ星人の撤退と日本の領土の回復だった。そこへ、敵側から話し合いたいという申し入れが届いた。


(何を求めている……?)


小高は資料を閉じた。まだ、何も決まっていない。だが、政府として判断しなければならない時が来たことだけは分かっていた。

登場人物紹介

小高(こだか) 味一(みいち)……現内閣総理大臣

ピッピディー・プレヤディッチ……陸軍中将でダークエルフの女性。テリムトの総督府

サッサ・アイソレイテ……空軍少将で、ハイエルフの女性。テリムト参謀長

エスリー・エスタビン……エルフの男性。テリムト外務局長


市ヶ崎……社会一新党の党首、市(いちが)ヶ崎(さき) 儀郎(ぎろう)

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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