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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第301話 捨て身の狙撃

狙撃によって帝国軍の前進が鈍ってからも、水機団の状況は改善しなかった。


前線に残っている隊員は、すでに十人を下回っている。負傷して動けなくなった者や戦死した者が増え、残された隊員たちも互いに十分な間隔を取ることができない。秋口は、わずかに残った隊員をまとめながら、前方で足を止めている帝国軍の動きを見ていた。


それでも狙撃は続いている。


「……まだ来るな」


前方を見つめながら、綱吉が呟いた。


秋口も帝国軍を見据える。狙撃によって敵の動きが止まっている今なら、こちらから反撃に出ることもできる。しかし、残った隊員の数を考えれば、前へ出る余力など残されていなかった。


「無理に動くな。今は、このまま持たせる」


秋口がそう告げた直後、前方から帝国兵が姿を現した。


隊員たちは一斉に銃を構える。しかし、帝国兵はすぐには撃ってこなかった。その後ろから、別の帝国兵が何かを引きずるようにして現れる。


秋口の表情が変わった。


戦闘上陸大隊所属の小宿(こしゅく) 蓮児(れんじ)三等陸曹だった。


負傷しているのか、自力で歩くこともできず、帝国兵に身体を支えられている。その後ろにも、同じように捕らえられた隊員たちが続いていた。


帝国兵は人質を前へ出すと、こちらへ向けて声を張り上げた。


「武器を捨てて大人しく投降しろ。さもなくば、こいつ等を殺す」


「秋口さん! 投降しちゃダメだ! 俺達の事は……」


「黙れ」


帝国兵が発砲した。小宿の言葉はそこで途切れ、その身体から力が抜ける。


「小宿……」


「おのれ……」


秋口は歯を食いしばった。


気が付けば、帝国兵に囲まれている。投降したところで待っているのは死だ。捕らえられた仲間を見捨てて、このまま戦い続けるしかないのか。


そう考えた瞬間だった。


「ぐわっ」


背後から現れた帝国兵に鈍器で殴られ、秋口の視界が大きく揺れた。


同時に、堂ヶ原(どうがはら)と綱吉も帝国兵に襲われる。2人も抵抗する間もなく殴り倒され、そのまま意識を失った。


秋口たち三人は、他の仲間たちと同じように捕縛された。


武器はすべて押収され、抵抗できないように手足まで拘束されている。帝国兵の1人がウォッチに触れると、スピーカーのスイッチが入ったときのようなノイズ音が周囲に響いた。その直後、ウォッチから帝国兵の声が発せられる。


「狙撃手よ、この状況を見ているなら、今すぐ武器を捨てて出てこい! でなければ、この下等生物共を1匹ずつ殺していく」


その声は、遠方で待機していたガーツや、他の狙撃班にも届いていた。


敵は自分たちを引きずり出そうとしている。


『どうする? ガーツ』


佐々木が小声で呼びかけた。階級は佐々木のほうが上だ。しかし、ここでは歴戦の猛者であるガーツに判断を求めていた。


ガーツにも迷いがあった。


彼らを助けたい。しかし、姿を現せば作戦そのものが破綻する恐れがある。作戦の破綻は、すなわち敗北を意味する。そうなれば、どのみち自分たちの命もない。


それでも、仲間を見捨てる事に躊躇いが消えるわけではなかった。


(班長ならどうする……)


そのとき、標準器越しに秋口の表情が見えた。ガーツは、秋口が瞬きをしていることに気付く。


ただの瞬きではない。一定のリズムがあった。


(あれは……)


ガーツは照準器から目を離さず、秋口の動きを注意深く観察した。


秋口がわずかに目を動かす。


帝国兵から見えない位置にいる堂ヶ原と綱吉へ視線を送り、それからゆっくりとまぶたを閉じた。


一度、少し間を置いて、もう一度。秋口は何度か瞬きを繰り返した。


帝国兵から見れば、何の意味もない動きだった。しかし、遠くから秋口を見ている狙撃手には違う。


ガーツは照準器から目を離さず、その瞬きを確認していた。意味を理解するまでに、それほど時間はかからなかった。


(助けなくていい……)


秋口が伝えようとしている内容を、ガーツは理解した。


(ひとりでも多く仕留めろ、ということか)


ガーツは奥歯を噛み締めた。照準器の中では、帝国兵が人質の1人に銃を向けている。引き金にかけられた指へ力が入っていく。


撃ちたい。しかし、撃てば人質を巻き込む可能性がある。


ガーツは狙いを変えた。人質の背後にいる帝国兵ではなく、そのさらに後ろにいる兵士を照準器の中へ捉える。そして、引き金を引いた。


銃声が響き、帝国兵が倒れる。その場にいた帝国兵たちが一斉に身を伏せた。


「撃ってきたぞ!」


帝国兵の1人が叫ぶ。


ガーツは間を置かず、次の標的へ照準を移した。別の場所からも銃声が響く。第7普連、第36普連、第37普連の狙撃班も射撃を開始していた。四方向からの狙撃によって、帝国軍が再び混乱する。


秋口は、その隙を見逃さなかった。


「今のうちに位置を変えろ!」


捕らえられた隊員たちが身を低くして動き始める。しかし、その動きを待っていたかのように、帝国軍の後方から新たな兵士たちが姿を現した。


それまで前面に出ていた帝国兵とは、明らかに動きが違っている。狙撃を警戒しながらも隊列を崩さず、こちらへ向かってくる。


秋口がその姿を見た。


「……まだいたのか」


次の瞬間、帝国軍の兵士たちが一斉に発砲した。


秋口、堂ヶ原、綱吉をはじめ、残っていた水機団の隊員たちは、集中射撃を受けて次々と倒れていった。


「ふう、驚かせやがって」


帝国兵の1人が、安堵したように呟いた。


これで水機団の前線に残っていた隊員は消えた。後方支援部隊を除けば、長年マコンベリムト軍を苦しめてきた水陸機動団は、戦闘能力を失った。


「くそ……」


その光景を見ていたガーツは、歯噛みした。覚悟を決めていたとはいえ、仲間が殺されるのを見るのは良い気分がしない。


狙撃班だけでは、目の前の敵を倒しきれない。あの規模の部隊に自分たちの位置を知られれば、全滅させられるのは時間の問題だった。


『おい、あれ……』


無線から聞こえてきた声に、ガーツは顔を上げた。


遠くに見えるのは、帝国軍の空挺降下部隊だった。


(有翼種はまずい……)


自力で飛行できる有翼種は、偵察機や戦闘ヘリよりも小回りが利く。その有翼種が、中隊規模で現れている。


(これは、見つかるのも時間の問題……)


そのとき、無線へ新たな通信が入った。


『おい、水機団は無事なのか?』


(誰だ?)


ガーツには声の主が分からなかった。しかし、続いて入った無線で、その正体が判明する。


『ガーツ、モンソンだ。特別警備隊がそっちへ向かっている。それまで粘ってくれ』


(特別警備隊!)


ガーツの脳裏に、関門海峡の状況が浮かんだ。


(そうか、関門海峡から水棲種を退けたから、動けるようになったのか!)


「地獄に仏」とは、この事か。ガーツはそう思った。


特別警備隊は海自の精鋭であり、その能力は特戦群にも匹敵する。


新たな精鋭の投入が決まったことで、ガーツと普連の狙撃班に再び戦う力が戻ってきた。

登場人物紹介

秋口(あきぐち) 将光(しょうこう)……第1水陸機動連隊所属の陸曹長。享年33歳

堂(どうが)ヶ原(はら) 炉有(ろう)……第1水陸機動連隊所属の三等陸曹。享年31歳

綱吉(つなよし) 圭一(けいいち)……第2水陸機動連隊所属の三等陸曹。享年28歳

ガーツ……GASTピットブル班所属で狙撃が得意

佐(さ)々木(さき) 駆向(かりむ)……二等陸尉で、第7普連の狙撃班長


※)ウォッチ……帝国兵の通信機ほか、翻訳機能、カメラ機能、マイク機能などが搭載されている。スマートウォッチにスマホの機能が入っていると思ってください

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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