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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第298話 水機団の矜持

第6歩兵科旅団の部隊が、水機団の陣地へ向けて進んでいた。


これまでの戦闘によって周囲の地形は荒れており、道路や建物の一部も損傷している。帝国軍はそうした地形を利用しながら部隊を前へ進め、先頭付近の歩兵は遮蔽物を確認しながら慎重に前進していた。その後方からも、間隔を保ちながら兵士たちが続いている。


指揮を執るマット・ラッチョン准将は、前方を見ながら通信端末を操作した。


『前方に敵陣地を確認しました』


「分かった。無理に一気に突っ込む必要はない。敵の配置を確認しながら進め」


『了解』


ラッチョンは通信を切ると、改めて前方へ視線を向けた。


敵は水陸機動団。これまで何度もマコンベリムト軍の進撃を阻んできた部隊である。しかし、現在の戦力は以前とは大きく違っていた。海上での戦闘や上陸阻止などによって、多くの兵を失っていることはラッチョンも把握している。


かつてならば、正面から攻撃を仕掛けるだけで済む相手ではなかった。だが、今の水機団には、それだけの戦力が残っていない。


(今なら押し切れる)


そう判断したからこそ、ラッチョンは自ら部隊を率いて出撃していた。




一方、水機団側でも帝国軍の接近を確認していた。


「敵が来ます」


急留(せくる) 晴也(はるや)陸士長が周囲へ知らせる。


その声を聞いた隊員たちが、それぞれの持ち場で前方を確認した。


水機団の残存部隊には、すでに余裕がない。これまでの戦闘で多くの仲間を失い、残っている隊員の数も限られている。それでも、誰も持ち場を離れようとはしなかった。


前方にいる敵が、自分たちのいる場所を越えれば、その先へ進むことになる。それだけは許せなかった。


「前方を重点的に警戒しろ。敵が近づいたら撃つ」


秋口(あきぐち) 将光(しょうこう)陸曹長が指示を出した。


秋口は周囲にいる隊員たちの配置を確認しながら、前方へ視線を向けている。その近くでは、堂ヶ原(どうがはら) 炉有(ろう)三等陸曹も前方を警戒していた。


「来ます」


堂ヶ原(どうがはら)が告げる。やがて、帝国軍の姿が見えてきた。


距離が縮まったところで、水機団側から射撃が始まる。銃声が響き、帝国兵が遮蔽物へ身を隠した。


先頭の部隊が足を止める。しかし、それは帝国軍全体が停止したことを意味しなかった。正面から射撃を受けると、帝国軍は別の方向へ部隊を動かし始める。正面だけを見ていれば、側面から回り込まれる。


秋口はその動きを確認すると、すぐに周囲へ指示を出した。


「右へ回ろうとしている。そっちを警戒しろ」


隊員たちが右側へ移動する。その間にも、別の場所では帝国軍が前進を続けていた。


水機団側は、限られた戦力を動かして対応するしかない。一つの場所へ隊員を集めれば、別の場所が薄くなる。それでも、戦線は崩れなかった。


長く戦場に立ってきた隊員たちは、細かな指示を待つだけではなかった。周囲の状況を確認し、自分たちが何をすべきかを判断している。帝国軍が一方向へ集中すれば、その場所へ射撃を集中させる。敵が側面へ回ろうとすれば、別の隊員が移動して射線を作る。指揮官からすべてを命じられなくても、それぞれが戦場の変化を見て動いていた。それが、残された水機団の戦い方だった。


ラッチョンは、その様子を遠くから見ていた。


「……まだ動けるか」


想定していたよりも、敵の反応が速い。水機団の戦力が減っていることは間違いない。しかし、それだけで簡単に崩せる相手ではなかった。


『前進部隊、一時停止しています』


通信が入った。


「止まった理由は?」


『敵の射撃が強く、前へ出られないようです』


ラッチョンは前方を見つめた。


帝国軍の兵士たちは遮蔽物に身を隠しているが、水機団側の射撃によって思うように前進できていない。


ラッチョンはしばらく戦況を見た後、通信端末へ命令を送った。


「別の部隊を回せ。正面だけに集中するな」


『了解』


第6歩兵科旅団の別部隊が動き始めた。


正面への圧力を維持したまま、別の方向からも水機団の防御線へ接近していく。それを水機団側も見逃さなかった。


「左にも敵が動いています!」


綱吉(つなよし) 圭一(けいいち)三等陸曹が報告した。秋口がそちらへ視線を向ける。


「そっちは何人いる?」


「確認できているだけで、かなりいます!」


「分かった。こちらからも回す」


秋口の指示を受け、綱吉と一部の隊員が左側へ移動する。その直後、正面から帝国軍の射撃が強くなった。


「秋口さん、正面が増えています!」


急留(せくる)が叫ぶ。


「分かっている!」


秋口は正面へ向き直った。


左へ隊員を回したことで、正面の防御は薄くなっている。しかし、左を放置すれば、帝国軍に側面へ回り込まれる。


秋口は一瞬だけ周囲を確認すると、自ら正面の射撃へ加わった。


銃声が続く。


帝国軍の兵士が前へ出ようとするたびに、水機団側から射撃が加えられる。帝国軍も遮蔽物を利用しながら応射し、少しずつ距離を詰めようとしていた。


堂ヶ原(どうがはら)も別の位置から射撃しながら、周囲を確認していた。


「秋口さん!」


「何だ!」


「右はまだ大丈夫です!」


「なら、そのまま押さえてくれ!」


「了解!」


堂ヶ原(どうがはら)は射撃を続けた。しかし、帝国軍は少しずつ前へ出ていた。数の差は明らかだった。長く戦えば、それだけ水機団側が不利になる。


急留(せくる)はそのことを理解していた。それでも、目の前の敵から目を離すことはできなかった。


「こっちへ来ます!」


急留が射撃を続けながら叫ぶ。


「撃ち続けろ!」


火原(ひばら) 豪太(ごうた)三等陸曹が応じた。


帝国軍の前進が一度止まる。その隙に、水機団側は少しだけ陣地を整えた。だが、休む時間は与えられない。帝国軍が再び前へ出てくる。


「まだ下がるな!」


秋口が叫んだ。


「ここを抜かれたら、後ろへ回られるぞ!」


堂ヶ原(どうがはら)が応じる。


「分かってる!」


その声と同時に、再び銃撃が激しくなった。


水機団は、以前と同じ戦力ではない。以前なら複数の部隊で対応できた場所を、今は少ない人数で守らなければならない。誰かが別の場所へ移動すれば、残った隊員にかかる負担は大きくなる。それでも、誰も持ち場を捨てなかった。


秋口は前方を見据えながら射撃を続けていた。その隣では堂ヶ原(どうがはら)が敵の動きを確認し、急留もまた前方へ銃口を向けている。彼らだけではない。生き残った隊員たちも、それぞれの場所で帝国軍の進撃を食い止めていた。


ラッチョンは、その光景を見ながら静かに息を吐いた。


(これが、あの水機団か)


戦力が減っていることは間違いない。だが、弱体化したからといって、戦えなくなったわけではない。残った隊員たちが戦場を理解しているからこそ、少ない戦力でも帝国軍の前進を止めている。


ラッチョンは通信端末を手に取った。


「焦る必要はない。敵の防御を少しずつ削っていけ」


『了解』


帝国軍は攻撃を続ける。水機団も退かない。


両軍の銃撃は途切れることなく続き、戦場の各所で兵士たちが遮蔽物を利用しながら前進と後退を繰り返していた。


帝国軍の数は多い。時間が経てば、水機団側の負担はさらに増えていく。それでも、今すぐ崩れるほど脆くはなかった。


一方、第6歩兵科旅団も簡単に攻撃を諦めるつもりはない。戦場の向こうでは、帝国軍の別部隊が次の攻撃に備えて動き始めている。このまま戦闘が続けば、水機団の限られた戦力だけでは支えきれなくなる可能性がある。


それでも秋口は、前方から目を離さなかった。


「まだだ。ここは守るぞ」


その声を聞いた隊員たちは、再び前方へ銃口を向けた。水機団の戦いは、まだ終わっていなかった。

登場人物紹介

秋口(あきぐち) 将光(しょうこう)……第1水陸機動連隊第1中隊所属の陸曹長

堂(どうが)ヶ原(はら) 炉有(ろう)……同 第1中隊所属の三等陸曹

急留(せくる) 晴也(はるや)……第2水陸機動連隊所属の陸士長

綱吉(つなよし) 圭一(けいいち)……第2水陸機動連隊所属の三等陸曹

火原(ひばら) 豪太(ごうた)……第3水陸機動連隊所属の三等陸曹

マット・ラッチョン……陸軍准将でゴブリンキングの男性。マコンベリムト北部方面軍、第6歩兵科旅団長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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