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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第285話 泥沼の戦い

浪城は、崩れた土塁の陰から前方を見ていた。


敵の戦闘車両は一両を撃破したものの、攻撃そのものが止まったわけではない。停止した車両の後方からは帝国兵が次々と前へ出てきており、道路を挟んだ両側の斜面にも散開しながら距離を詰めようとしている。


対戦車小隊が次の射撃位置へ移動する間、第2普通科(浪城大隊)大隊の隊員たちは敵歩兵を食い止めていた。浪城は周囲へ視線を走らせる。弾薬は確実に減っており、負傷者も増えている。陣地として使える場所も少なくなっていたが、それでも隊員たちは射撃を続けていた。


この場を離れるわけにはいかない。GASTが敵陣へ潜入した後、彼らからの報告を受けて援護へ移る。それが、浪城たちに残された次の任務だった。だが、その報告はまだ来ていない。


浪城が無線へ手を伸ばした、その時だった。


『こちら、第3普通科大隊』


出村(でむら) 舜玖(しゅんく)二等陸曹の声だった。


『浪城二佐、聞こえますか?』


「聞こえている。どうした?」


返事を待つ間にも、前方から銃声が続いている。ほどなくして、出村の声が返ってきた。


『大隊長の柄垣(えがき)二佐が……戦死しました』


無線を握った浪城の手が止まった。ほんの一瞬だった。だが、すぐには言葉が出てこない。前方から響く銃声や機関銃の連射音は変わらず続いているのに、浪城は無線の向こうから聞こえた言葉だけを、頭の中で繰り返していた。


「……柄垣が?」


『はい』


浪城は答えず、しばらく前方を見た。


柄垣(えがき) 獅導(しど)とは、これまで何度も同じ空挺団の大隊長として戦場に立ってきた。互いの部隊を率い、それぞれの場所で部下を戦わせながら、同じ戦いを支えてきた仲間でもある。


浪城の指が、無線機を握ったままわずかに強くなる。それ以上、考える時間はなかった。


「第3大隊はどうなっている?」


『第7中隊長の河内(かわうち)三佐が指揮を引き継いでいます』


「河内が……そうか」


『はい。部隊の指揮は継続しています』


浪城は無線から視線を外し、前方へ戻した。


敵歩兵が斜面を下り、こちらへ近づいている。撃ち込まれた銃弾が土塁の縁を削り、土砂が散った。柄垣が死んでも、戦いは止まらない。残された者が指揮を引き継ぎ、部隊を動かし続ける。それが戦場だった。


「分かった。出村」


『はい』


「河内に伝えろ」


浪城はわずかに間を置いた。


「お前は死ぬなとな」


『……了解しました』


出村の返答を聞くと、浪城は無線から手を離した。


その直後だった。上空から、低い飛翔音が聞こえてきた。


浪城が顔を上げる。雲間を抜け、帝国軍機が接近していた。


「航空機!」


「くそ、今度は空からかよ!」


近くにいた隊員が叫ぶ。


浪城は空を見上げたまま、無線ごしに叫んだ。


『来るぞ!』


返事を待つ必要はなかった。第1空挺団特科大隊、生野(いきるの)大隊による砲撃が行われた。帝国軍機は進路を変えながら高度を下げていく。地上の部隊を探しているのは明らかだった。


「伏せろ!」


浪城が叫ぶ。


帝国軍機が攻撃態勢へ入った。その動きを捉えるように、第1空挺団特(生野大隊)科大隊が再び射撃する。空中で何かが弾る。しかし、対空部隊ではない生野大隊の砲撃では、帝国機を撃墜することは出来ないでいた。


次の瞬間、地上へ向けて攻撃が始まった。爆発が斜面を駆け抜け、土砂が舞い上がる。衝撃が土塁を揺らし、浪城は身を低くして爆風をやり過ごした。


「全員、身を低くしろ!」


浪城大隊の隊員たちが遮蔽物へ身を寄せる。


帝国軍機は一度上昇すると、再び旋回に入った。その動きを追うように、第1空挺団特(生野大隊)科大隊の射撃が続いている。


浪城は空を見上げた。


地上では敵歩兵が前進している。その上から航空攻撃まで加わった。こちらも応戦しているが、効果が薄い。それに、敵が一機だけとは限らない。


浪城は視線を下ろした。停止した敵車両の陰から、帝国兵が再び姿を現している。


「前方、敵歩兵!」


竹下が報告する。


「射撃を続けろ!」


命じる。隊員たちが一斉に射撃を再開した。


頭上ではが帝国軍機の射撃が続き、地上では敵歩兵と撃ち合う。その間を縫うように、対戦車小隊が次の射撃位置へ移動していく。


浪城はその光景を見ながら、再び無線へ耳を澄ませた。


いつGASTから報告が入るか分からない。柄垣が戦死したという知らせも、まだ胸の中で整理できていなかった。それでも、部隊を止めるわけにはいかなかった。


前方では銃声が途切れない。負傷者を後方へ運ぶ隊員が走り、弾薬を抱えた隊員がその横をすり抜けていく。対戦車小隊も移動を続けている。


誰かが倒れれば、残った者がその穴を埋める。指揮官が失われれば、次の指揮官が部隊を引き継ぐ。その繰り返しの中で、戦場だけが少しずつ前へ進んでいく。


浪城は再び前方へ視線を向けた。まだ、戦うしかなかった。

登場人物紹介

浪城(なみしろ) 激(げき)……第1空挺団第2普通科大隊長

出村(でむら) 舜玖(しゅんく)……第1空挺団第3普通科大隊所属の二等陸曹


河内(かわうち) 弘高(ひろたか)

生年月日:1981年2月11日 / 出身:茨城

階級:三等陸佐 / 所属:第1空挺団 第3普通科大隊隷下、第7中隊長


※生野大隊……第1空挺団特科大隊長・生野(いきるの) 氷護(ひょうご)率いる部隊


殉職した隊員

柄垣(えがき) 獅導(しど)

生年月日:1980年8月9日 / 出身:千葉県

階級:二等陸佐 / 所属:第1空挺団第3普通科大隊長 / 享年:42歳

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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