第282話 狙撃の連携
「う……」
地面に叩きつけられたゴルムだったが、銃弾はかろうじて躱していた。ただ、無理な体勢で着地したため、受け身を取ることができなかった。背中を強く打ちつけた痛みが引くまでは、すぐに動くことは難しいだろう。
その様子を見たピケットとサリカムが、すぐにゴルムのもとへ駆け寄った。2人はゴルムの身体を後方へ引きずり、安全を確保する。
「ったく心配させやがって!」
ブエンテロが叫びながら、重装歩兵の下へ向かう。だが、後方からの射撃によって近づいてもすぐに後退を余儀なくされた。
(あれは、BJ班長じゃないと出来ない芸当だったのか……)
キーラは重装歩兵を見据えながら考えた。
BJ班長が見せたような動きを、果たして今の自分たちにできるのだろうか。現状では、重装歩兵はヘルメットを被ったままだ。防護装備に守られた状態では、通常の射撃だけで仕留めるのは難しい。
「このままじゃ……」
重装歩兵を倒すどころか、アルバトロス班が全滅しかねない。ビービもまた、指揮官として焦りを感じていた。
その時だった。後方から、複数の銃声が響いた。
キーラが振り返ると、セイレーン班とフォックス班が重装歩兵に狙撃を加えていた。
「何の意味がある」
コーペルは訝った。
狙撃班が撃っているのは、重装歩兵そのものではない。狙っているのは、その持っている銃だった。敵の狙いを察した。
「武器破壊か」
「その程度で壊れる軟な銃ではないわ!」
分隊長を務めるレン・アボシが叫ぶ。
だが、叫んだ直後に気付いた。狙撃班の目的は、武器そのものを破壊することではない。ほんの僅かな振動だった。
狙撃によって銃に加えられた衝撃で、銃を握る手がわずかにずれる。アボシは発砲しようとしていたが、銃を握っていた手がわずかにずれ、引き金を引くことができなかった。
その一瞬を、GASTは見逃さない。
『今よ!』
ローレライの合図とともに、アルバトロス班の隊員が前進した。
「やるじゃねぇか狙撃班!」
ブエンテロが声を上げる。
アルバトロス班は、射撃によって生じた僅かな隙を利用して重装歩兵へ接近すると、前進していた兵士のヘルメットを銃剣で突き上げた。金属音とともにヘルメットが外れ、頭部が露になる。
「しまっ……」
その重装歩兵を、アマゾネス班の狙撃が捉えた。頭部を正確に撃ち抜かれ、重装歩兵が倒れる。
「怯むな! 撃て! 撃ちまくれ! そうすれば、狙撃する隙を与えない!」
アボシはそう言って部下を鼓舞する。だが、セイレーン班とフォックス班の狙撃は正確だった。
重装歩兵が銃を構えようとするたびに、その武器を狙った射撃が加わり、発砲の機会を奪っていく。アマゾネス班が防護装備の隙を作り、アルバトロス班がそこへ突入する。その動きを支えるように、後方から2つの狙撃班が重装歩兵の対応を妨害していた。
「引け!」
コーペルは後退することを選んだ。
(このままでは重装歩兵が全滅だ)
重装歩兵は動きが遅い。しかし、重厚な鎧に守られているため、敵に背を向けても通常なら致命傷にはならない。
――通常ならば。
だが、セイレーン班とフォックス班の正確な射撃は、それを許さなかった。
後退しようと背を向けた重装歩兵は、無防備になった後頭部を狙われる。ヘルメットを突き上げられて防護を失ったところへ銃弾が撃ち込まれ、次々と倒れていった。
「まずい!」
コーペルの目の前で、重装歩兵は全滅した。
それまで自分の前に立ちはだかり、GASTの進撃を阻んでいた部下がいなくなったことで、コーペルは無防備な姿を晒すことになった。
「あいつが指揮官だ! 仕留めるぞ!」
ブエンテロの号令とともに、GASTが一斉に射撃を始める。
「が、がはっ……」
コーペルは全身に銃弾を受け、その場に崩れ落ちた。
GASTの前から、118中隊が用意した重装歩兵の壁が消えた。
「出口が見えた!」
前方を確認したイリ―が声を上げる。
その声を受け、ビービが周囲を警戒しながら答えた。
「油断せず行こう。敵はきっと潜んでいる」
「了解!」
長いようで短かった地下通路の進軍を終え、GASTは地上へ戻った。
登場人物紹介
GASTアマゾネス班
ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム
GASTアルバトロス班
ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド
GASTセイレーン班
ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー
GASTフォックス班
コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン
セウ・コーペル……陸軍中尉でオークの男性。第118歩兵科中隊長
レン・アボシ……陸軍軍曹でオークの男性。第118歩兵科中隊で急遽編成された重装歩兵分隊の分隊長




