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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第281話 誘導の先

GASTは、それまでとは違う動きを始めていた。


帝国軍の射撃を避けながら前進するのではなく、敵が射線を置いて進ませようとしている方向を意識的に外し、その反応を確かめながら進路を選んでいく。


キーラとソブラウが気付いたことは、まだ推測の域を出ていない。敵がGASTをどこかへ誘導しているのか、それとも単純に移動を制限しているだけなのか、それすら分からなかった。


それでも、帝国軍の射撃がGASTの現在位置だけを狙っているわけではないことは、すでに複数の場所で確認されている。


ならば、敵が守ろうとしている方向へ圧力を掛ければいい。それが、GASTの選んだ方法だった。


キーラは前方を警戒しながら、ソブラウへ無線を入れた。


「少し右へ出る。敵の射撃がどう動くか見て」


『りょ。こちらでも確認します』


キーラが身体を動かすと、帝国兵の射撃がそれに反応した。


先ほどまでGASTの正面を押さえていた射線が動き、キーラが向かおうとした方向へ銃弾が集中する。しかし、キーラはそこで止まらなかった。射撃を受けながらも、その方向へわずかに進み、敵がどのように対応するのかを確かめる。すると、別の場所からも射撃が加わった。キーラはそれを確認すると、無線を開いた。


「ソブラウ、どう?」


『同じです。こちら、がそちらとは別の方向へ動いても、敵の射撃位置が変わっています』


「やっぱり……」


キーラは前方の敵を見据えた。


敵はGASTの動きを止めようとしている。しかし、それだけなら、現在の位置に火力を集中させればいい。それなのに帝国兵は、GASTが次に移ろうとする場所へ先回りするように射撃を置いている。つまり、敵はGASTの位置ではなく、GASTの行動を見ている。


「スライス副官、今の動き、見えました?」


キーラが尋ねると、近くにいたスライスが頷いた。


「見えた。敵の射線がこっちの動きに合わせて変わってる」


「だったら、もう一度やります」


キーラがそう言うと、スライスはその意図を理解した。


「わざと敵が嫌がる方向へ動くってこと?」


「はい。敵がどこまで反応するか見たい」


「分かった。アタシも合わせる」


スライスが応じる。2人が動くと、帝国兵はすぐに反応した。


GASTが前進しようとする方向へ射撃を集中させながら、その動きを阻む位置へ兵士を移していく。これまでなら、それによってGASTの進路は自然に限定されていた。しかし、今度は違った。敵に止められた方向を、そのまま次の判断材料にしていた。


キーラは敵の配置を見ながら前へ出る。その動きに合わせて帝国兵が射撃位置を変えれば、その変化をさらに観察する。どこを塞ごうとしているのか、どの方向に戦力を動かしているのか。GASTは敵の射撃を単なる脅威として受けるのではなく、防衛線そのものを読み取るための情報として利用し始めていた。


そこへ、アルバトロス班も動いた。


帝国軍は再び射線を調整する。GASTは、その反応を見逃さなかった。


「そこだ」


キーラが呟く。


敵がGASTを誘導するためには、GASTが動く方向を押さえ続けなければならない。ならば、GASTがそれまでとは違う方向へ圧力を掛け続ければ、帝国軍の防衛線もまた、その動きに合わせて変化せざるを得ない。その結果、帝国軍の配置にわずかな偏りが生じ始めていた。


ソブラウから無線が入る。


『今なら、前へ出られます』


「分かった」


キーラはビービへ声を掛けた。


「班長!」


「OK!」


GASTが一斉に前進した。


帝国軍も射撃を強める。しかし、それまでのようにGASTの動きを特定の方向へ押し込むことはできなかった。


GASTは射撃によって生じる隙間を見つけるたびに、その方向へ圧力を掛ける。帝国兵が対応すれば、今度は別の場所から前進する。敵の防衛線が動けば、その動きそのものを利用して、さらに別の突破口を探す。


第117歩兵科中隊は、GASTを正面から撃破するのではなく、動きを制限しながら防衛線の中へ押し込むことで戦力を拘束していた。その戦術は、GASTが受け身でいる限り有効だった。


だが、GASTが敵の射撃そのものを観察し、それを利用するようになったことで状況が変わった。


防衛線を維持するためには、帝国兵もまた動かなければならない。そのたびにGASTは、敵がどこを守ろうとしているのかを探ることができる。


「敵が下がった!」


マメッドが声を上げた。


前方で帝国兵の一部が後退する。


そこへGASTが圧力を掛ける。別の帝国兵がその穴を埋めようと動くが、その動きによって別の場所が薄くなる。GASTはそこを見逃さなかった。


「今!」


キーラの声に合わせ、GASTが前へ出る。


帝国軍の射撃が集中するが、今度はそれによってGASTの動きが止まることはなかった。


第117歩兵科中隊の防衛線が、少しずつ崩れていく。


それでも帝国兵は無秩序に逃げ出したわけではない。互いに援護しながら後退し、可能な限りGASTの進撃を遅らせようとする。防衛線としての統制も、戦意も失ってはいなかった。ただ、もはやGASTを意図した方向へ誘導することはできない。


GASTが防衛線を突破する。キーラは前方を確認しながら、慎重に進んだ。


「抜けた……」


スライスが周囲を見回す。


「敵は?」


「まだいます。でも、さっきまでとは違う」


キーラはそう答えた。


第117歩兵科中隊を完全に撃破したわけではない。ただ、GASTの進撃を止める防衛線としては、もはや機能しなくなっている。それだけは確かだった。


ソブラウから無線が入る。


『どうやら、こちらの読みは間違っていなかったみたいですね』


「うん。でも、敵が何をしたかったのかまでは分からない」


『この先に何かある可能性は?』


「あると思う」


キーラは前方へ視線を向けた。


『別の部隊がいるかもしれませんね』


ソブラウの言葉に、キーラは答えなかった。


地下道の先に何が待っているのか、GASTには分からない。それでも、ここで立ち止まる理由はなかった。




GASTが防衛線を突破した後、ローレライは足を止めた。そこにはシェンブリが横たわっていた。


「班長、シェンブリは…」


ビューが駆けつけていた時には、既に虫の息だった。処置の施しようがなく、すぐに事切れた。


シェンブリが戻ってくることはなかった。だが、戦闘はまだ続いており、長く留まることはできない。ローレライは何も言わず、シェンブリこと秩代(ちつしろ) 紅怜(くれい)三等陸曹の亡骸に手を合わせ、静かに認識票を外した。


「行こう」


その一言を受け、GASTは再び前進を始めた。




先へ進むにつれて、前方の様子が変わった。先ほどまで交戦していた帝国兵とは、明らかに装備の違う兵士たちがいる。通常の歩兵よりも重い装備を身に着け、身体を防護する装備も厚い。


その姿を視認した瞬間、スライスとピケットは過去の戦闘を思い出した。あれは、立川で苦しめられた重装歩兵だった。狭い空間で、あの重装歩兵を撃破するには骨が折れる。


重装備の帝国兵たちは、GASTの進路を塞ぐように展開していた。


「急ごしらえだが、期待出来そうだな」


そう独り言ちるのは、セウ・コーペル陸軍中尉。第118歩兵科中隊の中隊長だった。


『おい、奴らが地上に出た時に迎え撃つんじゃないのか? 作戦が違うだろ!』


無線越しに、エイゴ―トの怒声が聞こえる。コーペルは苦笑した。


「待ちくたびれましてね。大丈夫ですよ、地上にも伏兵は忍ばせている。それよりも、殺されなくて良かったですね」


『うぐ……(相変わらず一言多い奴だ)』


117中隊と同じだ。118中隊も、ここでGASTを止める。


GASTの側から見れば、その事情を知る術はない。ただ、先ほどまで戦っていた帝国兵とは明らかに違う装備を持った敵が、自分たちの前に立ちはだかっている。


スライスは重装歩兵を見据えた。


「班長、あいつは厄介だよ」


ビービがスライスへ視線を向ける。


「何か策はある? スライス」


「班長」


キーラが呼ぶ。ビービが振り返った。


「ピットブル班は、射撃でヘルメットの隙間を狙い、僅かに浮かせていました。そして、BJ班長が、刀でかち上げてヘルメットを飛ばしていました。」


「そこを、銃撃するわけね」


「ええ」


スライスは重装歩兵の防護を見ながら考える。


「でも、アタシ達は、日本刀なんて持ってない。」


そのやり方は、BJ班長だからこそ出来たものだ。しかし、キーラは続けた。


「銃剣でも対応可能かと。それに、銃剣なら、かち上げた後に自分で撃てます」


スライスは一瞬考えた後、頷いた。


「OK、それで行こう」


そして、アルバトロス班へ視線を向ける。


「なら、その役目は俺達、アルバトロス班がやろう。アマゾネス班は射撃を頼む。」


「了解。」


アマゾネス班が射撃を開始した。


過去に重装歩兵との戦闘を経験している彼女たちは、その防護装備の厄介さを知っている。通常の射撃だけで仕留めることが難しいなら、防護の隙間を作る必要がある。


正確な射撃が重装歩兵のヘルメットを捉え、わずかに浮かせる。そこへアルバトロス班が飛び込んだ。しかし、その瞬間だった。


「甘い!」


後方に控えていた重装歩兵が射撃する。銃弾がゴルムへ襲い掛かった。


「うがあっ」


ゴルムは回避しようとしたものの、着地することができなかった。身体が大きく崩れ、そのまま背中を強く打ちつける。


「ゴルム!?」


クラウスレイの声が響く。


ゴルムは、その場から動かなかった。

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン


殉職したGAST隊員

シェンブリ:本名:秩代(ちつしろ) 紅怜(くれい)

生年月日:1994年6月13日 / 出身:福島県

階級:三等陸曹 / 所属:GASTセイレーン班

享年:28歳


タタイー・エイゴ―ト……ドワーフの男性で、陸軍大尉。第117歩兵科中隊長

セウ・コーペル……オークの男性で、陸軍中尉。第118歩兵科中隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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