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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第27話 反撃の狼煙

―陸上自衛隊座間基地 現テリムト参謀支部・座間基地―


「状況は?」(ゴア)


「アスゲニフ少佐が敵指揮官を仕留めました。」


「敵後方部隊の要人は、何匹か仕留めているようだな。」(ゴア)


「しかし、敵前方部隊はまだ誰も仕留めていません。」


通信士からの報告を受け、ホッと胸を撫で下ろしたゴアは、軍服の襟を正し、次に作戦へ移行するよう、アイトンダへ伝えた。


「…分かった。それだけで充分だ。作戦を次の段階へ移す。アイトンダ大佐、多少、手荒に行きますよ。これ以上、時間を費やすわけにはいかないのでね。」


ゴアはそう告げると、通信をアイトンダ大佐へ繋いだ。


「…承知しました。作戦第2段階へ移行する。3大隊、重火器をセットしておけ。」


「了解だ!」(シムバッド・ジェア陸軍中佐)


「アスゲニフ少佐、応答せよ。」(アイトンダ)


「こちら、アスゲニフ。大佐、どうされました?」(アスゲニフ)


「そこにいる特殊作戦部隊は、敵補給路を断て。」(アイトンダ)


「まだ、全員屠ってませんが?」(アスゲニフ)


「構わん。今のままでも次の作戦に支障はない。2大隊がそちらに着いた。いつでも奇襲できる。」(アイトンダ)


「…了解しました。」(アスゲニフ)


この時アスゲニフは、部隊後方で戦っているイビレイタや、エイエスの支隊も巻き添えになる事を悟った。任務を全う出来なかった自業自得――そう割り切る事も出来た。だが、隊長として部下を見殺しにする命令を、平然と受け入れられるほど、彼女は冷酷ではなかった。


「(まあ、エイエスは死んでくれていい。)」(アスゲニフ)




―自衛隊、山梨方面隊・後方部隊 ―


「敵が退却します!」


「追いますか?」


「いや、追わなくていい。一度、状況を整理しよう。」(多田)


「怪我人の手当と遺体の回収を行え。」(多田)


後方に残っていた第12特科隊隊長の多田恵晤郎(ただ けいごろう)一等陸佐、第13普通科連隊連隊長・武石哲也(たけいし てつや)一等陸佐の2人は、戦死した門川代わる、次席指揮官を決めるべく、意見を交わしていた。


「次席指揮官は、桐谷一佐の予定でしたが、別部隊にいる以上、多田一佐が総指揮を執るのが妥当と考えます。」(武石)


「いえ、ここは武石一佐で行きましょう。」(多田)


「私ですか?」(武石)


「ええ、ここは山岳地帯です。13普連の連隊長である貴方が適任でしょう。山岳レンジャーの恐ろしさを見せてやるには、貴方以上の適任はいません。」(多田)


「しかし…。」(武石)


武石には葛藤があった。彼は、2年前の道志山塊攻防戦に参戦していない。当時、13普連の連隊長だった、梶尾稔(かじお みのる)一等陸佐の戦死を受け、その後任となった。梶尾は、門唐栄作陸将補、桐谷法征一等陸佐、別当強司一等陸佐と共に、道志山塊攻防戦で指揮官として参戦し、勝利に貢献した1人であった。その偉大な前任者の後継として、自身では力不足だと感じていた。


「(偉大なる前任者の影を、俺はまだ超えられていない。隊員たちも、俺を真の指揮官として認めてはいないだろう…。)」(武石)


だからこそ、武石は指揮官代理として隊を引っ張ることに抵抗があった。だが、彼は決断した。


「…分かりました。奴らに山岳レンジャーの恐ろしさを見せてやります。」(武石)


武石は、迷いを振り払うように決断した。この戦いで、前任者の影から脱却し、自分自身の指揮官としての道を示すしかない、と。




― 自衛隊、山梨方面隊・前方部隊 ―


KIIINGッ!


「ぐ…。」(大脇)


「(こいつ…できる。)」(イルターニ)


大脇は、イルターニと対峙し、銃剣と刀剣で火花を散らす鍔迫り合いを繰り広げる。


「ココ! イルを援護しろ! 俺はあいつを仕留める!」(イビレイタ)


「了解!」(ココ・プリケリマ陸軍伍長)


「(来る…。)」(津曲)


イビレイタの突撃に身構える津曲。


「大丈夫だ、津曲! 援護する!」(嶋要人(しま かなと)三等陸曹)


「1人で戦う必要はない! 俺たちがついてる!」(天売進士朗(あまうり しんしろう)三等陸曹)


「はい!」(津曲)


津曲が銃剣でイビレイタの突撃を受け止め、嶋が蹴りを入れる。イビレイタが津曲から離れた隙に、天売が発砲。


PAANG!


「痛ぇなちくしょう。」(イビレイタ)


天売の銃弾はイビレイタを捕えるが、ボディアーマーに阻まれる。


「味方への誤射だけは気をつけろ!」(大脇)


「了解!」(長谷川春風(はせがわ しゅんぷう)陸士長)


「うおおおおおお!」(美村丹(みむら たん)三等陸佐)


「死ねぇ!」(江田翠仙(えだ すいせん)一等陸士)


イルターニには大脇と長谷川が、プリケリマには美村と江田が対峙する。


「(クソが、まだ要人を誰も殺してない。だが、要人以外の奴も手強い。ただの雑草だと侮っていた…。)」(イビレイタ)


「うがぁっ」(イルターニ)


少し離れたところからの銃弾に倒れるイルターニ。大脇の銃剣がとどめを刺す。


「イル! クソが…。」(イビレイタ)


「(撤退か? 撤退すべきなのか…。いや、撤退の命令は出ていない。ここで逃げたら、帝国兵の恥。例え死しても任務を遂行するのみ!)」(イビレイタ)


命を賭しても、任務を遂行する――決死の覚悟でいるイビレイタだったが、まさか本当に死期が近づいているとは思ってもみなかった。




―2020年9月23日 6:20 大月市内―


「アイトンダ大佐殿、装填完了した!」(ジェア)


「…よし、打て!」(アイトンダ)


「打てー!!」(ジェア)


ジェアの号令により、帝国軍の重火器が火を噴く。




その時、遠くから低い轟音が響いた。


「はっ!?」(美村)


「伏せろーー!」(美村)


「チクショウ!」(大脇)


「そんな…。」(プリケリマ)


「アイトンダ大佐、俺達を捨て駒にする気か!」(イビレイタ)


DOOOON!


イビレイタの悲痛の叫びと共に、轟音と閃光が炸裂した。


前方から放たれた砲弾は、大地を抉り、木々を根こそぎ薙ぎ倒していく。これまで特殊作戦部隊との小競り合いに慣れていた自衛隊員たちは、その圧倒的な破壊力に、ただ身を伏せることしかできなかった。そして、後方でも、空から有翼種の部隊が砲撃。立て続けに爆発音が響く。その砲撃の合図で、帝国軍の第2歩兵大隊が後方部隊に襲いかかる。


「伏兵!?」(原崎)


武石は、空からの砲撃と、後方から迫る敵の大軍に、一瞬、絶望を覚えた。しかし、彼はすぐにその感情を押し殺す。


「(ここで俺が臆すれば、全滅だ。俺は、梶尾一佐のようには出来ないだろう。だが、俺には、俺のやり方で、こいつらを守る義務がある!)」(武石)


「13普連、地形を活かして遮蔽に逃げろ! 爆風を逃がせ!」(武石)


それは自衛隊にとって、反撃の狼煙ではなく、絶体絶命の窮地への序曲だった。

登場人物紹介

多田ただ 恵晤郎けいごろう

生年月日:1969年12月10日 / 出身:東京都

階級:一等陸佐 / 役職:第12高射特科隊隊長


武石たけいし 哲也てつや

生年月日:1974年7月15日 / 出身:富山県

階級:一等陸佐 / 役職:13普連連隊長

備考:2年前の道志山塊攻防戦で殉職した前任者と自身との能力のギャップに苦しむ。


梶尾かじお みのる

生年月日:1968年4月3日 / 出身:長野県

階級:一等陸佐 / 役職:前13普連連隊長

備考:故人。2年前の道志山塊攻防戦で振るった采配により、勝利することが出来たが戦死してしまう。

享年:50歳


しま 要人かなと

生年月日:1996年8月1日 / 出身:静岡県

階級:三等陸曹 / 所属:31普連1中隊


天売あまうり 進士朗しんしろう

生年月日:1997年10月26日 / 出身:神奈川県

階級:三等陸曹 / 所属:31普連1中隊所属


長谷川はせがわ 春風しゅんぷう

生年月日:1999年2月28日 / 出身:山梨県

階級:陸士長 / 所属:31普連1中隊


美村みむら たん

生年月日:1995年6月30日 / 出身:岐阜県

階級:三等陸曹 / 所属:31普連1中隊


江田えだ 翠仙すいせん

生年月日:2001年3月2日 / 出身:埼玉県

階級:一等陸士 / 所属:31普連1中隊


シムバッド・ジェア

種族・性別:エルダードワーフの男性

所属・階級:帝国陸軍中佐、大月市攻略隊第3砲兵大隊大隊長。


ココ・プリケリマ

種族・性別:狼型獣人族の女性

所属・階級:帝国陸軍伍長、特殊作戦部隊

備考:イビレイタの部下


ゾーリー・ゴア……帝国陸軍准将で、テリムト作戦参謀長

ペーリ・アイトンダ……帝国陸軍大佐で、大月攻略隊の野戦指揮官

ガロウ・イビレイタ……帝国特殊作戦部隊の支隊長の1人。

イル・イルターニ……イビレイタの部下。

大脇おおわき 和夫かずお……31普連のベテラン

津曲つまがり 祐樹ゆうき……31普連の新人隊員


※ストーリーに関する補足

神奈川方面部隊が、大月方面での戦闘を把握したのは、隊を二手に分ける際に報告はしていましたが、末端の隊員が把握したのが、6時台になってからでした。

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