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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第276話 次の一手

「敵は追ってくるか?」


ヨッシーは、部下に確認を取る。


「前進はしていますが、追ってはいません」


「そうか…」


ヨッシーは一考してから結論を出す。


「俺達が出来るのはここまでだ。後方の分隊も撤退せよ」


「よろしいのですか?」


部下が問う。


「見ろ」


「被害は決して軽微ではない。115中隊が壊滅的被害を受けたんだ。俺達も同じになるわけにはいかない」


「……」


部下は何も言えなかった。


「心配するな。大隊長殿から新たな策が出来たと報告があったんだ。独断で退却を指示したわけじゃない」


そう言って、ヨッシーは改めて周囲を見回した。


後退してきた兵士たちは、疲労の色を隠せていない。車両にも戦闘の痕跡が残り、弾薬や装備にも少なからぬ消耗が見られた。それでも、部隊としての形は維持している。それがヨッシーにとっては重要だった。


第115中隊は、GASTとの戦闘によって大きく戦力を失った。その結果を目の当たりにしている以上、第116中隊まで同じ道を辿るわけにはいかなかった。


「負傷者の確認を急げ。動けない者は後送する」


「了解」


「それと、各分隊の残弾も確認しておけ。次の命令が来るまで、勝手に戦闘を始めるな」


「分かりました」


部下が離れていく。


ヨッシーはその背中を見送り、それから前方へ目を向けた。


遠くでは、GASTがなお前進している。しかし、こちらへ向かってくる様子はない。


(本当に追ってこないのか……)


ヨッシーはそのことが気になっていた。


自分たちが後退した以上、敵が追撃してくる可能性は考えていた。だが、GASTは防御線を突破したところで進路を変えることなく、そのまま前へ進んでいる。こちらを追い潰すことより、さらに先へ進むことを優先しているように見えた。


「……厄介な連中だな」


ヨッシーは小さく呟いた。


敵が自分たちを追わないのであれば、こちらとしても好都合ではある。だが、それは同時に、敵が次の戦場へ向かう余裕を持っているということでもあった。


やがて、後方から連絡が入った。視界の端に通信を知らせる表示が浮かび上がる。


ヨッシーは足を止めず、そのまま通信を受けた。


『第116中隊、撤退状況を報告せよ』


「現在、戦闘区域から離脱中です。負傷者の後送と装備の確認を進めています」


『了解した。現在位置を維持し、次の命令を待て』


「了解」


通信が切れる。ヨッシーは表示を確認しながら、隣を歩く部下へ視線を向けた。


「しばらく待機だ」


「次の戦闘は?」


「分からん。ただ、大隊長殿が何かを準備しているのは間違いない」


そう言って、ヨッシーは前方へ目を向けた。


第116中隊の兵士たちは、すでに戦場から離れつつある。


撃って、下がる。その繰り返しでGASTの進撃を遅らせることには成功した。しかし、第116中隊自身も無傷ではない。だからこそ、これ以上の戦闘を避けて部隊を維持する必要があった。


ヨッシーは腕時計型端末に表示された現在位置を確認する。


大隊司令部からの次の指示は、まだ届いていない。だが、その背後ではすでに別の動きが始まっている。




その頃、第116中隊が離れた前方では、GASTが進軍を続けていた。


アマゾネス班とアルバトロス班が前進し、その後方ではフォックス班とセイレーン班が移動している。


先ほどまで激しい戦闘が行われていた場所には、すでに敵の姿はない。


しかし、ビービは警戒を解いていなかった。


「妙に静かね」


スライスが周囲を見回す。


「敵が後退したからでしょうか?」


「それだけならいいけど」


ビービは前方を見る。


第116中隊(敵)は戦いながら後退した。そして、こちらを追撃することなく姿を消した。それはGASTにとっても、完全に予想していた動きではなかった。


「まだ何かあると思う?」


「分かりません」


スライスが答える。


「でも、あれだけ時間を使わせようとしていたなら、後ろで何か準備している可能性はあります」


「そうね」


ビービは頷いた。


「だから、気を抜かないで行こう」


GASTは再び前へ進み始めた。その先に何が待っているのか。まだ誰にも分からない。ただ一つ確かなのは、先ほどの戦闘が単なる防御戦ではなかったということだった。第116中隊(敵)が稼いだ時間は、帝国軍にとって次の一手を準備するための時間だった。


そして、その一手はすでに動き始めている。




戦場の後方、第116中隊が戻ってきた場所とは別の地点で、帝国軍の指揮官たちが集まっていた。


その中央に置かれた戦術情報の表示には、GASTの進撃経路と帝国軍各部隊の位置が映し出されている。


ラース・シグコプリニが、静かに口を開いた。


「第116中隊は、予定どおり時間を稼いだ」


別の将校が表示へ目を向ける。


「第115中隊ほどの損害も出ていません」


「それでいい」


エミッショ・コインは、GASTの進行方向へ視線を移した。


「奴らをここで止める必要はない」


表示上のGASTを示す情報が、さらに前方へ移動していく。


「必要なのは、奴らが次にどこへ向かうのかだ」


誰も口を挟まない。コインは、その先に表示された地点を見つめた。


「ここで迎え撃つ」


その言葉とともに、戦術情報の一部が切り替わった。これまで隠されていた帝国軍の配置が、少しずつ表示されていく。GASTがまだ知らない場所で、次の戦いの準備が始まっていた。

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー、シェンブリ


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 、ワード、シールズ、ミルトン


アルベルト・ヨッシー ……陸軍大尉で、リザードマンの男性。第116歩兵科中隊長

ラース・シグコプリニ……陸軍少佐で、ハイエルフの男性。第31歩兵科大隊長

エミッショ・コイン……陸軍准将で、ハイエルフの女性。大分方面軍の司令官

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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