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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第273話 逆狩

アマゾネス班の周囲で続いていた銃撃は、次第にその性質を変えていた。


敵はそれまで、こちらの進路を限定するために射撃していた。ところが現在は、アマゾネス班がどこへ移動するかを待つのではなく、遮蔽物から遮蔽物へ移る間隙を狙って射撃を集中させている。敵兵の姿はほとんど見えないにもかかわらず、こちらの動きに合わせて射撃位置が変化していることから、複数の分隊が互いに援護しながら包囲を狭めていることが分かった。


ビービは木の陰から前方を覗き、敵の射撃が一度途切れたところでスライスへ声をかけた。


「スライス、左の敵は?」


「まだいます。ただ、さっきより下がっています」


「右は?」


「こちらも動いています。正面へ寄せているようです」


ビービは周囲を見回した。


敵の動きだけを見れば、アマゾネス班を開けた場所へ押し出そうとしているように見える。しかし、敵がこちらの意図を読んでいる可能性も考えなければならない。


「スライス、敵が私達を囲むつもりなら、どうして射撃を弱める?」


「こちらを動かすためだと思います」


「そうね。でも、もう一つある」


スライスがビービを見る。


「敵が私達の位置を完全には掴めていない?」


「その可能性がある」


ビービは前方を見た。


敵がアマゾネス班の位置を正確に把握しているなら、これほど射撃地点を変える必要はない。むしろ複数の位置から圧力をかけているのは、班の位置を推定しながら動きを制限しているためではないか。


「だったら、こっちから教えてあげる」


スライスが意味を察した。


「わざと動きを見せるんですか?」


「そう。ただし、敵が撃ちやすい場所には出ない」


ビービは班員へ指示を伝えた。


アマゾネス班が一斉に動くのではなく、複数の遮蔽物を使いながら少しずつ位置を変える。その動きに反応して、林の中から射撃が加えられた。


ビービは射撃の方向を確認する。


一つ。続いて別方向。その後、さらに離れた位置から射撃が入った。


(やっぱり分隊単位で動いている)


敵はアマゾネス班を包囲しているのではない。包囲を作るために、こちらを動かしている。そして、その配置には必ず隙が生じる。


「スライス、アルバトロス班に送って」


「何を?」


「敵の位置」


スライスはすぐに通信を開始した。


『アルバトロス、こちらアマゾネス。敵は複数方向から圧力をかけていますが、北側の射撃が弱い。そちらから見て何か分かる?』


少しして、ブエンテロの声が返ってきた。


『こちらも確認している。北側に敵の姿は殆どない』


「やっぱり」


ビービは地形を頭の中で組み立てた。


敵は両班を別々に追い込んでいる。そのため、両班の間に火力を集中させる一方、外側の一部が薄くなっている。そこを利用できる。


『アルバトロス班、北側から敵の側面を探せる?』


『やってみる』


通信が切れた。ビービは班員へ視線を向けた。


「ここから反撃する」


スライスが頷いた。


「了解」


アマゾネス班は、それまでとは逆に敵の射撃が弱い方向へ進み始めた。


敵から見れば、逃げようとしているように見える動きだった。その反応は早かった。前方からの射撃が強まり、アマゾネス班の進路を塞ぐ。


ビービはそれを確認すると、班員を停止させた。


「止まって」


敵の射撃が集中した地点へは入らない。その代わり、今度は別方向へ移動する。敵が再び射撃位置を変える。


ビービはその瞬間を待っていた。


「今」


アマゾネス班が一斉に反撃した。


それまで射撃していた帝国兵の一部が遮蔽物へ身を隠す。だが、その射撃位置はすでに別方向から観測されていた。


遠方から銃声が響いた。フォックス班だった。


コルガンが敵の射撃地点を捉え、その周辺へ射撃を加えていた。


「ダンタス、次」


「右前方です」


「分かった」


コルガンが照準を修正する。


ジミーも別の位置を見ていた。


「班長、左奥の林にもう一つあります」


「距離は?」


「およそ400。木の根元に2体」


「見える」


コルガンが照準を移す。ジミーはそのまま周囲を観察した。


「その後ろに、さらに1体います。たぶん指揮を取っています」


コルガンが確認する。


「分かった」


2人は同時には撃たなかった。


コルガンが先に1人を狙い、その直後にジミーが後方の兵士へ照準を移した。2発の銃声が、時間差を置いて林の中へ響いた。


帝国兵が倒れる。その射撃を合図にするように、アマゾネス班が前へ出た。敵の射撃が一瞬弱まる。


ビービはその隙を逃さなかった。


「今、前へ!」


アマゾネス班が進む。




一方、アルバトロス班も動き始めていた。


クラウスレイは敵の射撃が集中する場所を避けながら、周囲の地形を確認していた。


「班長、北側が薄いです」


「アマゾネス班からも同じ報告が来た」


ブエンテロは頷いた。


「敵は俺達を分けたかったんだろうな」


「ええ。ただ、そのために外側の火力を薄くした」


ソブラウが敵の位置を確認しながら言った。


「なら、そこを使えます」


「そうする」


ブエンテロはマメッドへ視線を向けた。


「マメッド、右を見てくれ」


「了解」


マメッドはすぐに移動し、林の隙間から敵の射撃地点を探した。しばらくして、低い姿勢のまま戻ってきた。


「班長、右側に3体。こちらを見ています。ただし、射撃位置は固定されていません」


「動いている?」


「はい。こちらが進めば、後ろへ下がるつもりでしょう」


ブエンテロは頷いた。


「だったら、追わなくていい」


クラウスレイがその意図を理解する。


「アマゾネス班との合流を優先する?」


「そうだ」


アルバトロス班は敵を追撃せず、北側へ進んだ。


敵が射撃を開始する。しかし、その射撃は長く続かなかった。


アルバトロス班が止まると、敵も止まる。ブエンテロはそれを確認して、低く笑った。


「やっぱりな」


クラウスレイが尋ねる。


「何がです?」


「俺達を撃っている連中は、俺達を倒すことが目的じゃない」


ブエンテロは前方を見た。


「こいつらは、俺達をどこへ動かせばいいかしか考えてない」


「なら、その誘導を無視すればいい」


「そういうことだ」


マメッドが周囲を確認した。


「敵が動かないなら、こちらから近づいてみますか?」


「まだだ」


ブエンテロは首を振った。


「アマゾネス班が動くまで待つ」




その頃、帝国軍では戦況の変化が報告されていた。


アルサーフィンは腕に装着した通信端末へ表示された映像を確認していた。複数の観測映像が表示されているが、そのうちいくつかが次々に消えている。敵狙撃兵による射撃だ。


「敵の歩兵が予定地域から外れ始めています」


部下から報告が入る。


アルサーフィンは画面を確認した。


「どの方向だ?」


「北側です」


「押し戻せ」


「しかし、北側の部隊も射撃を受けています」


「構わん。南へ回せ」


「了解」


アルサーフィンは別の映像を確認した。


敵の歩兵は、こちらの誘導に従わなくなっている。こちらが射撃を加えれば別方向へ逃げるのではなく、射撃地点を探している。しかも、その動きに合わせて遠距離から狙撃が加えられていた。


(狙撃兵が歩兵の動きを支えている)


それが分かった瞬間、アルサーフィンは自分たちの作戦が崩れ始めていることを認めざるを得なかった。


敵は罠を見抜いた。それでも、まだ第115歩兵科中隊には数の優位がある。


「前線を維持しろ」


アルサーフィンが命じる。


「敵はまだ殺傷地域の中にいる」


「了解」


しかし、その直後だった。通信端末に新たな映像が表示される。映像の一つが大きく揺れた。続いて、画面が暗くなる。


「何があった?」


「観測員が撃たれました」


アルサーフィンは舌打ちした。


「またか」


「敵狙撃兵の位置は?」


「不明です」


アルサーフィンは画面を閉じた。


砲兵による支援を再開するには、観測が必要だった。だが、その観測員を動かせば狙撃される。動かさなければ、敵歩兵を正確に捉えられない。


そこへ別の報告が入った。


「敵歩兵がこちらの側面へ回っています」


アルサーフィンは即座に答えた。


「後退させるな」


しかし、命令を出した直後から、前線の表示が次々と変化していった。帝国兵の配置が崩れ始めている。


アマゾネス班が突破した。その動きに合わせてアルバトロス班も進出している。そして、その両側面をフォックス班が射撃で支えている。


さらに後方では、セイレーン班が敵の観測網を狙っていた。帝国軍の戦術は、個々の部隊ではまだ機能している。だが、部隊同士を繋いでいた情報と火力の連携が崩れ始めていた。


アルサーフィンはようやく決断した。


「前線を縮めろ」


部下が聞き返す。


「後退ですか?」


「まだ違う。隊形を組み直す」


「了解」


帝国兵たちが移動を始めた。


しかし、その動きこそGASTが待っていたものだった。




フォックス班が敵の移動を確認する。


ダンタスがコルガンへ報告した。


「敵が動き始めました」


「どこへ?」


「中央へ集めています」


ジミーが光学機器を覗き込む。


「違います。中央じゃない」


コルガンが尋ねる。


「何が違う?」


「中央へ集めているように見せて、右側を空けています」


コルガンはジミーの見ている方向を確認した。確かに敵の一部が右側へ移動している。だが、それによって別の部隊との間に隙間が生じていた。


「……撤退路を作ってるな」


ジミーが答える。


「そうだと思います」


コルガンはすぐに判断した。


「なら、あそこを撃つ」


「了解」


フォックス班の射撃が始まった。敵の移動が止まる。それを見たアマゾネス班が一気に距離を詰めた。


「今!」


ビービが叫ぶ。


アマゾネス班が林の中へ突入した。


敵兵との距離が一気に縮まる。


帝国兵は応射したが、これまでのように互いに援護することができない。別の分隊からの支援射撃を待とうとしても、その位置をフォックス班に狙われる。


アマゾネス班は敵の射撃を遮蔽物で受け流しながら、射撃地点を一つずつ潰していった。


アルバトロス班も反対側から進出する。


「ゴルム、右!」


ブエンテロが叫ぶ。


ゴルムが敵の射撃を確認して応射する。マメッドはその間に側面へ回り込んだ。


「班長、奥に敵がいます!」


「数は?」


「5、いや6!」


「撃てるか?」


「撃てます」


マメッドが射撃を開始した。敵が身を隠す。


その隙を利用してソブラウたちが前へ出た。


クラウスレイは敵の隊形を確認しながら、ブエンテロへ報告する。


「班長、このまま行けば敵の後方へ回れます」


「行くぞ」


アルバトロス班が進む。


帝国兵は次々に後退した。しかし、後退する方向にはアマゾネス班がいる。前へ出ればアルバトロス班に捕捉され、後退すればアマゾネス班に射撃される。その状況に、帝国軍の一部が混乱し始めた。


アルサーフィンへ報告が入る。


「敵が両側から進出しています!」


「293小隊は?」


「通信がありません」


「294小隊は?」


「後退しています」


「292小隊は?」


「位置を確認できません!」


アルサーフィンは通信端末の表示を見つめた。表示される映像の数が減っている。観測網が機能していない。指揮系統も分断されている。このままでは中隊全体が包囲される。


「全隊、後退する」


部下が息を呑む。


「しかし、敵はまだ――」


「これ以上続ければ中隊を失う」


アルサーフィンは即座に答えた。


「負傷者を回収し、北西側へ下げろ。各部隊は互いの位置を確認しながら後退する」


「了解!」


帝国兵が撤退を始めた。




GASTは、その動きを確認していた。


スライスがビービへ報告する。


「敵が下がっています!」


ビービはすぐには追撃を命じなかった。


「どこまで?」


「林の奥へ向かっています」


「追わない」


スライスが振り返る。


「追撃しないんですか?」


「敵が逃げているだけなら追う。でも、あいつらはまだ組織を保っている」


ビービは敵の撤退方向を見た。


「ここで深入りしたら、今度はこっちが別の罠に入る」


アルバトロス班からも通信が入った。


『アマゾネス班、こちらアルバトロス。敵が後退している』


「こちらも確認している。追撃はしない」


『了解』


ブエンテロは通信を切ると、クラウスレイへ視線を向けた。


「逃げたな」


「はい」


マメッドが周囲を警戒しながら言った。


「ただ、まだ近くにいる可能性があります」


「分かってる」


ブエンテロは銃を構えたまま、敵が消えていった方向を見つめた。


「勝ったからって気を抜くな」


アルバトロス班はその場に留まり、周囲を警戒した。




少し離れた場所では、フォックス班も射撃を停止していた。


ジミーが照準器から目を離す。


「班長、敵はもう動いていません」


「確認した」


コルガンは周囲を見回した。


「全員、射撃を止める」


フォックス班は武器を下ろした。




遠方では、セイレーン班も同じように敵の動きを監視していた。


ローレライはしばらく敵の撤退方向を見つめた後、シリングへ告げた。


「終わったみたい」


「敵は撤退しましたか?」


「少なくとも、ここではもう戦わないと思う」


セイレーン班はすぐには移動しなかった。


敵が本当に撤退したのか、それとも次の攻撃を準備しているのかを確認する必要がある。やがて、ローレライの視界から敵兵の姿が完全に消えた。


「……行ったね」


シリングが頷いた。


「はい」


ローレライは照準器を下ろした。


「じゃあ、移動するよ」


セイレーン班もようやくその場を離れ始めた。


今回の戦闘で、115歩兵科中隊は大きな損害を受けた。複数の分隊が戦闘能力を失い、観測員を含む多くの兵士が倒されている。残存部隊はアルサーフィンの指揮下で後退し、中隊としての組織を維持することを優先していた。


一方のGASTも無傷ではない。弾薬は大きく消費され、カロが帰らぬ人となった。それでも、戦場に残ったのはGASTだった。


ビービは開けた場所の向こうを見つめた。


「スライス」


「はい」


「敵の火力支援は?」


「今のところありません」


ビービは短く息を吐いた。


敵は退いた。少なくとも、この地域での戦闘は終わった。だが、彼女には一つだけ気になることがあった。


「……あいつら、最初から私達を倒せると思ってなかったのかもね」


スライスがビービを見る。


「どういうことですか?」


「私達をここへ連れてきて、砲撃で潰す。それが失敗したら、歩兵で囲む。それでも駄目なら撤退する」


ビービは敵が消えた方向を見た。


「つまり、最初から次の手を用意してた」


スライスは答えなかった。


今回の戦闘では勝った。しかし、敵はまだ戦力を残している。そして、こちらの戦い方も敵に知られた。ビービはそれを理解していた。同じことは、もう2度と通用しない。




そのころ、撤退する帝国兵の列の中で、アルサーフィンは通信端末に表示された戦場情報を見ていた。


失われた部隊の位置が表示されている。115歩兵科中隊は、もはや当初の戦力を維持していない。それでもアルサーフィンは冷静だった。


「敵は強いな」


隣にいた兵士が答える。


「はい」


アルサーフィンは戦場の映像を閉じた。


「だが、次は同じやり方では戦わない」


彼の視線の先には、まだ帝国軍の戦力が残っていた。


今回の敗北は、戦争全体から見れば一つの戦闘に過ぎない。しかしGASTにとっても帝国軍にとっても、互いの能力を知るための戦闘になった。狩る側と狩られる側は、もう同じではなかった。


登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム、シャオリン(怪我により離脱中)


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー、シェンブリ


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、ラーキン 他3名


エンリケ・アルサーフィン……猿型獣人族の男性で陸軍大尉。第115歩兵科中隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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