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外星戦記~異星人に家族を殺された少年は、自衛官になって復讐を誓う~  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第268話 第4の矢

大分県内の某山間。


ここでは、第1空挺団の特科大隊を中心に編成された部隊が、敵の兵站拠点を砲撃するための準備を進めていた。彼らに与えられた役目は第3次攻撃であり、これまでに行われた砲撃に続く「第3の矢」として、敵の兵站拠点へ打撃を加えるはずだった。


しかし、砲撃陣地の周辺から激しい銃撃音が響き始める。


「敵に見つかった!」


前方から切迫した報告が飛び込んできた。


「砲撃陣地を変更するか?」


「無理だ! 敵の動きが早すぎる!」


敵は自衛隊の存在を察知すると、迷うことなく攻撃を仕掛けてきた。砲撃準備を進めていた部隊は、火力を発揮するどころか、自らの陣地を維持するための戦闘を強いられている。このままでは、第3次砲撃そのものが実施できない。


その情報は、別の場所で待機していたGASTにも伝わっていた。


「班長、生野(いきるの)大隊長より。敵接近につき、陣地防衛、砲撃不可との事」


キーラから報告を受けたビービは、しばらく黙っていた。


予定されていた第3次砲撃がなくなった以上、当初の作戦には穴が生じる。砲撃によって敵の注意を引きつけ、その混乱に乗じて兵站拠点へ侵入するという流れは崩れていた。


その隣で、ブエンテロが鼻息を荒くしている。


「行くしかないな」


ビービは呆れたように隣へ視線を向けた。


「まったく……あんたは……」


(とは言っても、時間をかけるわけにはいかない。ここはブエンテロの言う通りね……)


ビービは決断すると、周囲の隊員へ視線を巡らせた。


「私達は予定どおり動く。砲撃がなくなった以上、こちらで穴を埋める」


そして、各班へ役割を割り振る。


「アマゾネス班は先行して侵入路を確保する。アルバトロス班は続いて拠点へ接近。狙撃班は後方から援護して」


「了解」


ブエンテロが答える。その横では、クラウスレイが地図を確認していた。


「砲撃がなくなったことで、敵も警戒態勢を変えている可能性があります」


「分かっている」


ビービは即答した。


「だからこそ、時間を置かない。敵に考える時間を与えれば、こちらの動きを読まれる」


「賛成です」


クラウスレイは短く頷いた。


「では、予定どおり進みます」


ソブラウは地図を覗き込みながら、周囲を見回した。


「つまり、砲撃で敵の注意を引くはずだったところを、僕達だけでやるんですね」


「そういうこと」


「……それ、結構危なくないですか?」


マメッドが思わず口を挟む。


「今さら気付いたのか?」


ゴルムが呆れたように言った。


「いや、気付いてはいましたけど……」


マメッドは苦笑した。


そのやり取りを聞いていたブエンテロは、銃を確認しながら口を開く。


「危険だからこそ、俺達が行くんだ。砲撃がなくなったから中止なんて言ったら、GASTの名が泣く」


「ブエンテロ」


ビービが呼び止める。


「はい」


「目的を忘れるな。私達が勝手に戦果を競うための作戦じゃない。敵の兵站拠点を叩く。それだけだよ」


「分かっていますよ」


ブエンテロの返事には、まだ熱が残っていた。ビービはそれ以上何も言わなかった。


やがて、各班が動き始める。


先頭を進むのはアマゾネス班だった。ビービを中心に、スライス、イリー、キーラ、ピケット、サリカムが続く。


その後方からアルバトロス班が続く。ブエンテロを先頭に、クラウスレイ、ゴルム、ソブラウ、マメッドが距離を保ちながら前進していた。


さらに後方では、フォックス班とセイレーン班がそれぞれ射撃位置を探しながら進んでいる。


コルガンはジミーとグイダを伴って移動していた。


「おいジミー、今回は勝手な事するなよ」


「分かってる」


「毎回それ言ってるけど、信用出来ねぇよ。気が付けば1人でいるしよ。隊の規律を乱すな!」


「うるさいな」


グイダは、ジミーがローレライをライバル視していることを知っている。それはGASTでは知らぬ者がいないほどだった。


しかし、その意識が強すぎるために、ジミーは三位一体を基本とするGAST狙撃班の運用を無視し、単独で動こうとすることがある。グイダがその姿勢を問題視しているのも、コルガンは理解していた。


コルガンは2人のやり取りを聞きながら、小さく息を吐く。


コルガンがジミーとグイダの組み合わせを固定しているのは、ジミーが狙撃手として成果を上げるためだけではない。ジミーの勝手な行動によって余計な負担を背負うグイダのストレスを抑える意味もあった。


(セイレーン班は臨機応変にバディを組めるので羨ましいよ……)


少し離れた場所では、ローレライが黙って前方を観察していた。その隣にはシリングとラスタがいる。


「ローレライ班長、何か見えますか?」


シリングが尋ねる。


「まだ何も。ただ、敵が砲撃を待っていたなら、今頃は少し混乱しているはず」


「その逆かもしれません」


ラスタが静かに言った。


「砲撃が来ないことを、敵が予想している可能性もあります」


ローレライは一瞬だけラスタを見る。


「そうだね」


その頃、先行していたアマゾネス班が停止した。


ビービが拳を上げると、後続の隊員もそれに合わせて動きを止める。


『どうしました?』


無線越しにブエンテロが尋ねた。


「前方に何かある」


ビービは低い姿勢を保ったまま、周囲の地形を確認する。


「警戒が濃い。こちらの侵入を想定している」


その言葉に、後方のクラウスレイが表情を変えた。


『……待ち伏せですか?』


「まだ断定はできない」


ビービは答えた。


「だが、予定していた砲撃がなくなった直後に、ここまで警戒されているのはおかしい」


コルガンも狙撃位置を探しながら周囲を見回した。


「敵はこちらの動きを読んでいる?」


ローレライが答える。


「その可能性が高いでしょう」


やがて、セイレーン班のビューが前方を確認した。


「ローレライ班長、右側の斜面に動きがあります」


「人数は?」


「確認できません。ただ、こちらを待っているように見えます」


無線が一瞬だけ沈黙する。


砲撃はなくなった。それでもGASTは進んできた。そして、その判断そのものを敵に読まれている可能性が高い。


ビービは前方を見据えたまま、静かに命じた。


「作戦は変更しない」


ブエンテロが即座に反応する。


『了解』


「アマゾネス班はこのまま進む。アルバトロス班は距離を保って続ける。狙撃班は交戦した場合、こちらの退路を確保して」


コルガンが答える。


『フォックス、了解』


ローレライも続けた。


『セイレーン、了解』


ビービは最後に一言だけ付け加えた。


「敵が待っているなら、こちらから行く」


その直後、前方の斜面から銃声が響いた。土が跳ね、アマゾネス班の頭上を弾丸が抜けていく。


「撃ってきた!」


キーラが叫ぶ。


ビービは身を伏せながら周囲へ指示を飛ばした。


「散開!」


アマゾネス班が左右へ展開する。ほぼ同時に、アルバトロス班へも射撃が飛んできた。


「こちらも撃たれた!」


マメッドが叫ぶ。


ブエンテロは前方を睨みつけた。


「やっぱり待ち伏せか!」


クラウスレイは冷静に周囲を確認していた。


「敵は我々の侵入方向を把握しています。予定していた砲撃がなくなったことも、すでに把握されている可能性があります」


「つまり、こっちが来るのを待っていたってことか?」


ブエンテロが尋ねる。


「その可能性が高いです」


クラウスレイは答えた。


「なら、突破する」


ブエンテロが前へ出ようとした瞬間、ゴルムが肩を掴んだ。


「待て。正面から行くな」


「分かっている」


「本当ですか、班長?」


「分かってる!」


ブエンテロが苛立ったように答える。


その間にも敵の射撃は続いていた。


アマゾネス班は地形を利用しながら前進を続けているものの、敵の配置は予想以上に広がっていた。アルバトロス班も同様に足を止められ、思うように距離を詰められない。


『ビービ、こちらは前進困難!』


ブエンテロから報告が入る。


『了解。無理に押すな』


ビービは答えながら、前方の敵を確認した。


(砲撃がなくなったことで、敵はこの一点に戦力を集中させたのか)


本来なら、第3次砲撃によって敵拠点の警戒を乱し、その隙を突いて突入するはずだった。しかし、砲撃はない。それでもGASTは動いた。


敵にとっては、迎撃に集中する時間が生まれている。その状況を崩さなければ、兵站拠点への接近は難しい。


そして、その状況を最初に崩したのは、フォックス班だった。


『コルガン班長、右斜面に敵の射撃陣地を確認』


ローレライの声が無線へ入る。


「こちらも確認した」


コルガンが答えた。


「ジミー、撃てるか?」


『撃てます』


ジミーは即答した。グイダがすぐに続ける。


「待て。射撃位置が近すぎる」


「大丈夫だ」


「過信をするな!」


コルガンは2人を止めた。


「ジミー、グイダ。いつも通りだ」


「了解」


2人が同時に答える。


フォックス班の狙撃銃が敵を捉える。その一方で、セイレーン班も別の射撃位置から敵の動きを追っていた。


ローレライはスコープ越しに敵陣地を見つめる。


「……そこ」


引き金に指をかける。その瞬間、ローレライの視界に敵兵が飛び込んだ。


(撃つ)


銃声が山間部へ響いた。


敵の射撃が一瞬だけ途切れる。その隙を、ビービは逃さなかった。


「今だ!」


アマゾネス班が前進する。アルバトロス班も続いた。


しかし、敵の反応は早かった。別の位置から銃撃が飛んでくる。


「まだいる!」


キーラが叫ぶ。


ビービは地面へ身を伏せながら前方を確認した。そこには、新たな敵が進軍していた。


「まさかピンポイントで読まれてるなんてね……」


ビービは、敵の鋭い読みを前に戦慄した。

登場人物紹介

GASTアマゾネス班

ビービ(班長)、スライス(副班長)、イリー、キーラ、ピケット、サリカム、シャオリン(怪我により離脱中)


GASTアルバトロス班

ブエンテロ(班長)、クラウスレイ(副班長)、ゴルム、ソブラウ、マメッド


GASTセイレーン班

ローレライ(班長)、ボナー(副班長)、シリング、ラスタ、ベルチャー、シノシック、ファス、ビュー、シェンブリ


GASTフォックス班

コルガン(班長)、ダンタス(副班長)、ジミー、グイダ、カロ、ラーキン 他3名


生野大隊長……第1空挺団特科大隊長、生野(いきるの) 氷護(ひょうご)二等陸佐

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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